戦いの神(笑)ですが何か?   作:マスクドライダー

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どうも、マスクドライダーです。

タイトルがなかなか思いつかず……嵐の前の静けさを採用。静けさ、と言う事で今回も動きが少ない回ですね、申し訳ない。

まぁグダグダゆっくり自分のペースで……とは思っているんですけどね、どうにも……こう……焦りすぎる部分があるみたいです。

という訳で、私は私らしく行きますので、どうかゆっくりついて来て頂けると幸いです。ええ、本当……幸いです……。

それでは皆さん、今回もよろしくお願いします。


嵐の前の……(大会目前)ですが何か?

「なぁ……真。ちょっと……」

 

「朝からなんだよ……」

 

 一組に顔を出すと、いかにも困ったという風な一夏に声を掛けられた。俺に相談事という時点で、何か嫌な予感しかしてこない。まぁ……聞くだけ聞くけど……。

 

「今度のトーナメント、組む相手とかって決まってたりするか?」

 

「おう、勿論だ。……というかその言い方、お前まさか……」

 

 わざわざそういう聞き方をしてくると言う事は、一夏は組む相手が居ないのでは?そう思いつつも、そこをストレートに指摘してはいけない気がして、俺は少し遠慮気味に聞いた。

 

 俺が何を言いたいのか察したらしく、一夏は更に困った顔でコクコクと頷いた。……どうやら、俺が最後の頼みの綱だったようだ。この学園の専用機持ちは、俺を含めて11名……嫌でも余りが出る数だな。

 

 大会運営委員会はどうなっとるんだ……?何故、奇数でタッグトーナメントにした?この間の大会がお流れになったのは十分に影響しているのだろうけど……こうなるのは目に見えていたろうに。

 

「はぁ……。職員室に行くぞ」

 

「職員室?行って、どうするんだよ」

 

「まぁ一つは、組む相手がいねぇって事を報告と……もう一つは、考えがある」

 

 そう言って、俺は職員室の方へ歩き出した。一夏は数秒ポカンとしていたが、俺が睨んでやると『あっ、俺もか……』みたいな顔をして付いて来る。アホゥが……主に、お前の為だろうに……。

 

 俺が用事のある教員は、もちろん織斑先生。ISの世界において絶対的な地位を築いている彼女に、とりあえずの報告は外せない。当然、一夏は仕置きが待っているだろうけど。

 

「馬鹿者……。と、言いたい所だが……今回の件は、私も問題視はしていた。しかし、よりによってお前が余りか、織斑」

 

「はい……」

 

 てっきり出席簿アタックが飛び出るかと思ったが、織斑先生は難しい顔をしながら手を止めた。弟だからか?とか思ったが、この言い方だと、恐らく誰が余っても咎める気は無かったのだろう。むしろ、こんな事を考えている俺の身が……。

 

スパァン!

 

「加賀美、何か言ったか?」

 

「いえいえ、何も。ご指導ありがとうございます」

 

 やっぱりな、やっぱりエスパーだよこの人……絶対に『弟だからか?』に反応して叩いてるよ。出席簿で思い切り頭を叩かれた俺は、久々の皮肉を言いながら、深々と頭を下げた。

 

 織斑先生は何か言いたそうな様子で、腕と足を組みながら椅子に背を預けた。そうした所で、ようやく俺がこの場に居る事を疑問に思ったらしい。

 

「で?お前は何をしに来た」

 

「はい。この件で、提案があります」

 

「そうか……聞かせてみろ」

 

「俺と一夏タッグで、エキシビションマッチでもしたら良いんじゃないかと」

 

 そもそもこの大会の運営目的は、昨今のIS研究所を狙ったテロ行為に対する、専用機持ちの技術向上として設けられた。なのに一戦も一夏が参加しないのは、あちらさんも納得しない事だろう。

 

 そこで、トーナメントと関係ない枠組みで、他では見れないであろう『男性IS操縦者ダッグ』と、他の専用機持ちワンペアとのエキシビションを行おうと言う目論見だ。

 

「なるほどな……いい案かもしれん。だが加賀美、お前のコンディションまでは合わせられんぞ」

 

「気合でカバー、ですかね」

 

「…………」

 

 そこについては、正直な話そう言うしかない。織斑先生も重々承知はしているようで、難しい顔をしながら考え事を始めた。大会日程が、数日かけて行うのなら良いのだけれど。あっ……でも決勝に残ったら同じ事か。

 

「……加賀美とガタックの調子を見て、当日に判断する事にしよう。無理そうならば……織斑、今回の出場は運が無かったと諦めるのだな」

 

「まぁ……真に強要はできないですし。……分かりました」

 

「他にないのなら急いで教室へ戻れ、遅刻は許さんぞ。諸々の事は、私がやっておく」

 

「うっす、失礼します」

 

 軽く脅されたので、俺と一夏は指示通りに急いで職員室を出た。しかし……やっておく、か……そうやってビシッと言えるあの人は、やはりカッコイイ大人の女性なのだろう。

 

 とにかく時間が無さそうなので、一組を目指す事にしよう。……ったく、本当に、朝からドタバタと忙しい事だ。そんな最中、一夏は俺に申し訳なさそうに言った。

 

「真、ありがとうな。なんか、巻き込んじゃったみたいでさ」

 

「ハッ、今更だな。テメェに関わって、巻き込まれなかった事の方が少ないっての」

 

「うっ……。す、スマン……」

 

「謝んなよ。少なくとも今は、楽しませてもらってる」

 

「? なんか言ったか?」

 

 馬鹿が、聞こえないように言ってるに決まってんだろうが。その上コイツは難聴気味だから、ボソリと呟いた俺の声は、完全に届いていないようだ。

 

「空耳じゃねぇ?オラ、急げ急げ」

 

「アダッ!?蹴る事ないだろ……って、速!?」

 

 一夏のケツをゲシッと蹴り上げてから、ダッシュをかけた。もう既に、一夏の声なんて届かないくらいの先に俺はいる。どうにも追いかけるのが精一杯な一夏を置き去り、俺は一組へと駆け込んだ。

**********

「タイミングが悪かったか……?」

 

「わ~ぉ、いっぱいだね~」

 

「珍しい……かも」

 

 昼休みとなり、昼食を取りに来たのは良いのだが、どういう訳か人がいつもより多い。三、四人用の席は見る限りでは埋まってしまっている。かと言って、俺達三人で、それ以上の席を使うと迷惑だろう。

 

 悪い事に、高をくくって俺達は既に食事を受け取り済みだ。はてさて、困った……どうしたもんかねぇ……。多少の邪魔は妥協し、大きめのテーブルを使わせてもらおうか?

 

「むっ……真か。どうしたのだ?立ったままで」

 

「おぅ、篠ノ之……それがな」

 

 背後から現れた篠ノ之に声を掛けられ、事情を説明した。すると篠ノ之は、困った俺達に救いの手を差し伸べてくれるらしい。

 

「それなら、私達の席には余裕があるぞ」

 

「見えた見えた~。十人用の席だね~」

 

「どこも開いていなかったから仕方なしにな……。真達が来てくれるのなら、むしろ調度いい」

 

 本音が眺めた先を見てみると、パーティーとかを想定しているのかは知らんが、無駄にでかいテーブルに、専用機持ち達が談笑していた。どうやら順番に注文を行っていたらしい……最後が篠ノ之……?

 

「あ~……有難いが、一夏が居ると少し……」

 

「い、一夏なら……居ない。真が何の心配をしているかは分からんが……」

 

「めずらしいね~……しののん達とおりむ~が別々~」

 

「タッグを断った手前……何か、気まずくてな……他の皆もそうらしい」

 

 言いたい事も、気持ちも分からなくもないが……それは返って一夏を落ち込ませないだろうか?まぁ……乙女の心は、計れないほど複雑なのであろう。とりあえず、一夏は居ないにしても、簪の了承は得ておかなくては。

 

「って……事らしいが、どうだ?簪」

 

「うん……彼が居ないなら、平気……」

 

「では、私は注文をしてくるぞ。待たなくていいから、先に座っていてくれ」

 

 そう言いながら、颯爽と篠ノ之は食券売り場へと消えていく。なんつーか、颯爽って言葉が良く似合うな、篠ノ之は……。武士っ娘なせいか、行動一つ一つがイケメン過ぎる。

 

 とにかく、残りの連中の元に向かう事にしよう。事情を説明しつつ席に着いたが、向こうはそんな事をせずとも歓迎ムードそのもの……調子が狂う。俺がこいつらを邪険に扱っていたせいだろう……反省反省。

 

「済まない。待たせたな」

 

「気にすんな、この混み様じゃ仕方ねぇ。んじゃ、始める……」

 

「ちょいまち。アンタ……いい加減にそっちの子、紹介してくれない?」

 

 篠ノ之が注文を終え、席に着いたのを確認すると、俺が音頭を取って食事を始めようとした。しかし、それを遮り鳳がピッと簪を指さした。それに伴い簪は一瞬ビクッとして、俺の方を眺める。

 

 確かに、言われてみれば紹介できないずくだった。一夏が居ない今なら、絶好の機会だろう。しかし、別に食事の手を止めてまで、話す事では無い。

 

 と言うか、聞く側は……って意味だけど。そう言う訳で、俺だけ食事には手を付けず、簪を今まで紹介できないでいた理由を説明した。内容が内容なため、候補生の専用機持ちは顔つきが微妙になる。

 

「それは……なんとおっしゃたら良いのでしょう……」

 

「うん……更識さんが、一夏を避けたくなるのも分かるし……かと言って、一夏も悪い訳じゃ……」

 

「簪で良い……。私も……彼が悪くないのは、頭では分かってるつもりだから……」

 

 各国の候補生的にも、分からないでも無い事情らしい。だが……鳳の奴は、気に食わんようだな……何がって、そりゃあ倉持技研がだろう。もし鳳だったら、無理を押してでも完成させてただろうなぁ……。

 

「だが戦友、簪よ。お前たちは、トーナメントにエントリーしていなかったか?」

 

「それなら問題ないよ~。私達~頑張ったもんね~」

 

「俺はほとんど何もしてないけどな……」

 

 ボーデヴィッヒは恐らく、専用機が未だ完成していないことを危惧して、そんな質問をしたんだろう。すると本音が、エッヘンと得意げに打鉄弐式が完成するまでの経緯を話した。

 

「……もしや、学園祭前に本音や相川達が話し合っていたのは……」

 

「そ~だね~、大半が打鉄弐式の件について~」

 

「真さんが以前に、いずれわかる……と言ってらっしゃっていましたわね」

 

「6、7割完成していたとはいえ……やるじゃん、アンタ達」

 

 鳳の賞賛の言葉に、本音は照れを隠せない様子だ。さっきも言ったが、俺は何もしていない同然なので、特に反応がる訳でも無く。簪は簪で、非常に謙虚な姿勢で『そんな事は無い』と呟いた。

 

「僕のリヴァイヴも見てもらおうかな?」

 

「お~け~お~け~。仕事は遅いけど~確かな品質を約束するよ~、でゅっちー」

 

「でゅっちー……?」

 

 仕事が遅いのは全面的に認めるんだな……本音。んでもって『でゅっちー』って……また珍妙なアダ名をつけたもんだ。俺の『かがみん』は比較的マトモだと、心得ておかなくては。

 

 それにしても……簪が割と馴染めているな……。もちろんいい事だが、多少の意外性は感じてしまう。まぁ……簪も出会った頃よりは社交的になったと言う事らしい。

 

「ボーッとしてたら貰っちゃうわよ……っと!」

 

「だぁ!?テメェ……鳳!俺の唐揚げ!」

 

 考え事をしていたら、鳳が俺の方までヒョイと身を乗り出して、鶏のから揚げを一つ掻っ攫っていった。アレですよ、言えばあげない事も無いんですよ?それをお前……無許可で……!

 

「……ねぇ、真」

 

「んだよ、デュノア!」

 

「やっぱり……。今更だけどさ、どうして僕らを苗字で呼ぶの?」

 

 満足気で唐揚げを頬張る鳳に、ぐぬぬ……と恨めしい視線を向けていたら、突然デュノアに声を掛けられた。何事かと思ったら、俺が五人に対しての呼び方に関してらしい。

 

 デュノアの言葉を皮切りに、それぞれ『そう言えばそうだ』みたいな言葉を口々にした。別段気にする事でもねぇと思うんだが……。それこそ、理由を聞かれればただ一つ……単純な事だ。

 

「聞け、お前ら。そんなもん、許可を貰ってねぇからだよ」

 

「……許可……とは、私達を名前で呼ぶ……か?」

 

 篠ノ之の言葉に『おうよ』と同意すると、ほんの数秒その場がシーンと静まり返る。そして、みな一様にして笑いを堪えるかのように口元を抑えた。簪と本音も例外ではない。

 

「り……律儀だね…… 変な所で……フフッ……!」

 

「戦友がまた……真顔で言うと……!」

 

「み、皆さん……笑っては真さんにしつれっ……フフッ……フフフフ……」

 

「アッ、アハハハハ!だっ、だめ……無理!耐えられないわよそんなの!」

 

 鳳が耐えきれなくなり、爆笑すると、それが導火線に火をつけたらしい。人目をはばからず、女子七名はアハハと声を上げた。……なんだろうか、今すぐ逃げ出したい気分だ。

 

 って言うかなんだ?俺はそんなに笑われるようなことを言ったのだろうか。……違うか、俺のイメージと合わない発言だからだろう。あぁ、そうとも、律儀だぞ俺は……悪いか!

 

「そんなこと気にしなくとも、私達は真を勝手に名前で呼び始めたぞ?」

 

「俺だって、呼ばれる分には気にしねぇよ」

 

「だったら……戦いの神……」

 

「簪……いつ聞いた?誰から聞いた?言え、とりあえずそいつ三回殺すから」

 

 前に簪をラボラトリに連れて行ったときは、神としか呼ばれなかったと記憶している。それをお前……詳しく知ってるとか、あの変態どもの誰かが吹き込んだに決まってる!

 

 事情を知らない奴らは、何の事かと聞いて来るが、慌ててはぐらかしに……と言うか脅しにかかった。とにかく、これ以上の詮索をされたならば、俺はしばらく不登校待ったなしだぞ。

 

「まぁ結論として、名前で呼んでいいなら……そうさせてもらうが」

 

「わたくし達からすれば、ようやくの事ですわ」

 

「そうだな、既に二学期だ」

 

 つまりは、名前で呼んだ方が良かった……と言う事なのだろうか。ボーデ……もとい、ラウラの言葉に、俺が苗字で呼んでいた面子は、うんうんと頷く。

 

 ……何か期待を込めた眼差しで見られているような。別に今すぐじゃなくったって、名前を呼ぶ機会があれば次からはそうするっての。俺も変に意識はせず……いつも通りでいなくてはな。

 

 だが食事中に、何とかして名前を呼ばせようとするものだから、天邪鬼な俺はかえって呼び辛くなってしまう。結果……この昼食中に奴らの名前を呼ぶことは一度も無かった……。

**********

「やっほ~……って、お姉ちゃんだけか~」

 

「あら本音……ケーキでも食べに来たの?」

 

 本音が生徒会室へ入ると、そこに居たのは姉である虚だけだった。かと言って、これが珍しいかと聞かれれば逆だ、IS学園の生徒会は集まりが悪い。

 

 だが、決してサボりと言う事でも無い。各々が自分のすべきことをしている。今日で言うなら、真と一夏は楯無に絞られており、簪は休養を取っている。

 

 教養に至っては、本音も同じ事だ。最近根を詰め過ぎていたから、との理由で打鉄弐式の最終調整は見送りとなっている。そこで本音は、顔を出していなかった生徒会室まで足を運んだという訳だ。

 

「ん~……別にケーキが目的じゃないけど~。あるなら頂きま~す」

 

「そう、冷蔵庫に入ってるから」

 

 虚はそうして、冷蔵庫を指さしつつ、微動だにしない。同じく更識の使用人である本音に、わざわざ動く事を決してしないのは、なんとも虚らしい。我儘を言っても藪から蛇を出すだけなので、本音は大人しく自分で動いた。

 

「今日は~……っと~。ち~ずけ~き~!」

 

「こら、食べ物で遊ばないの」

 

 本音は、まるで自分の斜め上辺りにカメラでもあるかのように、皿に乗ったチーズケーキを天高くつきあげた。袖で手が見えない分、どうにも危なっかしい。

 

 虚に注意された本音は、皿を安全な位置まで下げると、その場でクルリとターンし、お尻で冷蔵庫の戸を閉じた。本当はお茶も用意するつもりだったが、面倒になって止める事にした本音は、ゆっくりと席に着いた。

 

「お姉ちゃんは~、お仕事~?」

 

「見ればわかるでしょう」

 

 虚に指摘され、それもそうだと本音は頭を掻いた。確かに虚は、生徒会の仕事をしているが、いつもかつもと言う事では無い。それこそこんな寂しく一人でずっと仕事など、なんと酔狂な事だろうか。

 

 今日虚がこの場に居るのは、楯無が生徒会室に帰って来る予定があるからだ。どういう訳か、楯無は真が生徒会に来てから、ほとんど仕事をサボらない。むしろ、積極的に仕事を潰している。

 

 留守を預かる意味も込めて、虚は仕事をしつつ生徒会室に居るのだ。主が帰る前に、従者である自分が帰るわけにもいかない。虚にとっては、その程度は造作も無い。

 

「大変そうだね~」

 

「貴女ね……他人事でなく、布仏の人間として……。はぁ……良いわ、なんでもないから忘れて」

 

「そうなんだよね~……私だけ、何も出来てないんだよね~」

 

「?……」

 

 ぐで~っと机に両腕を投げ出す本音を見て、虚は何処か様子がおかしい事を感じ取った。いつもボーッとして、いかにも気楽な妹が、ここまで悩ましい表情をしているのは、初めての事だった。

 

「悩みでもあるの?」

 

「大ありだよ~……お姉ちゃ~ん」

 

「話して見なさい。少しは、楽になるかもしれないわ」

 

「う~ん……。かんちゃんの専用機~……完成したのはしってるよね~?」

 

 その事に関して、虚が知ら無いはずが無い。一夏が居る影響で、生徒会で祝い事などはしていないものの、簪の姉である楯無に、嫌と言うほど聞かされた。いかに簪が凄いかを説くのを延々聞かされると言う、新手の苦行だ。

 

「かがみんとかんちゃんが模擬戦したんだけどね~……かがみん……すっごく楽しそうでさ~」

 

(彼……バトルジャンキーにでもなりつつあるのかしら……?)

 

「なんて言うかね~、正直な話さ~……ちょっと~……妬いちゃうな~って」

 

 真が先日の食事の席で感じ取った陰りは、これだ。簪に敗北したにもかかわらず、嬉々としてリベンジを誓う真……。そんな真を見て、本音は簪に嫉妬を覚えた。

 

 しかし、そんな物は束の間……すぐさまに『自分はなんて嫌な娘だ』という嫌悪感に苛まれた。他人を羨むより、自分が真に対して何ができるか考えた方がずっといい。

 

 だけれど、考えども、考えども、答えは全く見えてこない。専用機があれば……と言うのは論外だ。自分がそういう事に向いていないのは、よく分かっている。

 

 では、少しでも仕事の負担を減らしてあげる?これもダメだ。以前に本音が言っていた通り、本音が生徒会を手伝おうとすると、返って仕事が増えるのが常。

 

「しかもしかも~……そのままで良いってかがみんが~……」

 

「そのまま?」

 

 臨海学校の夜の話だ。本音は、真に何もしてあげられないと相談した所『そのままで良い』と回答した。本音の応援が、自らの力になると、真は言った。

 

 その言葉に嘘偽りはないし、本音が真を応援するたび、心底から嬉しそうな表情を浮かべていた。だけれど本音はそうはいかない……もっと、真の為に何かがしたいと、そう思うようになってしまった。

 

 そこから生まれた簪に対する嫉妬心……。打鉄弐式が完成したことにより、簪は真の隣に立っている。そう思うとどうにも、本音は真に置いて行かれている気がしてならないのだ。

 

「きっと、かがみんは~……今相談しても『そんなの、本音が気にする事じゃない』って言うよ~……」

 

「事実、そうでしょう。真君は、本音に何も求めてはいないじゃない。簪お嬢様にだって、決してね」

 

「分かってるよ~……これは私の我儘だも~ん。私の事を~必要だって思ってほしいし~……頼ってほしいんだ~」

 

 その事を想い人に直接言っても無駄……自分で何か考えようにも、思いつかない。今の本音は、手詰まりの一言に尽きる。真も他人の好意に鈍感と言う事ではないが、乙女心までは理解しきれていないらしい。

 

「出来る事、出来ない事があるのは仕方ない~……か~……。じゃあ~……私に出来る事って~何なの~?かがみ~ん」

 

 今度は体全体を預けるようにして、椅子にもたれかかる。椅子の背もたれは反り、ギギギ……と軋む音が生徒会室に響いた。困り果てた妹の様子に、少しは姉らしくと、虚は口を開く。

 

「本音。何か大事なことを忘れていない?」

 

「大事~?」

 

「分からないのなら、ヒントね。この間、真君がぼやいてたわよ。学園に居るとガタックのメンテナンスが出来ないって」

 

 その言葉から、本音は答えを模索する。モシャモシャとチーズケーキをかじりながら考えるが、どうにもピンと来ない。正確に言えば、虚の言わんとしている事は、なんとなく察してはいる。

 

 流石に察しの言い本音なだけはあり、チーズケーキが本音の胃袋に収まって行くにつれ、だんだんと表情も明るい物となってゆく。

 

「『それ』なら~、私も出来るかもしれないね~」

 

「それならいいのだけれど、きっと大変よ?」

 

「だいじょ~ぶ。本音ちゃんのラブパワ~は伊達じゃな~い」

 

 そう言いながら本音は、のっそぉ……と立ち上がり、使用した皿やフォークなどを片した。そのまま生徒会室の扉まで近づくと、一度振り返り、虚に感謝の言葉を述べた。

 

「ありがとね~お姉ちゃ~ん。元気が出たよ~」

 

「ええ、それなら良かったわ。……頑張りなさい」

 

「頑張る~!」

 

 袖をパタパタとはためかせながら、本音はゆっくりと生徒会室を出て行った。虚はなんとなく、体よく仕事をスルーされたような気がするが、しなくていいと言ったのは自分だ……仕方が無いので、一人ペンを進める。

 

 それにしたって、この孤独な状況は、虚でも寂しく感じられる。真や一夏が来てから、幾分か賑やかになった反動が大きいのだ。ギャーギャーと騒がしく、仕事にならない時もあるが……虚も、賑やかな方が良いと思っていた。

 

「はぁ……」

 

 大きなため息をつくと、虚は自分しかいない生徒会室を見渡す。後に生徒会室に帰って来るであろう……楯無に絞られて、ボロボロな真と一夏を幻視すると、少し笑いを零した。

 

 それまでの辛抱だ、どうせまた騒がしくなる……と、虚はハイペースで自らの仕事を進めていく。その姿はもはや、どこぞの生徒会長よりは、会長っぽい。恐らく周知の事実であろうが、今は……何も言わないでおこう。

 

 

 




一夏が組む相手居なくて、真が専用機持ち達を名前で呼ぶようになって、本音が何か決意する……それだけの回。

まぁ本音がこれからどう動くは後々消化するとして……やはり原作の流れに沿わない事をすると、自分がどれだけ原作に頼っていたか分かりますね。

これ……今後のオリジナル展開とか大丈夫なのだろうか?黒歴史ノートよろしく、何が起こるかの流れは組んであるものの……心配になってきた。

こうして見ると、オリジナルで進めていらっしゃる作者様はすげぇ!マジリスペクトっすよ!私も努力せねばなるまい……。

それでは皆さん、次回もまたよろしくお願いします。
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