戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

色々と考えたんですが、やはりソルとマドカの過去を書きました。2人がだいたい小学生くらいの頃のエピソードですね。

まぁ……おおよそ子供らしくない内容ですが、主にソル……。ソルの口調がいつもの通りなので、少し子供であると言う事はイメージし辛いかもしれません。

それともう一つ……やはり亡国サイドの話なので、殺伐とした事が続きます。ドきつい表現は避けていますが、苦手な方はご注意を……。

あっ、別にこの話は飛ばしても本編への影響はないようにしています。別にイラネって方は、普通に飛ばしていただいて大丈夫ですので。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


我が名はソル(追憶)ですが何か?

『ソル、今のはどういうつもりかしら?』

 

「…………」

 

『あえて止めはしなかったけど、もうエムも含めて全滅……』

 

「黙れスコール……!次に1文字でも発音してみろ……オレは貴様を殺す!」

 

 一夏との通信を断って、しばらくソルは魂が抜けたかのような表情をしていた。ソルの心情は解っているのだろうに、スコールがモニター越しに話しかける。

 

 今のソルにとっては、スコールの声は酷く耳障りだった。そして敵にすら放った事の無いような殺気を、モニターの向こうのスコールへと送る。

 

 別にソルが恐ろしかったわけでは無いが、それでスコールはモニターを閉じた。そうでなくては、ソルは本気で自分を殺しにかかる。そうなれば、計画も全て水泡に帰すからだろう。

 

「クソっ……!」

 

 広いカエルム・スカラム中心部へ、ソルの呟きが響く。どうしようも居られず立ち上がったソルだったが、すぐに無機質な床へと四つん這いになる。

 

 そのまま『クソ』と呟きながら……何度も何度も床を殴りつけた。まるでトドメかのように頭を振り上げ、額を床へと叩きつける。すると不意に、ソルの頬へと涙が伝う。

 

「何故オレは……もっと早くに、マドカを……!オレをオレにしてくれたあの時から……オレは、マドカに焦がれていたはずなのに!」

 

 真と戦い破れ得た人らしさ……。それがここに来て、ソルを苦しめていた。ソルが産まれて16年……彼にとって、初めての後悔である。

 

 赤ん坊の時期を除けば、涙も同じくだろう。とにかくソルは、悔しくて悔しくて仕方が無いのだ。マドカを苦しめた事や、歪ませた事が……。

 

 ソルは、嫌でも思い出す。マドカとの出会いと、そのいきさつを……。そう……アレは、調度このカエルム・スカラムに似た無機質な研究施設での事だった……。

**********

「ほら、入れ」

 

「…………」

 

 幼き日のマドカが連れて来られたのは、何か……訓練所にも似た空間だ。ただし、ここは研究施設である。となると、此処では主に生身における測定でも行うのかもしれない。

 

 この時点のマドカが覚えている記憶は、実験に次ぐ実験……。ここに連れて来られたのも何かの実験だろうと、年端もいかない少女がまるで悟ったような表情だ。

 

 キョロキョロと入れられた室内を見回すと、その中心部に何か……と言うよりは、誰かいる。もっと正確に言うのならば、倒れている……だが。

 

(同い年くらい?)

 

 マドカが見た限りでは、倒れている少年は自分と同じくらいの年ごろだった。何があったのか、その様はボロ雑巾の様である。故意的に痛めつけられた……そんな感じだ。

 

「チッ……!まだ寝ていたのか……」

 

「?」

 

「お前は気にしなくても良い。ったく……しつこいからってやり過ぎたか……?」

 

 マドカをここまで連れて来たいかにも軍人の様な背格好の男は、倒れている少年を見ると苛立つように呟いた。言葉からして、どうやらこの男が少年をボコボコにしたらしい。

 

 それを理解したマドカは、気絶している少年に親近感を覚えた。そうすると、いつの間にか男よりも前に出て倒れている少年へと近づいてしまう。

 

「…………」

 

「おい起きろ!NO.425852!」

 

(……ピクッ!)

 

「!? 動い……」

 

ガバッ!ザシュッ!

 

 マドカは少年の近くにしゃがんで、頭をツンツン突いてみる。しかし……何の反応も無い。するとすぐ後ろに居た男が、怒鳴るように少年の被検体番号?を叫んだ……次の瞬間の事である。

 

 少年は突如起き上がると、男へ向かって走り込む。その手に握られているのは……逆手に持った大きなナイフだ。どうやら少年は、それを腹に敷いて倒れたふりをしていたらしい。

 

 ナイフを持って何をするのか、それは……他者を殺傷する為である。少年は素早く男の身体を駆け上がると、左腕の二の腕部分に深くナイフを突き立てる。

 

「ひ……ひっ……!」

 

「ぐおおおお!?きっ、貴様ぁ……コレは、なんのつもりだ!!!!」

 

「……?おかしなことを言う。オレに与えられた課題は、貴様を殺せという内容だぞ」

 

「なっ、何!?貴様、いい加減な事を言うとまた痛い目に……」

 

 少年はナイフを抜きつつ男から飛び降りた所を見ると、失血死を狙っているのだろう。そして男に何のつもりと聞かれれば、思あたる節は無さそうな様子だ。

 

 男は少年が適当な事を言っていると、そう思っている。しかし……次の瞬間に、室内へ回線が入った。内容は、男に対してすぐさまその場を退くような命令だ。

 

 少年は男が出て行くと、思い切りナイフを振ってこびり付いた血を払う。すると今度は、いきなり目の前で起きた刃傷事件に腰を抜かしたマドカへ近づいて行く。

 

「おい」

 

「な……何?」

 

「どうしてくれる。貴様が微妙に反応したせいで、仕留め損ねたぞ」

 

 そう……少年は端から、男の首を狙っていた。しかし男はマドカの示した微妙な反応に合わせて、既に行動を起こしていたのである。

 

 つまりあの男は、マドカによって生かされたも同然であった。男の殺害が課題であった少年にしてみれば、マドカは邪魔な存在でしかないという訳だ。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「ゴメンで済むか、あんなチャンスはそう何度も……。と言うか、何だ貴様は?」

 

 この少年は、ようやくマドカへと興味を示したらしい。ナイフを持った状態だと、気付かれない方が良かったような気がしなくもないが……。

 

 少年から見ても、マドカは自分と同じ年くらいであるとう考えが浮かぶ。そうして何か……少女がどうのと、聞かされていたのがモヤモヤと思い出された。

 

「貴様もしや、例のガキじゃないだろうな」

 

「君も子供だよ?」

 

「黙れ、そんじょそこらの同年代と一緒にするな」

 

「…………」

 

 ガキがガキと言うと、マドカは見栄を張っているようにしか感じられなかった。だから見事なブーメランだぞと返すと、更に見栄を張っているような言葉が返ってくる。

 

 もちろん少年は、本気でそう言っているのだが……どうやらマドカには通じていないらしい。思わず知らずマドカの口からは、笑みがこぼれた。

 

「フフッ……!」

 

「貴様……何がおかしい?」

 

「だ、だって……!フフフフ……!」

 

「…………」

 

 マドカは少年がナイフを持っているのも忘れて、心の底から笑って見せる。何を言っても無駄だと判断したのか、無言無表情でマドカを待った。

 

 しかし予想外に長い事待たされたために、少年の表情は少しづつムスッとしていく。流石にそれを察知したのか、マドカはハッとなって少年の顔色を窺う。

 

「ご、ごめんなさい」

 

「良い……話を本題に戻すぞ。貴様、ここに連れて来られたのは訓練がどうこうだと聞いては無いか」

 

「訓……?うん、聞いたような……気がする」

 

「まぁ……まず貴様で間違いないだろうが。先が思いやられる……。どうやらオレは、貴様の指導を任されるらしい」

 

 少年は、何か溜息を吐くようにしてそう言う。少年は数日前に、そのうち新入りの子供が~……みたいな事を聞かされていたのだ。

 

 特に気には留めなかったものの……まさかこんなズブの素人がやって来るとは、とでも少年は言いたそうだ。少年が困ったように頭を掻くのに対して、マドカはどうして良いか解から無さそうに見える。

 

「……まぁ良い。指示が来るまでは、待機で良いだろう」

 

「あ、えっと……はい」

 

 こうして、マドカと少年の共同生活が始まった。訓練に実験……辛い事も多いが、それでもマドカは少年との生活が楽しくて仕方ない。

 

 おおよそ子供らしい事は何もなかったのだから、それも当然だろう。少年は、様々な事を知っていた。だけど何処か、常識に欠けている……そんな少年だ。

 

 感情的になる事は無いのに、無意識にムキになるようで……。マドカは少年の弄び方を覚えて、からかい……。そんな感じの日々が過ぎて行って、ふとマドカは少年に疑問を投げかける。

 

「あなたって、名前は無いんだよね?」

 

「前にも答えたし、必要ないとも言ったぞ。そもそも……同じく被検体の貴様に名前が存在する方がおかしな話だ」

 

 あの時の男が言った……『NO.425852』と言う記号が、少年に存在する固有の呼び名であった。これに関して、少年は特に何を感じる事は無い。

 

 最悪は『そこの』とか『お前』で事足りる。マドカもそれまでは『君』とか『あなた』でずっと通していたが、やはりそれでは寂しく感じられたらしい。

 

 マドカがマドカたりえるのは、自分に名前が着いているからだと感じていた。顔も知らない両親から送られた……唯一の贈り物でもある。

 

「あ、そうだ……。私が考えてあげようか?」

 

「余計だ」

 

「う~ん……と……」

 

「無視か貴様」

 

 マドカは良い事を想いついたように、パンと両手を合わせてそう提案した。それに対して少年は、心底下ら無さそうに短く答える。だが……マドカは、少年の言葉など聞いてはいない。

 

 耳には届いているが、頑なな少年は無視するのが正解と心得ているのだ。少年の方もこういう時のマドカは頑固だと知っている。小さく鼻を鳴らすと、腕を組みつつマドカを待った。

 

「太……陽……?そう、太陽!」

 

「よりによってそれか?」

 

「だって……私にとって、君は太陽みたいな感じだし」

 

 そう言いながら、マドカは顔を紅くしながらモジモジ……。この様子を見るに、その言葉に偽りはないらしい。マドカにとって少年との思い出は、キラキラと輝いているように思えた。

 

 そこから連想させて、太陽が浮かんできたのだろう。確かに人名で太陽と言うのは無くも無いが、とにかくこの少年には死ぬほど似合わない。

 

「ね?だから……」

 

「オレは、それで呼んで良いとは言っていない。下らん事を考える暇があったら、もっと別の事に頭を使え」

 

「…………はい」

 

 露骨にしょんぼりとするマドカに、少年は苛立ちを感じた。いや……どちらかと言えば、自分に対してと言った方が正確か。少年としては、全く訳が解らない。

 

 少年が何かを感じるという事すら珍しい事だ。それを本人が、理解できるはずも無かろう。しかし少年は、マドカを待つ。見たところマドカは、まだ少年に言いたい事があるようだ。

 

「な、名前って……大事だよ。そうじゃないと、君は物でしか無いみたい」

 

「…………」

 

「私は、君を名前で呼びたい。だって君は……わ、私の大事な『人』だから」

 

「……下らん」

 

 マドカの続けて出た言葉に、少年は苛立ちをつのらせた。勢い良くキュッと踵を返すと、マドカから離れて目的地へと足を急ぐ。この反応を見てか、結局マドカが少年を『太陽』と呼ぶ事は無かった……。

 

 そんなやり取りからまた更に月日が過ぎたある日の事……少年は、いつもの様に訓練に明け暮れる。今日はマドカはまだ居ない。まぁそれも……呼び出されている様なので仕方がないが。

 

「…………」

 

「来たか、では今日の訓練を……」

 

「…………」

 

 マドカは訓練所に現れたが、何処か様子がおかしい。下へ俯いて、入り口から前に進まない。少年は訝しみながらマドカへと近づいた。するとマドカは……笑顔で泣いていた。

 

 これに少年は、特に何も思うところはない。むしろ面倒だと思っているほどだ。とはいえ、これではいつまでも事が進められない。少年は、渋々マドカに声をかける。

 

「構って下さいみたいなのは止めろ。聞いてほしいなら早く言え」

 

「私ね……お姉ちゃんとお兄ちゃんが居るんだって」

 

「何……?」

 

「見てよこれ、幸せそうに笑ってさ……」

 

 そう言いながらマドカは、少年に写真を手渡した。そこに写っているのは、確かにマドカに良くにた姉弟だ。マドカに実の肉親が居るという事実に、流石の少年も馬鹿なとでも言いたそうだ。

 

 それでいて、写真に写る姉弟に酷く苛立ちを覚えた。前回は誰に対してかは解らなかったが、今回は確実に姉弟に対して苛立っているらしい。少年は、思い切り写真を破り捨てた。

 

「それで、それがどうかしたか?」

 

「どうして……私だけが……!」

 

「…………」

 

「こんなに辛い目に合わないといけないの!?」

 

 それはマドカにとって、心からの叫びであった。いくら少年と出会って多少の気休めにはなるとしても、辛い事この上のない……それが、マドカの日常だ。

 

 少年は何かを考えるそぶりを見せる。考えているのは……なぜマドカに肉親が居る事を伝えたのか……である。マドカの叫びなどてんで興味がないのか、はたまた興味があるから一応は考えが沸くのか……。

 

(自然なのは……姉、弟のいずれかを越える存在とするため……?それなら、憎悪を抱かせるのも頷ける)

 

 少年の考えは概ねで正解であった。織斑 千冬は後のブリュンヒルデ……ISにおいて世界の頂点を獲る女である。そんな千冬を人為的に越えるためのモルモットこそ、他でもない織斑 マドカだ。

 

「彼女達が憎い?」

 

「誰……?」

 

「スコール……貴様、ここには顔を出さないのでは無かったのか」

 

「予定なんてものはチマチマ変わるものよ」

 

 いつもは少年、マドカ、教官くらいしか出入りしない訓練所に、女が現れた。亡国機業のトップ……スコール。少年は彼女の事が苦手であった。つかみどころがなく、ああ言えばこう言うのが、どうしようもなく歯がゆい。

 

 そのためスコールを睨みながら、少年は何の用事だと問いかける。するとどうやら、スコールは少年でなくマドカに用事があるようだ。マドカは未だに虚ろな表情で、スコールの言葉に耳を傾ける。

 

「なんで彼女達は普通に生活していて、貴女は此処に居るのだと思う?」

 

「解りません……」

 

「それは……貴女が愛されていなかったからじゃないかしら」

 

「っ!?」

 

 マドカも多少は思うところがあったのか、スコールの言葉に表情を強張らせた。平気で、更に言うと笑顔でそう告げられるスコールは、かなり悪趣味だ。

 

 だがその目的は、マドカの姉弟に対する復習心を煽るためであろう。スコールの目的を理解している以上、少年は特に行動を起こさない。しかしマドカがナイフを取り出そうとしているのが解ると、瞬時にマドカへ詰め寄った。

 

ズダン!

 

「!?離せ!」

 

「…………」

 

「あら?しばらく見ないうちに優しくなったのね」

 

「黙れ」

 

 少年はマドカのの腕を掴んで背中方向に捻ると、足をひっかけてマドカを転倒させその場に押さえる。そんな少年にスコールは優しくなったと評するが、決して的を外した言葉ではない。

 

 少年は『良い意味』で、マドカを止めた。もしそのままスコールを攻撃していたとして……マドカは、もっと酷い反撃を受けていただろう。スコールのわずかな殺気を感じての行動だ。

 

「良いわ、押さえてて頂戴。それで、マドカさん?今私を……殺したいって思ったわよね」

 

「だとしたら……何!?」

 

「その感覚を忘れ無いようにね。ここに居るのなら、貴女にあの姉弟を殺すだけの力をあげる」

 

 今のマドカにとって、この言葉は甘言だった。あの姉弟の表情を思い出だけで、先ほどスコールに抱いたものと同じ感情が沸き起こる。マドカは理解した……自分は、姉と兄を殺したいのだと。

 

「どうすれば、良いですか……どうすれば殺せますか?」

 

「フフフ……良い子ね。……離してあげなさい」

 

「…………」

 

 スコールはマドカの目つきが変わったのを確認すると、少年に上から退くように命令する。基本的に他者の指図を受けるのは嫌いらしい。あまり良い表情をせずに、マドカを解放する。

 

 そうして2人が並び立つ 。それをスコールは満足そうに眺めると、何処かへ連絡を入れ始めた。しばらく待っていると、拘束された数名の男女が乱暴に訓練所へ連れて来られた。

 

「なんだこいつらは、捕虜か?」

 

「いいえ、彼らはウチのメンバーよ。もう元だけど」

 

「なるほど、つまり裏切り者か」

 

 少年の想像通りに連中が拘束されているのは、組織に対する裏切り行為をしたのである。脱走やスパイ容疑など理由は様々だが……。しかし裏切り者を連れて来て、2人にいったい何をさせようと言うのか?

 

「貴女は、人を殺すのに慣れて頂戴」

 

「え……?も、もしかして……この人達を殺せって……?」

 

「そうよ。どうせ処分するんだから同じ事だもの」

 

 そう言いながらはいっといった感じで、スコールはマドカに軽~く拳銃を手渡した。受け取ったその手はカタカタと震えて、臆しているのがすぐに解る。

 

 意を決したのか、マドカは銃口を数人のうち1人へと向けた。しかしやはり手の震えが止まらない。銃口は上下左右へブレて、とてもじゃないが当たりはしないだろう。

 

「はっ……!はっ……!」

 

 マドカは手の震えだけでなく、だんだんと息が荒くなって行く。額には脂汗が浮かび、脳内では天使と悪魔が囁き続ける。そんなマドカに、スコールは語りかけた。

 

「銃は楽よ?手に感触が残らないもの」

 

「そ、そんな問題じゃ……!それに、関係ない人なんか……」

 

「関係ない人は殺せない?そんな事では、復讐は叶わないでしょうね」

 

 スコールの言葉には、何処か説得力があった。そしてマドカは、目の前に居る人間を復讐の対象と見立てて対峙してみる。だが……殺意は芽生えない。

 

 姉弟に殺意を覚えたのは確か。スコールに殺意を覚えたのは確か。だがやはり……無関係の人間は殺せない。マドカが何処でも無い何処かを見つめ始めた頃に、その手を抑える者がいた。

 

「…………」

 

「君……?」

 

「殺さなくても良い。貴様は……姉と兄だけ殺す事を考えていろ。それ以外の障害は全て……オレが消してやる」

 

 少年はそう言うと、マドカの手に添えるようにしてグッと力を込める。それるなわち、銃口を下げると言う事だ。マドカは、少年の言葉の意味が解らなかった。

 

 しかし……それはすぐに結果として目の前に啓示された。少年は力強い歩みで、拘束されている者達の前へ向かう。そしてその先頭……研究員風の男の前へたどり着くと、その首にナイフを突き立てた。

 

ザシュッ!

 

「!?」

 

「……なんだ、人殺しというのも大したことは無いな」

 

「……何のつもりかしら?NO.425852」

 

「それは誰の事を言っている?我が名はソル……亡国機業のソルだ」

 

 研究員風の男は、口元も拘束されているせいで、モゴモゴとした断末魔を上げて絶命した。その首に刺さったナイフを引き抜きながらスコールの方へ振り向くと、少年はソルと名乗る。

 

 その際に、解るか解からないかくらいのアイコンタクトをマドカは感じた。それとついでに、少年……いや、ソルが笑ったように見えたのだ。

 

 それっきりソルは、テンポよく裏切り者をナイフで殺害していく。浴びた返り血も気にせず……次々と次々と次々と……。そして……裏切り者も最後の一人となった。

 

「さて、貴様で最後だ」

 

「……どいて」

 

「貴様……何をしている?」

 

「…………」

 

ズガン!

 

 マドカはソルの問いかけには答えずに、残りの1人の額に銃口を押し付けて、何のためらいも無く引き金をひいた。銃声によってかき消されたが、マドカはこう呟いていたのだ。

 

 置いて行かないで……と。それは間違いなく、ソルに対しての懇願する言葉だろう。頭を撃ち抜かれた裏切り者は、当然死亡……。その死体がゴロンと転がるのと同時に、マドカは力なくその場に座り込んだ。

 

「まぁ……今日は良しとしましょうか。後で処理班を寄越すわ」

 

 どこか不満そうに言い残してその場を去るスコールだったが、腹の中では大いに歓喜していた。この2人に何があったかは知らないが……間違いなくお互いが、お互いの為に人を殺めたのだ。

 

 特にマドカの方の話で、嬉しい誤算だった……。ソルは命令さえすればそれを実行する。だが……マドカがあそこで引き金をひけないのは、スコールにとって想定内。

 

 しかし……立て続けに想定外の事が起きた。まず、ソルがマドカの為に裏切り者を殺害した事。そして……ソルについて行くという『それだけ』の為に、マドカも……。

 

(上手く利用できそうだわ……)

 

 スコールが1人ほくそ笑んでいる頃、マドカは未だに座り込んだままだった。そんなマドカに近づいて、ソルは隣に座った。そして何か、言い辛そうに口を開く。

 

「貴様の寄越した太陽という名に誓って、貴様の歩む道は……オレが照らそう」

 

「え……?」

 

「だから……貴様は黙って着いて来い。……それだけだ」

 

「…………。貴様じゃないよ、マドカって呼んで。ソル……」

 

「ああ……マドカ」

**********

 今の今までオレは……自分があの日々で何を感じたのか、まるで解ってはいなかった。名をくれて……嬉しかっただろうに!初めて物でなく人扱いされて、嬉しかっただろうに!

 

 マドカの存在を知らず……笑う織斑姉弟に苛立ちを覚えた……。スコールにマドカが傷つけられそうになって、必死で押さえた……。マドカに変わって、裏切り者を始末した……。

 

 それもこれも、マドカと出会ってからは……全てがマドカの為だったのに!どうしてオレは……!もっと早くこんな簡単な事に気が付かなかったんだ……。

 

 …………もう良い。後悔するだけならば、いくらだって出来る。目的は……定まった。マドカが俺を待っている。こんな……人でなしに違いないオレを。

 

 オレの生きる意味……加賀美を殺す以外でようやく見つかった。そう……全ては、マドカと共にあるため……それだけでいい。……奴の気配も、目と鼻の先か。恐らく既に、この大門を模したゲートの目の前……。

 

 そう思っていると、本当にゲートが開かれた。そこに居るのは当然……我が好敵手である加賀美 真……。エクステンダーに乗っていた加賀美は、それから飛び降りオレに声をかける。

 

「……待たせたな」

 

「ああ、待っていた……」

 

 その言葉と同時に、オレはコートを脱ぎ捨てた。さて……とりあえずは、手早くコイツを斃さねばならん。待っていろ……マドカ。今すぐに迎えに行く……。

 

 

 




お前の様な小学生が居るか。

マドカの口調に苦労しました……。昔からあんな口調なはずも無いし……と思ったので、自分なりの考えで適当に。

それで、最終的なマドカの口調は……ソルのが移った。もしくはソルの真似事……と言う事にしときましょう。

ちなみに、織斑家のご両親ですが……申し訳ない!描写する暇があらず……!はい……本当に申し訳ない。それこそ、暇があれば番外編と言う事で……。

そんな訳でして、次回からいよいよ真VSソルの……最・終・決・戦!……です!本当の本当に、この2人の対決はこれで最後となるでしょう……。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。
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