百合ゲークラッシャーVS百合ゲーオタク〜百合豚JDは原作主人公に百合ハーレムを作らせたい〜   作:カオス箱

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架空原作杯エントリー作品です。
百合の間に挟まる男を許さない心で書いたよ。


第1話 百合の間に挟まっていたアイツを、私は決して許さない

 

 

 泥水をひっくり返したかのような空模様の下、ボロボロになった街の一角で、ひとりの少女が呼びかけていた。

 

『正気に戻るんだ皆! 頼むからボクの話を聞いてくれ、キミ達はそいつに洗脳されている……そうでなきゃここまでの所業はできない! 』

 

 少女の前には、大勢の女の子達に囲まれたひとりの青年。

 少女の呼びかけをうけた彼女らは、熱に浮かされたような顔つきのまま、少女に言葉を投げ返す。

 

『ダメだよ。いくら親友でも、それだけは聞き捨てならないかも。いい加減……怒っていいよね? 』

『お前がそんな奴だとは思わなかったぜ。ったく、つくづくオレ様の見る目の無さに泣けちまうぜ! 』

『魔女の手先の言葉なんか聞く価値ないって。ほら、さっさとやっつけてしまおうよ。あたしは面倒臭い事は嫌いなんだ』

 

 変わり果てた友からの心無い言葉を受けて、少女は苦しむ。

 幼馴染みだった女の子に喧嘩友達だった不良少女、怠け者な先輩にめちゃくちゃつよい生徒会長、似たような境遇から互いにシンパシーを感じていた双子の先輩。

 誰もがかけがえのない友達だった筈なのに、今や彼女らはひとりの男の愛玩人形と成り果ててしまっている。

 それをどうにかすべく、少女は必死に争った。

 しかし、駄目だった。

 正気を失った彼女達には少女の言葉は届かず、逆に少女は孤立させられた上に学園を追放されてしまった。

 それでも諦めずに戦い続けた結果が今だ。

 孤独に戦い続けた少女は、世界を蝕む“魔女”の手先に仕立て上げられ、今こうしてかつての友と仇敵になぶり殺しにされていた。

 

『紫風波っ!』

『灯呪炎斬っ! 』

『がああああああああああああああっ‼︎ 』

 

 かつての友人達からの集中攻撃を受け、少女は地に膝をつく。

 全身が血と傷にまみれ、片目は潰れて鼓膜は破れ、あちこちに火傷の痕や痣を残している。砕けた骨は数知れず、おまけに身体は無数の呪いや毒に侵され、内外から命を蝕んでいる。

 完全なる満身創痍。

 それでも少女は立ち上がる。

 

『四方展開、鬼門より雷撃をッ‼︎ 』

『ッ‼︎‼︎ 』

 

 そこに青年が、空中に文字を書くような仕草をする。

 すると、青年の指先から激しい稲妻が飛び出し、少女の小さな身体を貫く。

 声にならない悲鳴をあげて、少女が倒れる。

 

『お前、散々俺の事を好き勝手言ってくれたよな。魔女の手先だの裏切り者だのお邪魔虫だの……ま、今となっては自己紹介にしかならねーけどなっ』

 

 ふらりと、少女が立ち上がる。

 満身創痍になりながらも、少女は諦めてはいない。

 かけがえのない友人達の為、たったひとりで元凶に挑まんとする。

 

『ダメだ……キミ達はボクが元に戻す! 絶対にそうしてみせるっ! 』

『じゃあかかって来いよ。散々ヒロイン(こいつら)とのハーレムを邪魔されて、俺は頭にきてるんだ。女だからって容赦はしねえ、なぶり殺しにしてやるっ! 』

 

 青年と少女が交差する。

 直後。

 少女は呆気なく雷撃に貫かれ、その命を散らした。

 

 


 

 

 場面は変わり、とあるワンルームマンションの一室。

 

「なに、これ」

 

 朝乃陽毬(あさのひまり)はSw○tchのコントローラーを握りしめたまま、画面を見つめながら唖然としていた。

 彼女の目の前にある画面には、可愛い女の子達に囲まれてご満悦な様子の青年が映し出されている。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…………⁉︎ 」

 

 うきうき気分で大学から帰宅して、いざゲームをやっていたら、これだ。

 陽毬がプレイしていたのは、『月雫の文字遣い(ノベリスト)〜ツヅラズの魔女〜』。通称『ツキノベ』。

 魔法の存在する現代日本を舞台に、少女達の成長を描くRPGシリーズの第5作目であり、可愛い女の子達のカップリングも堪能できる、所謂百合ゲーである。

 RPGとしても普通に面白いのに加えて、ヒロインとなる女の子達と結ばれる個別エンドも多数収録しており、数多くの百合豚を量産してきた良作だ。

 しかし、

 

「わけ、わかんない……どうなってんのこれぇ……つーか、()()()()()()()()()()()()()⁉︎ 」

 

 陽毬は涙目になりながら、ここが壁の薄い下宿先の安アパートであるということも忘れ、ゲーム画面に向かって思いの限り怒鳴り散らす。

 そう、それが一番の問題点。

 エンディング画面のど真ん中に居座っている男性キャラ。()()()()()()()()()()()()()()()

 陽毬は、ヒロイン毎の個別エンドを完走すべく『月雫の文字遣い(ノベリスト)〜ツヅラズの魔女〜』を周回プレイしているが、今画面に映っている男キャラは影も形もなかった。

 というか『月雫の文字遣い(ノベリスト)』シリーズは基本的に全部百合ゲー、そこに男キャラを挟むことは決して無い。

 そこがこのシリーズの美点だった筈なのに、それを見事に裏切られた。故に、陽毬は血涙が出そうなほどにブチギレていた。

 

「なんでお前がハーレム作っとんのじゃ! わたしが見たかったのは百合ハーレムエンドなんだよぉ! 百合の間に挟まるなこの間男があっ! 股間の肉棒微塵切りにしてお前に食わせたろーか⁉︎ 」

 

 ゲーム好きとしては、一度始めたゲームを投げ出すのは製作者への礼儀に欠けるとして、シナリオの酷さに怒りを露わにしながらも一応最後までプレイしたのだが、陽毬の怒りは治ることを知らなかった。

 

「ったくなんだよアイツ⁉︎ いきなり視点変わったと思ったら、次々とヒロインを手籠にしてさぁ、挙げ句の果てには主人公ちゃんも惚れさせちゃって? 訳わかんないし惚れ方も雑なんだよ‼︎ 何をどうしたらあんな展開で好感度アガんだよ意味わかんねえよクソがっ! 」

 

 そもそも陽毬は、この間男のルートなんか進めるつもりはなかった。

 どこでどうフラグ管理をしくじったのかは知らないが、何故かこんなクソみたいなルートに入ってしまった。

 最初から百合ハーレムを潰すモノだと分かっていれば、まだそういうジャンルなんだと納得も覚悟もできるが、今回は違う。

 百合の皮を被って陽毬を全力で爆殺しに来ている。

 予期せぬ間男エンドの到来に、陽毬は完全にガチギレしていた。

 

「何より許せないのは……キオを殺したことだよぉっ! まじ許せねえんだけどふざけんな人体錬成の人柱にでもなってろよこのクソ野朗フ●ック‼︎ 」

 

 そう、彼女が一番キレていたのはそこだ。

 “キオ・ハーメル・調(しらべ)”。

 『月雫の文字遣い(ノベリスト)〜ツヅラズの魔女〜』のメインヒロインであり、主人公“香愛(こうあ)ルカ”の幼馴染み。ネタバレ防止の為に詳細はぼかすが、クールなボクっ娘キャラに加え、作中で明かされた辛い境遇や命懸けで主人公を守ろうとする姿勢から、多くのファンを産んだ人気ヒロインであり、陽毬もキオの事は大好きだった。

 それが、何故か死んだ。

 間男がシナリオ上に現れてから、何故かキオが割りを食いまくり、最終的にはラスボスと一緒に跡形もなく消し飛ばされてしまった。

 というか、“キオのルカへの過保護っぷりに腹立てた間男が、キオを学園から追い出した挙句、細かい経緯をキンクリしてキオがラスボスの手駒として立ちはだかる”という、まるで下手くそな二次創作のようなクソっぷりだった。

 キオと仲良しだったはずのルカやその他のヒロイン達も、キオ虐殺に嬉々として加担した上、最後には間男ハーレムに加わって惚けた様な笑顔を浮かべている。

 これはもはや冒涜だった。

 こんな汚物じみたものがこのゲームに存在していたとは、キオルートやトゥルーエンドを見た時には想像もつかなかった。

 

「ルカちゃんもキオもあんな事しない! こんなのツキノベでも何でも無いじゃん⁉︎ どうしちゃったのさ製作スタッフ⁉︎ 」

 

 コントローラーを握りつぶしたくなるほどに憤慨する陽毬。

 エンディング画面を見ていると怒りしか湧いてこないので、陽毬はボタンを押してトップ画面に戻る。

 

「ちょ、ちょいと待って……これどういうコト……⁉︎ なんで間男(ゲロカス)がいろんなシーンにいる訳……⁉︎ 」

 

 気分を落ち着かせるべく、トップ画面からムービー集を開いた陽毬だが、ここで彼女は戦慄した。

 ()()()()()()()()()()()()()

 ルカとキオの幼少期の出会いを描いたムービーは、ルカと間男の出会いのムービーになっているし、他のヒロイン達の個別ルートのムービーに至っては、ルカと各ヒロインの間に間男が挟まって御満悦。

 何これ、NTR物によくある間男からのビデオレターかなんかだろうか?

 

「新手のバグ……にしてはおかしすぎる‼︎ そうだ、説明書は……! 」

 

 絶望に染まりながらも、陽毬は思い出したように電子取説を開いてみる。

 が、その行為は陽毬をさらなる絶望の底へと突き落とした。

 

「ああああああああああああああああ変わってしまってるううううううううううっ‼︎‼︎ あらすじからキャラ紹介まで、何もかもあの間男(クズ)のハーレムになってりゅううううううううううううっ‼︎⁉︎ 」

 

 なんと、全てが別物と化していた。

 知らないうちに百合の花園が、ラフレシアの蔓延るジャングルと化してしまっているでは無いか。

 放心状態でトップ画面へともどると、そこにはヒロイン達に囲まれた間男が、デカデカと映し出されている。もはやここまでくると死体蹴りだ。

 

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だあっ! 『ツキノベ』をプレイしていた筈がいつのまにか別ゲーになってたなんて…………わたしはこんなの信じないぞおっ⁉︎ あーなんかイライラしてきた! 消えろクズチン野朗ォッ‼︎ 」

 

 困惑と怒りが頂点に達した陽毬は、手に持っていたコントローラーを、ゲーム画面に映っている間男(クズ)目掛けて思いっきりぶん投げた。

 その時だった。

 ビビビビビビガガガガガガガッ‼︎‼︎ と画面が激しくブレだした。

 

「な、なにがおきてんでござりまするかぁっ⁉︎ 」

 

 気が動転して、口調がめちゃくちゃになる陽毬。

 ひょっとして今のでモニターを壊してしまったのでは無いだろうか?

 『ツキノベ5』をプレイする為だけにバイト代で新調したばかりだというのに、これでは余計な出費が発生してしまう。

 と、ここでさらなる異変が。

 画面が激しく光り始めた。

 

「てか何? なんか光り始めてぬわああああああああん眩しいもおおおおおっ⁉︎ 」

 

 あまりの眩しさに、絶叫しながら目を閉じる陽毬。

 

 

 

 そして、次の瞬間には。

 朝乃陽毬は、忽然と消えていた。

 

 


 

 

 どれくらいの時が経っただろうか。

 陽毬が意識を取り戻した時、目の前には修道服っぽい服装をした変態がいた。

 そいつは無駄に可愛らしい笑みを浮かべながら、仰々しい口調で陽毬を起こす。

 

「ぐっともーにんぐ、お嬢様っ☆ 」

「ぎゃあああああああ不審者あああああああああああっ‼︎ 」

「ぬぎょふっ⁉︎ 」

 

 反射的に、陽毬は目の前の変態の股間を蹴り上げていた。

 

「潰れる流れる溢れ出るぶるああああああああああっ‼︎⁉︎ 」

 

 修道服を着た変態は、ローブの下のボンテージ衣装を晒し出しながら、股間を押さえてのたうち回る。

 一方陽毬はというと、まだ意識がぼんやりとしているようで、先程の蹴りの際に感じた違和感を反芻していた。

 

「……なんか蹴り飛ばした時に変な感触した気がする」

「お前馬鹿かっ⁉︎ 初対面の人間に金的かますとか、近頃の若者はどんだけ乱暴なんだよコンチクショウ‼︎ 」

「金的って……え、あんた男? 」

 

 確かによく見ると、ボンテージ衣装の股間の辺りがもっこりしている様な気がする。

 変態もとい修道服の少年は、股間を蹴られた痛みで涙を流しながらも立ち上がり、陽毬を睨みつけてくる。

 

「このクリエス・マキナ、一生かけてあなたを恨みますぞぐへへへへびまゃー⁉︎ 」

 

 ここで再び、陽毬の金的が炸裂。

 クリエス・マキナと名乗った変態は再び地面を転げ回る羽目に。

 ボンテージ修道服を着た女装男子なんだから、変態に決まっている。陽毬は早くも、マキナを変態認定していた。

 

「つーか初対面の人間の股間蹴り上げる前にさぁ、気にすることとかあるんじゃあないのかい⁉︎ 」

「言われてみれば……そうだ⁉︎ 」

 

 股間をおさえて悶絶するマキナに指摘され、ようやく陽毬は周囲の様子に気づく。

 いつの間にか、陽毬はデカい門の前にいた。塀の向こう側からは綺麗な桜が顔をのぞかせており、辺りは春の陽気に包まれている。

 先程まで、自室にいたはずなのに。これは一体どういうことで、ここはどこなのだ?

 

「……何処だここ」

「まあ慌てるな…………ボクが説明してやるから……あー痛いあ痛くて震えてるぅ……」

「いや待て…………なんか見覚えあるぞ」

 

 悶絶しているマキナを放置して、陽毬は辺りを見渡す。

 目の前に聳え立つクソデカ門と、その向こうに鎮座する洋風な外観の建物。

 陽毬はこれを知っている。

 門の横に貼り付けられているプレートを読む。

 ———私立上府(うえふ)魔法高等専門学校。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

「は……? 」

 

 陽毬は困惑しながらあたりを見渡す。

 

「ウインドダッシュッ! 」

「あ、ずりーぞお前! 鬼ごっこで風魔法とか何考えてんだよ⁉︎ 」

 

 近くの公園では、子ども達が遊んでいる。

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「おねーさんオレ達とあそぼうぜー? 」

「ブレイク」

「なあっ⁉︎ オレのズボンが爆発四散したぁっ⁉︎ 」

 

 ナンパ男に絡まれていた女性が、何かを言いながら男のズボンに触れると、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ほっ、よっ」

 

 近くの電柱では、作業員が電線工事の作業をしている。

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 明らかに物理法則を無視した挙動を取る周囲の人々に、陽毬は困惑していた。

 

「なに、これ」

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 マキナがそう言い放つ。

 つまりは。

 

「わたし……迷い込んじゃったの……? あの『ツキノベ』の世界に⁉︎ 」

「ヒヒヒッ、やっと驚いてくれたか」

 

 マキナが股間を抑えながら笑う。

 状況を理解した陽毬は、歓喜と驚愕の入り混じった悲鳴をあげた。

 

 




わりと導入早めに出来てるきがする!
多分次回のラストあたりで『ツキノベ』のキャラ達を出せると思います。

アクロスやAMOREよりかはコメディ寄りにするつもりですのでご安心を。
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