レズ趣味ド淫乱お嬢様系エリス教プリースト 作:暴君ネロイド
ハーレムパーティーという新人が入るにはキツそうな環境で順応出来るとしたらどんな人物か? と考えてたら出来上がったやつです。
「相席してもよろしいかしら?」
それは王都の昼下がり。
クエストを終えたミツルギキョウヤ一行が報告のため冒険者ギルドへと舞い戻り。ちょうどお昼時と重なったのもあってせっかくだからここで昼食にしようと、ギルドに併設されている酒場で食事を摂っていた時のことである。
食事の手を止めて顔を上げると、シスター服に身を包んだ、どことなく高貴な雰囲気を漂わせている女性が視界に映り込んだ。
「……ちょっと、あんた待ちなさいよ! テーブルだったら他にも空いてるでしょ!? 余所に行きなさいよ!」
「そうよそうよ! わざわざこっちに来なくたって良いじゃない!」
プリーストと思わしきその女性は、自分たちより少し年上くらいだろうか。
特に断る理由のないキョウヤとしては彼女の頼みを快く承諾する気でいたのだが、それよりも先に
辺りを見回すと、昼時なのもあってか客足は順調に伸びている。とはいうものの確かに、まだまだ空席が目立つ。
仲間の言うことにも一理あった。だけどそう邪険に扱わなくても。
事前に打合せでもしていたかの如く急に二人揃って居丈高な態度で初対面のプリーストを追い払い始めたことに、キョウヤは困惑した。
なおキョウヤに恋する乙女の二人は、彼を狙う新たな恋敵出現ではと警戒し邪魔者を排除しようとしているだけだったりする。
仲間の少女らから寄せられる恋心に微塵も気が付いていない難聴系男子たる彼に、それを察しろというのは酷な話ではあったが。
「突然ごめんなさいね。ですがちょうどあなた方に用がありましたの」
「僕たちに用、ですか?」
少女たちの不歓迎を意に介した素振りもなく、プリーストは空いていたキョウヤの隣の席へと腰掛ける。
彼女の発言に、キョウヤは反芻するように呟いた。
「ええ、といいますのも……。あっ、すみませーん! 注文お願いします」
プリーストは途中で言葉を打ち切って近くを通りがかったウェイトレスへと声をかけると、メニュー表を手にオーダーを始める。
どうやら中々にマイペースな性格をしているらしい。
改めてキョウヤは女性を観察する。
鮮やかな金髪碧眼の美人だ。
金髪碧眼。その特徴に、この国に来てから知ったある話を彼は思い浮かべた。とはいえ今ここで追求するような事柄でもないため、頭の片隅に置いておくに留める。
ふと、さっきまで騒いでいたフィオとクレメアの声が聞こえなくなっているのに気付く。
何とはなしにキョウヤがテーブルを挟んだ対面へ目を向けると。当の二人はどこか怯えをにじませた顔付きで、心做しかプリーストの女性から距離をとっていた。
いつもの二人なら当たり前のようにキョウヤの隣に座った相手の行動を見咎め、突っかかっているだろう。だが今この場に限ればそのような余裕はなかった。
「失礼しました。そういえば自己紹介がまだでしたわね。
プリーストの女性ことアリアが、フィオとクレメアの方を振り向いてニコリと微笑む。
見つめられた少女らはビクリと震えた。さながらヘビに睨まれたカエルのように。
実際間違ってはいない。アリアの振る舞いは明らかに好意的なものなのに。まるで飢えた肉食獣に獲物として品定めされているかのような、そんな悪寒を二人はどういうわけか彼女の視線から感じ取っている。
実はこの時だけでない。ついさっきも同じ悪寒に襲われたばかりだ。
「では、僕から。
なおキョウヤのみ何ともない。いつになく大人しい仲間の様子にやや不思議そうに首を傾げつつも、彼はとりあえず普通に自己紹介した。
残るフィオとクレメアは、名前だけを端的に述べると沈黙。
ちなみに少女らの名前を耳にする時だけアリアは若干前のめりになっていたのだけど、幸か不幸か誰もそれには気付かなかった。
自己紹介が済んで、いよいよ本題に入る。
「それで用件なのですが、単刀直入に言いましょう。私をパーティーに入れてくれませんか?」
「えっ? ああ、なるほど。同業者でしたか。そういうことなら――」
「なっ!? ちょちょちょ、ちょっと待ってよキョウヤ! ――いい? キョウヤはね、本気で魔王討伐を目指してるの。そこのところあんたちゃんと理解してる!?」
「プリーストなのは見れば分かるけどさ。うちには後衛がいないから確かに心強いけど、だからって生半可な気持ちで参加されちゃ困るのよ」
出会って数分程度の女のパーティー加入がいきなり決まりそうになっている。尻込みしている場合じゃない。
盗賊と槍使いの少女二人は怖じ気づいていたこともすっかり忘れ、慌てて異議を唱えた。
正直なところ口にした内容は半ば建前。キョウヤを巡る恋のライバルをこれ以上増やしたくないというのが彼女らの本音である。
なおキョウヤだけは仲間たちの発言を真に受けて、判断を下すには確かに勇み足だったと素直に反省していた。
「あー。なるほど、なるほど。そういう感じですのね」
「えっ?」
「ああいえ、こちらの話です。お構いなく」
アリアも三人の関係性をおおよそ悟る。噛み締めるように数度頷いた。
というか彼女でなくとも、傍から見れば二人の好意はバレバレだ。
これで何も気が付かないのは、少女たちのあからさまな態度に何一つ察した様子がなく、彼女の眼前にて先のアリアの独り言に関して不思議そうな顔をする余程の朴念仁くらいであろう。
これは相当苦労しているのだろうな。恋する乙女二人にアリアは密かに同情した。
「さておき。魔王討伐、でしたかしら? 仲間募集の張り紙にもそう書いてありましたわね。私、あれを読んでここに来ましたのよ。もちろん望むところですわ。エリス様の御心にも適う行いですし」
この身が世界に平和をもたらす一助となれるなら、自身は志半ばで力尽きようとも一向に構わない。アリアは本気でそう考えている。
ただ、脳内が勇者様の残念な人なのかな、と。張り紙から窺い知れる冒険者たちの人柄に、当初彼女はあまり期待していなかったが。それについてはおくびにも出さなかった。
それとどうにも約二名ほどから勘違いされているため、彼女はこの際そちらも訂正しておくことにした。どうせ遅かれ早かれバレる話だ。
「ああそれから、先に言っておきましょう。私、女の人が好きですの」
何でも無さ気に繰り出されたその一言に、テーブルが静まり返った。
「……えっ?」
「あら、聞こえませんでした? 私、所謂レズビアンですの。そんなわけで、キョウヤさんとお近付きになりたくて声を掛けたのではありません。安心してくださいな」
いやいやいや、そこは別にいい。それより今何か、とても聞き捨てならない台詞が聞こえたような。
アリアを除いたキョウヤたち三人の思考は、この時見事に一致。本業であるモンスターとの戦闘とは全く無関係な場面にて、一党はかつてないほどの以心伝心を発揮していた。
「あの。例えば、フィオやクレメアは……」
「ぶっちゃけ超好みですわね」
ひえっ。同性に好みだとぶっちゃけられた両名が、小さく悲鳴を漏らす。
この女、てっきりキョウヤ狙いの女狐かと思いきや、狙われているのは
パーティーの輪を乱したくないから無理に迫るつもりはないとレズ女は付け足したものの、ちっとも安心できない。
なおアリアは、一切アプローチをしないとは明言していない。よって懸念は正しい。
そもそもアリアが加入に前向きとなった理由の一つは、彼女好みの美少女が二人もパーティーに在籍していたことにある。
「……もしかして、アクシズ教徒の方ですか?」
「はっ?」
苛立ちのあまり、淑女の尊厳が思わず口からポロッと溢れ出てしまった。それに気付いたアリアは一つ咳払いをするとしれっとした表情を取り繕い、何事もなかったかのように仕切り直す。
「いいえ、エリス教徒です。まあ同性愛はアクシズ教の教えですから、そう思われるのも無理はありませんが……」
実のところ、アクシズ教徒との誤解を受けるのは彼女にとってよくある出来事だ。
そして性関連に限れば、自分の考え方はエリス教よりもアクシズ教のソレに近い。これに関しては不承不承ながらも、彼女自身認めざるを得ないと思っている。
ただしそこさえ省けば、エリス教の教義に適う敬虔なエリス教徒。そう彼女は自負している。
破戒僧の謗りなら甘んじて受け入れよう。だが同性愛の部分だけ着目して、あんな傍迷惑な異教徒共と同一視されるのは捨て置けない。そこに悪意が無くともどうにも我慢ならない。
あとたまに、同朋面したアクシズ教徒が馴れ馴れしく近寄ってくる。そのこともアリアは気に食わない。アクシズ教徒認定されるのを蛇蝎の如く嫌うのにも一役買っている。
そうした話を聞かされたキョウヤは、自分が踏み抜いた地雷の大きさを自覚して静かに冷や汗を流した。
まあ考えてみれば、アクシズ教徒に間違われるなど大抵の人には甚だ遺憾であろう。
このタイミングでアリアの注文していた料理が届いたため、話はそこで一旦打ち切りとなった。
食事が終わってひと段落ついた頃に、早速アリアが口火を切る。
「実は私、昨日まではここ王都の教会で従事していましたの。今朝方、『今日からはもう来なくて結構ですよ。……あの、お願いですから、本当にお願いですからどうかもう来ないで下さい!』と言われて追い出されてしまいましたけど。原因は趣味の女遊びですわね」
あ、その話まだ続けるんだ。
食事の時間を挟んでさっきの話題は何となく終了した気になっていたキョウヤは、そんな取り留めのないことを思った。
金髪碧眼は貴族、王族の証と言われる。
アリアの容姿は正しくその特徴に合致する。キョウヤもその辺りの事情は詳しくないものの、彼女は貴族の出ではないかと睨んでいる。さっきのテーブルマナーにしてもとても綺麗だったし。
そのような人物が、あくまでエリス教団における内輪の問題とはいえ教会を追放されるとは。この人は一体何をやったのだろう。
「それと実家からも放逐されました。『お前に家名は名乗らせん。当家の恥だ! 出て行け!』と父はお冠でしたわね。ほとんど勘当ですわ」
本当に何をやらかしたのだろう。
「職と家を失くして、なら冒険者になろうと決意しましたの。ギルドでキョウヤさんたちのパーティー募集を見かけたのはそんな時ですわね」
「は、はあ……」
ちなみにパーティー探しが上手く行かなかった場合、彼女は王女の教育係をしている
従姉妹もアリアとベクトルは少し異なるものの業の深い性癖を抱えており、そうした背景から仲は良好だ。
今回にしても、本家筋に当たる彼女が双方の間を取り持ってくれたからこそ、父から『大功を挙げたら帰って来ても良い』との譲歩を引き出して辛うじて勘当は免れた。
なおアリアは貧乳至上主義者なため、巨乳の従姉妹に対して性的な関心はない。
それにしてもどこで道を誤ったのか。
最後の分水嶺はやはり、真昼の王都の往来で男に背後から刃物で刺された一件だろう。怪我はともかく、事件の目撃者が多すぎた。
その所為で、回復魔法で傷を癒したアリアが動けるようになる頃には、到底騒ぎを揉み消せなくなっていたのだ。
どうも男の恋人を寝取ったことが凶行に及んだ理由らしいが。心当たりが多すぎて、未だ誰を指しているのか彼女は特定できていない。
暇を持て余して興味本位から騒動に首を突っ込み、スキャンダルとして無駄に事態を炎上させようとする王都の性悪貴族共。
捜査の手が伸び、次から次へと白日の下に晒されてゆくアリアの女性遍歴。
相手からは全員合意を取り付けていたのと、配偶者持ちは避けていたのもあり、法的な処分を受けることこそ無かった。けれども醜聞には違いないので方々を巻き込んだ大問題へと進展した。
許嫁のいる高位貴族の令嬢二人で姉妹丼を楽しんだのが不味かったのか。
はたまたブライドル王国からやって来た女外交官を味見して、あわや外交問題に発展させかけたのが良くなかったか。
エリス教団最高司祭の孫娘を籠絡してアヘ顔ダブルピースさせたのが失敗だったのは、アリアにも分かる。孫娘当人は満更でもなかったようだけど、あれで祖父の側がブチギレた。
次からは女性本人だけでなく取り巻く人間関係もしっかり洗ってから手を出すようにすると、父には反省の意を示した。その結果父までブチギレて家から叩き出されたわけだが。
我が父ながら、こうまで狭量で頭が固い人だとは思わなかった。アリアは己の境遇を振り返って嘆息した。
「……ねえキョウヤ、あの人ヤバくない?」
「い、いや。ええっと……」
「何て言うか、少し話を聞いただけでも関わっちゃいけない感がビンビンするんだけど」
キョウヤたち三人はアリアのみをテーブルに残して少し離れると、内緒話を始めた。
前述したやらかしの詳細までも彼女から打ち明けられたわけではない。けれど表面的な説明だけでも、何やらとんでもない爆弾が潜んでいそうな気配はあった。
キョウヤとしては誰かの陰口を叩く行いはしたくない。しかしどうしよう、仲間の言を上手く否定できそうもない。何せ彼自身、彼女らと同じことを思っている。
うん、止めておこう。
その後も意見を交わし合い。希少なプリーストではあるけれど、今回は縁がなかったと採用を見送るとの方針で話がまとまった。
テーブルへと舞い戻り、リーダーのキョウヤが代表して決定を伝える。
「えっと、アリアさん。申し訳ありませんがこの度は――」
しかしそうは問屋が卸さない。
「ああそうそう、そういえば冒険者カードをまだ見せていませんでしたわね。どうぞ」
「不採、用……と? ……レベル三十五のアークプリースト!?」
押し付けるように渡されたカードに記されている情報に、キョウヤは驚愕した。告げようとしていた言葉が思わず引っ込んだ。
プリースト自体人口が少ないのに、上級職。しかもレベル上げが難しい職業にも関わらずかなりレベルが高い。
だがそれ以上に驚かされたのは、同レベル帯の中でも飛び抜けて優秀と言って差し支えないステータス。
今後の伸び代まで加味すると、プリーストとしては間違いなく最上級の逸材だ。*1
ハッキリ言ってもしここでアリアを逃すことになれば、今後彼女と同等以上のプリーストをパーティーに迎え入れるチャンスは二度と得られないだろう。*2
あれ? でもそんな当代の天才を実家と教会が揃って手放している。つまりその長所があってもなお、覆い隠せない程の重大な欠点があるということで……。
キョウヤは何かとても大事なことに気付き掛けた。が、そんな彼の思索を遮るようにアリアが提案を切り出す。
「まあまずはお試しということで、一度パーティーを組んでクエストを受けてみませんか?」
「え? いや、でも……」
「あら。私、何かおかしなことでも言いましたかしら?」
言ってない。実際の力量や、仲間との相性を確かめる上で妥当な案だろう。
本日は既に一度クエストを片して帰ってきたばかりの身ではあるが、疲労は軽微。時間もある。今からお試しで近場の簡単なクエストを受けるくらいは訳ない。
難点は、とうにキョウヤたちは加入をお断りする方向で結論を出していること。
ところが彼女の冒険者カードに目を通してしまったことで、決心が揺らいだ。それは動揺という形で態度に現れて、付け入る隙をアリアに与えることへと繋がる。
それが彼女の思惑通りだとも知らぬまま。
「……まあ、一回だけなら」
「キョウヤ!?」
キョウヤはちょっぴり日和った。
リーダーが予定と全然違うことを言い出したのに、残る二人は目を剥く。
彼としては、一度もクエストを受けないうちから一方的に突っ撥ねるのもどうだろうと思い直したのだ。それも一回だけ。これさえ終われば今度こそお断りの返事を送る心積もりだ。
しかしどうにもこれは風向きが変わったのではと、少女らは感じている。
さて。アリアは、ずっと三人の様子を観察していた。
そして精神的支柱にして、パーティー内における実質的な決定権を握っているのがキョウヤだと理解した。
彼は見るからに真面目だ。一度加入を認めてしまえば、その責任感の強さ故に軽々と己の決断を翻す真似は選べないだろう。
だからアリアは自分の抱えている事情をあえて一部明かした。その上で問題を棚上げし、有耶無耶にしたまま加入決定まで漕ぎ着けるつもりでいる。
事情を初めて語るのが加入以後であったらさすがに追い出されたかもしれない。そこで先に開示することで、『問題を知った上で受け入れた』との責任を彼に背負わせる気でいる。
どこで冒険者カードを出すのかに関しても、タイミングを見計らっていた。
数多のノンケを手練手管で誑し込み、レズ堕ちさせてきた女の交渉術。その真骨頂の表れと言えよう。
そうしてお試しパーティーの提案を呑ませた時点で、アリアの策はほぼ成った。
ここまで辿り着いたなら、彼女の抱える問題については半ばクリアしたようなもの。残る焦点は冒険者としての実力のみ。
そして結論を言ってしまうと、最終的には渋々ながらもアリアのパーティー加入が正式決定することとなった。
お試しクエストは、支援魔法を自分にかけたアリアがスケアロサウルス(続・爆焔二巻に登場するモンスター)の群れへとメイス片手に単身突っ込んで無双するくらいなので、カットしました。
思い付きのネタなので続きは期待しないでください。