戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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今回ちょっと長くなってしまいました。

いろいろ書きたいシーンが多くて、詰め込みすぎちゃった感が激しいっす……。

まぁそのぶん内容は濃いかな~なんて……。

ハイ……嘘ですスミマセンいつも通りのグダグダです。

まぁそんなこんなで久しぶりの真の戦闘です!

今回もよろしくお願いします!


VS無人機(乱入者)ですが何か?

 本日から始まるクラス対抗戦、会場の盛り上がりはクラス代表決定戦の時の比じゃなかった。どこを見渡しても人、人、人である。席に座れなかった者は通路で立ち見か……首が疲れそうだ。

 

「本当……運良く座れてよかったな」

 

「そうだね~」

 

 俺の言葉に本音は心から同意している。早すぎるくらいにアリーナに来ておいたのは正解だったらしい。まぁ別に俺は直接見に来なくたって、ガタックゼクターに記録させればそれで良いんだが。

 

「ところでさ~、りんちゃんとおりむ~ってどうなったの~」

 

「あぁ……なんか前より悪化したらしいぜ?」

 

 聞いた話によると、約束の本当の意味を知りたい織斑と、約束の本当の意味を教えたくない鳳とで意見の食い違いがあったらしい。

 

 一方的に謝らせたい鳳は、とにかく織斑に謝罪を要求。大して織斑はそんなに安く頭は下げれない。で、織斑はつい鳳のコンプレックスを指摘するような発言をしてしまい鳳が激昂と……。

 

(だけど「貧乳」はねぇよなぁ……小学生じゃあるまいし)

 

 いや、むしろ今時の小学生ならもっと大人な対応ができるような気がする。とはいえ、一概に織斑が悪いとは言わんが……どの道あそこで……

 

「やっぱ殺しとくべきだったなぁ……」

 

「いきなり怖い独り言だね~」

 

 ん、しまった……口に出てしまっていたか。本音の方を見ると、どうにも少し引いてるらしく、頬をわずかに引きつらせていた。どんな事があろうとも微動だにしない本音が表情を変えるとは、貴重な一面を見た気がする。

 

『それでは両者、既定の位置まで移動してください』

 

「始まるな……」

 

「そうだね~……おりむ~、酷い目に合わないと良いけど~……」

 

 本当にな、なんていったって鳳の専用機はいかにも「パワー型です」みたいな分かりやすい形状をしている。白式と同じく近距離主体ならば、この戦いに理があるのは代表候補生である鳳の方だろう。

 

 しかも試合前に怒らせてるときた。手加減どころか容赦もないだろうな、きっと。怖い怖い……できれば鳳とは戦いたくないもんだ。

 

ビーッ!

 

 試合開始のブザーと同時に両者はお互い目がけて一直線。次の瞬間にはがギィン!と重苦しい音がアリーナ内に響き渡る。

 

「わ~……りんちゃんの武装、おっきいね~」

 

「確か「双天牙月」って名前だったな、青龍刃もあそこまで大きくなると、矛か斧の方が表現的には近いな」

 

 織斑は瞬時に雪片を展開し、しっかりと双天牙月に合わせ防いだ。が、見た感じパワー不足が否めないな……ここはいったん距離を取るのが定石だが……鳳の専用機に対してそれは悪手だ。

 

 定石通りに距離を置こうとした織斑だが、何かの発射音が聞こえたと同時に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。何が起こったか分からない会場の面子はざわつき始める。

 

「? なんだったの~?」

 

「説明しよう!」

 

「わ~、昔の特撮みたい~」

 

「あの鳳の専用機「甲龍」には「龍砲」って武装が装備されてて……肩の所のアレな。あれはいわゆる……まぁ空気砲みたいなもんって言えばいいのか?」

 

「あ~、だから見えなかったんだ~」

 

「そうそう、空間自体に砲身を作って、そこの取り込んだ衝撃を砲弾代わりにドガン!って武装だな」

 

 つまり甲龍の機体コンセプトとしては、近距離で捕まえて逃げようとすれば龍砲でズドン。ってな感じか?えげつないねぇ……視認ができないからなおさらだ。

 

 織斑は手立てがないのか、ただただ龍砲による攻撃を避け続けるのみだった。が……モニターで確認できるその表情は、ただ苦しいだけの「それ」ではない。

 

「あぁ、なるほど……そういう事か」

 

「どうしたの~?」

 

「織斑の奴、この劣勢からの一発逆転を狙ってやがる」

 

「……あ~!この間の~?」

 

 そう、織斑には一発当てることができれば勝てる方法が一つだけある。それは白式のワンオフアビリティーである「零落白夜」のほかない。

 

 相手のバリア残量を無視して本体ごと引き裂くというトンデモ能力だが、当然リスクはある。それは零落白夜発動時に白式のシールドエネルギーを雪片に乗せるという点だ。

 

 まさに諸刃の剣と言えよう。先のオルコット戦では実際にエネルギー不足が要因となって織斑は敗北した。つまり、零落白夜を当てなければほぼ織斑の負けは確定する。

 

 それを見えない砲弾を放つ甲龍相手にやってのけようとしているのだ。正攻法で龍砲を回避しつつ突っ込む……というのは鳳相手には通じないだろう。しっかりとタイミングを計ればいいが、いずれボロが出る。となると……。

 

「奇襲……か?」

 

「おりむ~、まだ何か隠してるのかな~?」

 

「分からねぇよ、だけど……織斑の奴、いい目をしてると思わねぇか?」

 

「……うん~。キリっとしてるね~」

 

 織斑のその目に宿るのは「覚悟」やら絶対勝つといった「意志」。オルコットや俺との戦いの時とはまるで違う。これは、今度こそ信じてみてもいいのかもしれない。

 

「もしかしたらだぞ、本音」

 

「もしかしたら~?」

 

「ああ、織斑……勝つかもしれねぇ」

 

 両者はいったん動きを止め、一言二言会話をすると、再び動き出した。が、白式の様子が少しおかしい。なぜなら、グンッと加速したかと思えば、すでにもう鳳の目の前まで居るからだ。

 

「瞬時加速……!あのバカたった一週間そこらで覚えっちまったのか!」

 

「いっけ~、おりむ~!」

 

 瞬時加速。スラスターから放ったエネルギーを再び取り込み、再放出することによって爆発的加速を生むISにおける高速ダッシュの一種のようなものだ。

 

 ただし、発動するには当然エネルギーを要する。だが織斑はあえてエネルギーを使う瞬時加速と零落白夜を併用することによって奇襲を仕掛け、確実に鳳の首を取りに来たという事だ。

 

「うっし、獲ったな」

 

 そう、俺を含めた大多数の人間が、織斑の勝利を予感しただろう。ただし、それはこの瞬間までの話だった。

 

ズドオオオオオオン!

 

「!? なんだっ!?」

 

 今にも雪片の刃が甲龍に届きそうになったとき、信じられんことだが「アリーナの遮断シールドを破壊」して何者かが乱入してきた。

 

「あれは~……なに~……?」

 

「待ってろ、ガタックゼクター!」

 

『キュイィィィイイ……』

 

 奴の正体を探るべく、ガタックゼクターを呼びつけ、謎のISをスキャニングしてもらう。数秒後にしっかりと回答は出てきた。しかし、到底納得のできる内容ではない。

 

『unknown 所属不明及び該当するコア無し。生体反応未感知』

 

「はぁ!?生体反応未感知だぁ……?いったいどういう……」

 

「かがみん~……」

 

 本音が俺の名前を呼びながらキュッと制服の腕の部分を少しつまんだ。その表情は不安そうな様子が露わになっている。

 

 この状況だ、観客席も軽くパニックが起こっているし。いくら本音がのほほんとした性格の持ち主であったとしても流石に少し怖いのだろう。

 

 ……本当は傍にいてやりたいのだが、織斑と鳳はすでに不明ISと交戦を開始していた。専用機持ちとしては、動か無い訳もいかない。

 

「聞け、本音。俺は、行かなくちゃならない。分かるな?」

 

「うん~……」

 

「そんな顔するな、俺がとっとと終わらせるよ、約束するから……な?」

 

 俺はそう言いながら本音の頬を軽く、本当に軽く捻り上げ無理やり笑顔を作った。……俺が主人公か何かだったら「俺は笑ってる本音が好きだけどな」とか言っちゃうんだろうね、俺は無理だよ?さっきのが限界だ。

 

「……約束だよ~?」

 

「ああ、もちろん。だからここで少し待っててくれ」

 

「分かったよ~」

 

 本音のその言葉をしかと聞いた俺は、本音を安心させるために力強く頷いた。そのまま急いで立ち上がり、人込みをかき分けて走り出そうとすると、本音が俺を呼びとめた。

 

「かがみん~!」

 

「ん?どした?」

 

「絶対……絶対に帰ってきてよ~?約束したからね~?」

 

「本音……。あぁ、約束だ!」

 

 俺は右手を上げて答えると、今度こそ走り出す。さて……もっと詳しい状況を把握しなければ。となると、やはり我らが担任殿に聞くのが一番だろう。

 

「ガタックゼクター、回線を織斑先生に繋げ」

 

「キュイイイイ……」

 

『この反応は……ガタック?加賀美か』

 

 ガタックゼクターから織斑先生の声が響く、その声色はいつもと何ら変わりはなく、少なからず焦っている俺にとっては気持ちを落ち着かせるためのいい薬になった。

 

「手短に言います。現状、把握できることを教えてください」

 

『そうだな、所属不明機に対して足止めの意味を込めて織斑、鳳が交戦中。アリーナはシールドの遮断レベルが4、あらゆる扉はロックされている。今は避難も援護も不可能だ』

 

 あらゆる扉が……だからさっきから生徒たちは扉の前で騒いでいたのか、開くはずの扉が開かないと言うのは、ますますパニックを引き起こす要因になるだろう。

 

『残念だが、お前に出来ることは何一つない。大人しくしていろ』

 

「すみませんけど、そういう訳にもいかないんで」

 

『何……?貴様まさか、余計なことをするつもりでは……』

 

 織斑先生が何かを言い切る前に、回線を無理やり遮断する。本当に黙って見ているわけにはいかないんだ。本音のためにもな。

 

「ガタックゼクター、どこか生徒が群れてない扉は無いか?」

 

『キュイイイイ……』

 

 俺の呼びかけに答えるかのように、ガタックゼクターが移動を開始した。追いかけてみた先にあったのは、「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた扉だ。場所としては、わざと隠すかのようにかなりひっそりとした場所に点在している。

 

 用途としては、緊急の更に緊急の避難用って所だろうか?もしかすると各国の要人の避難のためだけに用意された避難用なのかもしれない。結局ロックされちまってるから、見直しが必要だね。

 

「ガタックゼクター、この扉をぶち破れないか?物理的でも科学的でも構わない」

 

『キュィィィィィ……』

 

 俺の言葉にガタックゼクターは弱弱しい電子音を上げながら、俺の周囲を旋回するのみだった。どうやら、ムリだと言いたいらしい。クソッ……せっかくいい扉が見つかったってのに……!

 

「ええい、この!開かんか、このクソ扉!」

 

ガァン!

 

 こんなことをしても無駄だと言うのは分かっている。しかし、本音のあの表情を思い出すと立ち止まっていられず。頑丈な扉に向かってサイドキックを放った。

 

 当然扉はびくともせず、ただ無機質な鉄の音が響くだけだった。俺の脚も痛いし、骨折り損のくたびれもうけ……かと思いきや。

 

プシュー!

 

「おいおい……なんの冗談だ?」

 

 開いちゃった☆いやいやいやいや……嘘だ、あり得ない、こんなことで開くわけがない。俺は一つの可能性が頭から切り離せないでいた。

 

(罠か……?てか絶対そうだろ)

 

 生体反応が無いと言うことはつまるところ無人機、ロボットだ。となると、絶対にアレをここに送りつけた黒幕が居ることに間違いはないはず。

 

「考えてても仕方ねぇか。馬鹿になれだ、俺」

 

 そう、いつも通りだ。迷ったのなら考えるのは止めて、俺がやろうと思ったことをやればいい。俺は扉の奥に進む前に、どこかで見ているかもしれない黒幕に告げる。

 

「何の思惑があって俺を誘い出したいのかは知らねぇが……見てろよ?俺を招き入れたことを後悔させてやるよ」

 

 それだけ言うと遊んでいる暇も無いので全力ダッシュ!アリーナ内部を目指してただただガムシャラに突っ走った。

**********

 ったく、あの先……迷路みたいになってやがんのなんの。途中からガタックゼクターに先導してもらってよかったな。

 

 走って行く先には一筋の光明が見えた。よし、やっぱり一応アリーナ内部にはつながってたらしい。俺は目の前を飛んでいるガタックゼクターを引っ掴むと、腰のベルトに挿入する。

 

「変身!」

 

『henshin……』

 

 ガタックに変身した俺は、走ったときの勢いそのまま目の前にある扉にドロップキックをぶちかます。思ったよりも簡単に扉は豪快に変形しながら吹き飛んで行った。

 

「こ、今度は何よ!?」

 

「安心しろ、俺だ」

 

「真!来てくれたのか!」

 

「分かったから足を止めんな!死にてぇわけじゃねぇだろう」

 

 突如現れた俺に、織斑と鳳は見事に足を止めやがった。命のやり取りをしている自覚があるのかね?さて、俺も気を引き締めていかなくては。

 

『織斑先生、アリーナのシールドがほんの一瞬だけ完全に消失……って加賀美君!?』

 

『貴様!そんなところで何をしている!?』

 

「さぁね、勝手に開いたんで入っただけですよ」

 

 俺は本当の事しか言ってないしね、うん良い子だ俺。まだ教師二人がギャーギャーうるさいが、本気で集中しなくては、無人機の野郎がこっち見てやがる。

 

ドォン!ドォン!ドォン!

 

「のわっ、集中攻撃かよ……!」

 

 織斑と鳳を攻撃していたのが一転。無人機に積まれてる砲門と言う砲門が総べて俺に向かって火を噴く。だがこれでけ距離が空いていれば、何の問題も無いね。けれど、いつまでもこうして避け続けるのは不可能だ。

 

 織斑と鳳はさっきまで試合してたんだし、エネルギー残量もキツイだろう。いっちょ、作戦会議と洒落込もうか。

 

「どっちか、何か策ないか?」

 

「無い!」

 

「無いわ!」

 

「んでテメェらそんなに自信満々なんだよ!?」

 

 お二人さん本当にこの状況分かってる!?コントやってる場合じゃないんだよ!?アリーナのシールドぶち破るISと戦ってるんだよ!?

 

「真!アンタ同じ全身装甲のIS同士でしょうが!何とか説得してきなさいよ!」

 

「ねぇ!?お前さっきからなんなの!?パニクってんだよなぁ?俺に死ねと申すか!そもそも、機械に話が通じるわけねぇだろ!」

 

「っ!?ちょっと待て、真!今なんて言った?」

 

 悪ふざけと取られてもしょうがないような俺と鳳のやり取りに、急に真剣な顔つきで織斑が割り込んでくる。いったいなんだっていうんだ?

 

「だから……機械に話は通じねぇって」

 

「その言い方……アレにはやっぱり人が乗ってないんだな!?」

 

「はぁ?そんなの、あり得るわけがないわ……」

 

「いや、奴に人は乗ってねぇ、これだけは断言できる。ガタックゼクターのスキャニングに間違いはない」

 

 ヤツにスキャニングをかけたとき、確かにガタックは生体反応が感知できないと言った。ZECTの作ったガタックゼクターが、そう易々と誤作動を起こすはずがない。

 

「で、だとしたらどうかしたのか織斑?」

 

「あぁ!手加減する必要が無いって分かっただけで十分だ!」

 

 なるほど、手加減という表現からして、やっぱりこういう状況で頼りになるのは零落白夜か……。だが、それには肝心な要素がある。

 

「エネルギーは、残ってるのか?」

 

「それにスピードも足りないでしょ、避けられて反撃されるのがオチだわ」

 

「いや、その問題が同時に解決できる方法が一つだけある」

 

 スピードとエネルギーを同時に解決?スピードの方は、瞬時加速の事だろうが……それだとエネルギーが足りないしな。……いや、待てよ。

 

「あぁ、なるほどな。よし、それなら俺も前に出てなるべく隙を作ろう」

 

「分かった!任せたぜ、真」

 

「へ?いや、ちょっと……あたしを置いてけぼりにしないでよ!」

 

 この作戦のキーマンが何をおっしゃる。とにかく説明している暇がないから俺はとっととガタックゼクターの顎を全開にする。

 

「キャストオフ」

 

『cast off!change……stag beetle!』

 

 説明しなくても鳳……というか代表候補生なら土壇場でしっかり合わせてくれるはずだ。俺はダブルカリバーを携え、無人機に接近。

 

 うへ~……やだね~こいつに接近とか。とにかく一撃離脱を意識しなくては、さもなければカウンターでのグルグル回転式ビームの餌食になってしまう。

 

「ぬどりゃ!」

 

 手始めに切りかかった俺の初撃はヒョイっと言ったような感じで軽々と回避される。よし、それならそれで切り替えていかなければ、避けられたままの勢いでそのまま真っ直ぐ突き進む。

 

 すると無人機はその場で回転しながらビームを発射する。が、すでに回避の体勢に入っていた俺には届かない。回転している間は射程が半減ってのは分析済みだぜ!

 

 と思った矢先、なんと無人機は回転式ビームを継続的に発射しながら俺に近づいてくる。

 

「どおおぉおおおおぉ!?そんな馬鹿な!?」

 

「ちょっと!何やってんの、ますます近づけないじゃない!」

 

「いや、この動きに何の意味があるんだよ!?」

 

「範囲攻撃になってるんだから、全員の牽制になるだろ!」

 

「仰る通りだわあああああああ!」

 

 とりあえず俺は織斑と鳳に見守られながら全力で逃げる。しかし、屈辱だ……まさか織斑に言いくるめられる日がこようとは……。

 

 それにしても……ISの戦闘になったら何かしら逃げてるな、俺。オルコットの時もそうだし、織斑の時もそうだし、そろそろ韋駄天の愛称でも付きそうな感じだ。

 

 それでも、この状況を抜け出す手が無い訳ではない。だけどなぁ……相当な賭けなんだよなぁ……ミスったら死んじまうんだよなぁ……。

 

 だけどよぉ……約束したからな、帰ってくるってさ……。よし、やってやりますか!

 

「ちょっぉっ……!?何やってんの!?」

 

「真!!!」

 

「心配すんな!援護はいらん!」

 

 二人がなぜこんなにも焦った様子なのかというと、それはここに無人機が迫ってくるのを真正面から待ち構えているバカが居るからだろうな。

 

 無人機は機械らしくためらう様子を一切見せずにこちらへドンドンと迫ってくる。そうだ……頼むからその回転式ビームで来いよ、じゃないと俺……死ぬから。

 

 まだだ……まだ早い……ギリギリでなければ、この回転式ビームに終わりは見えない。そして、無人機のビームが俺の鼻先?を掠るか掠らないくらいまで迫った瞬間……。

 

(今っ!)

 

 俺はガタックの飛行の要である反重力デバイスを完全に動作を停止させる。するとどうか、さっきまで重力に逆らって空中に浮いていたガタックは、プツリと糸が切れた操り人形のように地面に落下していく。

 

「台風の目ってな!」

 

 横回転しているのだから真下と真上はがら空きだ!無人機はあまりにも突然俺が位置を変更したため、どうやら対処に遅れているようだ。回転していたのもあるだろうしな。

 

 その隙は逃さん!俺は地面に落下しつつ、ダブルカリバーを両方ともブン投げる。

 

「そらよ!」

 

 織斑との一戦の後、こいつは使えると思って投擲技術を鍛えておいてよかったぜ。流石にブーメランのように帰ってくることは無いが、ダブルカリバーはしっかりと無人機に突き刺さる。

 

「よしっ、止まった……!織斑、鳳!」

 

「ああ!後は任せ……」

 

『一夏ぁ!』

 

 キィーン!とハウリング音を響かせながら何者かの声が突如アリーナに響いた。あれは……篠ノ之か!?いや、この際誰だっていい!んなクレイジーなことしでかす奴の事なんざほっとかなければ!

 

『男なら……そのくらいな敵を倒せないで何とする!』

 

「構うな織斑ぁああああ!やれ!早く!さもなきゃ……」

 

「分かってる!!!鈴!衝撃砲を最大出力で撃て!」

 

「は?何よいきな……「鳳!四の五の言ってねぇでやれ!!!!!」わ、分かったわよ!」

 

 急げ二人とも……今ヤツの興味は篠ノ之だ……。早くしないと篠ノ之が死ぬ……!だが無人機はすでに腕を篠ノ之が居る中継室に向けている。

 

(間に……合わねぇ)

 

 ダブルカリバーは奴に刺さりっぱなし、プットオンしてもガタックバルカンの威力ではチャージショットでも気を逸らすことはできないだろう。

 

(どうする!どうすりゃいいんだよ!?)

 

 考えを巡らせていると、俺には一つある考えが浮かんだ。そもそもできるかどうかわからないが、やって見る価値は十分にある。

 

「プットオン!」

 

『put on!』

 

 俺はライダーフォームを維持したまま肩部、つまり「ガタックバルカンのみ」をプットオンする。そしてそのままフルスロットルスイッチを三回プッシュ!

 

『one……!two……!!three……!!!』

 

 そしてガタックゼクターの顎をまた開いた状態に戻す。そしてそのままイメージを開始する。「足」ではなく……「肩」だ。

 

 そうイメージすると、ガタックゼクターから流れるイオンエネルギーは、腕から肩へとと伝わっていく。そしてそのままガタックバルカンに充填された。

 

 よし!やはりISになってるからかイメージ力しだいで何とかなりそうだ。ここまでのイメージは完璧……あとは圧縮して……撃つのみ!

 

「くらいやがれ!ガタック流ライダーシューティング!!!」

 

ドォン!!!

 

 今までに聞いた事のない大きな発射音と共に、ガタックバルカンの両砲門から巨大なプラズマ火球が発射される。しかし、当然この威力の玉の発射は想定されていないのか、撃ったと同時にすさまじい反動をガタックが襲い、俺は地面に叩きつけられた。

 

ズゥン!

 

「ぐぅっ……!」

 

 俺が地面に叩きつけられると同時くらいに、無人機にプラズマ火球が命中する。無人機の装甲は抉れ、プスプスと煙が立ち上ってはいるものの、大した痛手ではないらしい。

 

 けれど、注意を逸らすことには成功だ。証拠に無人機の野郎は俺にビームを放とうと腕をこっちに向けている。ひとまず篠ノ之は大丈夫だな、後でお説教コースは免れないだろうけど。

 

「さて、織斑。今度こそ頼むぜ」

 

ズン!

 

「悪いな、真。早すぎて返事をする暇もなかった」

 

 織斑は甲龍の衝撃砲より外部からエネルギーを確保し、瞬時加速を行う。あとはご存知零落白夜ではいバッサリと。

 

「ちょっと、まだ動いてるわよ!」

 

「あ~大丈夫大丈夫。なんつったって……」

 

バチィ!

 

「優秀な狙撃手が控えてっからな」

 

「ふふっ、おほめに預かり光栄です!」

 

 客席からのブルー・ティアーズの狙撃が無人機を穿つ、これも俺から見れば想定内だからなんにも焦らなかったって訳だ。しかし、織斑にしてはよく周りを見た作戦と言ったところか。

 

 それにしても、なかなか哀れなもんだ。零落白夜を食らった後にBT四機による同時狙撃とか、俺はそう思いながら少し遠くで地面に転がっている無人機を眺め……目を疑った。

 

(!? まだ動いてるのか!?)

 

 いち早くそれを察したのは織斑……つまりロックされているのもあのバカか!んでもってなんであいつは真っ直ぐ無人機に向かって突っ込んでんだ!

 

(ダメだ……あれは当たる!)

 

 どうしてだ……織斑も鳳もオルコットも俺も……全員が死力を尽くしてやりきっただろ!?なんで最後の最後で俺は、黙って見てるしかできないんだ!?

 

(いや、違うね!)

 

 そうだ、無力を呪う暇があるのなら、他に出来ることがあるはずだろう。織斑を助けるのが間に合わないなんて、誰が決めた!

 

 頭の中でそう考えた瞬間、なぜか体全体から力が湧き上がるような感覚を覚える。次の瞬間、ガタックのディスプレイにこう表示されていた。

 

『clock up system 』

 

(クロックアップ!?)

 

 馬鹿な!?今の今まで使える影すら見えなかったクロックアップがなぜ!?というかISなのに使えるのか……?だが、今は考えてるヒマはねぇよな!

 

「クロックアップ!」

 

『clock UP!』

 

 ガタックのベルト腰部分にあるスラップスイッチを押す。すると、目の前の景色はほぼ止まったも同然のスピードになるのが分かった。

 

(とにかく!急がなければ!)

 

 ガタックの全速力をもって地面に転がっている無人機に接近。そして刺さりっぱなしになっていたダブルカリバーを強引に引き抜く。

 

 そしてそのまま無人機の頭をわしづかみにし、強引に空中にブンなげた。ゆっくりと上昇していく無人機をこれまた全速力で追撃。すれ違いざまにダブルカリバーの斬撃を浴びせる。

 

「まだ速く!」

 

 俺はそのまま振り返り、またすれ違いつつダブルカリバーの斬撃!

 

「もっと速く!」

 

 そしてまた振り返り、斬る、斬る、斬る、斬る!

 

「もっともっと速くだ!」

 

 斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る!!!!!!!!!ガタックは斬り始めたころよりも相当な加速が加わる。いったん手を止めてみると、無人機はよく分からないパーツをまき散らせながらもいまだ健在だった。

 

(トドメにしよう!)

 

 俺はダブルカリバーを投げ捨て、本日二度目であるフルスロットスイッチを押す。

 

『one……!two……!!three……!!!』

 

 ガタックゼクターの顎を正位置に戻す。今回に限っては顎を再び開く前に、しっかりとこう宣言した後に思いっきり開いた。

 

「ライダーキック!」

 

『rider kick!』

 

 電子音と共に、イオンエネルギーは一度ガタックの頭部を経て、本来集約すべき場所である足へと流れていく、すさまじいエネルギーを足に纏わせたまま、俺はボレーキックの要領で無人機の顔面目がけて振りぬく。

 

「ぅおらあっ!!!」

 

ガキィン!ガキィン!!ガキィン!!!

 

『clock over!』

 

 ……なんか今、原作のカブトよろしく1カメ、2カメ3カメ的な演出があったような気がするが気のせいか?まぁなんにせよ、クロックアップ中に間に合ったらしい。

 

バチバチバチ……ドォオオン!

 

 俺の背後でライダーキックをくらった無人機は爆炎と共に散る。でも今度から原作再現のポーズを取るのは良くないな、今のでトドメ刺せてなかったら背中が隙だらけなのもいいとこだ。

 

「!? 今のは……何が起きたんだ?」

 

「真がいきなり消えたと思ったら……無人機が爆発して……」

 

「加賀美さん……あなた、いったい……」

 

 そりゃ、周りから見てたら何が起きたかは分からないよな。俺はクロックアップについて簡単に説明を入れようとするが、それは叶わなかった。

 

「ぐぅっ!づぅううううう!?」

 

 突如全身に電撃が走ったかのような痛みが襲う。いったいなんだと思う暇もなく、その痛みは一瞬にして俺から思考を奪い去る。

 

「ううっ……はぁっ!があああああああああああああ!!!」

 

 何も考えている余裕はない。息をしている暇すらない。それほどに強烈な痛みが俺の体を襲っていた。……これ以上、意識を保っているのは危険だと俺の体が判断したのか。やがて俺は意識を手放した。

**********

「んっ……」

 

 目を覚ますと俺はベッドの上で寝かされていた。ここはどうやら保健室らしい。あたりを見渡すと、俺のベッドのそばに椅子を置き、本音が座っていた。

 

 長時間に渡って俺の事を見ていてくれたのか、今は眠ってしまっている。俺は声をかけようと体を起こそうとした。すると、また強烈な痛みが走り、少し声を上げてしまう。

 

「って……!」

 

 今気づいたが、俺の全身にはくまなく湿布が張られている。どうりで強烈なメンソール集がすると思った。さて、今度こそと俺はなるべく体に負担をかけないようにゆっくりと上半身だけを起こす。

 

「本音、本音……」

 

「ん~……んぅ~?かがみん~?」

 

「ああ、悪かったな本音、心配かけ……」

 

「かがみん~!」

 

 俺がセリフを言い切る前に、本音は俺に抱き着いてきた。普通だったらおいしいシーンだよね、でも俺さ今体中が痛いんだよね……つまりさ。

 

「ぎぃいいいやあああああ!?」

 

「よがったよ~!心配したんだよ~!?」

 

 本音の声は涙ぐんでいた。それで、そうやら俺の悲鳴は聞こえていないらしい。あぁ……本音の柔らかい体が密着しているのは天国だが、思いっきり抱きつかれるのは地獄だな。

 

「ほ、本音さん……いや、むしろ本音様!今すぐ離れてくれ、さもないとまた意識が飛びそうだ……!」

 

「あっ、ごめんね~……」

 

 俺の必死な訴えに、本音はしっかりと耳を傾けてくれた。申し訳なさそうな声で謝罪を述べると、ゆっくりと俺から離れる。

 

「はぁ……改めて、心配かけたな」

 

「本当だよ~、いきなり大声あげて~……。私だけじゃなくてみんな心配そうだったよ~」

 

 みんな、というのはどのくくりまでなのか。まぁ織斑をはじめとした「いつものメンバー」の事だろう。しかし、流石に悪い事をした……いきなり悲鳴あげるなんざビビるよな。

 

「で、この湿布はなんなんだ?」

 

「それ~?全身筋肉痛なんだって~」

 

「全身……まぁそうだろうな、なんせ」

 

「なんせあれだけ高速で動いていたのだからな、そうだろう?加賀美」

 

「あ~、織斑先生~」

 

 保健室に織斑先生が入ってきた。それを見た瞬間に俺は「ゲッ……」と表情が苦くなるのを隠せない。だって、絶対この人は俺を見舞いに来たわけじゃなくて、尋問しに来てるのだもの。

 

「布仏、少し席を外せ」

 

「え~……でも~……」

 

「本音、俺は大丈夫だから。また飯の時にでもゆっくり話そう」

 

 本音も織斑先生の目的が尋問であることを察してか、少しだけ渋った様子を見せる。だけど、俺の問題に本音を巻き込むわけにもいかない。俺はできるだけ和やかな表情で本音に告げた。

 

 

「うん~……わかった~、またね~かがみん~。織斑先生~さようなら~」

 

「ああ、明日も遅刻の無いように」

 

 俺は本音を安心させるべく終始笑顔をキープしていた。それはもう笑顔なんてニヒルな感じのしか浮かべたことが無いため、顔の筋肉が死滅してしまいそうだ。

 

「さて、加賀美。私がこれから何をしたいか、分かるな?」

 

「もちろん。何でも聞いてくださいよ、ちゃんと正直に話しますから」

 

「ほう?良い心がけだ」

 

 良い心がけってアンタ……織斑先生と一対一で嘘を言えるほど俺の神経は太くない。それこそ、そんな良い笑みを見せられた日には枕を高くして眠れなくなってしまいそうだ。

 

「では早速聞くが、なぜアリーナに侵入できた?」

 

「それはあの時言った事が全部真実ですよ。まぁ……話してるヒマはなかったんで、適当に返しましたけど」

 

「なに……?だとすれば……」

 

「そうでしょうね。何者かが、何らかの目的で、俺をあそこにおびき出した……あくまで仮説ですけど」

 

 ご丁寧にアリーナの遮断シールドまで俺が侵入するタイミングで完全に消失させたあたり、よほど俺をあの場に来させたかったと見える。だが、肝心の「何らかの目的」という部分が見えてこない。

 

 黒幕が誰かってのより俺としてはそっちの方が気になる。なんで俺と無人機を戦わせたかったんだ?単純に俺を消したかった……とか?う~ん……それだったらもっと直接的に来るだろうし。

 

「……織斑先生?」

 

「……ん?あぁ、済まない……質問をつづけよう」

 

 俺は考え込む織斑先生の表情が、微妙に固い事に気が付いた。なんというか、まるで何か心当たりがあるかのような感じ。話しかけると誤魔化されたので、これ以上聞きはしないことにしておこう。

 

「あの高速移動は一体なんだ?隠していたのか?」

 

「俺にも大まかな事は分かってませんよ。ガタックにいきなり「クロックアップ システム」って表記が出てきたから、一か八かで使ってみたら……まぁこのザマですわ」

 

 この返答については、言えない部分が多いからな。クロックアップに関してはもちろん知ってる。原作カブトにおける肝心要の演出、ないし設定とも言っていい。

 

 ISになったガタックに当初クロックアップは搭載されておらず、残念と思う反面でクロックアップを再現できるわけがないか、とも思ってたし。

 

「……ワンオフアビリティーか?」

 

「いや、それは無いはずです。って言うより織斑先生の方がよく分かってるでしょう?」

 

 そう、ワンオフアビリティーの発動は二次移行から。しかも、そもそもガタックは世代的にいうなれば第二世代と第三世代の中間あたりに位置する機体だ。形態移行という概念が存在するのかどうかすら怪しい。

 

「だが、あの滅茶苦茶なスピードはそうとしか説明がつかんぞ」

 

「その発言ももっともなんですよね……。俺も重々承知してますけど、証明するには材料が足りないですし」

 

 俺だって先生の言葉には大いに賛成だ。多分クロックアップはガタックのワンオフアビリティー的な位置づけなのだろう。しかし、そうすればガタックの形態移行や世代についての説明がつかなくなるし……。

 

 俺と織斑先生は二人して腕を組んで「う~ん……」と唸る事しかできなかった。だけど、いつまでこうしてたって仕方が無いと思い、口火を切る。

 

「……爺ちゃんを問い詰めてみようと思います。その結果はきちんと織斑先生にも伝えることにしますんで」

 

「そうか、そうしてくれると助かる。報告は怠るなよ」

 

 そういうと織斑先生は振り向き、歩き出す。どうやら、特に問題なく尋問を終えることができたらしい。俺が心の中で安心しきっていると、織斑先生が背中を見せながら思い出したように言う。

 

「ああ、明日は普通に登校するように。合わせて反省文を提出しろ」

 

「反省文!?なんのですか!」

 

「私は大人しくしていろと言ったぞ?立派な命令違反だ」

 

 なんてこったい。やけに今日はあっさりしてるなって思ったとたんにこれだよ!ちくしょう……でも入学したての時に「逆らうな」的なことは言ってたしなぁ……。こういう意味か、納得した。

 

「それでは、私はもう行くぞ」

 

「へ~い……」

 

 今度こそ織斑先生は保健室から出て行った。……俺もとっとと行きますか、爺ちゃんに聞きたいことがあるしな。また静かな場所を探さなくては。

 

 俺は酷い筋肉痛と格闘しながらなんとかベッドから降り、なるべく筋肉に負担をかけないような歩き方を心がける。結果、ものすごく面白い歩き方になっているのは言うまでもない。

**********

 この筋肉痛と戦いながら静かな場所を探して歩き回るのは無理だと判断した俺は、この間も爺ちゃんと電話をした中庭に落ち着いた。携帯を取出し爺ちゃんにコールっと、なかなかこの動作に手馴れてきたもんだ。

 

『もしもし、真か?今回は、どうしたのかね?』

 

「爺ちゃん。始めに言っとくけど、嘘とか隠すのはナシだ。俺が聞くことに正直に答えてくれ」

 

『それは構わないが……何があった?』

 

「ガタックがワンオフアビリティーらしき能力を使えるようになった」

 

 俺の一言に爺ちゃんは感心したような声色で「ほぅ」と呟く、表情が見れないから分からないが、な~んかやっぱ隠してるように聞こえてしまう。

 

「何か心当たりはないのか?」

 

『いや、無い。これでも一応は驚いてるつもりなんだが、伝わらないか?』

 

 発言がいちいちわざとらしいんだよ……!疑ってくださいと言っているような爺ちゃんの態度に少しイラッと来た俺は、電話口に大きな声を叩きつける。

 

「いい加減にしろよ爺ちゃん!これがどれだけ異常な事かはアンタだって分かってるはずだろ!?頼むから、知ってる情報を俺にくれよ……」

 

『真……私は本当に何も知らない。私の態度が気に入らなかったのなら、謝ろう。ただ、今は私の言葉を信じてもらえないだろうか』

 

 信じてくれという爺ちゃんの言葉が、酷く俺の胸に突き刺さるのを感じた。……だけれどやはりこの人は何か隠している。それは分かる……分かるが……。

 

「わかっ……た……信じる……。大声出して、悪い……」

 

『いや、構わない。非はこちらにあるのだからな』

 

 肉親である爺ちゃん本人からの「信じてくれ」という言葉を、俺自身これ以上疑いたくなかった。大人しく引き下がるが、爺ちゃんは俺がまだ疑っていることくらいはお見通しだろう。

 

『……一度しっかりと調べるべきだろうな。真、次の休みは開けておきなさい』

 

「ZECT本社でなく、ガタックを開発した会社に招待するって事か?」

 

『そういう事だ。なにぶんグループ会社で規模が大きい、ひと所にまとめるのは無理があるのでな。迎えをそちらによこすから、後はその人に任せておけばいい』

 

「了解した。それじゃ」

 

『あぁ、また今度』

 

 電話を切った後は盛大に息を吐いた。なんでかって、分かんないことが増えてしまったからだろう。なぜ爺ちゃんはガタックに関して言葉を濁す必要があるのか……。

 

 ……ダメだ、きっと爺ちゃんに思惑があるとすれば、俺の考えは到底及ばない次元の話なのだろう。それに、今はちゃんと爺ちゃんの事を信じよう。もし爺ちゃんが良からぬ事をたくらんでいるのだったら……。

 

「正面から叩き潰す……」

 

 それが俺の唯一できる事だろう。俺のためにも爺ちゃんのためにも……。ま、爺ちゃんが余計な事さえしなかったら俺はこんなに気負わなくていい訳だけど……。

 

 んじゃ、話も済んだし飯にしますかね。あっと……本音に連絡入れとかないと、入れ違いになったら困る。俺は仕舞いかけた携帯電話を再び取出し、手早くメールを打つのであった。

**********

「と、遠い……」

 

 歩き始めて数分たつが、俺はロクな距離を進めていなかった。筋肉痛からか、まともな歩きが出来ないせいで食堂までの道のりが果てしなく感じられる。

 

 はぁ……クソッ、何だってんだ。今日だけで問題が山積みだぞ、ガタックの件もあるし反省文の件もあるし、俺は何か悪い事をしただろうか?命令違反とか……大目に見てくれてもいいだろうに。

 

ドン!

 

 なんて考えていると曲がり角で誰かとぶつかってしまった。叫んでしまいそうなのを歯を食いしばってなんとか我慢し、ぶつかった女子に目を向ける。

 

 どうやら俺とぶつかった拍子に転んでしまったようだ。見ると、あたりにはDVDらしきものが散乱している。なんでDVD?とは思ったが、これは完全に俺が悪い。謝罪を入れつつ急いで拾わなくては。

 

「ごめんな、良く前を見てなかった。手伝うぜ」

 

「…………」

 

 女子はこちらに目を合わすこともせず、黙々とDVDを拾い集める。……な~んか、見るからに「大人しいです」って感じの顔だな。特徴を上げるとすれば、水色の髪に紅い瞳、それに病的なまでに白い肌って言ったところか、外見からでは日本人か否かは判断できない。

 

「つーかこれ『突撃戦士 チャージマン』か懐かし……」

 

 説明しとくと、この世界には俺が知ってる既存の「戦隊ヒーロー」や「仮面ライダー」は存在しなかった。もちろん特撮ヒーローと言った概念自体が存在しないわけではない。

 

 仮面ライダーっぽいのもあるし、ウルトラマンっぽいのもあるし、メタルヒーローっぽいのだって。それで「突撃戦士 チャージマン」ってのが戦隊ヒーローっぽいものにあたる。

 

 ちょうど俺が小学生のころのヒーローだろうか?もちろん俺は見ていたし、今でも大好きなの作品の一つである。名前の通り突撃あるのみのヒーローで、無駄に暑苦しいストーリーに燃えた記憶がよみがえってくる。

 

「なぁ、好きなのか?チャージマン」

 

「っ!?」

 

 IS学園にも話の分かる奴がいたのかも、そう思うとつい嬉しくてこんなことをを聞いてしまった。女子は俺が差し出したチャージマンのDVDを乱暴に奪い取ると、何も言わずに走り去ってしまった。

 

 やってしまったか……?もしかしてちょっと馬鹿にした言い方に聞こえてしまったかな?ただ逃げなくったっていいだろ……純粋に話がしたかっただけに少しショックだ。

 

 単純に俺の顔が怖かったとかじゃ無ければ別に……待てよ、でもあの時はしっかりと顔合わせてたし、もしかすると……。ありうるな、篠ノ之ですら怖がってた節があるもんな。

 

 ……一度俺の顔に関して、本音をはじめとした面子に聞いてみることにしよう。それなら食堂に向かうのは調度いいな、少し急ぎつつ向かう事にしますか。

**********

 時間は少し遡り、真が食堂へ向かい始める少し前。高層ビルの最上階から沈んでいく夕日を眺めると言う絶好の景色の中、夕日をバックに難しい表情を浮かべる人物が一人。ZECT会長の加賀美 陸その人である。

 

「…………」

 

「会長、少しよろしいでしょうか」

 

「あぁ、入りたまえ」

 

 そんな陸のもとに来客が一人。ビシッときまったスーツと眼鏡がよく似合う、いかにも「仕事のできる男」と言った風体の人物。名を「三島 正人」という。

 

 もっぱら会長である陸の側近的な立ち位置であり、陸の信頼を置ける人物の一人でもある。陸は三島に目で何の用事だと訴えるが、なかなか口を開こうとはしない。

 

「……ガタックの件で少しお話が」

 

「それについては、本人から確認済みだ」

 

 三島が言い辛かったのは、ガタックの進化に関する事についてだった。既に耳に入っていたことに驚きつつも、三島は更に言い辛そうに言葉をつづけた。

 

「……想定よりもかなり早いですが」

 

「そうだな……。流石に想定外ではあったが、問題は無いだろう」

 

 陸の淡々とした返事に、三島はついに堪えられなくなった。フーッと大きくため息をついた後、本来聞きたかったことを思いっ切って口にする。

 

「本当に……よろしいのですか?」

 

「何がかね?」

 

「彼に、お孫様に本当の事を話さなくても」

 

「……今は、混乱させるだけだろう。それに、知らない方が幸せということもある。もっとも、私が隠し事をしているのは疑っているに違いないがな」

 

「ですが……」

 

「三島、目の前に蛹があるとしよう。そこから出てくるのは美しい蝶かね?それとも醜い蛾かね?」

 

 三島は陸の問いに「またこれか」と内心思う。いわゆる言葉遊びだが、一番この類の質問をされるのは、陸の傍に居る事の多い三島だろう。

 

 正直な話、三島は陸の言葉遊びにはうんざりしていた。どうにも質問の答えは濁っていて、自分の思った事を言っても結局正解すらキチンと提示されない。これを聞かされると、三島は腹の底がモヤッとした感覚を覚える。

 

「さぁ、私には図りかねますが」

 

「そう……出てくるのがどちらかなど誰にもわからない。真も同じだ、彼がどう生きるかは彼自身しかわからない事であり、それが正しい生き方だろう……」

 

「……もし、会長に敵対する事になっても……ですか?」

 

「あぁ、真がそう選ぶのなら、甘んじて受け入れよう。それに、私は覚悟なんてものはとっくにできている。孫に運命を背負わせたその日から……な」

 

 回転椅子をくるりと反転させ、さっきまで背中を夕日に向けていた陸は目を細めながら夕日を眺める。言葉を紡ぐ陸の見えない表情を察すると、三島にはこれ以上の口出しはできなかった。

 

「だがもし……私の身に何かあったその時は……。孫を……息子を……ZECTを頼んだぞ、三島」

 

「フッ……御冗談を、退くおつもりはまだ無いのでしょう?」

 

「ハッハッハッ……。まぁな、私が守ると決めたのだからな、それくらいはやり遂げなくてはZECT会長の名が廃るというものだ」

 

 陸が笑うのにつられて三島も静かに笑った。しばらくの沈黙の後、また回転椅子を反転させ、三島と顔を合わす陸。その表情はキリッと引き締まったものであった。

 

「しばらくはガタックゼクターから送られてくる情報を見逃さないように。それと、「亡霊」対策はどの程度進んでいるかね?」

 

「ええ、そちらも滞りなく」

 

「よろしい、そのまま引き続き頼んだぞ。では、今日は下がりたまえ」

 

「了解しました。では、失礼いたします」

 

 丁寧な会釈ののち、三島は会長室から退出した。部屋に残された陸も、気持ちを改めたかのように手元に置かれた資料の処理に取り掛かる。

 

 真の知らない場所で、運命の歯車が確かに噛み合い回り始めていた。ガタックゼクターの進化は偶然か、必然か。そして、それが何を意味するのか。それは、やはり誰にもわからない。ただわかることがあるとすれば、周り出した歯車は、もう決して誰にも止めることができないという事だけだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




真、クロックアップを習得(リスク付) 一歩前進?

そんな訳でついに登場クロックアップです。私の小説では相変わらず制限をかけさせてもらってますけどね。

そしてチラッと登場した彼女、あえて名前は伏せますが……ここから登場が増えると思います。待ってた方は大変お待たせしました。

「突撃戦士 チャージマン」に関しては作者が5秒で名前だけ思いついたヒーローなので特に気にしないでください。

そしてそして!意味ありげな会話をする会長と三島さん。この会話の伏線を回収するのに一体どのくらいかかるのかなぁ……?

内容を詰め込み過ぎたせいでここでも書くことが多くなってしまいました。この辺で退散する事に致します。

それでは皆さん、また次回でお会いしましょう!
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