なんかお久しぶりです……。いやね、今月ね……仕事がね……マジでやばくてですね……。まぁ「週一回」の更新ペースは守れてはいるのですが……。
最近二・三日に一回くらいで更新していただけに、自分でも筆が遅く感じます。とにかく今月は、マジで週に一回の更新だと思われ……。
それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。
親父との対話から数日がたった。俺は目の前にドッシリと構えるZECT本社を眺めながら、様々な事に思いを巡らせる。今日は爺ちゃんに会いに来た……もちろん「例の件」についての話で。
臨海学校の時に三島さんが、爺ちゃんは出張で不在と言っていた。ならばと先に手は打っており、アポという奴をしっかり取ってある。そして、爺ちゃんに今日を指定されたという訳だ。
「よしっ……」
親父に話したおかげか、足取りはそう重くは無い。俺自身も完璧ではないにしろ、以前よりはISの声が聞こえる事を受け入れられてはいる。
だが相手は爺ちゃんだ……信じてはいるが、多少の覚悟は必要になる。俺はその場で大きく頷くと、ビルの中に足を踏み入れた。
「お待ちしておりました、真様。会長がお待ちしております」
まず俺を出迎えたのは、非常に丁寧な対応をする受付嬢だ。だけどどうも……恐縮すると言うか「様」付は止めてほしい……。俺は、ただ単に爺ちゃんの孫というだけなのだから。
そういえば、ラボラトリの方に行った時も俺は受付嬢に真様と呼ばれてた気がする。グループ各所で俺の扱いは特別待遇という方針で固まっているのだろうか?
「どうも……でも、様はちょっと……」
「そうもいきません。貴方様は、他ならぬ会長のお孫なのですから」
はぁ……プロだなぁ……本当。んなガキに様はいらねぇって言ってんのに、全くブレる事は無い。これ以上は何を言っても無駄そうなので、一礼をしてからエレベーターへと向かった。
乗り込み最上階へ向かうボタンを押すと、グングンとエレベーターは昇って行く。その速さは、俺の覚悟が完了しきる前に目的地に辿り着いてしまうほどだ。
開いた扉を溜息交じりに眺める。行かなきゃならん……忙しい身だろうに、わざわざ時間を取ってくれたんだから、話があるって言ったのは俺の方だ。
とりあえず数歩ほど進み、エレベーターからは降りた。長い廊下の先に見える扉が会長室……落ち着け、大丈夫だ。俺はあくまで事実を話すだけなのだから、何も恐れる事は無い。
長い深呼吸をしばらく続け、気持ちを落ち着かせる。そして遠くの扉をキッと睨むと、俺はいつもの調子で歩き始めた。扉との距離は見る見るうちに詰まって行く。
そして……目の前……。さぁ、覚悟は決まった……後は相対するのみ。俺は騒がしくない程度にドアを四回ノックした。家族とかと会う場合は三回で良いのだが、一応……一応ね。
「どうぞ」
「失礼します……」
まるで職員室か、と思ってしまうが……これも必要最低限の礼儀だろう。俺が会長室に入ったのを確認すると、回転椅子をクルリと反転し、爺ちゃんは俺と向き合った。
「やぁ、真。良く、来てくれた。この間は済まなかったね、調度……海外出張中だったんだ」
「いや!スケジュールの事で謝るのは止してくれ。爺ちゃんが忙しいのは、俺だって承知してる」
いきなり俺に謝罪してくる爺ちゃんに、こっちの方が更に申し訳のない気分になる。そもそも今まで電話が普通に繋がった方が奇跡だ……。爺ちゃんの都合を失念してた所もあるけど。
ふと顔を上げると、爺ちゃんのデスクから少しばかり離れている所に、茶髪で眼鏡を掛けた男性がスタイリッシュな出で立ちでそこに居た。……三島さん!と、呼びかけたら確実に変だ。
電話では会話したものの、実物を見るのはお互いに初めてなのだから。爺ちゃんは、俺が三島さんの事が気になっていると思ったのか、彼を紹介してくれた。
「あぁ……真は初見だったか……。紹介しよう、彼は三島 正人。私の……まぁ右腕のようなものだ」
「貴方が三島さん……。初めまして……?なのかは微妙ですけど、とにかく会えて嬉しいです。臨海学校の時はお世話になりました」
「こちらこそ、会えて光栄だ」
俺が歩み寄ると、三島さんは右手を差し出してきた。俺はその右手を恐る恐る取ると、三島さんは力強く俺の右手を握った。……それこそ少し痛いくらいに、多分無意識なんだろうけど。
爺ちゃんは俺と三島さんの握手を満足そうに眺めると、何だかよく分からないが頷いた。三島さんと繋がっていた手を放すと、爺ちゃんの前に立つ。
「……仕事の事とか、聞いても大丈夫か?」
「ああ、構わんよ。真は、我々の幹部なのだからな」
すると爺ちゃんは、自らの黒い社員証を楽しそうにチラつかせる。……やはり黒い社員証は特別な物だったか、幹部と同じ扱いならば、受付嬢の対応も分からなくもない。
「海外出張ってさ、どこに行ってたんだ?」
「なに、中国にな。内容は、キャストオフ及びプットオンシステムの技術について少し話をしてきた」
「へぇ~……技術提供の話とかか」
俺の呟きに爺ちゃんは、肯定の意を示す。つまりはキャストオフとかの技術を教えてもらえる代わりに、そちらに出資しますよー……みたいな?そう言うのは良く分からんけど。
「まぁ、蹴ったが」
「へ!?蹴ったの!?」
よく分からんけど、そう言うのがZECTの収益につながってるんじゃないのか!?それをそんな簡単に蹴ったって……。中国なんか特に経済発展が目まぐるしいから、それ相応のモノを貰えるはずだけど。
「会長……蹴った、と言う表現は語弊が残るかと。今回の件は保留と言う事で一旦片付いたのでしょう?」
「ハッハッ、そう言えば真が驚くと思ってな」
人の反応を窺いやがった、ウチの爺様!なんか……俺のリアクションを試されてるのな……。そういや初めて会った時も滅茶苦茶ニヤニヤしながら俺の事を観察してたような……。
俺と三島さんが呆れた表情を向けても、全く揺るがないニヤニヤとした笑顔を浮かべる爺ちゃん。俺達は同時に顔を見合わせ「身内がスミマセン」「いや、もう慣れた」と言う事を目で伝え合った。
「で、なんで保留に……」
「うむ……最終的にはZECTの技術を各国企業に向けて発信していくつもりだが、まだ時期じゃない。それにガタックに関わる物事は、岬主任を始めとしたラボラトリ諸君の尽力があっての事……。私の一存でおいそれと決めるのは、些か納得がいかんのだよ」
「なるほど……でも、ガタックも注目され始めてるって事か……」
何気にプレッシャーだな~それ……。なんか嫌じゃね?機体は素晴らしい物に違いないが、乗ってる奴がイマイチ……みたいな見解をされてたりしたら。
それにしても、世界から注目される技術を持ってる岬さん達の凄さを改めて感じれる一言だったな。爺ちゃんも、よほどラボラトリのメンバーを高く買ってるって所か。
「真……申し訳ないが、本題に入ってくれ。どのくらいかかるかは知らないが、会長もお忙しいのだ」
「三島。そう急かすものでは……」
「いや、三島さんの言う通りだ。すぐに話すよ」
世間話から入ったのは緊張しないためだったが、十分に効果があった。今ならすんなり話せそうな気がしている。だが……この事を爺ちゃん以外に聞かれるわけにはいかない。
俺は三島さんに、爺ちゃんにしか話せないと伝える。すると三島さんは、全く表情を変えることなく快諾してくれた。はぁ~……カッコイイな、三島さん……大人の男ってのはあんな感じの事を言うのだろう。
今一度俺が三島さんに感謝の言葉を述べると、三島さんは微笑を浮かべる。顔つきを引き締まったものに戻すと、三島さんは扉の奥に消えて行った。……なんか最近も同じような状況があったな……デジャヴどころの話じゃない。
「まぁ今は良いか……。爺ちゃん」
「何か、話があるんだろう?」
「ああ、なんていうか……信じられない事だと思うけど」
俺はISの声に関するこれまでの流れを、順を追って爺ちゃんに説明した。親父の時と同様シュバルツェア・レーゲンと福音の暴走については話を暈しはしたが、十分伝わるはずだ。
そして親父には話さなかった……ガタックゼクター、と言うよりは青子と俺が命名した少女の事も爺ちゃんには話しておく。俺の心象世界についての説明はかなりややこしかったが、爺ちゃんは真剣な表情で耳を傾けている。
「……そうか、そんな事が……」
「……信じてくれるのか?」
「真が信じろと言ったんだ。それなら、私は自分の孫を信じるとも」
爺ちゃんは、俺に向かって力強く頷いた。とりあえずは一安心と言った所だろう。マジで信じてもらわない事には始まらないからな……。
「それで、爺ちゃん的にはどう思うよ」
「ふむ……あまりに常識を逸脱している部分もあるのでな。スマン、私からは何も」
「だよなぁ……。非科学ってかオカルトってか……」
「真、今ガタックゼクターは呼べるか?」
恐らく爺ちゃんは、今ガタックゼクターが何を言っているかを翻訳して貰おうとしたのだろう。だがそれは無駄だ……俺だっていろいろ試したからな。
現状、ガタックゼクターの……青子の声は変身時しか聞こえない事が検証できた。ゼクターの状態では電子音が鳴るばかりで、何を言っているのかサッパリである。
「っつー訳。今は無理だな」
「ISの展開は、おいそれと許されているものではない。仕方の無い事だろう……」
「ん~……後分かりそうな事は……」
「こう言った時には、共通点や相違点を探ってみるのも手だぞ」
なるほど、それは確かにそうだ。共通点……そうだな、まず一番に思いつくのが「暴走」と言う点だろう。シュバルツェア・レーゲンも銀の福音も、何者かの手によって暴走させられていた。
その時に苦しんでいた声が、俺に届いたという訳なのだろうが……。つまり別に俺の意思は関係なく、聞こえてしまった……と言う表現が正しいのか……?
あの頭痛は、一方的に押し付けられた声に対する拒否反応なのかも……。そういえば、どちらのISの時も俺が「聞こう」と思った途端に頭痛は無くなった。
「そう考えると、辻褄も会うな」
「でも、やっぱ根本的な解決にならんわな。なんで聞こえるか、なんて」
「私も独自で調べてみる事にしよう。なるべくこの話は、我々一家の内に収めておいた方が良い……」
それについては、大いに賛成だ。親父や爺ちゃんが身内で、少しは俺の話を受け入れやすいと言うだけだろう。他の人間を信頼していないという訳では無く、単に話す必要性が無いだけだ。
「まぁ話はそれくらいだ。俺やガタックについての話だから……一応と思って」
「うむ、良く話してくれたな。正直なところ、あまり信頼をされて居ないと思っていたよ……ありがとう」
「そう思うんなら、とりあえず隠し事は止めるんだな」
「おっと、これは失敬」
爺ちゃんの丁寧なお辞儀を見て、俺はシッシッシと笑い。爺ちゃんは俺が笑うのを見て、クックックと笑った。しばらくそうやって笑い合うと、俺はフッと勢いよく息を吐く。
「それじゃ、俺はもう行くよ。今日は忙しい所をサンキューな」
「ああ、可愛い孫のためだ……時間くらい作るとも。それより真、この後の予定は?」
そう聞かれ、俺はこの後ラボラトリの方に向かう予定だと伝える。すると爺ちゃんは、携帯を取出しどこかにコール。一言二言話すと、すぐに通話を切った。曰く、迎えをよこしてくれたらしい。
思わず俺は、かなり恐縮したようにペコペコと頭を下げた。爺ちゃんはしきりに「構わん」と言いながら俺の頭をペチペチと叩く。
「ホント、悪いな……んじゃ、もう行くよ。またな、爺ちゃん」
「うむ、また。……あぁ、そうだ真。今度、新と三人で食事にでも行く事にしよう」
「そりゃ良いな!楽しみにしてるよ、親父にも話しとくから」
爺ちゃんが誘うような店だ……さぞ高級なレストランなのだろう。本当に今から楽しみだが……俺、テーブルマナーとか知らんぞ?親父は……爺ちゃんに仕込まれてる可能性が大きい。
……軽くインターネットとかで勉強しとく事にしよう……爺ちゃんに恥をかかせるわけにもいかん。なんて考えながら扉を開くと、待っていたであろう三島さんと目が合った。
「もう良いのか?」
「ええ、お待たせしました」
「なに、構わんさ。むしろ追い返すようで申し訳ない。君とは一度ゆっくり話をしたいのだが……」
「こ、光栄っす。それなら、席を設けましょうぜ……今夏休みですし、呼べば来ますから」
俺も三島さんとは、話をしていたいと思っていた。他には田所さんや岬さんも……まぁ基本いわゆる原作カブトに登場した人物だけどね……。
とにかく……三島さんともまた会う約束をして、俺は会長室から立ち去った。さて……残るは岬さんのラボラトリの方だな……。用事を済ませて、早く帰る事にしよう。
**********
迎えの車に乗り込み、走る事数十分。無事ラボラトリに着いたのだが……ここからが大変だ。ここは、ZECT本社と違って横に広い。油断をすると迷子確定……ガタックゼクターが居るからその心配はないけど。
俺も以前田所さんと来た時にしっかりと道順を覚えておいたし……うん、今目の前の扉が、間違いなく岬さんの研究室だ。俺はしっかりノックをしてから入室……できんか、ここの扉はすべて自動だ。
「どうも~……」
「あー!加賀美君、いらっしゃい!どうだった、ガタックガトリング?ミサイルやキャノンと違って使い勝手が良かったろ?」
「何を言ってるんだ!キャノンは男のロマンだ!使い勝手など二の次の次!だよな~加賀美君?そうだろう?キャノン最高だろう!」
「フン……まともに撃てるようになってから言いなさいな、加賀美君が怪我したらどうするつもり?ミサイル、ロックして撃つだけだったから簡単だったでしょう?加賀美君」
入るなり、俺の姿を見つけた研究員に詰め寄られて矢継ぎ早に話しかけられる。本当に、俺は聖徳太子か!と突っ込みを入れたくなるくらいの人数で、正直何を言ってるのか分からない。
「はいはい!加賀美君が困ってるでしょ?持ち場に戻る!」
パンパンと手を叩きながら、大きな声を発するのは岬さんだ。主任の命令に背く事は出来ないのか、研究員たちは「ちぇ~……」みたいな感じで去っていく。……ここって小学校だっけ?
「岬さん……何なんっすか今の」
「はぁ~……ゴメンなさい、ちょっと頭痛が……」
ええ、心中お察ししますとも……部下がこんなのばっかとか、俺だったら卒倒するね。岬さんは額を押さえていた手を放すと、説明を入れてくれた。
なんでも例のガタック新武装三種は、ここの研究員たちを三チームに分けて作られたらしい。設計から開発まで……それぞれが好きなようにやって生まれたのがガトリング、ミサイル、キャノンとの事。
つまりそれぞれの研究員が、自分の開発した武装に誇りを持っている。それをどの武装が一番俺に気に入られるか、それがここ最近は論争にまで発展していたそうな。
うん……なんか一気に報告し辛くなってきたぞ。ぶっちゃけキャノンとか使い物にならん状態の物を渡された訳だから、文句言ってやろうとか思ってたのに。
「それじゃ、口頭で良いから色々聞かせて頂戴。私のデスクで話しましょうか」
前の方に置いてある大きなデスクまで案内される。流石主任ともなれば、他の研究員とは天と地ほど差のある豪華さだ。用意された椅子に腰かけると、岬さんはアナログ派なのか、メモを取り出す。
「加賀美君の率直な感想で良いの、なんでも言ってみて」
「はい……それじゃ」
俺はガトリングから順に、俺なりに考えておいた長所と短所を伝えた。岬さんはしきりに「ふんふん」とか「なるほど」と、興味深そうに頷く。
長くなるから、ここでは長所と短所は割愛しておく。まぁ……キャノンに関しては、とりあえず使い物になるようにしてほしい……とだけ伝えた。
「うん……キャノンは一度預かるわ。悪ふざけが過ぎるもの……」
「ええ、本当ですよ。まぁ……おかげで助かった部分もありますけど」
福音がセカンド・シフトする前とはいえ……あの威力があったからこそ、第一ラウンドは俺達がとどめを刺せたようなものであった。撃つにはボーデヴィッヒが必要だったけど……。
「加賀美君は、なかなか武装に慣れるまでが早いわよね」
「ん?そう……なんですか?自分じゃあんまりそうは感じませんけど……」
「謙遜は良くないわよ。ちょっとこれを見て」
岬さんが台座を回転させたPCの画面をこちらに向けると、何やらデータが現れた。見ると、その都度俺がガタックを動かした時の稼働率らしい。
「これが本当に初めて加賀美君が試合をしたときのデータね。ガタックを扱うのが初めてとは思えないくらいの稼働率なのよ?新武装の初見時の稼働率も、十分と言えるほど高いわ」
そう言われ、俺は内心少しだけ焦った。だって……ガタックの事は前世から知っているのだから、ある程度は使いこなせるのは当然とも取れる。
まぁ……それでも、俺にだって隠れた才能があったと喜んでおくことにしよう。……と、俺が安心したのも束の間……岬さんは、あろう事かとんでもない爆弾発言を落す。
「一部だと、貴方なんて呼ばれてるか知ってる?戦いの神って言われてるのよ」
「…………………………………は?………………………………………スミマセン、もう一回言ってください」
「だから、貴方は戦いの神だって言われてるの。まぁ呼んでるのはだいたいウチのメンバーだけどね」
頭が真っ白になった。多分、俺は未だかつてないほどに混乱してる。それこそ、ISの声が聞こえた時の比では無いくらいにだ。……………………………………マジでええええええ!?
バカなああああああ!なんでだよ!前世で散々ネタにされまくってた称号が、俺にも付きまとわないといかんのだ!つーか、絶対俺は(笑)のほうだよね!?勝率も高くないし、絶対に戦いの神(笑)になってるよね!?
「不服です!今すぐ取り消してください!」
「ど、どうして?神よ?神。どこか失礼だったかしら?」
「「「そうですよ、我らが戦いの神!!!!」」」
俺がデスクを叩いて立ち上がると、このフロア内の人間ほとんどが俺の後ろにズラッと並んでいた。……大の大人が高校生相手に何を言っている。
そして口々に賞賛の言葉を述べているらしいが、例の如く何を言っているのかは聞き取れない。だが残念なことに、揃って神と言っている部分は聞き取れてしまう。その言葉は、俺のトラウマ的な何かを刺激するのだった。
「うわああああああ!?その神と呼ぶのを止めてくれええええ!」
「加賀美君、加賀美君……コレをちょっと」
膝をつきながら頭を掻きむしっていると、男性研究員が俺に何かを手渡した。手を開いてみてみると、その中にあるのは五円玉が……。今時の小学生だって喜ばないぞ……つか、これを貰って何の意味がある?
「息子がサッカーの試合で活躍できますように……」
「拝むなぁ!神じゃないっつってんだろ!」
「ゲフッ!?」
いきなり俺に対して拝み始めた男性研究員に、全体重を乗せた右ストレートを放つ。何かしら戦いに関係ありそうなことで拝んだのだろうが、その行動は俺の逆鱗に触れる。
吹き飛ばされた男性研究員はズザザー!といった感じで床をスライドし、他の研究員が固まっている辺りまで戻って行った。よし……これで大人しくなったハズ。
「おい、戦いの神がご立腹だぞ!誰か鎮めろ!」
「いや、戦いの神と言うくらいだから……逆に荒れ狂う方がご利益があるに違いない!」
「「「それだ!」」」
「岬さぁん!なんなんですか、この人達!」
「泣くほど嫌なの!?」
俺に向かって「ありがたや~」とか言いながら手を合わせている連中を指さし、岬さんに助けを求めた。岬さんは俺が涙目な事に大層驚いているようで、少ししてから行動に入る。
「ほ、ほら!加賀美君が嫌がってるから!今日の所は解散!次に集まってきたら承知しないわよ!?」
「「「はーい!」」」
だから小学生か、アンタらは……。先ほどとは打って変わり満足気に持ち場に戻る連中を見て、俺は思う……この人たちが開発したISに命預けてんだよなぁ……と。
「加賀美君、大丈夫かしら?」
「……大丈夫じゃないッス」
「そ、そう……。…………じゃあキャノンの調整、今やっちゃいましょうか。ぶっ放せば、きっとスッキリするわよ」
「……やります」
こうして預ける予定だったキャノンは、俺立会いのもと調整と言う事に。広い実験施設が大荒れになるほどにぶっ放してやろうと俺は固く誓う。
普通の人からすれば名誉ある事だろう……。しかしだ「ガタック」で「戦いの神」というのはアカン……。研究員たちに悪気が無いのは分かるが、俺には不名誉極まりないのだ。
後日談ではあるが、俺に五円玉を渡して息子の活躍を願った研究員だが……。息子さん、なんとハットトリックを決める大活躍だったらしい。しかも2対0からの逆転勝利だったとか。
ただの偶然だろうに、おかげで俺には本当にご利益があると思ったのか、大量の五円玉と戦いに関する願い事が書かれている紙が入った小箱が送り付けられた……。親父が不思議そうな目で俺を見てくるのが、痛々しかったとだけ言っておこう……。
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「お孫様とは、どのようなお話を……?」
「…………」
真がラボラトリに向かったすぐ後の事だ。三島は興味本位で聞いているわけでは無く、陸の側近としてなるべく些細な事でも小耳に挟んでおく事を意識していた。
陸が話さないなら、それまでだ。深く追求するつもりは三島にこれっぽっちも無い。陸も真に対して「この件は身内で」と伝えたばかり……普通なら、話す事は無いだろう。……そう……普通なら。
「真は、第二フェーズに入ったようだ」
「!? なんですって!?」
陸は「フェーズ」という表現をして、三島に真との会話の内容を伝えた。三島は「フェーズ」がどんな意味を刺しているのか理解しているらしく、焦ったような様子で陸に詰め寄る。
「いつからだと、お孫様は……」
「兆しは、学年別トーナメント……本格的に入ったのが臨海学校といった所か」
真がISの暴走の話を暈しているため、陸も詳しい事情を呑み込めていない。話から察するに、といった曖昧な感じで三島に伝える事しかできなかった。
「しかし……そんなに前からだとは。申し訳ありません、お孫様の変化に気付けませんでした……」
「何……三島を責めるつもりはない……。それに一番に気付かなければならないのは、私なのだからな……」
陸は悲痛な表情を浮かべ、真に電話した時の事を思い出す。真はあの日……何かを言いかけて、止めた。きっとそれが、真の出したSOSだと、陸は気付けなかった事に後悔する。
「……しかし、お孫様が第二フェーズに入った……となると」
「ああ、「来る」な。近い内に必ず」
ZECT本社の最上階から、遠くの空を眺める。陸は澄み渡った空の先に、いったい何を見ているのだろうか。来ると表現した何かを幻視しているのかもしれない。
「お孫様の技術的準備が整っていない時点での……」
「そういう事になる……。結局、最後は真に頼るしかない……汚い大人だよ、私達は……」
目を伏せながらそう言う陸を、三島は見ていられなかった。同じく三島も目を伏せたまま言葉を発さない。ただただ沈黙のみが、会長室を包んだ。
「近い内……いつ頃になるでしょう」
「さあな、早ければ真が夏休み中……そのくらいだろう」
「ならば我々は、もっと急がなくてはなりませんね」
「フッ……そうだな……仕事に取り掛かろう。三島、この後の予定は?」
「ハッ、それでしたら……」
三島の言葉が、消沈していた陸にやる気を起こさせた。今後のスケジュールを三島に問う。三島は完全に記憶しているのか、何も見ずにスラスラと終日までの予定を述べていく。
陸はしっかりと頷きながら聞いてはいたが、三島は気付いていた。その姿には、いつものZECTグループ総会長の覇気が宿っていない事に……。
本当は簪と本音が遊びに来る予定だった……だけどグダッてしまったから没に。今回更新が遅かった理由の一つ……。一話書き終えて、丸々没にしましたから。
そして、何気にタイトル回収。そういえばISの世界で「戦いの神」って呼ばれてないな~と思い立ちまして、半分悪ふざけながら研究所の人達に暴走していただきました。
まぁ仕事のストレスをこっちで発散させてるってのもありますけど……。さて、次回は簪か本音どちらかを出したいぞ!ようやくデート回だ!
それでは皆さん、また次回もよろしくお願いします。