光秀血風録   作:猫祭雉虎

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陸 暗闘 其の拾捌

 突然、地面に投げ出され、頭の被り物を取られた。感触からして、地面には玉砂利が敷き詰められているらしい。

 「もうよいぞ、目隠しを取れ!」

 初めて聞く声が響き、言われたとおり、光秀は目隠しをはずした。途端に、明るい陽光が射して、光秀は目をしばたいた。

 目の前には宏壮なお屋敷があり、自分たちがその庭にいることが分かった。庭には、一面、真っ白な玉砂利が敷かれている。そのため、よけい眩しく感じる。

 他にも武士らしき者が何人かいる。その中に、見知った顔がある。煉獄だ。

 「久しぶりだな、明智殿」

 「おお、煉獄殿。お元気でいらしたか」

 最終選別では、ともに死線を越えた同期である。顔を見ると、なんとなくホッとする。煉獄も同じなのだろう、朗らかな笑顔である。集まっている武士たちは何者なのか気になって煉獄に尋ねてみたら、よく分からないが、他の呼吸の剣士たちらしい、とのことだった。ふむ、とうなって、光秀は黙り込んだ。呼吸の剣士たちを集めて、何が行われるのか。なぜ、左馬助は呼ばれず、自分だけが連れてこられたのか。そんなことを考えていると、

 「そろそろ、御館様がお出ましのようですよ」

 静かな声だった。それはともかく、光秀ら手練れが何人もいながら、その内の誰もその人物が来たのに気づかなかったようだ。何者だ?

 光秀が誰何するより早く、煉獄が小声で言った。

 「継国縁壱様だ」

 彼は黙ったまま縁壱に軽く頭を下げた。光秀も同様にした。屋敷の奥で、襖が開いたようだ。その奥からかすかに跫音が聞こえた。意外と軽い音である。

 目の前にいるのは公家らしい風体の若者である。後ろには、美しい女性が控えている。その場にいた一同が一斉に砂利の上に座り、控えた。光秀も、そうせよと指示されたわけではないが、自然にそうなった。そうさせる不思議な威厳のある若者であった。

 「皆さん、ごきげんよう。初めて会う方もいるので、簡単に自己紹介をします。私が現在の産屋敷家当主です。産屋敷家の男は代々、早死になもので、こんな子どもが当主になっております」

 光秀は、ははっ、と頭を下げた。御館様の口調は静かであり、声は優しげだが、不思議と威厳を感じる。

 「御館様、このように剣士を集められるのは初めてのことでは」

 緑色の羽織を着た剣士が言った。御館様は軽くうなずいた。

 「それには理由があります。皆さんについている鎹鴉からの報告を聞いていると、異能の鬼が増えているようなのです。鬼は、人を多く食えば食うほど強くなると言われているので、ある意味、自然の流れなのかもしれませんが……我々は、それに対抗していかなくてはなりません」

 ここで彼はうつむき、軽く咳をした。

 「……失礼。そこで、鬼殺隊としても、より堅固な組織をつくり、有力な剣士を多く育てる必要があります。そこで、それぞれの呼吸の第一人者に『柱』となっていただき、それぞれの呼吸を次代の剣士たちに継承していっていただきたい」

 なるほど、と光秀は思った。呼吸の技を身につけていないと、日輪刀を手にしても、なかなか鬼を倒すことは難しい。そこで、呼吸の技を使える剣士を増やし、鬼どもに対抗しようという考えなのだろう。思えば、自分と左馬助も、父、叔父から水の呼吸を受け継いで、今がある。

 「また、隊士を増やすことで、鬼舞辻無惨めに関する情報も多く集められるのでは、と期待しています」

 異議を唱える者もなく、呼ばれた者が各呼吸の柱となり、互いに連絡を取り合う機会を増やすことなどが決まった。煉獄は炎柱、光秀は水柱である。

 

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