私たちのBlueArchive   作:青影

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4. ブラックボックス

 

 

 

「うーむ……困りましたね」

 

"確かにそれらしい証拠は見つかったけど……"

 

「Zzz……」

 

 ヒマリは【電子の箱庭】が示した情報をまとめた資料に何度も目を通しては唸り、私も集めた情報を分かりやすいように整理をし、エイミはクーラーの風が一番当たる場所で眠っていた。そもそも、今の時刻は23時過ぎ。仕事を終えた後に【電子の箱庭】を特異現象捜査部の部室へ運んで来てから作業を始めたらこんな時間にもなるし、エイミが寝るのも仕方のないことだ。とはいえ、機械の駆動音がごうごうと鳴る場所でよく寝れるなぁ、とは思うけど。

 

"改めて分かったことを整理してみようか。そこから何か閃くかもしれないし。"

 

「はぁ……そうですね。考え詰めて答えが出ないなら一旦離れて見てみるのも一つの手と言いますし、そうしましょうか」

 

"ここまで調べて分かったことは大きく分けて二つ。一つ目が七囚人の脱獄について。ワカモ達のいた矯正局内の映像を見た結果、ただ脱獄しやすい環境になっていた……って感じだったよね。"

 

「はい。まず、原因は定かではありませんが脱獄直前の矯正局は警備する生徒の数が少なかった。そして、それに気がついたワカモが脱獄し自らの銃を確保。彼女は戦力を得るために脱獄の道中で他の囚人らの牢屋の扉を破壊。こうして矯正局の敷地を出る頃には数十人ともなる部隊が出来上がりました。それに対処するための人員は既に他の問題に追われており、後手に回るしかなかった、と。本来、いかにワカモが強いとはいえ銃さえなければヴァルキューレの生徒数人で対処できる問題です。ただ、この日は警備する人数が少なかったが為に警備の目が甘かった。そして、一度銃を手にしてしまえば彼女を止めることができるのは、それこそSRT特殊学園の生徒くらいしかいないでしょう。しかし、そのSRT特殊学園も連邦生徒会長失踪により麻痺状態。故に、ワカモにとっては絶好のチャンスだった」

 

"ワカモなら脱獄するタイミングをずっと見計らってたかもしれない。それで、ちょうど良いタイミングが来たからそれに合わせて脱獄をした。そう考えるのが自然かな。"

 

「そして、問題はその日の事件や事故、ですよね。実際のキヴォトスのデータベースにもアクセスしてみたのですが、七囚人が脱獄したこと以外には大きな事件や事故が起こった形跡は見つかりませんでした」

 

"そうだったんだよね……。"

 

 そう、何も見つからなかった。【電子の箱庭】も完璧というわけじゃない。あくまで、近しいシミュレートをするだけだ。だから、私たちはシミュレート結果から考察することしかできない。

 

「一つ考えられるとしたら……『大きな事件や事故があったが、隠蔽された』あるいは『問題は別のところにある』か、ですね。当然、後者の可能性の方が高いと思いますが」

 

"うん、同感。そもそも、本当に大きな事件とか事故があっても隠蔽しきれないだろうからね。"

 

 結局のところ、どうして脱獄できたのかは不明のままだ。以前、ワカモ本人にもそれとなく聞いてみたことがあったのだが、その時も「警備の目が薄かったので脱獄できそうな気がする……と思ったら、案外すんなりと脱獄できてしまいました」というようなことを言っていた気がする。結局のところ、この点に関してはほぼ進展がなかったと言っても良いだろう。

 

「そしてもう一つ分かったことが……ブラックボックスについて、でしたね」

 

"そうだね。連邦生徒会長は、いかなる方法であっても観測されないみたいだ。"

 

 それは、情報には何も残されず、映像にも映らないという意味だ。もちろん、連邦生徒会長が誰かが話しているところは映像で見ることができたし(私たちには空に話しているように見えるわけだけど)、連邦生徒会長が遺したものから情報を得ることもできた。しかし、その本人については、いかなる方法で観測を試みても不可能で────結果的に、彼女の行動は断片的に情報に映るものから判断するしかなかった。

 

「はい。『確かにそこに存在はするけれど観測ができない』という状態にあるようです。その上、シミュレート設定で彼女に対して行ったいかなる設定も、実際にシミュレートした時には全て無効化されました」

 

"シッテムの箱も似てるよね。シミュレーション内の私がシッテムの箱を使ってるのを観測できても、画面の中を見ることはできなかった。"

 

「はい。先生のおかげで、おおよそ何をしているのかは掴めましたが、流石に連邦生徒会長の方はお手上げ……と、先程までは思っていたのですが」

 

"何か閃いた?"

 

「はい、それはもう!やはり私は全知ですからね、こういった事態にも慣れているのです」

 

 ヒマリは勢い良くこちらへ振り返りながら説明を続ける。

 

「この事態を解決する方法、それは────」

 

"それは?"

 

「────そう、ダイブすればいいんです!」

 

"ダイブっていうと……あの、アリスの時みたいに?"

 

 【Key】……もといケイにアリスの体が乗っ取られた時に、私とゲーム開発部の三人でアリスの精神の中に入ったことがあった。……ということはまさか。

 

"もしかして【電子の箱庭】の中に入る……ってこと?"

 

「はい。それに、安全性の面なら保証できます。あのアリスの精神の中に入った時の方が余程危険でしたからね」

 

"そんなに危なかったんだ……。"

 

「そうですよ?それでも難なく成功させてしまったあたり、流石としか言いようがありませんが……話を戻しますと、いつか使うかもしれないと思い、私も用意しておいたのですよ。とはいえ、今日はもう時間も遅いですし、日を改めましょうか」

 

"うん、了解。それじゃ片付けをしようか。"

 

「あら、ではお願いしてもよろしいですか?それと────」

 

(ヒマリと雑談しながら片付けをして、帰り際にエイミを部屋まで送ってからシャーレへ帰った。)

 

 

 

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