退形成性星細胞腫の5年生存率は僅か20%とされていた―――だが、今は違う!(ギュッ)   作:推したい人

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一話当たりの文章量についてアンケートがあるので、奮ってご参加ください。
今回も期限は三日間です。

そして出産のタイミングについてのアンケートを締め切りました。
かなりの接戦でしたが、妊娠期間中のお話を挟んでから出産エピソードを投稿することになりました。
という訳でストーカーくんの寿命がちょっと延びました。まぁ誤差だけどね!!


彼女が行くべきはM県の病院ではない!N県T村だ!(ギュッ)3

 診療所へと帰宅した一也がまず目にしたのは、テーブルに広げた教科書と参考書に向き合いウンウン唸っている見知らぬ少女だった。

 村民ではないし一体誰なのだろうか……と一瞬思案するが、昨日Kから新しい患者が村外からやってくると通達されたことを思い出す。彼女がその患者なのだろう。目に入った教科書から考えるに、自分と同じく高校一年生なのだろう。

 と、推察していると、奥の扉が開きお盆にソーダを乗せたKがやってきた。そして一也を視認すると、ソーダをテーブルに置き少女に声をかけた。

 

「星野くん、今日はもう終わりにしよう。紹介したい者もいる」

「はへぇ~~~やっと終わった~~~。……ん?紹介したい者?」

 

 心底疲れたように少女は突っ伏すが、Kの言葉に反応し起き上がる。そして周囲をキョロキョロと見渡し、ようやくリビングに見知らぬ少年がいることに気が付いた。

 

「紹介しよう。彼が黒須一也だ。一也、彼女はしばらくウチで預かることになった星野アイくんだ」

「よろしくね~♪」

「星野さんと言うんですね。よろしくお願いします」

 

 少女―――星野アイから差し出された手を握る。

 そこで、一也はしっかりと彼女の瞳を見ることができた。

 

 まるで星のようだ、と一也は感じた。彼女の内なる生命力、バイタリティと呼べるようなものが瞳の中で形作られていて、見る者の視線を離さない引力をも伴っているようだ。

 ……しかし、同時にその星は彼女が心に纏う鎧のようにも感じられ、その奥には何か空虚な物があるような気がして―――

 

「それにしても君凄いカラダしてるねー♪。おおっ、腹筋割れてるよ!」

「ッ!?!?」

 

 突然身体をペタペタ触るという奇行によって、一也の思考は強制中断させられた。

 

「はしたないぞ星野くん」

「は~い。ごめんね黒津くん、今まで同年代でこんなにガッシリした人いなくて思わず触っちゃった」

 

 Kに窘められ、アイはぱっと一也から離れるとソーダに口を付けた。どうやらそれほど一也の筋肉に執着している訳ではないようだ。

 

「星野くん、あと一時間で夕食の時間になる。それまでは自由にしてくれたまえ」

「はーい」

 

 アイは早々にソーダを飲み干すと、教科書などをバッグに仕舞いリビングから出て行った。

 

「……あの人が、昨日先生が言っていた患者なんですね」

「その通りだ」

「しかし、彼女のどこに問題があるんですか?一見何も問題なさそうですが……」

「無理もない。一也にとってはある意味初めての患者だからな」

「初めて、ですか?」

「ああ。彼女は妊娠している」

「妊娠ですか。確かに、僕がこの村に来てからは一回も診る機会がありませんでしたね。―――って妊娠!?彼女がですか!?」

「一也、声が大きいぞ」

「ご、ごめんなさい……」

 

 

 

 

 

 

 時は流れ夜20時。

 

 夕食を終えテーブルを拭いていた一也は、玄関から外に出るアイを見かけた。見たところ防寒対策はしっかりしているようだが、ここT村には街灯なんてほとんど立っていないし、万が一森に迷い込むなんてことがあれば身重の女性には危険すぎる。

 一也は慌ててジャケットを羽織ると、懐中電灯片手にアイを追いかける。

 幸い彼女はすぐに見つかった。診療所から村へ続く林道を歩いていたのだ。それほど距離は離れてはいない。

 

「星野さん!」

「あっ、黒津くん。どうしたの?」

「どうしたのじゃありませんよ!夜の林道を灯りもなしに歩くなんて危険すぎる!あと僕の名前は黒須です」

「あははっ、ダイジョーブだよ黒津くん。診療所の灯りが見えるとこまでしか行くつもりなかったから!」

「いや、だから僕の名前は……」

 

 呼び間違いを訂正しようと口を開く……が、諦めた。

 夕食前、一也はアイは名前を覚えることが苦手だということを斎藤から謝罪と共に説明されたことを思い出したからだ。

 

『あいつは軽い発達障害を抱えていてな……。悪いが根気強く付き合ってくれないか?』

 

 未だに俺の名前間違えるんだよあいつは、と彼は愚痴っていた。

 

「それにしても、ここって星空が凄いよね~。山奥で空気が澄んでいるってのもあって、まるでプラネタリウムみたい。……山奥の村って聞いて正直気乗りしなかったんだけど、この星空だけでもお釣りがくるくらい気にいっちゃった♪」

 

 両手をいっぱいに広げ、アイは空を見上げる。月明かりに照らされたその姿は彼女の美貌も相まって、まるで一枚の絵画の様に思えた。

 だからこそ、一也は訊かずにはいられなかった。

 

「星野さんは……アイドルをやめるんですか?」

「なんで?やめないよ?」

「でも、産むつもりなんだよね?」

 

 アイドルにあまり詳しくない一也でも、子どもがいてはアイドルを続けられないということくらいは分かる。

 

「うん。私って家族がいないからさ、家族に憧れを持ってるんだ。……お腹にいるのって双子なんでしょ?だったら毎日が賑やかでとっても楽しそう!」

「それって、つまり……」

 

「そ!()()()()()

 

「アイドルは偶像だよ?嘘という魔法で輝く生き物。つまり、裏でどんなに辛い目にあっても、何事もなかったように嘘を纏って、ステージ上でファンに向けて愛を囁き笑顔を届けなきゃいけない。つまりね黒津くん―――」

 

「―――嘘はとびきりの愛なんだよ」

 

 嘘はとびきりの愛。

 言い訳とも捉えかねられないその言葉を、一也は驚くほどすんなり受け入れることができた。

 それはきっと、己の出生がクローンだということに起因しているのだろうと考えた。母である黒須麻純は、史上最高のKと謳われた西城KAZUYAのクローンとして誕生した自分を、あくまで『黒須一也』という一個人(息子)として育ててくれた。今代のKである神代一人も、あくまでKの一族の血を引いた人間として鍛えてくれた。

 二人とも、とびきりの()で接してくれたのだ。

 

「だから子どもの一人や二人、隠し通さなきゃいけないんだよ。……でもね、幸せだけはホントのところでいたいんだ。みんな気づいていないけど、アイドルにだって心と人生があるし」

「母としての幸せ。アイドルとしての幸せ」

「普通は片方かもしれないけど―――私はどっちも欲しい」

 

 アイは一也へ振り向き、宣言する。

 

「星野アイは欲張りなんだ」

 

 一也は知らぬことだが、星野アイは自身を嘘吐きだと認識している。

 考えるよりも先にその場に沿った事を言う。自分でも何が本心で、何が嘘か分からない。

 物心ついた頃から虐待され、遂にはに母から捨てられる。愛した経験も、愛された経験も存在しない。人間として大事な要素が欠落した欠陥品だと自認している。

 だからこそ、彼女の主観では今の主張も本心か嘘か分かっていない。

 

 ―――しかし、一也は彼女の主張を本心からのものと認識した。

 

 神の視点から見れば、お人好しな一也が上手く騙されているだけと判断するかもしれない。意地の悪い神ならば、この場で星野アイの本性を嗤いながら暴露するかもしれない。

 それでも一也は力強く否定するだろう。

 幸せになりたい(愛を知りたい)と強く望む彼女の主張は、紛れもなく本心だと。

 

「……分かったよ。微力ながら、僕も全力で星野さんの出産を手伝うよ!」

「? 黒津くんは私と同年代だよね?まだお医者さんじゃないはずだけど……」

「ふっ、普段の生活を全力でサポートするって意味だよ!」

「……フフッ、変な黒津くん♪」

 

 あたふたする一也に思わず噴き出したアイは、早速一也にサポートを求めた。

 

「それじゃあ、次から散歩する時はサポートお願いしちゃおうかな♪―――という訳で、その懐中電灯で道を照らしてね。もしかしたら見落としていた石で転んじゃうかもしれないし」

「分かったよ。でも夜の散歩はこれきりにしてね」

「それは無理!私この星空気に入っちゃったもん」

 

 懐中電灯で足元を照らしながら、アイと一也は帰路に就く。

 その姿を、診療所内からKは微笑みながら見守っていたのだった。

 

 




心の中の悪魔が『也アイ、いいんじゃね?』と囁いてきますが、私は也宮派なので心の中の天使が悪魔をぶっ殺してくれました。

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