タイトルからお察しの通り、今回はVS福音ではありません。ちょっとした諸事情が原因ですね……気になる方は活動報告にて詳しくふれていますので……。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。
時刻が12時を回り昨日が終わったころ、花月荘大広間にて待機していた俺達に最悪の一報が告げられた。「作戦は失敗、織斑 一夏は瀕死の重傷」…………最悪だ。
作戦が失敗した、それだけなら構わない。だって、怪我人が出なければそれが一番だろ?俺だって、織斑に居なくなって欲しいとまでは思っていない。
織斑先生から待機命令が出てどれくらいがたっただろうか、ふと近場の時計を見上げると時刻は4時を回っていた。……そうか、もうそんな時間か……織斑は4時間近くも目を覚まさないんだな。
(…………クソッ)
あのバカの事なんて、どうでも良いはずだ。だがなぜだ?今、俺は……なぜこんなにもイラついている。織斑のふがいなさ故か?否、そうではない。
(織斑が、落とされた……からか?)
そんな考えが浮かび上がり、俺は思わず自分に対して笑いが込み上げてきた。馬鹿馬鹿しい、そんなはずがある訳が無い。俺がよりによって織斑の心配だと……?
(ハッ、くだらね……え?)
そう思いながら立ち止まって見ると、その場所は織斑が寝かされている一室の前だった。なぜ俺はこんな所に辿り着いている。無作為に、無意味に動き回っていたつもりだ。
(もしかして無意識的に……!?)
思わず辺りをキョロキョロと見まわし確認してみても、やっぱりここは織斑が寝ている場所に他ない。無意識だと?ふざけるな。俺は、アイツの事なんか興味は……。
『よっ、真!』
「!? 織斑!?」
簡易的な医務室から背を向け歩き出そうとすると、織斑が俺に声をかけてきた気がした。振り向いてみても、そこには誰もいない。
……それもこれも、織斑のせいだ。アイツは、俺がいくら拒否ろうとも……来る日も来る日も俺に屈託のないバカ面で挨拶して……。
『真!飯にしようぜ』
図々しい事に飯にまで誘ってきやがって……。俺が誘いに乗ると、心底嬉しそうな顔をしやがって……!思い返せば、なんで織斑は俺の事を放っておいてくれないんだ。
『真は俺の……友達だからな!』
「ッ!?」
思い出されるのは、あの日俺に向かって放たれた言葉だ。……誰が……誰が、お前なんかと友達だよ。俺なんかを友達だと思って、お前に何のメリットがあるんだよ!?
『すごく、中途半端だよ』
同じくあの日デュノアに言われた言葉も頭を過る。簪と本音とは仲良くしておいて、織斑達を本気で突き放せないでいる。そんな俺を的確に体現したかのようなセリフだ。
「俺は…………!」
頭を抱えながらその場にしゃがみ込んでしまう。本当に、どうしていいのか分からない。織斑の事は心配ではない、無いはずなのに足は織斑が寝かされている場所に向かった。
…………馬鹿になれ、俺。考え過ぎるから、俺はいつだって答えを見いだせないんだ。一度、向き合え……織斑と、俺自身をしっかり見てみろ。悩むだけ時間の無駄だ、俺は襖をゆっくりと開けた。
「……よう」
ぐっすりと眠っている織斑に対して、とりあえず挨拶しておく。適当な場所に腰掛けると、これまでの事を思い返しつつ、口を開いた。
「……密猟者、庇ったんだってな。ったく、お前はつくずく……お人よしだよな」
まず口から飛び出たのはやはりというか、憎まれ口だ。密猟者の乗った船に向かった光弾を織斑は零落白夜で切った。エネルギー切れのアーマーでまともに攻撃を食らったらしい。
「ま、お前がお人よしだから……俺を放っておかないし、いくら拒否っても無駄なんだろうよ」
中学までだったら、いつもワンパターンだった。良い奴ぶって、俺と仲良くしようとしたヤツはいくらでもいる。だが、いつもの態度を貫き通すとそのうち関わるのを止めていった。むしろ、悪口を言い始めるのだ「せっかく人が話しかけてやってるのに」と。
うん……まぁ全面的にそれは俺が悪いし、悪口を言いたくなる気持ちも分かる。分かるが、今はそんな話をしているんじゃない。コイツは違った、いくら俺が皮肉や悪口を言おうとも、めげずに話しかけてくる。
「今思えば、俺も絆されてたのかも知れんな……」
皮肉等は交えながらだが、織斑に話しかけられれば自然に返している俺がいた。苦笑いを浮かべた織斑と、その隣を気だるそうに歩く俺が確かにそこにいた。
そうしていつの間にか俺の隣には本音がいて……簪がいて……。篠ノ之、オルコット、鳳、デュノア、ボーデヴィッヒと……織斑を中心にして、どんどんと人が集まってくる。
みんな笑顔で俺の事を見てら……酷でぇ言葉しか出ねぇのに、そっけない返し方しかできねぇのに……みんな、俺を笑って輪の中に入れてくれて……。
「ハッ……そうか、俺は……」
俺は、いつの間にか甘えていたのだろう。こんな俺でも受け入れてくれるこの環境に、自分はちっとも進歩がねぇクセに、ただ周りの奴らに委ねてよぉ……。
「織斑……」
誰よりも真っ直ぐから俺と向き合ってたのは、まぎれも無くコイツだろう。俺はそんな織斑にどうした?そんなの、ずっと逃げてただけだ。
「だから、もう逃げない……」
どっしり構えて向き合って来る織斑に、俺も真正面から向き合ってやる。そう考えると、不思議なまでに気持ちが楽になった。
「……お前が守ろうとしたモンは、きっちり俺が守って見せる。だってよ……きっと、多分だけど……俺もお前と、同じものを守りたいんだと思うから」
そう言いながら立ち上がり、部屋を後にした。完全な命令違反……この後どうなるかは全く分かったものではないが、俺の意志は固い。
「福音を……止めるっ!」
**********
「……と、意気込んだはいいが……」
あれこれ思案しても全く策が浮かばん。そもそも福音が今どこでどうしてるのかすら分からな状態だ。いったいどうやって探すかが問題だよな……。
とりあえず旅館の外であれこれ考えてるのは良いのだが、こうしている間にも福音がどうしてるかもわからない。本当……どうするんだ。
「あー!本当に居た!?」
「言っただろう、戦友が動かないはずがない」
いきなり声がしたので振り向いてみれば、そこには心底驚いた表情の鳳……を筆頭に専用機持ち五人が集結していた。しかし、その口ぶりは俺を探していたのか……?
「真の事だからどうせ「ハッ、てめぇらで勝手にやってろ」とか言い出すと思ってたのに……」
「フフッ、やっぱり真さんは素直ではありませんね」
「いや、あの……」
「でも、真がいるなら心強いよね!」
「ああ、戦友の冷静さは実戦では頼りになる」
「真だけでなく、ガタックの戦力も同じく心強い」
「人の話を……聞かんかー!」
もし俺が織斑先生だったとしたら、出席簿アタックを放っていたことだろう。そりゃ、わらわらと集まってきたと思ったら各々言いたいことだけ言うんだもの、困るよね。
「なんだお前ら!いきなり現れて……」
「いきなりって事は無いでしょ」
「ここに居るのだから、お前も福音を倒しに行くつもりなのだろう?」
「間違ってはいないが……」
そう言われてみれば、織斑が落されたとあっては彼女らが黙っているはずが無かったか……。必然的に、俺も混ざる事になる。
「しかし、水臭いのは捨て置けんな戦友よ」
「そうですわ!わたくし達に一言も申されずに行こうとするなんて、言語道断です」
「真らしいと言えばらしいけど……こういう時こそ僕らを頼ってほしいな」
「……今更できるか、そんなこと……俺が今までお前らに何を言ってきたと思ってる」
どの口で言えと?俺が、お前らに助けてくれ……なんて。突き離し、拒絶し、逃げてきたんだ。向き合うつもりはあるさ、だが面と向かってそんな……都合のいい話があるか。
「はぁ?アンタ、あたし達がそんなの気にしてると思ったの?」
「…………は?」
「ラウラさんの言う通りツンデレ……と解釈しているわけではありませんが。真さんは結局のところ最後は助けてくれますもの」
「真の言動も最後の手助けでチャラ……ではないが、確実に精神的にきてはいるが……!まぁなんだ、私達は真を見損なったりはしていない」
「僕も同じだよ?君が人の事で頑張ってる姿を知ってるから」
「私は前にも言ったろう。お前は私の唯一無二の相棒だとな」
「…………」
なんだそれ……俺は、いくら責められても仕方ないくらいに思ってんのによ。俺が考え過ぎて空回って、勝手に一人で嫌われてるって考えてただけってのか……?
「ブッ!クッ……ハハハ……ハハハハハハハハ!!」
「ま、真さん……?」
「はぁ~っ……馬鹿だよ、お前らは……本当に大馬鹿だ」
やっぱりそうやって、俺を困らせるんだよな……お前らは。ここで、拒絶していたのが、今までの俺だ。だがさっき決めたんだ……逃げないって。
「そんな馬鹿なお前らに、頼みがある。どうか、俺に……力を貸してくれ!」
俺がこうして、頭まで下げてこいつらに何かを頼むのは初めてだ。これで、俺の想いが伝わればいいのだが……と思っていても、なかなか誰も何も口にしない。
ゴッ!
「いぃ!?っつ~……」
いきなり俺の頭部に衝撃が走った。頭を上げてみると、五人全員が手をチョップの形にしていた。つまるところ、俺の頭に走った衝撃はそれですか。
「えっ……と、何のチョップだ?」
「真に対する仕返し、だな」
「とりあえず今までの馬鹿にされた分は今のでチャラね、それで……」
ゴッ!
「おぐぅ!?」
「今のは二度も水臭い事を言った罰ですわ」
「我々が戦友に力を貸すことに頼みなどというものは不要だ」
「そうだよ、僕たちは仲間なんだから」
今までのお返しというのなら甘んじて受け入れよう。だが二回目は別にチョップをすることは無いだろうに。女の子のチョップにもかかわらずけっこう痛かったぞ。
「うん……まぁなんだ、ありがとうな。それで、福音の場所は?」
「それなら安心しろ、戦友よ」
そこはドイツ軍の協力を得て、既に特定済みらしい。流石といったところだが、何気にドイツ軍を動かせる立場に居るボーデヴィッヒは恐ろしくもある。
「あと問題が有るとすれば……」
「真さんがどうやってわたくし達に追いつくか、ですわね」
思わずギクリと肩を震わせる。どうやらガタックの機動力の無さはお見通しらしい。俺だけ後ろから追いかけても良いのだが、それでは到着と同時に戦闘終了という事態にもなりかねない。
「真、私の紅椿につかまるといい」
「いや、あれは白式にスラスターがあったからで……ガタックじゃ無理だ」
う~む……ガタックにも高空域をサッと移動できるパッケージでもあれば……。と、ここまで考えてようやく思い出した。あるじゃん、岬さんが言ってたものが!俺は急ぎ岬さんに回線を繋いだ。
「岬さん!」
『んぅ……?あ……加賀美君……ようやく連絡をくれたわね。ふぁ~ぁ……一応研究室に残ってて良かったわ……』
夜分遅くにというか、もうすぐで日が昇り始めそうな時間だ。ありがたいことに岬さんは残って俺の連絡を待っててくれたらしい。とりあえず情報漏洩にならない範囲で状況と用件を伝えた。
『なるほど……良く分からないけど分かったわ。こちらから起動してそっちに向かわせるから』
「き、起動?」
「ええ、ある程度はウチからでも操作できるようにしてるの』
さっきから起動だの操作だの……なんか引っかかるが。ほどなくして、俺達がISの試験用として使っていた海岸から、何かが飛んできた。
「あれは……?」
『加賀美君、時間が無いようだから手短に話すわ。昼も言ったけどガタックには機動力が足りていない。そのため私たちは外付けの飛行ユニットを開発したわ……と言ってもサーフボードみたいに乗るだけだけどね。乗っている間はイメージインターフェースが有効だから、加賀美君の意志のまま制御が可能よ。ガタックと離れているときはAIで動くから、ある程度の命令は聞くわ。それで、肝心の名称なんだけど……』
なんとなくだが、心のどこかで「コイツ」なんじゃないかと予想はついていた。しかし、まさか大当たりだとは思わなんだ。原作カブトでも登場し、ガタックの乗り物として活躍したコイツの名は……。
『ガタックエクステンダーよ』
「ええ……ありがとうございます岬さん。最高の飛行ユニットですよ」
キィィィィン……
そんな音を立てながら俺の目の前でホバリングするエクステンダーを見ながら、岬さんにそう伝えた。他の専用機持ち達は目を丸くしている様子である。
「こう、何なのかしらね……ZECTの妙なクワガタ推しって……」
「さ、さぁ?僕にはちょっと……」
俺の専用機がガタックである以上クワガタムシ型になるのは必然の事よ。とにかくして、これ以上岬さんを引き留めるのは申し訳ないので、今一度感謝の言葉を述べた後に回線を切った。
「よし、待たせたな。これで問題は全部解決だ」
「いいえ、あまりそうとも言えませんわ……」
そう言いながら、オルコットは旅館の入り口の方を指さした。何事かと思い俺もそちらの方へ眼をやると、そこに立っていたのは紛れも無く……
「真……」
「かがみ~ん……」
「なっ!?二人とも……」
「真……とにかく行ってやれ」
「ああ、そうだな……。悪い、もう少しだけ待ってくれ」
篠ノ之に促され、小走りで二人のもとへ駆け寄った。簪も本音もその表情は暗く、まるで元気は無い。そんな二人に対して、俺はあえて明るく振る舞う。
「どうしたんだ、二人とも?今は待機命令が出てるんだから大人しくしてないと、教師に見つかったらただじゃ済まないぞ」
「……なんとなくだけど~……分かるの~……」
「分かるって、何が?」
「良くないことが起きてて……真は……それに立ち向かおうとしてる……」
……そうか……二人は俺の事が心配で、わざわざ来てくれたのか。もしかすると、織斑の所を訪ねたところでも見られたのかもしれない。
「……ああ、そうだな。簪の言う通りだ」
「…………」
「かがみ~ん……大丈夫だよね~……?怪我とか、しないよね~……?」
正直なところ、それは保証しかねるところだ。ガタックは全身装甲だし、安全性の上では問題は無いが……これは実戦だ何が起こるかなんて予想はできない。それでも、大丈夫だと言っておかなければ余計な心配をさせる。
「専用機持ちが六人もいりゃなんとかなるさ」
「…………」
そう言う俺に対して、本音は微妙な反応というか返事すらくれない。別に行くなと言いたいわけでは無いのだろうが……。俺がどう言葉を続けていいか分からないでいると、二人が口を開いた。
「ごめんね~……」
「え……?」
「私たちは……こうやって、真を……心配するくらいしかできなくて……」
「…………」
二人の表情がその言葉を本気で言っていることを物語っていた。特に簪は、候補生でありながらこの戦いに参加できない事に負い目を感じているようで、少しばかり目に涙を浮かべていた。
「そんなモンだろ、人間って。人間なんだから、どうしても果たせない役割ってのは一つや二つあるさ。肝心なのは、出来ないことを悔やむよりもできることを模索する事なんじゃないか」
「だから私達には……これくらいしか……」
「うん……だけどさ、心配ってなんか不吉だろ?どうせなら、俺の事を信じていてくれ」
「かがみ~ん……」
心配するのと信じるのとでは大違いだしな。「大丈夫かな?」と思われるよりは「きっと大丈夫!」と思われたい。思ってくれるのが二人なら、なおさらのことだ。
「簪と本音が信じて待ってくれるなら、俺にとってこれ以上心強い事はねぇよ」
そう言いながら、二人の頭を撫でる。俺の事を見上げる二人の表情からは、だんだんと心配の色が消え失せているのが見て取れた。俺が手を放すと、簪と本音は笑顔で俺に伝えた。
「真……」
「かがみ~ん」
「「行ってらっしゃい」」
「ああ、行ってくる!」
最高の見送りの言葉をもらえた俺は、意気揚々と振り返り専用機持ちの待っているところまで戻った。すると、その表情はニヤニヤ意外に表現できない顔をしている。
「……なんだよ」
「別っにぃ~?」
ウザい、心底ウザったい。なんだマジで、そろいもそろって、お前らはオバサンか……。少し気恥ずかしいのを我慢しながら変身して、ガタックエクステンダーに飛び乗る。
「ほら、チンタラやってないで行くぞ!」
「あっ、真が照れるところは初めて見たよ」
「戦友よ、それがいわゆるデレというやつか?」
「俺に聞くな、そんなモン!」
俺が怒鳴ると、五人は冗談はこれくらいにしてと言わんばかりに専用機を展開した。ったく……おかげで閉まらねぇだろうが……。
「それでは、改めて参りましょうか」
「ええ、目指すは打倒福音!燃えてきたわね……!」
専用機持ちたちは次々と飛び立って行く。そんな中俺はというと、今一度簪と本音の様子をうかがってみた。すると、二人は未だに俺の事を見守っている。
そんな二人に力強いサムズアップを送り、俺は五人を追いかけた。今俺は、確実に実践に近づいている……だが思いのほか緊張は無い。
それもこれも全て、簪と本音のおかげだろう。二人行ってらっしゃい……ああ、本当に……なんて心強い事だろうか。信じてくれた二人を、信じてくれといった俺が裏切る訳にはいかない。
絶対に俺達六人は無事で皆のもとに帰るんだ。そして、言ってみせる「信じてくれてありがとう」と。俺は新たな決意と誓いのもとに、銀の福音へと近づいて行くのだった。
本当はすっぱり福音戦に行くつもりだったんだけどなぁ~……おかげで途中から書き直す羽目に……トホホ……。
で、岬さんの言ってた飛行ユニットはガタックエクステンダーの事です。本当は「ガタックエクステンダー」はあくまでバイクの名前で、正式名称としてはエクステンダーの「エクスモード」なんですけどね……私の小説ではエクステンダーの方で通します。
次回こそ福音戦ですね!山場ですし、盛り上がるような戦闘描写をしたいものです。
それでは皆さん、また次回もよろしくお願いします。