「おいおい、冗談じゃねぇよ。どうなってんだヒマリ!」
『そもそも【電子の箱庭】は戦闘シミュレーション用に調整された機械ではないのですが……』
「それにしたってこれは悪意があるだろ!確かに強さは認めるけどよ……」
ヒマリやネル、おそらくトキも含め自身が経験した中で一番の脅威。そして、未然に止めたからまだどうにかなったと知っているモノ。そんな災害級の悪夢が目の前にいる。ネルでさえ足が竦む。
『ネル先輩、諦めても良いのですよ?』
「……はっ、それはねぇ。そもそも、相手がアリスなら私は勝つ。勝つしかねぇ」
トキに発破をかけられ、ネルも戦う気を起こす。当然、その間もAL-1Sからの攻撃は行われていた。しかし、避けるだけなら特に問題はないのでネルは【外】にいる二人と会話を続けられていた。
「……にしても手を抜かれてる気しかしねぇな。明らかに弱いしこんな程度が本気だって言うなら────オラァ!」
煙幕弾を投げ、そのまま突撃する。AL-1Sの基本武装もアリスと同じく光の剣。ならば近づいてしまえばどうしてもスキが生まれる。
「そんな図体のデカい武器じゃあ避けるのも難しいもんなぁ!」
「…………!」
AL-1Sは間一髪でネルの素早い突進から繰り出される全方位射撃を避ける。当然、ネルは追撃に出ようとするものの、AL-1Sの方が一手上回った。
「────敵性反応の脅威判定レベルを再定義。対集団武装から対単体武装へと換装します」
AL-1Sは光の剣を変形させる。レールガンを再構成し、マシンガン型へ。辺りのものを常に分解、再構成しエネルギーへ変換しながら掃射する。リロードという概念がないので弾幕を張り続け、ネルを一切近寄らせることはない。万が一近づかれても簡単にバックステップで避けられる。
「なんだよ、なんなんだよコレは……!あの時はまだ全然本気じゃなかってのかよ!」
できる限りの回避はしつつ攻撃する隙をネルは狙い続けていたものの、突破法は見つからないまま15分以上が経過した。
『ネル先輩、これ以上は……』
「……っ。はぁ……はぁ…………認めたくはねぇが、今のあたしじゃ勝てない事は分かった。ヒマリ、そっちに戻してくれ」
『了解です。お疲れさまでした』
ヒマリの声と共にネルは現実へと戻る。その最中、ネルはAL-1Sに勝てなかった事による後悔と、実際に現実でこうならなかった事に対する安堵を感じていた。
「はぁー……」
「お疲れさまでした、ネル先輩」
「次はお前の番だろ?」
「いえ……その」
トキは申し訳なさそうな表情をしながら視線を逸らす。
「……なんだよ、戦わねぇのか?」
「その、シミュレーションとはいえアリスとは戦いたくない……です」
「はぁ?お前から勝負吹っ掛けてきたクセに、そんなのってアリかよ」
「今回はネル先輩の勝ちでいいです。不戦勝ということで」
「……まぁ強ぇ奴と戦えてあたしも満足したしいいけどよ」
「…………すみません」
「あ?なんか言ったか?」
「……いいえ、何でもありません。帰りましょう」
「おう。ヒマリもありがとな」
「いえいえ、私も新たなデータが手に入って満足です」
ネルとトキは用が済んだので部室へと帰る。そして、二人が部室に着いた頃、ヒマリは────
秘匿回線:接続
通信開始。
「ふぅ……。私もあまりこういうことはしたくなかったのですが。で、その様子を盗み見ててどうでしたか、リオ?」
『……どうもしないわ。トキは私がいなくても問題ないみたいね』
「へぇ、貴方にはそう見えたんですか?もっと素直に心配すれば良いものを……」
『私はトキに何もしてあげられなかった。そして、もし私がミレニアムに戻ったとしてもそれは変わらない。だから今後もトキのサポートを頼むわね、ヒマリ』
「はいはい、分かりました。これ以上秘匿回線で連絡を取るのはめんどくさいので貴方も早く帰ってきてくださいね」
『…………善処するわ』
通信終了。
秘匿回線:切断
そろそろ本編の続きが書きたいと思いつつも、中々上手い形にまとまらないので進みません。申し訳ない。
余談にはなりますが、遂に新総力戦のグレゴリオが実装されましたね。総力戦ストーリーは考察にうってつけの内容が出てくることで有名ですが、今回もとんでもない話が出てきましたね。諸行無常、盛者必衰。ただし、この理から神(崇高)は外れる……みたいな話だったと思います。あと宗教は何かと美術作品と繋がりがあるから、その辺りもぼんやりと示された話なんじゃないかというのが個人的な感想です。マエストロ君がウキウキで説明してて可愛かった。