戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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中途半端で終わってしまった前回の続きです。

戦闘らしい戦闘はあまりしていませんが、まぁ真も疲労してますから……そもそもまともな戦闘になりませんよね。……と言い訳をしてみる。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします


VS織斑 千冬(偽)ですが何か?

 織斑の表情は確認するまでも無く、憤りに支配されている事が窺える。もっとハッキリ言えば、シュバルツェア・レーゲンが変形して出来上がったISをまるで親の仇のような目で見ている。

 

 普段の織斑からは全く想像のつかない表情に、情けない話だが俺は少しばかり気圧されていた。これがギャップという奴か?いつもが能天気だから、本気で起こったときの振り幅が大きいと……。

 

「雪片……!」

 

「あ?なんだって?」

 

 これまた今にも殺してやろうかと言わんばかりの声色で、織斑は小さくだが確かに「雪片」と呟いた。……言われてみれば、あのISが握ってる刀は雪片に似ているが……白式の雪片とは形状が違う。

 

(いや、待て……あのISの形状といい雪片といい……どこかで見たことが……)

 

 そんな事を考えていると、ついに黒いISは動き出した……という表現は生温いのだろう。気が付いた時には既に織斑の懐……俺は思わず声を上げた。

 

「織斑!」

 

「ぐうっ!」

 

 織斑は何とか雪片を構え初段を防ぐが、それはあくまで体勢を崩すためのモノ。本命は一刀両断、その表現がふさわしい縦一閃の一撃。織斑は防御は不可と判断したのか、後方に白式を動かし回避……。

 

 どうにかこうにか直撃だけは避けたが、少し刃が触れたらしく左腕から血が流れていた。ダメだ……今すぐ織斑は下がった方が良い。

 

「おい、織斑。お前は今すぐ……」

 

「それがどうしたぁぁぁぁ!」

 

「さっきから人の話を聞かんか!」

 

「げふぅ!?」

 

 珍しく心配してやったらこれだよ。人の忠告を無視して黒いISに切りかかろうとした織斑を追いかけ肩を掴み振り向かせながら、その顔面を思い切り殴った。

 

「何するんだ真!邪魔するならお前を……ブフッ!いや、ちょっとま……ガッ!まこっ……話を……ブッ!」

 

 とりあえず一発では冷静にならないだろうと思って、織斑が何を言おうとしばらく殴り続ける。すると、そのうち秘匿通信で「もう勘弁してください」と言ってきた。それを聞いて俺はようやくそれで殴る手を止める。

 

「目ぇ覚めたかよ?」

 

「いや、むしろ気絶しそうだ……」

 

「そうか」

 

「今のを「そうか」の一言で流せる真はすげぇよ……本当」

 

 会話をすることで様子を窺ってみると、どうやら織斑は冷静な状態に戻ったらしい。いつもと同じで俺の言葉に項垂れている。はぁ……ようやく話が進みそうだ。

 

「で、あれはなんなんだ?」

 

「あれは……千冬姉……だと思う」

 

 あのISが、雪片を握っている事と剣を交えたことで分かったらしい。織斑を襲った剣技は、まさに自分の姉そのものであったそうな。

 

 自分の姉のオンリーワンを黒いISが使用している事と、こんな未知の力に振り回されているボーデヴィッヒが許せなかったらしい。……だからと言って、装甲もまともに展開不可の状態で突っ込むかね?

 

「だからアイツはお前が倒してしかるべき……ってか?」

 

「もちろんだ!」

 

「そんな織斑君に質問です。まともに装甲展開もできない白式でどうやって戦うのでしょ~か?」

 

「ぐっ……」

 

「まぁ無理だわな。悔しいのは分かるが、今回は退くぞ……」

 

 さっきから教師陣たちが騒がしい。この事態をいち早く収集させるために動いてるのだろう。しかも、今回は特に援護が妨害されていない状況だ。ますます俺達の出る幕は無いだろう。

 

「それでも!アイツだけは俺が倒さなきゃならないんだよ!」

 

「んなモン俺が知るか。根性論じゃどうにもなんねぇ問題だろ?白式にはエネルギーが……」

 

「無いなら、他の所から持って来ればいいよね?」

 

 いつの間にかこちらに合流してきたデュノアが、俺の言葉を遮りながらそう言った。……そんな方法あったか?いかんな、勉強不足だ。ここは素直に教えを乞う事にしよう。

 

「出来るのか?」

 

「他のISは無理だけど、僕のリヴァイヴならコア・バイパスでエネルギーを移せると思う」

 

「本当か!?今すぐやってくれ!」

 

「ただ……それをやっている間に「アレ」をどうするかなんだよね……」

 

 デュノアは苦い顔をしながら、今にもこちらに切りかかってきそうな謎の黒いISを見た。そりゃ、隙だらけになったら当然襲ってくるだろう。それならば、仕方ない……。

 

「聞け、織斑。美味しい所はくれてやる、俺が時間を稼ぐ」

 

「真……お前、クロックアップってのを使ったら確か筋肉痛が……」

 

「あ?屁でもねぇよ、そんなの」

 

「嘘つけ、さっきから肩で息してるだろ!」

 

 チッ、ばれてたか……織斑の言う通りだ。正直言って、今にも倒れこみたいくらいの気分だ。本当に息をするのも辛い……。だが、以前に織斑が俺に言った言葉がある。

 

「織斑。テメェ……この間、俺を信じるって言ったよな?」

 

「あ、あぁ……」

 

「今が、その時だろうが……」

 

「っ!」

 

 織斑は俺の言葉に酷く衝撃を受けているようだった。俺からそんな言葉が出てきたからか、それとも俺を信じると言った事を後悔しているのかは分からない。だが、俺は遠まわしながらも「俺を信じろ」と言ったつもりだ。一応はそれを分かっているらしく……。

 

「……頼めるか?」

 

「あんま長くは持たねぇだろうけどな」

 

「無茶はしないでね?」

 

「はいよ~」

 

 っていうか、この状態で動くこと自体が無茶なんですけどね。自分でやると言ったからには全力を尽くすさ……もっとも全力を出せないだろうけど。

 

「まぁ良いや……。さぁ、ボーデヴィッヒ……遊ぼうぜ!」

 

 俺が構えたのを見てか、黒いISはそれこそ遊び相手が見つかったかのように向かって来る。第一世代型のISみたいだから、スピードは白式等が勝っているはずなのに、黒いISにはそれを補う迫力のようなものがある。

 

ガァン!ギャリリリリリリ……!!

 

(いぃっ…!)

 

 黒いISの攻撃を受けるが、やはり重い一撃だ。いつもだったら問題なく受けれるレベルだろうが……いかんせん今は筋肉痛……俺の両腕には想像を絶する痛みが走った。

 

(が……あぁ……!)

 

 体が悲鳴を上げているのが分かる……これ以上無茶をするなと言っている……。だが、それでも!やると言ったらやる!痛いのがなんだ!体がとっくに限界を迎えてるなら、さらにその先の限界まで力を振り絞るのみ!

 

「おおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!」

 

ガギィッ!

 

 ダブルカリバーを決死の力で前へ押し出し、黒いISの雪片を弾く。向こうも想像以上だったようで、かなりの距離が空くほどにノックバックしていった。

 

「へっ、どうだよ?俺はまだやれ……」

 

『……シイ』

 

「あ゛っ……が……ぁ!また……!?ぐおぉぉぉぉっ!!!!」

 

 まただ……また声のようなものが聞こえたと思ったら、頭に激痛が走る。収まるどころか、症状はだんだんと悪化しているようだ。今、俺の視界はテレビに走る砂嵐かのようにザザーッと揺らめいていた。

 

「…………」

 

 黒いISにとって、今の俺は手負いの餌同然だろう。容赦のない太刀筋で襲ってくる雪片を、防ぐことすらままならない。なんとか対処はしているものの、何撃かは良いのをもらってしまった。

 

「ぐああああ!!」

 

「真!」

 

「待ってて、今援護を……」

 

「来るなぁぁぁぁああああ!!」

 

 いまだにガンガンと脳を直接叩かれているかのような痛みに耐えつつ、俺は援護に来ようとしたデュノアを制す。俺の雄叫びを聞き、デュノアはビクッと体を震わす。

 

「お前は……俺が何のために体張ってんのか分かんねぇのか!援護に来てみろ……そん時は俺がテメェをブッ殺す!」

 

「で、でも!」

 

「でももへったくれもねぇ!これは、俺の戦いだああああ!!」

 

ギィン!

 

 ヤケクソ気味でプラスカリバーを雪片の下から潜り込ませるようにして振り上げる。すると、黒いISはバンザイするかのようなポーズになったが、激しい頭痛のせいで追撃は無理だった。というより、ガードが上がったとほぼ同時に下がり始めてたから多分どっちにしろ間に合わなかっただろう。

 

(クソッ!)

 

 心の中で悪態をつく、それはもちろん黒いISに対してでもあり謎の頭痛に対してだ。主に後者に対してだが、それにしたって心当たりがなさすぎる。

 

『……シイ……シイ』

 

(ええい!ウザッてぇんだよ!)

 

 先ほどからだんだんと頭の中で響く声が大きくなってきていた。それに比例するかのようにますます頭痛も激しくなる……もはや俺は意識を保つのがやっとの状態だ。

 

「…………」

 

「チッ!」

 

ガン……!ギギギギギギ!!

 

 黒いISからすればそんな事は関係のない話だ。躊躇なく俺に突っ込んできて、全力で雪片を振るうのみ。俺は何とかダブルカリバーをクロスさせて雪片を受けるが……どうやら時間の問題らしい。そうやって俺が心の中で若干の諦めを感じていると、また声が聞こえた。

 

『クルシイ』

 

「!?」

 

 苦……しい!?今、確かにハッキリとそう聞こえた!だとすれば、何だ?誰のだ?このメッセージを俺に伝えようとしているのは!?

 

『クルシイ……クルシイ……」

 

「ずっ……ぉ……!苦しいのは……こっちもだよ!」

 

 苦しんでいるのはボーデヴィッヒと解釈するのが自然なのだろうが……違う……なんとなくだが、分かる。この声の主はボーデヴィッヒではない。

 

 そう否定しておいてなんだが、かといって他に思い当たる節がある訳でもない。問いかけてみて返答があれば一番早いのだが、それは期待できないだろう。

 

「ぐっ……くぅおぉ!ああああああ!」

 

 その時、頭痛の激しさが最高潮に達した。自分がどうやって意識を保っているのかが不思議なほどに脳が痛い。そして、それと同時に「ある光景」が見えていた。

 

(コレは……ボーデヴィッヒ!?)

 

 そう、ボーデヴィッヒだ。どういう訳かボーデヴィッヒがシュバルツェア・レーゲンを駆り、数多のISを屠るような光景が見える。

 

 だがボーデヴィッヒが見える、という表現は適当ではないのかもしれない。なぜなら、俺が見ている光景は「一人称」まるで、俺がボーデヴィッヒにでもなったかのような感覚だ。

 

 つまりこれは、ボーデヴィッヒの記憶……?いや、それにしてはやけにシュバルツェア・レーゲンばかり……つまりこの光景は……記憶は……!

 

「シュバルツェア……レーゲン……!?」

 

 という事は、先ほどの声もシュバルツェア・レーゲンのモノだってのか?あぁ……イカン、俺は正気ではないのかもしれないな。ISの声なんて、聞こえる訳がないだろうが。そもそも、ISが感情を持ち合わしているわけがない。

 

(そうだ、あり得る訳が……)

 

 頭では否定の言葉を並べているが、俺の頬にはふと冷たい感覚が流れる。俺は……泣いてるのか?なぜだ、俺が悲しい訳でも悲しいわけでも無いと言うのに、なぜ……?

 

(クソが……認めるしかないのか?)

 

 この涙が、俺の胸中に流れ込んでくるこの悲しみがシュバルツェア・レーゲンのものだとすれば全てに合点がいく。だったら、早くこの茶番劇を終わらそう。俺は流れる涙の影響で、少し声を震わせながら叫んだ。

 

「ボーデヴィッヒ!いい加減に……目を覚ませよ!あんたが望んだのは「コレ」じゃないはずだろう!「コレ」はアンタじゃない、ましてや織斑 千冬でもなんでもない!今のアンタは……いったい誰なんだ!答えてみろ、ボーデヴィッヒ!」

 

「…………」

 

 当たり前の事だが、返事は帰ってこない。代わりと言ってはなんだが、黒いISは渾身の力を込めたであろう雪片を俺目がけて振りおろす。残念なことに、俺にはもうそれをガードするほどの力は残っていなかった。

 

ズン!

 

「チッ……ここまでか……!」

 

 ガタックの反重力デバイスはイメージインターフェースを仲介して作動している。今の一撃で数秒意識が飛んでしまった。つまり俺は、宙に浮くのを保っていられない。

 

「大丈夫!?加賀美君!」

 

「ん……デュノア……か?そうか、役目は果たせたんだな……」

 

「うん、加賀美君のおかげだよ」

 

 あとは墜落するのを待つだけの俺をデュノアが受け止めてくれた。見れば、俺と入れ替わるように織斑が黒いISと交戦を始めている。

 

 とりあえずデュノアはゆっくりと降下を始める。白式にエネルギーを譲渡をしたが、このくらいならまだ平気なようだ。地に足を付けた俺は、とりあえず一息ついた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「本当に大丈夫?すごく苦しんでたけど、何があったの」

 

「……何でも無い。それより、一つだけ頼みたいことがある」

 

「うん……僕に出来る事なら」

 

 俺の言葉にデュノアは力強く頷き、小さなガッツポーズを見せた。俺もデュノアに無言で頷き、織斑と黒いISを見上げた。

**********

 白式に乗り雪片を握る一夏は、これまでにないほど背中を押してもらっている感覚を覚えた。自分が黒いISとまっとうに剣を交えているのも、後ろに控えている2人のおかげ。

 

(シャルルがくれて、真が繋いだチャンス……絶対に無駄にはしない!)

 

 シャルルのリヴァイヴにエネルギーをもらったとはいえ、白式は全力ではない。それでも一夏は不思議と白式がいつも以上の力を発揮していると確信していた。

 

「おおおおおおっ!」

 

ガン!ガン!ガン!ガン!

 

 互いに閃く火花を散らす雪片と雪片。現在の戦況は拮抗しているといったところか。だが、一夏はなるべくエネルギー消費を抑えた戦い方をしている。無論、零落白夜を確実に当てるタイミングを計っているのだ。

 

(焦るな……確実に、より確実にだ)

 

 まがいなりにも織斑 千冬をコピーしているせいか、これまでに大きな隙どころか些細な隙すら見せはしない。それでも一夏の頭は冷静そのものだ。焦らずゆっくり確実に、その姿勢は真を習ってのもの。

 

 すると、黒いISは後ろへ引いた。まるで人間が呼吸を一度整えるかのような行動だ。その時に取った構えが千冬にそっくりで一夏を少しだけイラつかせる。

 

 一夏は雑念を取り払い、いつでも黒いISを迎え撃てるよう構える。しばらくの沈黙がアリーナを包んだ。そして、黒いISは一夏に向かってきた。

 

「来い!」

 

 一夏は黒いISの雪片に、しっかりと白式の雪片を合わせる……つもりだった。黒いISは一夏の近くで急にクンッと加速。どうやらタイミングを外しにかかってきたようだ。

 

「何!?」

 

 一夏は白式を振り始めていたため、既に防御も回避もままならない。いつもであれば妥協して受けることも可能だが、今の白式のエネルギーでは不可能だろう。

 

(クソッ……!チクショウ……ッ!)

 

ブンブンブンブン!ガギィッ!!!!

 

 一夏が諦めを感じたその時、黄色い雷を纏った青い何かが下から飛んできて、黒いISの雪片を弾いた。一夏は、その「何か」をよく知っている。以前一夏はあれに留めを刺されたのだから。

 

「ライダーカッティング……バージョンブーメラン……ってとこか?」

 

 一夏の予想通り、飛んできたのは連結させたダブルカリバーだった。真はシャルルに支えられながら立っている。真の言った頼みとは単純に肩を借りる事。一夏がピンチになるのを予感して、いつでも黒いISにダブルカリバーを投げれるように準備していた。

 

「美味しい所はくれてやるって言ったろうが、後は……ぶちかませ!」

 

「ああ、お前って最高だよ……真!」

 

ズン!バリリリリリリ……!

 

 ビシッと指をさし告げる真の期待に応えるように、一夏は零落白夜を黒いISに見舞う。すると黒いISは真っ二つに切断された。だが、ラウラは無事らしい。一夏はラウラを抱きかかえると、2人の待つ地上へ……。

 

「あれ……真は?」

 

「それが……一夏が攻撃を決めた途端にピットに戻って行っちゃって……。フラフラだったから動いちゃだめだよって言ったんだけど「ピットに戻るくらいなら平気」って加賀美君は……」

 

「…………」

 

 一夏は心配そうにピットを見つめた。伝えきれない感謝があったのに、と一夏は思ったが真の性質を思い出すと、口元を釣り上げてシャルルに伝えた。

 

「大丈夫。アイツは、素直じゃないだけだから」

 

「は、はぁ……?」

 

 シャルルの肩をポンとたたいて、一夏は歩き出す。それをシャルルはよく分かっていないような表情で眺め、曖昧な返事しか返せなかった。

**********

 そのころ真はというと、ピットに戻るなりガタックへの変身を解除しドンッとピットの壁にもたれかかった。体中を走る痛みをこらえながらの戦闘だ。肉体はもちろん精神的にも真は疲弊しきっていた。

 

「クソが……」

 

 そうして真は、黒いISが一夏に斬られた瞬間に聞こえた声を思い出す。

 

「何が……「アリガトウ」だよ」

 

 そう、真は確かにあの瞬間そう聞いていた。その時は頭痛が起こらす、逆にそれまでの痛みが無に帰すほどの爽やかな感覚が頭を過る。

 

「かがみ~ん!」

 

「ん?」

 

 大きな声を上げてやってくるのは紛れも無く本音だ。真は壁にもたれかかるのを止めると、本音を正面から捉える。走ってきた本音は止まる事を知らず、そのまま真の胸に飛び込んだ。

 

「ぐぉぉぉぉ……!?」

 

「かがみ~ん!かがみ~ん!」

 

 前にもこんなことがあったようなと筋肉痛をこらえながら真は思う。とりあえず痛みがすさまじいのでやんわりと本音を引きはがそうと試みるが、ビクともしなかった。

 

「ほ、本音?どうしたんだよ……落ち着けって」

 

「落ち着いてなんていられないよ~!かがみん……ずっと苦しそうで……見てられなかったんだも~ん!」

 

「ッ…………」

 

 涙目でそう訴えながら見上げてくる本音に真はドキッと胸の鼓動が強まるのを感じた。本当はこういう事をおいそれとするべきではないと考えながらも、真は本音を落ち着かせるためにゆっくりと後頭部を撫でた。

 

「そ、その……俺は平気だから。大丈夫かって聞かれるとそうでも無いけどさ、まぁ……気合だ気合」

 

「…………」

 

 それを聞いて本音はようやく腕に回していた力を緩めた。その場から半歩下がって真を見上げると、本音はある事に気が付いた。

 

「かがみ~ん……泣いてるの~?」

 

「あ……?いや、コレは……」

 

 違うと否定しようとして、真は流れる涙を拭い取るが、それでも涙はとめどなくあふれてくる。真は眉間に皺を寄せながら、忌々しそうにつぶやく。

 

「なんでだよ……!」

 

「…………」

 

 真に心当たりが無い訳ではない。先ほどのシュバルツェア・レーゲンの記憶らしきものを覗いたからだろう。力に振り回され、苦しんでいたシュバルツェア・レーゲンと真は「同じ気持ち」になっているかもしれない。

 

「かがみ~ん」

 

「!?」

 

 足りない身長を精一杯の背伸びでカバーし、本音は両腕を真の首に回す。今度は決して力を籠めず優しく優しく包み込むように抱きしめる。

 

「本音!?何を……」

 

「かがみ~ん。私にはどうしてかがみんが泣いてるか分からないけど~。泣きたいときには~泣いたって良いんだよ~?」

 

「…………」

 

「大丈夫だよ~。ここには私しかいないし~もちろん言いふらしたりもしないからね~。大丈夫~大丈夫~」

 

「ほん……っね……。くっ……うぅ……」

 

 声を殺しながらではあるが、確かに真は心から涙を流していた。本音はただだた優しく真の頭を黙って撫でるだけだった。しばらくすると、本音は自分にかかっている体重が重くなっていることに気が付く。

 

「かがみ~ん?」

 

「スゥー……スゥー……」

 

 本音の耳元に届いたのは寝息だ。肉体疲労の後にしっかりと泣いたせいで、限界を迎えたのだろう。真は気絶に近い形で眠ってしまった。

 

「……えへへ~」

 

 自分に全体重を乗せられているのだから、本音からしてみるとかなり重たいはずだ。にもかかわらず本音はニコニコと嬉しそうに笑う。

 

「お疲れ様~……かがみ~ん……」

 

 目を細め、愛おしそうに真の頭を再び撫でる。今の本音は満たされていた。真が自らの弱い部分をさらけ出してくれたことに、真がその身を自分に預けてくれたことに。

 

 そう思うと、ようやく本音の中で疑問だったことが確信に変わった。それは、自分が真に対して抱いていた想い。

 

「そっか~……私、かがみんの事が好きなんだ~」

 

 2人だけの空間でそう呟く本音。静まり返ったピットに自分の声が反響すると同時に、まるで胸を締め付けられるような感覚を覚えた。

 

「……って、それはまた今度にしなきゃね~」

 

 よいしょ~よいしょ~と本音は真を座らせ、壁に背を預けさせるようにした。とにかく今は人を呼ばなくては、本音に真を保健室まで運ぶのは無理としか言いようがない。

 

「待っててね~かがみ~ん。すぐ戻ってくるからね~」

 

 相も変わらずスースーと寝息を立てている真を見て、本音はクスリと笑う。しばらく真の事を眺めていたかったが、そうはいかない。すぐに人を探しにピットを後にした。

 

「えへへ~」

 

 本音の足取りは驚くほどに軽い。しばらく真に対して起こるモヤモヤの正体が分からず悩んだりもしていたためか、自分の想いに気づいてしまえば楽なものだ。

 

 その後は、本音なりの「急いだペース」で近場に教師を見つける。真がピットで気絶?していることを伝えると、そのまま運ばれる真と一緒に保健室まで直行。

 

 よほど疲れていたのか、真が目を覚ますのはかなり先の話になる。それでも本音は真の目が覚めるまでずっと真の事を見守り続けるのであった……。

 

 

 




原作でエネルギーの譲渡はパパッと終わってましたが、真の出番を作るために多少は時間がかかるという事にさせていただきました。

一夏と真のタッグでも良かったのですが、2人が肩を並べるのはもう少し後という事で……。

それと、真のシュバルツェア・レーゲンへの干渉ですが……一夏とラウラが会話を行った謎空間とは違うものです。前回のあとがきにも書きましたが、真に関することについては徐々に明かしていく予定です。

なので今回の事も「シュバルツェア・レーゲンの声が聞こえた」程度に思っていただければと思います。

次回は……どうなるんでしょうかね?またしばらく臨海学校編に向けての幕間になる……んすかねぇ?まぁとりあえず次回は学年別トーナメント篇のシメという事にしましょう。

それでは皆さん、また次回もよろしくお願いします。
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