戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

44 / 143
どうも、マスクドライダーです。

筆が進んだのでもう一話投下。ずっとここまでたどり着くのを、私自身楽しみにしていましたから。

タイトルは戦闘が発生する以外訳が分からないと思いますが、今回は多くは語らず……とっとと本編に行きましょう。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。




VS???(??)ですが何か?

 爺ちゃんから呼び出しがあってから、数日がたつ。今日は夏休みの最終日……午前の内にZECTに赴き、午後にはその足でIS学園に戻る予定だ。

 

 だから今朝も親父に挨拶を済まして出てきた。またしばらく会えなくなるな、と親父は少し寂しそうな様子で、何だか俺も出て行き辛かった感じだ。

 

 それで今の俺は迎えの車の車内にいる。運転手が田所さんで無くて少し残念だ……まぁそれは我儘という物だろう。でも岬さんと違って、田所さんとは会う機会が少ない。できればまた顔を合わせたいものだ。

 

 そうこうしている内に、車はZECTに到着。運転手に礼を言い車から降りると、もう一台の車が見えた。そこから降りて来たのは、岬さんだ。なぜ岬さんが?ZECTの構成員だから不思議ではないけれど……。

 

「岬さん!」

 

「あら、加賀美君。貴方も会長に?」

 

 俺が駆け寄ると、岬さんは顔を上げ俺の事を視界に捉えた。どうやら岬さんも爺ちゃんに呼び出されたらしいな、となると相談事と言うのはIS関連の物事なのかも。

 

「はい、そうなんです。岬さんは、詳しく何か知らないですか?」

 

「いいえ……ラボラトリの主任として、意見を聞かせてほしいって言われて……それっきりよ」

 

 岬さんが相手でも、電話口には話せない内容なのだろうか。盗聴の可能性を考慮して……とか?天下のZECT様に盗聴を仕掛けようなんて輩は居なさそうだ。

 

「とにかく、会長に直接聞くしかないわね」

 

「……そうですね、行きましょう」

 

 俺達はザッと踏み出し、ZECT本社へ足を踏み入れた。岬さんは爺ちゃんである会長に呼び出されているせいか、いつものフランクさは無い。

 

 俺も俺で、緊張している面はある。なんたって、ZECTグループ会長である爺ちゃんからの「相談事」だ。きっとよほどの事に違いない……。俺と岬さんは、幾分か早足で爺ちゃんの元に向かった。

**********

「真、岬主任。よく来てくれた、会長がお待ちだ」

 

 俺達が最上階まで辿り着くと、三島さんがすでに扉の前で構えていた。三島さんは俺達が近づくと、さっさと扉を開く。……三島さんと、挨拶をしている暇も無いと言う事か。

 

 開かれた扉の先には、爺ちゃんがいつものようにデスクで悠然としている。俺達が近づき、三島さんが所定の位置に立つと、爺ちゃんは口を開いた。

 

「二人とも、わざわざ済まないな。特に岬主任は、忙しい中よく来てくれた」

 

「い、いえ……私は……」

 

「ハッハ……そう緊張しなくて良い。孫の前では、私はただのお爺ちゃんだからな」

 

 爺ちゃんは、真っ直ぐ俺の顔を見ながらそう言った。岬さんは「は、はぁ……」みたいな困った様子だ。そりゃそうだ……グループの会長に会うなんざ、緊張もするわ。

 

「それで、本題なんだが……三島」

 

 爺ちゃんに名前を呼ばれた三島さんは、近くの隠し金庫?みたいな所から、ジュラルミンケースを取り出した。かなり厳重に守られているな、俺は思わず息を飲んだ。

 

 三島さんは俺と岬さんに向けて、そのジュラルミンケースを開いた。その中に入っていたものを見て、俺は思わず目を疑う。だが確かに、それは目の前に存在していた。

 

「コレは……ISのコア!?」

 

「かっ、会長!?」

 

 俺も岬さんも、思わず爺ちゃんに詰め寄った。だが……爺ちゃんのスタイルは歪まない。ニヤニヤと楽しそうに慌てる俺達を眺めて、観察しているようだ。

 

「どういう……事ですか!?ZECTは現在ガタックの運用中です。にも関わらずコアを手に入れたという事は……我々を、加賀美君を……信頼していないのですか?!」

 

「み、岬さん……落ち着いて下さい!」

 

 それでは返って爺ちゃんを楽しませることになる。……きっと岬さんの反応は、爺ちゃんの想像通りと言った所だろう。岬さんは冷静になったのか、自分の失態に気が付く。

 

「も、申し訳ありません……出過ぎたマネを……」

 

「フフ……君の反応は、人間として当然の事だ……気にしていない」

 

「はぁ……爺ちゃん。コアを手に入れた理由と、相談事ってのに何の関係があるんだ?」

 

 俺は呆れた様子で爺ちゃんを眺めると、ようやくニヤニヤを止め真剣な表情となった。……ったく、この人は……ある意味俺より性質が悪い。

 

「このコアは、ある種のコネという物で手に入れた。だが……私は専用機を作るつもりはない」

 

「ZECTに取り入りたい輩はごまんと居る。会長は、その辺りの事を心配なさっているのだ」

 

 それは確かに……専用機を作ると言う事は、誰か俺以外にその専用機を譲渡する事になる。そうすれば、ある意味ZECTとは関係の無い人間が入るのは必然だ。

 

「でも爺ちゃん……ISを作る気が無いって、それじゃコレはどうする気なんだ?」

 

「うむ、そこが二人を呼び出した理由だ。実はこのコアを使って、IS以外の物を作ってやろうと思ってな」

 

 爺ちゃんが言うのはISの発表以降、男が日の目を見る事の無いこのご時世に、疑念を抱いていたらしい。もちろん日本にはもとより男尊女卑の傾向が強かった。

 

 ISの発表により、女性の立場が確立された……と言えば聞こえはいい。だがその裏で、男が苦悩している実態もまた覆せない事だ。

 

 調べによると、近年女性恐怖症に陥る男性や男性の自殺者は年々増加傾向にあるらしい。いくら立場が逆転したとはいえ、それではあんまりだ……。

 

 そこで爺ちゃんは考えた。ISの技術を用いつつ、性別に囚われる事の無い「何か」を作れないか、その意志はガタックにも盛り込まれているそうだ。

 

「ガタックにも……?」

 

「あぁ、なるべく既存のISとは逸した形となっているのはそのためだ」

 

「キャストオフ、プットオンも同じく……ですね」

 

「その通り。あえて手動にし、手間を取らせるのには意味がある」

 

 岬さんは俺の隣で「だからそんな注文を……」と呟く。今までにないISを作ってほしい、とでも頼まれたのかもしれない。しかし……立派な考えだな、爺ちゃんがそんな事を考えていたとは。

 

「それで、その「何か」が未だに決まっていない?」

 

「うむ……そこで、二人の意見が欲しいのだ。我がZECTの誇る主任研究員と、我が孫の若々しい発想……そうすれば、何とか形にはなるのではないのかと思ってな」

 

 そうか……会議に掛けるのはその後と言っていたのはそういう意味か。俺と岬さんの意見を聞き、ある程度のイメージが出来上がり次第に、ZECTの重役を集め計画を本格的に進める……と。

 

 ISのコアが出て来たから何事かと思ったが……そんな志があるなら最初にそれを言ってほしい物だ。そういう事なら……と俺も岬さんも、ようやく脳細胞がトップギアだぜ。

 

 そんな訳で、ようやく俺たち四人のプチ会議が始まった。岬さんが研究員らしい意見を述べれば、三島さんがリアリスト的発想で反論し、俺が空気も読まずにブッ飛んだ意見を述べ、爺ちゃんがそれを制する。

 

 そういった感じのやり取りがしばらく続いた。意見も出尽くしたのか、ワイワイとしていた話し合いもなかなか静かなものになってしまう。

 

「……煮詰まって来たな」

 

「うむ……三島。何か無いかね」

 

「何か……と言われましても……。私には些か無茶なお言葉かと……」

 

「申し訳ありません……。本当は私がもっとリードしなくてはならないのですが……」

 

「いや、構わん。何も岬主任一人に頑張ってもらうおうとは思っておらんよ」

 

 爺ちゃんの言葉を皮切りに、俺達は完全に黙ってしまう。……沈黙が長く続くと、爺ちゃんは頃合いと思ったのか口を開こうとする……その時。

 

ヴー!ヴー!

 

 騒がしい音とともに、社内に警報が鳴り響いた。いったい何があったんだ……?三島さんは、爺ちゃんのデスクに置いてある電話のボタンを押すと、確認作業に移る。

 

「何事だ!?」

 

『わ、分かりません……!こちらに高速で接近する何かが……これは、IS!?』

 

「ISだと……!?所属とコア登録は何処の物だ!」

 

『照合結果が出ました!未登録のコア……くっ!識別……不可です!』

 

「真」

 

「分かってる!変身!」

 

『―――HENSHIN―――』

 

 爺ちゃんに促され、俺はすぐさまガタックに変身する。……何の理由があってZECTに向かって来ているかは知らんが、返り討ちにしてやる!

 

「映像は出せないのか?」

 

『ハッ!今すぐに。……出まし……た?な、なんだコレは……!?そんな馬鹿な事が……』

 

「おい、どうした!?報告をしないか!」

 

 三島さんが大きな声を上げ、オペレーターを怒鳴り付けるが……返事が返ってこない。それほど衝撃を受けるISなのか?それなら確認しておきたいのだが……。

 

ドゴォン!

 

「何!?」

 

「岬さんは下がってて下さい!」

 

 会長室の壁を、何者かが突き破った。……恐らく、例のISだろう……。ハイパーセンサーでその存在を補足はしているものの、土煙で良く見えない。奇襲に備えて俺は身構え、岬さんを下がらせた。

 

 さぁ……ようやく土煙が晴れ始めた……。ガシン……ガシン……と歩を進める音が良く聞こえる。そして俺はその両眼でようやく敵勢ISを捉え……言葉を失った。

 

『ほ……報告します……!』

 

 報告なんているもんか……今俺の目の前にいる「コイツ」は、他でもない……俺が良く知っている。

 

『敵勢ISは……』

 

 敵勢ISは……。

 

『ガタックと酷似したISです!!!!』

 

 仮面ライダー……カブト……!!なんだ!?俺は夢でも見ているのか!?ZECTの作ったISは、ガタックだけのはずだろう!?それがどうして……こんな!?

 

『マスター!ボーッとしている暇はありません!』

 

 混乱していた俺は、思わず棒立ちで立ち尽くしていた。目の前にいるカブト マスクドフォームは、カブトクナイガンをこちらに向けて、乱射しながら接近してくる。

 

ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!

 

「ガッ!ぐっ……ぐあっ……!」

 

 突然の攻撃に、俺は全く対処しきれない。見事に棒立ちのまま全弾命中し、既にカブトは俺の目の前……しまったと思った時にはもう遅い。カブトは持ち手を斧に切り替え、俺に強烈な一撃を放つ。

 

ガィン!

 

「ぐああああ!」

 

 これは……アバランチブレイクのモーション!?俺は吹き飛ばされながらそんな事を考えているが、奴は手を休めない。そのまま宙に浮き俺の頭を掴むと、俺の後ろの壁に叩きつけた。

 

 壁はISの激突には耐える事が出来ず、そのまま突き破られ俺とカブトは空中に躍り出た。簡単に俺の頭を離したところを見ると、どうやら単純にフィールドを変える目的か。

 

『青子!アレは一体なんだ!』

 

『……スキャニングが無効化されます。唯一分かるのはカブトと言う名称のみ』

 

 どこからどう見たってそうだが……とにかく、奴を叩き落としてから聞き出すしかないか……。俺は両肩をガタックガトリングに変更、的が小さいから少しでも手数が欲しい。

 

『…………』

 

「なっ、待ちやがれ!」

 

 俺がガトリングを展開するのと同時くらいに、カブトは背を向け距離を置き始める。俺はその背中にガトリングを乱射する。当然だが、カブトは避け切れていない……何が目的だ。

 

『いけませんマスター!射撃を中止してください!」

 

『!?』

 

 青子の子必死な様子に、俺は急いで射撃を止めた。すると、カブトは近くにあったビルの後ろに回り込む。危ない……!あのままではビルにエネルギー弾を撃ち込むところだった。

 

 ここはZECT本社だが、何も本社がビル一本という訳ではない。カブトが後ろに回ったビルもまた本社の一部だ……あいつ!人のモノだと思って盾に使いやがって……。

 

『来ます、マスター!』

 

ガシャアアアアン!

 

「こっつの女……マジもう許さん!」

 

 あろうことか、カブトは向こう側からガラスを突き破ってこちらに迫ってきた。構えているのは斧か、もうさっきのは喰らわんぞ。

 

 と思った矢先の事だ。カブトはクナイガンからクナイ部分のみを抜き、残った斧のパーツをまるで手裏剣のように投げつけてきた。斧は横に避けるだけで済んだが、逆手に構えたクナイが迫る。

 

ガァン!ギチチチチ……!

 

「くっ!」

 

 何とか腕で防ぐことには成功したが、ダメージを受けてしまったには変わりない。俺は防いだ衝撃を利用し、大げさに後方にノックバックする事で追撃を避けた。

 

『マスターとにかくキャストオフを、この環境下でのマスクドフォームは不利です』

 

「同感だね……。キャストオフ!」

 

『―――CASTOFF CHANGE STAGBEETLE―――』

 

 守らなければならないものが多いこの状況だ……遠距離攻撃を無暗に使うと、カブトは同じくビルを盾にするだろう。それならば、近接戦闘主体で戦わなければ仕方ない。

 

『キャストオフ……』

 

『―――CASTOFF CHANGE BEETLE―――』

 

 俺がキャストオフをすると、カブトも同じくライダーフォームへとなった。カブトの角と、ガタックの顎が同時に上にせり上がり、目を光らせた。

 

 しかし……今確かに喋ったが、音声加工されていたな……。女であることには違いないのだろうが、これではどんな年齢層なのかも予想がつかない。

 

『来ます』

 

「考える暇はないか……!」

 

 カブトはクナイを構え、こちらに突っ込んでくる。俺はそれをいつでも迎え撃てるように、ダブルカリバーを両手に取った。

 

 しかし、クナイで仕掛けてくる攻撃は刺突。刺突は斬撃と比べると、非常に防御がし辛い攻撃だ。俺は迷わず受け流す事を選択し、ダブルカリバーを横薙ぎに払った。

 

 すると、クナイの進路は簡単に別の方向へと進む。よし……チャンスだ!俺は体を横に回転させながら、プラスカリバーを縦に振るった。

 

『…………』

 

 しかし同じくカブトも体を急にグルンと反転させ、もう一度刺突を仕掛けてきた。俺はプラスカリバーを振り始めていたため、とっさの回避が行えない。

 

ギギィィィィ!!

 

 クナイが思い切りガタックの胸部装甲に突き刺さった。嫌な金属音を立てながら、豪快な火花を上げる。そしてまたグルンと回転……。回転の勢いを利用した一撃は、かなり深く胸部装甲を抉っているではないか。

 

『焼け焦げている……どうやら、高熱を持たせる仕組みのようですが……並の温度ではありませんね』

 

『あぁ……』

 

 その通り……エネルギー電子が送られているため、超高温で焼き切る武装なのだが……ここまで再現されているのか……。なんて感心していると、カブトはまた刺突攻撃を仕掛けてくる。

 

「そう何度もやらせる……かっ!」

 

ガイイイイ……ン

 

 俺は下から潜り込ませるように、クナイでなくカブトの腕目がけてプラスカリバーを振り上げる。思い切り弾かれたせいか、カブトはその手からクナイを離して、高く真上へと飛んでゆく。

 

 よし、流石にこれを逃す手は無い!俺はダブルカリバーを同時に交差させるように振り下ろす……のは未遂に終わってしまった。

 

ガッ!

 

「なんだと!?」

 

 俺の交差斬りは手首を足で抑えられることにより、出だしで止められてしまう。しかも抑えられた腕を支点とし、カブトは俺より上へと躍り出る。

 

 そのままクナイガンを手中に収めると、縦回転をしながら急降下。そのまま俺の背中を切りつけた。チクショウ……何もかもが裏目に出るぞ……!

 

『落ち着いて下さいマスター。普段のマスターならば、対処できているはずです』

 

『そう……だな、悪い』

 

 確かに今の俺は、盛大に焦ってはいる。青子はそれを見透かしたのか、俺にとりあえず落ち着くようアドバイスをくれる。…………よし、たぶん大丈夫だ……。

 

『…………』

 

 その後もカブトの猛攻続く、だが反撃はできないものの対処はできている。不意を突いた動きやトリッキーな攻撃の数々も、防御、回避共に完璧だ。

 

ガン!ギャイン!ガギッ!

 

(とはいえ……反撃できない事には……)

 

 奴はガタックガトリングを受けた以外は無傷……。ガトリングも手数がある分大したダメージは入っていない。このままではジリ貧も良い所だ。

 

『マスター、クロックアップを使っては?』

 

『いや……一撃で仕留められない内は止めた方が良い』

 

 いくらダメージを与えられないとしても、それは流石に短絡的すぎる。リスクに対してリターンが見合わない。それでなくても劣勢なのはこちらなのだから。

 

『ですが、奴は相当な手練れです。恐らく、候補生レベル……それ以上かもしれません。このままでは、何の反撃もできないまま終わります。多少のリスクは負うにしても、一撃大きいのをぶつけてやりましょう』

 

 ……それも、一理ある。なにもクロックアップ中に出来る事は、ライダーキックだけでない。出来るだけ多くのダメージを与え、制限時間ギリギリでライダーキックを当て、さらにクロックオーバー後も追撃……確かにそれならば、悪くないかもしれない。

 

『チッ……やるしかなさそうだな』

 

『……ただし、実行に移す際は引き付けて下さいね』

 

『了解』

 

 俺は不意打ち気味にダブルカリバーを無理矢理押し込む、するとカブトはいったん体制を立て直すためか、大きく後ろに引いた。思惑通り、カブトはこちらに向かって来る。これを十分に引き付け……今だ!

 

「クロックアップ!」

 

『クロックアップ……』

 

「!? 馬鹿な!?」

 

『『―――CLOCK UP―――』』

 

 俺のクロックアップに合わせ、カブトもクロックアップを使用した。なぜだ!?クロックアップはISになったライダーには搭載されないハズ……。ハズなのに、なぜカブトもクロックアップが使える!?

 

 いや、そりゃあカブトだから使える可能性を多少は考慮した方が良かったかもしれないが……。とにかく今はそう言ってる場合ではない。クロックオーバーする前に何とかしなくては!

 

『申し訳ありません……マスター。完全に計算外で……』

 

『今は言っても仕方ねぇ!』

 

『…………』

 

 見ればカブトは、カブトゼクターに手を添えている。……となると、ライダーキックか?それと同等の威力を誇るのは、こちらもライダーキックしか持ち合わせていない。

 

『『―――ONE TWO THREE―――』』

 

「ライダーキック!」

 

『ライダー……キック……!』

 

『『―――RIDER KICK―――』

 

 ガタックには黄色のイオンエネルギーが、カブトには青いイオンエネルギーがそれぞれ足に伝わる。さぁ……勝負だカブト!

 

「うぉらぁ!」

 

 俺はいつものボレーキックのフォームで蹴りだすが、どういう訳かカブトは全く動くそぶりを見せない。それならば……そのまま蹴りぬくのみ!

 

『プットオン……』

 

『―――PUT ON―――』

 

「!?」

 

 カブトは俺のライダーキックが当たる寸前に、腕部のみをプットオンした。アーマーが再形成された時の衝撃を利用され、ライダーキックは簡単に弾かれてしまう。

 

「しまっ……!?」

 

『…………』

 

 カブトはそのまま俺の頭部を狙うと思いきや足でクナイを押し出すようにして、ガタックゼクター本体への攻撃を仕掛けてくる。

 

 これは、まずいぞ!ガタックの弱点を思い切り突かれている!今まで戦った連中がガタックゼクターを狙わなかったのは、恐らくガタックのアーマーを本体だと勘違いしていたからだろう。

 

 だがあくまでガタックはガタックゼクターが本体だ。ゼクターを破壊されると言う事は、コアを破壊されると言う事……それだけは避けなくては……。俺は思わずクナイを掴んだ。

 

『……ガードが下がったな』

 

「何!?」

 

 俺がクナイを掴んだ瞬間に、カブトは足をパッと離す。そしてそのまま俺の頭部に思い切りの回し蹴りを放った。ズシィッと音が走ったと思うと、すさまじい衝撃が襲って来る。。

 

「ぐああああああああ!」

 

ガシャアアアアン!

 

 思い切り吹き飛ばされた俺は、ZECT本社のビルに突っ込んだ。俺が転がり込んだのは、どうやらオフィスのようだ……ゴロゴロ転がっても、未だに勢いは衰えない。

 

『!? 急ぎ体勢を立て直してください!二度目が来ます!』

 

『―――ONE TWO THREE―――』

 

 ハイパーセンサーで確認してみると、確かにカブトはフルスロットルスイッチを押しながら俺を追撃しているらしい。体勢を立て直したいのは山々だが……勢いが……止まらん!

 

『ライダー……キック……!』

 

『―――RIDER KICK―――』

 

 俺が転がって行った先は、オフィスの壁……今度も突き抜ける事を願っていたが、そうはいかないらしい。俺は壁に叩きつけられ、座ったままもたれかかるような体制になっている。気が付いた時には……カブトの足は目の前だ。

 

ズゥン!

 

 カブトは俺を壁に押し込むようにして、蹴りを放つ。壁とカブトの足に挟まれるような形となり、先ほどのキックとは比べ物にならないほどの衝撃が俺を襲った。

 

「ぐが……ぁ……」

 

 しかもカブトは、エネルギーが残る限りは足を俺に押し付けたままだ。その内に頭部のアーマーが耐えきる事が出来ず……。

 

ミシミシミシ……!バギィ!

 

『『―――CLOCK OVER―――』』

 

 頭部のパーツが空中に散るのと同時に、クロックアップは終了を告げる。俺が突き破ったガラスも、吹き飛ばしたデスクなども、一気に世界が等速へと戻った。

 

『マスター……先ほどの私自身のダメージのせいか、アーマーの形成を保っていられません……』

 

 はは……何それ絶望的……。次の瞬間には、ガタックのアーマーは量子変換され解除された。その上いつもの筋肉痛……ダメだ、詰んだな。壁を背にもたれかかっている俺を、カブトはしばらく眺めていたが、やがて胸ぐらをつかみ放り投げた。

 

「ぐぉっ……!」

 

 またもやゴロゴロと転がり、オフィスの中心辺りで大の字となった。そのままカブトは近づいて来て、俺の腕を思い切り踏みしめた。

 

「ぬぅ……!お前……何か個人的に恨みでもあるのかよ!」

 

『…………』

 

「何とか言ったらどう……」

 

 俺が言い終わる前に、今度は俺の腹部をサッカーボールのように蹴り込んだ。俺は息を思い切り吐き出し、むせ返る。まともに息が出来なくて、意識が朦朧とし始めてしまう。

 

『…………何か言い残す事は?』

 

 カブトはクナイを俺の首元に近づけ、そんな事を言ってきた。俺はカブトに対して、思いっきりサムズダウンを見せつけ、精一杯の憎たらしい表情で告げる。

 

「地獄に落ちやがれ」

 

『…………』

 

 気に障ったかどうかは知らんが俺が言葉を述べ終わると、カブトはクナイを振り上げた。ここまでか……俺は半分諦めた様子で、目を閉じた。

 

「待て!」

 

『…………』

 

「爺……ちゃん?馬鹿野郎!なんで来たんだ!」

 

 俺の目の前に現れたのは、他でもないZECT会長である加賀美 陸だ。その後ろには三島さんが控えているが、警戒させないためかかなり遠い。

 

「これ以上……私の孫を甚振るのは止めていただこう」

 

『…………』

 

「君は何が目的かね?金か?それとも単純なテロ行為か?それとも……私の首か?孫の命以外であれば、望みは聞こう」

 

「爺ちゃん……よすんだ……頼むから止めてくれ!」

 

 俺は懇願するように、爺ちゃんへと手を伸ばす。自分の首だと……?ふざけるな、俺の命を守るためにそんな事はさせてたまるか!

 

『…………黙っていろ』

 

ザシュッ!

 

「へ……?あっ……!?ああああああああああああ!!!!」

 

 一瞬何をされたのか分からなかった。カブトは伸びた俺の右手を再び足で押さえつけると、もう片方の足でストンピングをするように、俺の掌にクナイを突き刺した。

 

 クナイは完全に俺の掌を貫通し、床に突き刺さっている。熱い……熱くてたまらない!俺はあまりの痛みに、叫ばずにはいられなかった。

 

「孫を甚振るのは……止めろと言ったハズだが?」

 

『…………主導権はこちらだ』

 

グリグリ……!

 

「ヒッ!ギ……イ……ああっ!」

 

 カブトはクナイを更に俺の掌へと押し込む。情けない声が出るのも、我慢が全くできない。それほどまでに、俺は痛がっている……。

 

「……用件を言いなさい」

 

『…………そのコアを、渡してもらおうか』

 

 指さした方向に居るのは、三島さんだ。その手には確かに例のジュラルミンケースが大事そうに握られている。だがダメだ……三島さん……渡しちゃダメだ……!

 

「三島」

 

「しっ、しかし!」

 

「三島ぁ!私のいう事が聞けんのか!」

 

「くっ……!」

 

 爺ちゃんに気圧されたのか三島さんはジュラルミンケースを開き、カブトに向かってコアを投げつける。するとカブトは、何の迷いも無くクナイを引き抜いた。

 

ズリュッゥ……!

 

「がああああああああああああ!!??」

 

 クナイが引き抜かれると、クナイに付いていた俺の鮮血が辺りに舞う。チクショウ……どうしてここまでされて気絶が出来んのだ……。クナイが抜かれたことにより、俺の掌からはより一層血が流れ出る。

 

『…………次は殺す』

 

 確かにそう呟いて、カブトは何処かへと飛んで行った。それを確認すると、爺ちゃんは俺に向かって走って近づいてくる。

 

「真!真!しっかりするんだ!」

 

「爺ちゃん……ゴメン!俺…………俺……爺ちゃんの夢を……!」

 

「そんなものはまたやり直せばいい……もう何も喋るな。真は、何も心配しなくていい」

 

 俺は必死の形相で、涙を流しながら爺ちゃんの襟元を掴んだ。爺ちゃんのスーツに血がべったりとこびり付くが、正常な判断が出来ない今の俺には気にしている暇が無い。

 

「三島!医療班を!」

 

「すでに手配しております!」

 

「ならば応急処置だ!私の孫を死なせるんじゃない!」

 

 俺が最後に聞いたのは、この辺りまでだ。カブトに痛めつけられたのと、血が足りないせいで意識が暗転していくのを感じた。俺は、ゆっくりと目を閉じる。

**********

 とあるホテルのスイートルーム……いかにも華やかなこの一室は、ただ者ではない連中の集まりだ。室内には粗暴な様子でソファに転がっている女性のみ。

 

ガチャリ……

 

 そこに部屋の主である女性が入室した。豪華なドレスに身を包んだ女性は、リビングに粗暴な女性しかいないことを確認すると、キョロキョロと辺りを見回した。

 

「「ソル」は帰ってきていないのかしら?」

 

「あ゛~……?「ソル」の奴なら帰って来るなり寝ちまったよ」

 

 どうやらドレスの女性はソルと呼ばれる人物に用事があるらしい。それでいて、ソルもこの部屋の住人の一人らしい。ドレスの女性は、頭が痛そうな仕草を見せる。

 

「はぁ……あの子は……。報告をしなさいって言ったのに……」

 

「スコールよぉ、マジであのガキいっぺんブチのめした方が良いんじゃねーの?ってか、やらせろよ、あのガキだけはM以上に気にくわねぇ」

 

「貴女じゃ勝てないわよ、オータム」

 

 オータムと呼ばれた女性はケタケタとスコールと言う女性に語っていたが、勝てないと断言されてかなり面白くなさそうな表情だ。

 

「私があんなガキに……」

 

「勝てないわよ、あの子は選ばれた存在だから」

 

 怒りをあらわにしたオータムに対しても、スコールは意見を曲げない。するとオータムは、何かを思い出したかのように大人しくなる。

 

「……ッチ!ソルに勝てる可能性があるとすれば……加賀美 真だけか……」

 

「そうね、あの子も同じく選ばれてるもの。……ところでオータム。ソルはあの子に対して何か言っていた?」

 

「「期待外れだった。手加減してあれではな」……とかなんとかスカした事をほざいてたぜ」

 

 これまたオータムは面白くなさそうにソルの言っていた言葉をスコールに伝えた。するとスコールは、笑顔を浮かべて楽しそうにしている。

 

「そう……それなら計画に差し支えは無いわね」

 

「だろうな~……。とっとと加賀美 真にはご退場願わねぇと」

 

「ええ、彼はすでに用済みだもの。熟れ過ぎた果実は、早く摘み取ってしまわないとね……」

 

 オータムとスコールの二人は、聞くものを凍りつかせてしまいそうな声色で笑う。常人ならば聞いているだけで気が狂ってしまいそうなほどだ。

 

 回りはじめていた歯車は、加速の一途をたどるばかり……。止められない歯車は、多くの人……世界を巻き込みながら真に大きな運命を背負わせる……。

 

 

 




カブトは連載前の構想を練っている段階から出す予定でした……もちろん敵としてね。

投稿を初めて間もないころ「カブトは出ますか?」みたいなことを聞かれても「予定はしていません」とか言ったハズ。出さないとは言ってない!まぁ……もし出さないって言ってたらゴメンなさいね……何でもするんで許してください。

ちなみにですが、天道ではないです。これはしっかり明言しておきます。ISの登場人物でもありません。「ソル」と呼ばれたオリキャラがそうですね。

さて、夏休み編はこれにて終了となります。次回から学園祭編へと向けてスタートです。果たして真の容体やいかに……。

それでは皆さん、次回もまたよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。