戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

今回のリクエストはですね、新と一夏達の絡みが見てみたい……との事でした。ですが、う~ん……ちょっと、ズレちゃったかなって感じです。

と言いますと、何だか……私の中であった真の裏設定暴露回みたいな感じになっちゃいました。それを、新に話させる……みたいな?

ま、まぁ……絶対に親しか知りえない情報ですからセーフですよね!あっ、ですが……真のイメージを崩したくないと言う方は、少し気を付けて頂いた方が良いかもです。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


番外なお話・新とIS学園

「あれ?真……携帯が鳴ってるぞ」

 

「おっ、本当だ……サンキュー。って……親父?」

 

 昼食を済ませた真と一夏の2人は、昼休みを雑談しながら過ごしていた。すると廊下を歩いている最中に、真の携帯が鳴っている事に一夏が気付いた。

 

 真は一夏に礼を言うと、いったん足を止めてポケットから携帯を取り出した。するとディスプレイに表示されているのは、親父の2文字だ。真は、新からこんな時間に電話と言う時点で嫌な予感しかしない。

 

「……もしもし?」

 

『おお良かった……通じたか。もしもし、真』

 

「んな時間に何の用だよ」

 

『いや、それがさ……ちょっと迷っちゃってな。案内は要らないって言ったのは俺だけど』

 

 真は新の言葉を聞いて、チクタクと脳内で時計の様な音が鳴る。『迷う』『案内』……?この2つの単語から連想するに、新は今……IS学園に居るのでは?

 

「おい……なんでさ?」

 

『何がだ?……っと……良いや、調度女の子が通りかかったから……あの子達に道を聞くよ』

 

「ちょっ……!?馬鹿!ここで男が生徒に話しかけるのは自殺行為……」

 

ツーツー……

 

 耳に入るのは、既に通話が終了した証の音だった。真は乱暴に携帯をポケットに仕舞うと、思わず頭を抱えてしまう。新がIS学園に居るのは、ほぼ確定……。

 

 その上で新は、どうやら学園の生徒に声をかけたらしい。それでなくとも新はナイスなおじ様に部類される。さらに言えば、真の実の父……。そう考えてもみると、騒ぎになるのは請け合いである。

 

「なんだよ、何かあったのか?」

 

「大ありだ!え~っと、迷子になりそうっつったら……あの辺りか!」

 

「あっ……おい、何処に行くんだよ!」

 

 急に全力ダッシュを始めた真を、一夏は慌てて追いかけた。悪いとは思っているが、説明している暇が無いのだ。IS学園で迷子になるとするならば、駅から校舎までの道なりはまず除外される。

 

 駅から校舎までは、ほぼ一本道だしなにぶん校舎は目立つ。となれば、既に新は校舎内……階段は昇らないだろうから、最下層を捜せば良いと真は読んだ。

 

「はっ……!はっ……!……ん?」

 

「あだっ!?きゅ、急に止まるなよ……!」

 

「お、おう……悪い。でももうノンストップになっから安心しろ」

 

「ちょっ……走ったり止まったり……今日の真は忙しいな」

 

 バタバタと会談を駆け降りてゆくと、窓から女子達の人だかりが中庭あたりに見えた。それを止まって見るものだから、真の広い背中に一夏の顔面激突する。

 

 あそこに新が居ると察した真は、再び猛ダッシュで移動を始めた。グングンと小さくなる真の背中を、一夏は鼻を押さえながら追いかける。実のところ……律儀に追いかける意味は無かったりするのだが。

 

「ふ~っ……!あぁ……クソが!マジで……」

 

「ん?ああ、真!」

 

「何で居るんだよ……クソ親父いいいい!」

 

「グハッ!?」

 

 中庭へと辿り着いた真は、少し休憩してから再ダッシュ。そのタイミングで、新も真に気が付いた。取り囲んでいる女生徒たちをかき分けつつ真へと近づくと、綺麗なドロップキックをお見舞いされる。

 

 自ら向かって行った威力が加算されて、とんでもない威力だ。新は地面をスライドしながら吹き飛ぶと、数メートル進んでようやく勢いが収まった。

 

「こらぁっ!いきなり何だよ!?」

 

「何だよってなんだよ!こっちの方が何だよなんだよ!」

 

「いや、その言い方ややこしって……いだだだだ!ギブギブギブ!」

 

 多少は混乱しているのか、真にしては遠まわしなうえにややこしい言い方で新に怒鳴りつけた。そのまま倒れている新に対して、スピニングトゥホールドという脚を攻める関節技を仕掛ける。

 

 この技は相手の脚の片方を自分の脚へと巻きつけ、曲がらない方向へと身体ごと回転しながら捻あげる技だ。新は苦悶の表情を浮かべつつ、地面をバンバンと叩いてタップする。

 

「解いて欲しけりゃ、何でここに居るかを簡潔に述べよ!」

 

「何でって……講演会だよ講演会!警察官として、少し話をしてくれって織斑先生に頼まれたんだ!」

 

「……一夏ぁ!昼からの授業ってなんだっけ!?」

 

「あ~っと、確か講堂に全学年集合……だったと思うぞ?」

 

 真的には、全く聞いていない話である。一夏も講演会がある……くらいの認識であって、まさか真の父親が現れるとは思っていなかっただろう。

 

「どいつもこいつも……その話を息子である俺に通せやああああ!」

 

「その憤りを俺にぶつけるな!あ痛たたたた!このっ……もう許さんぞ!」

 

「あ、あの~……お2人さん?」

 

 不満をぶつける様に叫んで、真は新の片脚を更に強く捻る。無理もない……確かに真の言う通り、身内なのにスルーされる事が多々あった。

 

 真は……俺は軽んじられてるのか!?と、そんな事を思っているのだ。しかし……新にとっては傍迷惑な話である。新は気合でスピニングトゥホールドを外すと、立ち上がって真と組み合った状態になった。

 

「一夏、コレは何の騒ぎだ……?」

 

「よう、箒……それに皆も。いや、何か……あの人が真の親父さんらしいんだけど……」

 

「うん、僕らもその話を聞いて駆け付けたんだ。ぜひ1目見ようって」

 

「ですが、思ったよりも……似ていませんわね」

 

 既に多くの女子はハケて、代わりに1年専用機持ちのメンバーが現れた。皆はギャーギャー騒ぎながらプロレスを繰り広げる2人を見て、頷いてその言葉に同意する。

 

「しかし……あんな生き生きした戦友を見るのは初めてだな」

 

「真は……おじ様が……大好きだから……」

 

「気のせい?アタシ、全然そうは見えないけど……」

 

「いやいや、鈴……。真はきっと、アレが一番真らしいんだよ」

 

 ケンカするほど仲がいいと言うが、加賀美家はまさにソレを体現していると言えよう。互いを信頼しているからこそ、こうして無遠慮にはしゃげるのだ。

 

 この中で唯一の同性である一夏は、なんとなく真のど根性の秘訣が解った様な気がした。そうして決着が着くまで観戦しようと言う事になるが、その瞬間はすぐに訪れる事に。

 

「……っし、今だ!最終奥義……サンズ・リバー・スープレックス!」

 

「うわああああ!なんかすっげーデジャヴ!?…………グヘッ……!?」

 

「うぉっしゃぁ!久しぶりに勝てたぞおおおおっ!」

 

 真は覚えてはいないが、臨死体験の際に光葉から喰らった技と同様である。新が言うには加賀美家の最終奥義らしいので、もちろん真もマスターしてはいるが……。

 

 やはり頭からモロに叩きつけられれば、気絶は必至だ。新は腰のホールドとブリッジを解除すると、天高々に拳を突き上げて、勝利の雄叫びを上げる……真の友人が見ているのも忘れて。

 

「おじ様……」

 

「ん?おお、簪ちゃん!久しぶりだな、元気でやってるか?」

 

「はい……私は……。それよりも……」

 

「……あっ、もしかして……真がいつも話してくれる皆かな」

 

 新はスポットライトが当てられている気分だったが、簪に話しかけられて一気に現実へと引き戻される。この

人は勿論の事だが面識がある。とは言え、数えられるほどだが。

 

 そして簪の少し後ろで控えている一夏達に、新の視線が移った。新が何気に言ったいつも話してくれる……と言う部分が、皆は地味に嬉しかったりする。

 

 新は一夏達に興味があり、逆もまた然りであった。そうなると、新の講演会の準備ギリギリまでお互いの事について話す事となった。新達は、輪の様になって座る。

 

「いや~……申し訳ない。つい家のノリでさ、ハハハ!」

 

「ハ、ハハハって……。その……いつもなんですか?」

 

「ああ、基本的に顔を合わせたらこうだな」

 

「そ、そうですか……」

 

 朗らかに言う新に対して、全員がどんな家だよと疑問を抱えた。そうして、未だに気絶した状態で簪に膝枕されている真を見たシャルロットは、苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 別に真が中学までは、そんなに頻繁ではなかったと補足は入れる。真がIS学園に通うのに伴って、顔を合わせる機会が減った。それと反比例して、プロレスの回数は増えているらしい。

 

「まぁ……女の子には解からないかも知れないけど、アレは俺と真のコミュニケーションみたいなものなんだよ」

 

「真のお父さんの言いたい事……俺はなんとなく解ります」

 

「おっ、そうか?そうだな、一夏くんは男だもんな。ところでだけど、俺の事は小父さんとかで構わないから」

 

 微笑を浮かべながらそう言う一夏に、新はとても嬉しそうな顔で返した。やはり女尊男卑の世の中で、話の通じる男が居るのは年齢問わずに嬉しいのだろう。

 

 すると新が思い出したかの様に、自分の事は普通に小父さんと呼んで良いと告げる。新は……完全に言い逃れのできないオジサンだ。真に言われたら噛み付くのだろうが、新は基本的に優しい性格だし……遠慮されるのは嫌なのだろう。

 

「おじ殿、よろしいでしょうか?戦友は……おじ殿の知らない技を使った事は?」

 

「戦友……?って事は、君がラウラちゃんか。どうして、そんな事を聞くんだ?」

 

「僭越ながら、戦友の指導をさせて頂いております。先ほどを見る限りは、使っていなかったので……」

 

「う~ん……多分だけど、純粋なプロレスをやりたいんだと思う」

 

 ラウラの質問には、せっかく教えた技術を役立てれば良いのに……という意味を含んでいた。それに対する新の変容は、大正解である。流石は、真の父親といったところか。

 

 真からすれば、新とのプロレスに……プロレス技以外を用いるのは無粋なのである。そこまで大層なものでは無いのだが、真は新とのプロレスを神聖なものだと認識している。

 

「なるほど、それは出過ぎたマネを」

 

「そんな畏まらなくても……。ま、結局はたかだか遊びだって事さ」

 

「おじ様は、確か……警察官なのですよね?」

 

「真も小父さんも……本気を出したら殺伐としてしまうだろうからな」

 

 新は柔よく剛を制す術を知っている。……が、これからも警察官が取得すべき技術を用いる事は無いだろう。それを解っているからこそ、真もラウラから習った組技を使わないのだ。

 

 仮に2人がその技術を使い始めたとすれば、きっとあまりの光景に見知らぬ人でも止めに入るだろう。あくまで節度が大事なのだ。要するに、2人間の暗黙の了解という奴だ。

 

「それはそうと、小父さん。アタシも聞かせて欲しい事があるんですけど」

 

「真関連なら、何でも聞いてくれよ」

 

「真に、何か苦手な物とか事って無いんですか?」

 

「むっ……それは確かに。戦友は、弱味を見せんからな」

 

 鈴の言葉に、周りの皆は確かにと同意した。座学優秀、運動神経抜群……だが、少々ヘタレでツンデレ。皆が真に抱くイメージは、だいたいこんな感じだ。

 

 そうなると、極端に苦手な物とか事とか……鈴はそれを知りたかった。なぜなら……真にちょっとした仕返しをしたかったからだ。このメンバーで言えば、真にイジられるのはダントツで鈴だ。そのくらいの事は、許されると思う。

 

「う~ん……どうだろうなぁ。むしろ得意な人はいないと思うけど、アレは少し過敏だな」

 

「アレ?」

 

「そう、アレだよ。いわゆる……黒光りするG」

 

「それって、ゴキブ……」

 

「わーっ!?その名で呼んじゃダメだ!」

 

 黒く光っていて、カサカサ移動する……いわゆるGと呼ばれる存在……ゴキブリ。真はどうやら、ゴキブリが苦手らしい。新が固有名詞を言わなかったのには、特別な理由がある。

 

「本当……その単語にだけは気をつけた方が良い」

 

「な、何かあるのでしょうか?」

 

「あぁ……。どうやら本気で嫌い過ぎてな、寝てても耳元で出たって叫ぶと……飛び起きるんだよ」

 

「にわかには、信じがたい話ですが……」

 

 箒の呟きも、もっともだ。あの男らしい真が、ゴキブリごときでそんな……。ぶっちゃけで言えば、箒は女々しく感じられた。他の皆も、なかなか想像がつかない。

 

 新曰く……本当に凄まじい事になるそうだ。ドタバタと跳ね回り、逃げ惑い……恐怖の声を上げるのだと言う。そんな物を見てしまえば、完全に真のイメージが崩壊するに違いない。

 

「まぁ……俺が居ない時に試してみると良いさ」

 

「居たら……絶対に第2ラウンドに……」

 

「ハハハ……簪ちゃんの言う通り、終わりが見えなくなっちゃうからな」

 

「え~っと、他に何か……あります?」

 

 取り敢えず試してみるとして、鈴は時間ギリギリまで真の情報を引き出すつもりだった。鈴の言葉に、新は昔を思い出す様にう~んと唸る。すると、何か閃いた仕草を見せた。

 

 新はすぐに話し始めようとしたが、思い出し笑いなのかケタケタと笑う。真のエピソードでそうなるのが想像がつかない。新は落ち着いたのか、ようやく話し始めた。

 

「いやぁ……苦手な事って言うか微妙だけどさ、真の奴……異様に動物に好かれないんだよ」

 

「動物……。例えば、犬とか猫とかですか?」

 

「そうそう。真はむしろ好きな方なんだけどな、昔こんな事があって……」

**********

「おっ、真……」

 

 真が小学生の頃……パトロール中の新が、学校帰りの真を見つけた。新は少し声をかけようとしたのだが、なにやら真の挙動が不審である事に気がつく。

 

 キョロキョロと周囲を見渡した真は、家への順路から外れて裏路地へと入っていった。これには新は、何か危ない遊びでもしているのではないかと慌てて真を追走する。

 

 真はとてもすばしっこく、器用に壁を越えたりしながらどんどん奥へと進んで行く。そしてやがて、行き止まりの様な場所へと辿り着いた。そこで新が見た光景は……。

 

「よぅし……今日こそは、触らせてもらうからな」

 

「ナ~……」

 

(ね、猫……?)

 

 こそこそ隠れながら見ていると、真は猫へと話しかける。どうやら、その猫はここら辺りを縄張りにしているらしい。真はその猫に対して、あるものを取り出す。

 

 真のランドセルから出て来たのは、小さなナイロン袋に入った小魚だ。それは新が酒のつまみにしている物で、こっそりと真がくすねたのだろう。

 

「そのまま動くなよ……」

 

「フシャーッ!」

 

「どわっ!?だから何で!?もう軽く一週間弱だぞ……。触るくらい良いじゃん!」

 

「ニャーッ!」

 

 真は、猫の足元に小魚を投げた。すると猫は、夢中でポリポリと小魚を頬ばる。その隙と言わんばかりに、真は猫へとソロリソロリ……と、手を伸ばす。

 

 しかしその手が触れる寸前に、猫は強力なパンチを真へと見舞う。ギリギリで避けはしたが、真の気分は良いものではない。猫に文句を言うと、向こうも『なんだとこんニャろう!』みたいな様子で鳴く。

 

「クソぅ……!誰のおかげでそれが食えると思って……」

 

「ナ゛ーッ!」

 

「ぎゃああああ!嘘……嘘です!俺が悪かったです!」

 

 真が更に文句を続けると、猫は真へと飛びかかった。その瞳には、どこか殺意が込められていて……真は思わず敬語で猫に謝る。しばらく逃げ回ると、猫は勘弁してくれた。

 

 すると猫は、何事も無かったかの様に残った小魚を咀嚼していく。これを見た真は、いい加減に諦めたらしく、ため息混じりにランドセルを背負った。

 

「チクショー……なんでこうも、動物に嫌われるか……な……?」

 

「クッ、クククク……!」

 

「うわああああ!?いつから居たんだ……クソ親父!まさか、見たか……今の見てたか!?」

 

「フッ……ハハハハ!ああ、ばっちりな。お前も……意外に可愛い所があるんだな!」

 

 踵を返した真の目に入ったのは、声を殺して笑っている自分の父親だった。見ていた事を肯定した新は、大声で笑いながら真の頭をガシガシと撫でる。

 

 よほど見られたくない部分だったのか、真は耳まで真っ赤にしてむむむと唸る。その顔は言い訳を考えていると新は見抜くが、もはや何を言っても遅いのだ。

 

「今のはっ、別に……」

 

「真、今度の休み……父さんと動物園でも行くか?」

 

「あーっ!?今ぜってぇバカにしたろ!」

 

「ハハハ!それじゃ、父さんは仕事があるから……もう行くな!」

 

「このっ……逃げんなクソ親父ーっ!」

**********

「……ってな事があってな。それ思いながら、今の真を見てみると良いよ……面白いから」

 

「……ブッ!ハッ……ハハハハハハ!」

 

 新たにそう言われて、一同は簪の膝の上にある真の顔を眺める。するとしばらくの間が開いて、始めに一夏が耐えられなくなった。一度そうなってしまうと笑いは止まらず、抱腹絶倒な様子だ。

 

 そこから文字通り爆笑の渦が広がり、新を含めた全員が笑い声を上げた。これは良い事を聞いたと、鈴は笑いながら新たに向けてサムズアップして見せる。

 

「ん……?おっと、そろそろ時間だな。いや~……皆と話せて、本当に良かったよ」

 

「此方こそ、小父さんと話せて良かったです」

 

「真の弱点も聞けましたし!」

 

「ハハハ……。まぁ……なんて言うかさ、知っての通り……コイツは素直じゃない。でも……コイツが皆に感謝してるのは、俺が良く知ってる。だから……皆さえ良ければ、これからも仲良くしてやってくれ」

 

 新は父として、心から一夏達の顔を見れた事を良かったと感じていた。一夏達には、感謝してもしきれないのだから。その想いが抑えられずに、新は気付けば皆に向かって頭を下げていた。

 

 大人にこんな態度を取られると、学生と言うのは困るものだ。いえいえこちらこそと、皆も新に頭を下げる。頭を上げた新は、この中の1人に道案内を頼みたいと言う。それはすぐさま簪が名乗り出た。

 

「それじゃ、また会おうな。ああ……それと、アレを試すんなら一応だけど気を付けてくれ」

 

「はい。講演会……頑張って下さい」

 

「おじ様……こっちです……」

 

「ああ、悪いな簪ちゃん」

 

 目的地へと向かう新と簪を見送ると、残った面子は未だ気絶から復帰しない真を見た。そして、皆で顔を見合わせる。そのまま円陣を組むと、作戦会議が始まった。

 

「……で、どうする?」

 

「決まってんでしょ、試そうじゃないの!」

 

「だが……小父さんが言うには、何やらリスクを伴うのでは?」

 

「……って言うか、もし本当だとしてだよ?真……絶対に怒るよね」

 

 シャルロットの言葉は、もっともだった。寝ていても飛び起きるほどに苦手であると、実の父親である新が言ったのだ。嘘だと言う事は、まず考えられない。

 

 そうした場合……真が激しく激昂するのは目に見えていた。しかし皆の気持ちとしては、真の情けない姿も見てみたい……というのもある。そう……あるにはあるのだが……。

 

「わ、わたくし……考えただけでも恐ろしいですわ……」

 

「……よしっ、もしもの事があれば……私が戦友を抑えよう」

 

「だったら、耳元で例のワードを言うのは俺だな。皆は、離れていてくれ」

 

「……ああ、ぜひそうさせてもらおう」

 

 この中で素手という条件で最強なのは、ラウラだという事は周知の事実だ。危険な役割を買って出たラウラに、一夏は更に危険な役割を受け持った。

 

 そうして箒、セシリア、鈴、シャルロットは、いつでも逃げられる位置に。一夏は真の頭のすぐ傍で、胴体付近へはラウラがスタンバイした。そして全員の位置が良い事を確認すると、一夏は思い切り息を吸い込む。

 

「真ーっ!ゴキブリが出だぞ!」

 

「何ぃぃぃぃいいいい!?どこどこどこどこ!?何処だ……奴は何処だああああ!うおおおお!俺に近づくんじゃねええええっ!…………アレ?」

 

「マ……マジだ……。ダ、ダメだ……笑いが、堪えられない……!」

 

「ま、真の声が……凄く裏返って……フフフフ……!」

 

 さっきまで気絶していたはずなのに、真は絶叫しながらガバッと飛び起きた。そしてそのまま前方へ前回り受け身で飛ぶと、キュッ!と振り向く。それにはとどまらずに、ゴロンゴロンと後転を繰り返して起きた位置から距離を置いた。

 

 しかし……何やら様子がおかしい事に気が付く。……と、言うよりは……自分が気絶した状況を思い出したのであろう。そしてこの……友人達が自分を笑っているこの状況……。その瞬間に、真の中の何かか切れた。

 

「み~た~な~……?俺の最も見られたくねぇ姿を……見たなああああ!」

 

「ヤ、ヤバッ……!全員……逃げるわよ!」

 

「うむ!」

 

「うむ……じゃありませんわ!話が違うではありませんか!?」

 

「いや……済まない。予想以上に戦友が、その……こっ、怖くてな!」

 

 鈴の撤収命令と共に、4人の横をラウラが通り過ぎて行った。抑えると言った者が、いの一番に逃げ出してしまったのだ。その時点で、作戦は破綻したも同然な訳で……。

 

「待てやああああ!封印されし禁忌の奥義……デス・アトミック・ヘルダイブの餌食にしてやらああああ!」

 

「な、名前からしてなんか危ない雰囲気が……ってのわああああ!?」

 

「わーっ!?一夏が捕まっちゃったよ!?」

 

「ちょっ、待て待て!あの技……本当に殺す気の奴ではないか!?」

 

「と、止まってはいけませんわ!今の真さんは、きっと容赦はしてくれません!」

 

 どうやら真の必殺技の中には、危険極まりないためか自ら封印した技があるようだ。ちなみにデス・アトミック・ヘルダイブに関しては……文字にするのもはばかられるので割愛しておこう。

 

 逃げ遅れた……と言うか、怒りの臨界点を超えた真のとんでもない身体能力のせいで……一夏は瞬時に捕まった。技の全貌は明らかではないが、初動の時点で箒には『ヤバイ奴』という印象しか受けない。

 

 だが……この場合はセシリアの言葉が正しい。真は生身で女性を傷つける事はしないだろうが、今の状態は例外である。箒は悔しいながらも、デス・アトミック・ヘルダイブの犠牲になる一夏に……謝辞を述べた。

 

「くっ……スマン、一夏!」

 

「ぎゃああああ!お助けええええ!」

 

「デス・アトミック……ヘルダアアアアイブッ!!!!」

 

ズドオオオオン!

 

 凄まじい音が、IS学園内に鳴り響いた。その音は移動していた新にもしっかりと届く……。簪に連れられながらも、やっぱり教えるんじゃ無かったと後悔した表情を浮かべた。

 

 そしてその後……真が千冬に大目玉を喰らったのは、言うまでも無いだろう。それも全ては親父のせいだと、真は新の顔を脳内へと思い浮かべる。

 

 それと……今回あった出来事は、真と簪以外の中で……無かった事にする方針で合致した。ちなみにデス・アトミック・ヘルダイブを受けた一夏は、当時の事を聞こうとすると……震えが止まらなくなってしまったとか……。

 

 

 




真、大暴走の巻

そんな訳でして、黒光りするGがお嫌いな真でした。動物好きだけど好かれないってのは、若干だけど私の体験談も入ってますね。

近所に気の良い小父さんが飼ってた犬が居る訳わけですよ。その犬……何故だか私にだけ牙を剥く訳ですよ。試しに撫でようとした訳ですよ。噛まれる訳ですよ……。

トッ、トラウマな訳ですよ……ううっ……。まぁ……そこらは良い事にしておきましょう。あっ、そうそう……デス・アトミック・ヘルダイブですが……。

特にコレと言って、元ネタがある訳ではございません。5秒で技名だけ考えたので、どんな恐ろしい技かは皆さんの想像にお任せします。

それでは皆さん、次回もよろしくお願いします。
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