レズ趣味ド淫乱お嬢様系エリス教プリースト   作:暴君ネロイド

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時系列は原作一巻終了後。


クエスト先の村にて

 辺境の街アクセルより、徒歩にして半日に満たない距離にある村。

 取り立てて観光名所も特産品もなく、目につくものといえば田園風景くらいが精々。言ってみれば、長閑なよくある片田舎でしかない。

 ただしこの日の早朝は、常とは少しばかり様相が異なった。

 村の一角にて、二人の男女が張り詰めた空気をまとって対峙している。

 とは言っても、二人はパーティーを組んでいる仲間同士という間柄で、今こうして向かい合っているのも単に組み手の最中だからというだけではあるのだけれど。

 

「――ッ!」

 

 鋭い呼気と共に男――キョウヤが一歩踏み込んで剣撃の嵐を繰り出す。

 彼は上級職、それも攻撃力においては前衛職でも比類する者無きソードマスター。

 さらには三十七との高レベルも相まって、その力量は第一線で活躍する王都の実力者と比べても見劣りするものではない。

 少なくともそこらの駆け出し冒険者程度では連撃への対応はおろか、素早い剣の一撃を前に反応すら覚束ない。地を舐める結末を迎えるだけだろう。

 なお、彼が今使っている剣はメイン武器である魔剣グラムではない。鍛錬用に刃を潰してあるごく普通の剣だ。

 

 ただし女――アリアは、そんな猛攻を前にしても悠然としていた。

 迫る攻撃を足捌きによって狙いを外し、身体捌きでひらりと躱し、それでも回避し切れないものは拳で剣の腹を叩いて打ち落とす。

 剣士の間合いに無手で身を晒しているというのに、緊張での力みは見受けられない。どころか若干の余裕さえ漂っている。

 彼女の職業、アークプリーストは格闘スキルに適性があり、前衛としても働けるポテンシャルを持つある種の万能職ではある。とはいえ、一級の専業戦士と相対してこれほどの立ち回りが出来る者となるとさすがに稀だろう。

 というのもこの女、ヒーラーにも関わらず実は前に出て戦う方が得意だったりする。

 

「――ふっ、ハァッ!!」

「……」

 

 しかしながら、そんなアリアが現在浮かべている表情は、無。

 その(かんばせ)は能面の如し。彼女が如何なる感情を抱えているかを他者には読み取らせない。

 とはいうものの、キョウヤとて冒険仲間としての付き合いは長くなってきた。このような彼女を目撃するのは初めてではあれど、それでも察せるものはある。

 理由までは分からない。兆候にも心当たりはない。

 ただどうやら、今朝のアリアはとんでもなく機嫌が悪いらしい。

 根拠と呼ぶにはやや弱いが、醸し出す彼女の雰囲気より何となくそれを感じ取っていた。時折繰り出される、嫌に容赦のない鋭い拳撃もその推測を補強している。

 

 そんなアリアの気配に当てられ、振るう剣に僅かな戸惑いが乗った。

 キョウヤの精神的な未熟さが表出した結果である。仮に格下が相手であれば、それでも取るに足りない些細なものではあっただろう。

 だが目の前にいる人物はそうではない。易易と付け入る隙を与えて良い相手ではなかった。

 アリアは、彼女視点での妙に温い一太刀をあっさりといなした。そして息もつかせず攻勢へと出る。瞬く間に距離を詰める。

 間合いが剣のソレから、拳のものへと移り変わる。

 構図が入れ替わる。仕掛けるキョウヤに対し防戦に徹して好機を探るアリアという、これまでの両者の立ち位置が逆転した。

 

 そこからの決着はあっという間だった。

 苛烈な攻めに転じたアリアは、何とか状況を立て直そうと奮闘するキョウヤの守りを強引に引き剥がした。体勢を崩して地面へと転がす。

 ただし。

 

「えっ!? ちょっ! もう勝負は…………ぐっ……は……っ」

 

 戦いはもう少しだけ続く。

 降参を宣言するキョウヤを意図的に無視して(よく聞こえませんでしたわ)、アリアは追撃を放った。

 立ち上がろうと中途半端な姿勢でガードを取れずにいた彼の鳩尾へと、正拳のクリーンヒットが炸裂。一応手加減はされていた。

 キョウヤの見立ては正しい。本日のアリアはすこぶるご機嫌斜めだった。そして、訓練に託つけての憂さ晴らしを目的とする理不尽な八つ当たりを彼はされたのである。

 

 

 

 

 受けたダメージは、アリアの回復魔法によって綺麗サッパリ治された。

 

「村に来てからというもの、女性と懇ろになる機会がないのです」

 

 そうして憂いた深窓の令嬢フェイスより繰り出されたのが、そんな糞みたいな台詞である。

 

 ふしだらな意味で女とイチャつけない。

 朝っぱらから異性にそんなぶっちゃけを食らったキョウヤは、虚空を見つめた。空が青い。ただの現実逃避である。

 もうこの時点で話を聞く意欲が九割方失せたのだけど、止めはしなかったので此度の蛮行に関する釈明タイムは尚も続行される。

 

「というかどうなってますの? この村の年齢比は。女の人も見当たりませんし」

「若者は都会に行ってしまうから、年配の人ばかりが残ってるって村の人から聞いたよ。でも女の人ならちゃんといただろう」

「シワシワのお婆ちゃんばかりではありませんか。いくら(わたくし)でも、あれは対象外ですわ……」

 

 アリアは悲しげな溜め息を漏らした。

 限界集落の行く末を案ずる心優しき姫君のような顔つきと声音だった。実態は好みの女が見つからず、性欲を発散する機会が無くてイライラしているだけであるが。

 彼女としては自分の親くらいの年代のマダムでも未亡人なら全然オッケーなのだけれど、それより上の世代ともなるとさすがに食指が動かなかったのだ。

 そしてキョウヤは、代わりのストレスの捌け口として選ばれた。

 ここだけ切り取ると男女のまぐわい的なアレコレを連想しそうだが、要は先刻の組み手にて追い撃ちをお見舞いした一件のことである。

 アリアとて、キョウヤのことを整った顔立ちをしていると捉える程度の感性はあったが、生憎野郎へのそういった関心は皆無なのだ。

 

「そもそも、美人ホイホイ体質のキョウヤさんと二人きりでこんな田舎くんだりまで出向いたのは何故だと思ってますの? クエストのモンスター退治は当然第一にしても、次点は未知の土地でナンパに励むためですわよ」

「あ、それでも第一はブレないんだね。そこは安心……ん? いや待ってくれ。最初に何かおかしな言葉があったような」

「気のせいですわ」

 

 しれっとアリアは大嘘を吐いた。

 何故かは知らないが、キョウヤの側にはやたら美形の女が寄ってくる。

 アクセル在住のとある最弱職の少年がその詳細を知れば、『ハーレム主人公体質』とでも名付けて唾を吐き捨てているだろう。

 アリアは、待ってるだけで女が入れ食いとなるこの現象をとても重宝している。

 彼と連れ立って行動して、近寄る女を度々横から掻っ攫っているのだ。さながら、灯りに引き寄せられる蛾を巣で待ち伏せする蜘蛛のように。

 この度にしても、趣向を変えて地方の珍味でも堪能しようくらいのノリで同行していた。

 

 ちなみに、一昨日からの彼らのスケジュールを述べると。

 一昨日。オーガの群れを討伐する依頼を受注。この頃の仮の拠点であるアクセルを出立し、夕方頃に依頼先の村へと到着する。

 昨日。目標のオーガの群れを撃滅。さらにはオーガが村の近隣まで流れてきた原因と思しき、はぐれワイバーンとの想定にない遭遇戦が勃発。キョウヤがグラムで瞬殺して終了。

 その後、村に戻ったアリアはキョウヤの体質を利用した女漁りを目論むも、晩まで粘って収獲ゼロ。そもそも、若い女性がいないのだからどうしようもなかった。

 そうして今日へと至る。

 いつもの彼なら道中でモンスターに襲われている美女を救ったり、オーガに拐かされた麗人を救出したり、出現した竜が人化して美少女に化けるくらいのイベントはあるのに。間が悪いのか今回はそれすらなかった。

 

「こんな時に限って、クレメアさんもフィオさんもいませんし」

 

 他の仲間二人は、身の危険を感じたために参加を見送ってアクセルでの留守番を選んだ。

 大した危機察知能力である。

 

「前に遠征で数日野宿になった時は、確かもっと落ち着いていたと思うんだけど……」

「野外なんて、いつモンスターの襲撃があるか分かりませんし。私とて時と場合は弁えます。――そうですわね。例えるなら、郷土料理を目当てにお腹を空かせて現地まで足を運ぶも結局空振り。その上で断食まで強制されている状態とでも申しますか」

「ああ、なるほ…………いやいや、違う! これ女遊びの話だった!」

 

 食に拘りのある国(日本)出身のキョウヤとしては、思わず納得して頷きを返してしまいそうになった。数瞬経って何の話なのかを思い出すと、首を振って慌てて思考を散らす。

 アリアの好色な一面については彼も何度か苦言を呈したことがある。

 しかしその度に仲間の女性三人総出で言い負かされており、最近では諦めの境地へと達しつつある。

 ちなみに当人はともかく、残る二人が何故アリアの肩を持つのかと言うと、彼女が別の女に現を抜かしている間は自分たちが狙われないことを学習したからだ。

 しかも放っておけば意中の男に群がる他の女を勝手に駆除(お持ち帰り)してくれる上、アリア本人は恋敵にはなり得ない。

 悪魔に生け贄を捧げているかのような罪悪感にさえ蓋をするなら、アリアの女好きは二人にとってもメリットが大きかった。

 そのせいで彼女は毎晩違う女性を別の宿や家へと連れ込んでおり、夜間はパーティーメンバーですらアリアの所在を掴めないという凄い状態になってはいるが。

 現在キョウヤらは宿屋――は村に無かったので村長宅に泊まっているが、彼女と同じ屋根の下で寝泊まりしたのもこれが初なくらいだ。

 

 まあそれはさておき。

 事情を知ったことで、彼の顔には小さな安堵の笑みが浮かんだ。

 

「しかし、そういうことだったのか。僕はてっきり」

「はい?」

 

 それはつい先日のこと。

 キョウヤの軽はずみによって、うっかりアリアを蔑ろにしてしまう事態が起きた。

 当時は大恩ある人物との予期せぬ再会に浮かれて、回りが見えなくなっていた面はある。ただ事情はあれど、あれは自分に非があるとは彼も認めている。

 組み手で彼女の当たりが強かったのは、そのことをまだ引きずっているからではとの懸念があったのだ。

 

「前にアクア様をパーティーに勧誘したことがあっただろう? あの時のこと、もしかしたらまだ根に持っているのかと」

「ええ。もちろん持ってますが」

「……」

「私というものがありながら、目の前で堂々と他の女を口説き始めたのにはさすがにビックリしました。もっと良さげな女に乗り換えて、元の女はポイすると。随分と軽いお尻ですのね」

「い、いや、誤解を招く言い方は止めてもらえないかな。それに、あの時はそこまで意識が回ってなかっただけで、そういうつもりじゃなかったのは前にも説明を――」

「それも、相手はアクシズ教徒と。……よりにもよって、アクシズ教徒ですか。言っておきますけど、あの件についてはまだ許してませんわよ」

「……ごめんなさい」

 

 怖い。怒りを顕にするのではなく、ニコニコとした笑顔なのが余計に怖い。何より目がちっとも笑ってない。

 これは口で言っても駄目だと、元よりばつが悪かったキョウヤは速やかに全面降伏を選んだ。心做しか、爽やかだったはずの朝の空気が今は肌寒く感じる。

 

 以前、女神と見紛う美貌を持つ水色髪のアークプリーストとアクセルの街でバッタリ出会った。それだけならまだしも、この男はその場でパーティーへの勧誘を始めたのだ。

 既に仲間で、同じアークプリーストのアリアがすぐ傍にいたにも関わらずである。

 どうやら見知った相手のようだし、込み入った事情もありそうだったが、そのようなことは彼女の知ったことではない。

 役割に特化した少数精鋭が基本の冒険者パーティーに、さすがに二人も聖職者はいらない。

 そしてあからさまにリーダーがアクアとやらに入れ込んでいる以上、彼女が加入するならアリアはお払い箱となるだろう。つまり。

 ――あれ? もしかして私、今捨てられそうになってます?

 その時の彼女の心境を端的に表すなら、大体こうなる。

 焦りと動揺に包まれた中で導き出したその結論は、些か論理が飛躍していた。

 

 余所のパーティーに所属する女を引き抜きにかかった際は、さしものアリアも唖然とした。

 相手パーティー側に何やら見知った大貴族(ダスティネス家)の娘がいて、実家に関して突っ込まれたくない(まだ仲間に打ち明けてない)双方が水面下では揃って当惑していたのに。それすらどうでもよくなる衝撃だった。

 思わず『はっ?』との呟きが溢れ、それでプリースト然とした格好を認めて事情を察した両パーティーの幾人かから*1は同情の眼差しを向けられた。

 一番肝心のキョウヤは全く気付いていなかったけど。

 アクアを賭けた決闘の提案をキョウヤが切り出すと、焦燥に駆られて対戦相手のカズマへとこっそり支援魔法を掛けたくらいだ。

 もっともカズマの勝利により不安は杞憂で済んだし、時間的余裕もなかったから掛けた魔法はヘイスト*2とブレッシングのみだが。

 

 こうして駄弁っている間に日も段々と高くなってきた。

 休憩を切り上げて、宿泊している村長の家へと移動を始める。

 ここでの依頼は完了したため、後は多少の雑事を片付けて帰路に就くだけ。あまりのんびりし過ぎても、今度はアクセルへの帰還が遅くなってしまう。

 

 

 

 

 村を発つ前に、今日までお世話になった村長へと挨拶に向かった。

 王都で名を馳せる魔剣使いの勇名はこの村にまで轟いていて、おかげさまで滞在中は終始村人からの熱烈な歓迎を受けている。特に村長からのソレは際立ったものがあった。

 それはともかく。

 話を終えてもう出発するだけと思いきや、最後に村長が奇妙なことを言い出す。

 

「そういえば、アークプリースト様。お名前はアリア様でしたな」

「……? そうですが」

「どこかで聞き覚えがあるとは思っていたのですが、旅の商人より聞いた話をようやく思い出しましたよ。金糸の髪のエリス教徒で、名はアリア。王都でも腕利きと評判なアークプリーストと言えば、恐らくあなた様のことでしょう」

 

 はて? アリアは内心首を捻った。

 その特徴なら自身のことで間違いないだろう。彼女の知る限り、王都にアリアと言う名のアークプリーストは他に存在しない。

 ただ、世間的に有名かと言えば微妙だ。内輪の教団内においては有数の凄腕として知られるも、外部では知る人ぞ知るというところ。

 というのも、彼女は喧伝される派手な戦功に乏しい。

 戦場で轡を並べることもある騎士や冒険者連中ならいざ知らず、一般市民にまで名前が浸透するには少々発信力に欠いている。

 ましてや、こんな僻地に知れ渡るネームバリューはないと自己評価していたが……。

 

 そしたら村長が、二つ名がどうとか言い出す。

 んんっ? アリアの困惑は深まった。

 思い当たる節がない。というか、そんなものが付く強烈な逸話があるなら知名度の問題は発生していない。

 が、何か引っ掛かるものがあった。一旦プリーストや冒険者の部分を取っ払ってから記憶を掘り返す。すると、そういえばひとつ身に覚えがあったのを思い出す。

 それも、不名誉極まりないものが。

 答え合わせはすぐだった。

 

「確か、『千人斬りのアリア』でしたか」

 

 その異名を耳にしたキョウヤとアリアの両名はビシリと硬直する。次いで、油断していたところにブラッディモモンガの尿*3を不意打ちで浴びせられたような顔になった。

 その名が示すものを、二人は知っていた。

 村長は語る方へと集中しており、聞き手の様子の変化にまでは注意が向いていない。

 

「何でも魔王軍との王都での防衛戦で、夜戦にも関わらずたった一人で四桁近い魔族を討ち取る獅子奮迅のご活躍をしたと。その戦果で王都中をどよめかせたともお聞きします。いやいや、まだお若いのに大したものです」

「……」

「……」

 

 そんなワケないだろう。何だそれは、どんな化け物だ。

 キョウヤとアリアは顔を見合わせた。

 本当にそれほどの壮絶な戦果を上げていたならば、アリアは今頃とっくに実家からの勘当を解かれている。

 確かに王都で魔王軍との戦いに参戦した経験はそれなりに豊富だし、その中には夜間の(いくさ)も含まれる。

 また、騎士を輩出する名門との血筋に、自らも昔は騎士を目指して研鑽を積んでいたとの背景から、後方支援が本分のプリースト職でありながら異様に接近戦に強い。

 発展途上な今のキョウヤが相手なら、経験値の差で互角以上に渡り合えるくらいに。

 しかしそれでも、爆裂魔法を敵陣のド真ん中に撃ち込むでもしない限り到底出せそうにないスコアは挙げていない。

 多分これは、いくつかのエピソードがごちゃ混ぜになっている。話の内容を切り分けて複数の要素へと分解すると、個々の話にはアリアも覚えがないでもなかった。

 そもそも、『千人斬り』は戦闘に関連する異名ではない。

 

 正しくは暇人(貴族)共の手により暴かれた、アリアがベッドインにまで持ち込んだ女の人数に由来している。

 その数、九百強。

 不確かなもの、まだ明るみになっていないものを加えるなら、千超えは確実視されている。故にこその『千人斬り』。

 この事実は身分の垣根をも越えて王都中を震撼させ、さらには一部の男性からの羨望を一身に集めるとの影響をもたらした。

 なお実際の人数を把握している者はアリア本人と、そのアリアが祈祷ついでにたまに近況報告を上げている女神エリスのみ。

 

 誤った噂で持ち上げられるのはいくらなんでも後ろめたい。とても居た堪れない気持ちにさせられる。

 機を見計らって話題を打ち切ると、二人は逃げるように家を辞した。

 優秀な冒険者は、ピンチからの退却も誠に鮮やかであった。

 

 

 

 

「あの村には当分近づきたくありませんわね……」

 

 アリアのぼやきに対して、キョウヤはただ曖昧な笑みを返す。

 次に村へ立ち寄る頃には、異名にまつわる真相が伝わっているかもしれない。

 好意と敬いをもって接してくれていたあの村の人々が、その時にはどのような目を向けてくるのやら。――とてもきまりの悪い思いをすることだけは確かだろう。あまり想像したくない。

 

 終わったことにいつまでも拘っていても仕方ない。アリアは気分を切り替えて、信奉する女神へと祈りを捧げることにした。

 日課である朝の礼拝はとうに済ませている。ただそれとはまた別に、今のうちに祈願しておきたい事柄があった。

 

「天に(ましま)すエリス様、私めに聖なる御加護を。村では新たな出会いがなかったのです。もう限界なのです。アクセルではどうか、どうか女性との逢瀬に恵まれますように……!」

「そんなことを祈られたって、女神様も困るんじゃないかなあ……」

 

 必死過ぎるその有様に、キョウヤは引いた。

 つい先程、異名の件で気恥ずかしい思いをしたばかりだというのに。もうこれである。

 

 とは言うものの無駄に研ぎ澄まされた信仰心より発せられる彼女の切なる願いは、幸運の女神の御許へと確かに届いた。

 そして一応は敬虔であるはずの信徒より送られた、あまりにも淫奔に過ぎるその願いに、祈りを受信したエリス様は大層困惑したという。

*1
具体的には騒動でも傍観者寄りだったフィオ、クレメア、めぐみん、ダクネスの四名。

*2
原作最終十七巻にて、ようやく名前が判明する速度増加の支援魔法……で合っているはず。Web版での名称はスピードゲイン。

*3
激臭。一週間は臭いが落ちない。

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