百合ゲークラッシャーVS百合ゲーオタク〜百合豚JDは原作主人公に百合ハーレムを作らせたい〜 作:カオス箱
タイトル通りの回だよ!
まさか僕がダンジョンモノみたいな話を書くことになるとは……
◾️前回のあらすじ
“ツキノベ”原作ヒロイン・退田歌恋を追いかけることにした陽毬達。
その行き先は……
念のためここで言っておくが、”ツキノベ”はジャンル的にはRPGである。
つまりは、戦闘を介してキャラを育成したり、クエストをこなすことでストーリーを進めたりとするゲームなわけで。そこには勿論――ダンジョン要素もある。
そして今。
陽毬達は後者の裏手に広がる森、その中央にぽっかりと空いた大きな縦穴の前に来ていた。
「……なんだかよくわからないんだけど、マジでこの穴に入るの? 全然底が見えないし、さっき立ち入り禁止の看板見かけたような気がするんだけど」
「校舎に関しては問題ない。ボク達はこの学校に入った時点でダンジョンに潜る資格があるわけだからね」
「いや資格があっても入りたくないんだけど⁉ 」
大穴を前にすっかり腰が引けてしまっているルカ。彼女以外の面々も、どこか緊張したような様子だ。
”ツキノベ”世界は基本的な世界観は現代に近いのだが、いくつか差異が存在する。その最たる例がダンジョンの存在。
この世界におけるダンジョンとは、大半が魔術師が自身の拠点である工房を守るために作り上げた防御機構だったり、魔術実験に失敗した結果の副産物だったりするのだが、その危険度は洒落にならない。故にダンジョンへの出入りは免許制となっており、特別な免許を持った者――魔術師にしか出入りすることができない。
そして、上府魔術高専の生徒達も例外的に、入学した時点で魔術師見習いとして限定的なダンジョン免許を有している。要は自動車免許における仮免みたいなものだ。
「お前、本当にこの先に退田歌恋がいるんだろうな? 」
「うん。ここ――”箱庭の大穴”は原作序盤に挑むダンジョン。名目上は上府魔術高専が生徒の実地訓練や魔術の野外実験とかの為に保有するダンジョンで、原作シナリオ上はここでルカちゃんは歌恋ちゃんと邂逅することになっている………………んだけど」
「だけど? 」
「ここから飛び降りるの………………やめない? 」
そう言った陽毬の足は生まれたての小鹿みたいにぶるぶる震えていた。
目の前にある穴は、底が見えないレベルで深い。穴の縁は断崖絶壁でよじ登ることは見るからに困難。果たしてこんなところに落っこちて命の保障があるのか、仮に命があったとしても救助が来るのかとか、最悪を考えるだけで身震いが止まらない。
「先生が言うには、ここって学校側で管理されてるダンジョンなんやろ? なら安全な入口がどっかにあるんちゃうんか? 」
「入口、か」
真智の言葉を受け、考え込むキオ。
確かに、人の手が入っているならば、もっと安全な出入りの手段があって当然。ましてや、ここは学校が管理するダンジョンであるのだから、安全性については一定の担保がなされてしかるべきだ。
となれば、わざわざここからダイブする必要は無い。
キオに促され、一同は別の入口を探すべく引き返すことにした。
「じゃあ引き返すしかなおぅとおとととおおおおおおっ⁉ 」
「ちょ、ルカちゃん⁉ 」
が、ここでルカが何かに躓いて転んでしまう。
幸いながらたいしたことはなさそうだが、大穴の縁に近い所だったこともあり、一歩間違えればそのまま落っこちてしまいかねなかったところだ。最悪の事態にならず、ほっと胸をなでおろす一同。
「ほらルカちゃん、立てる? 」
「うう~どうせならキオに手を差し伸べられたかったぁ~」
手を差し伸べたのがキオではなく陽毬であることに若干の不満を漏らしながらも、ルカはしぶしぶ陽毬の手を取る。
その時だった。
ピシッ、と何かが軋むような――正確には、何かに亀裂が入ったかのような音がする。
「何の音だ? 」
「………………よくわかんねーが、マズいような気がする」
キオとマキナの悪い予感が的中するのに、そう長い時間はかからなかった。
ルカが陽毬の手を取った瞬間、彼女達の立っている周囲の地面に、突如として無数の亀裂が生じだしたのだ。それは瞬く間に広がってゆき――
「おいお前らっ、今すぐここから離れ――」
マキナがそう叫ぶが、遅かった。
次の瞬間、ガラガラガラガラズズズズズズズズズズズズドドドドドドドドドンッ!!!! と激しい音を立てて、ルカの周囲の地面が崩れてゆく。
陽毬もキオも真智も、気づいたときには足場のない空中に放り出されていた。回避する方法も、それだけの時間もない。完全なる自由落下の世界が、始まっていた。
地上にマキナひとりを置き去りにして、穴の底へと真っ逆さまに落ちてゆく少女達。
「ひょえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ⁉ 」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでこうなるのおおおおおおおおおおおおおおおっ⁉ 」
「くっ………………まさかここまで老朽化してたとはっ………………!!!! 」
「どどどどどどどどどどどうするのこれじゃあみんな仲良く挽肉Deathよおおおおおおっ!!!! 」
もう結構な秒数を落下しているはずだが、いっこうに地上に付く気配がない。
一体この大穴はどこまで続いているのだろうか。もしかすると、このまま永遠に落ち続けるのかもしれない。眼下に広がり続ける闇を目にしていると、そんな気がしてきて仕方がない。
「既にボク達は1分近く落下しているはず。それほどまでにこの穴が深いのか、それとも空間に異常が発生しているのか……」
「キオちゃああああああああああああああああああんなんとかならないのおおおおおおおおおおおおおおっ⁉ キオちゃんだけが頼りなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ‼ 」
キオの小さな身体にしがみつきながら訴えるルカ。
彼女の言うとおり、キオ以外の3人は魔術師としては全くの素人。キオが頑張らなければ、待っているのは美少女4人がミンチになる未来だけ。
それは嫌だ。
何としてでも回避しなければならない。
「皆っ、しっかり捕まっててよっ‼ 」
「お、おうっ‼ 」
キオにそう言われ、ルカ達はキオの腰や足にしがみつく。
そして、
「
下方向に手を伸ばしながらキオがそう発すると、次の瞬間、落下速度が大幅に遅くなった。
まるで世界全体がスローモーションになったかのように、一行はふんわりと落下している。まるでメリーポピンズになったかのような気分だ。
「なにこれ………………⁉ キオ、一体何したの? 」
「ついでに念のため………………
驚く間もなく、キオはもう片方の手を下に伸ばしながら叫ぶ。
すると、キオの指先から紫色の光が放たれ、真下に広がり続ける闇を貫いた。
闇を貫いた光は、そのまま闇を押しのけるようにその輝きを増していき、その下から固そうな岩の地面が顔を出す。まるで、はじめからそこにあったかのように。
「地面が出てきた⁉ 」
「いや、最初からあったんだ。恐らく、この縦穴は空間がゆがんでいて、ボク達はずっと同じ位置で落ち続けていた。そのループをボクの魔術で破壊したから、穴の終端が出てきたというわけさ」
キオの説明に感心しているうちに、地面がすぐ近くまで来ていた。
しかし、キオの魔術で落下速度が大幅に落ちている為、地面に衝突する危険はない。陽毬達はキオの身体にしがみつきながら、ふんわりと穴の底へと足を下ろす。数分ぶりの堅い地面の感触が、酷く懐かしく思えた。
「た、助かった……んだよね? 」
「せやな……ところでキオちゃん、今のってまさか……」
「そう、時間操作。異世界人である君達は知っているだろうが、これがボクの魔術だ」
真智が言いかけたところで、先回りするかのようにキオは種明かしをした。
時間魔術。名前の通り、時間を操作する高度な魔術。
キオの家系は、代々時間に関する魔術の研究を行ってきた。中でもキオは屈指の才能を有しており、15歳にして時間の加減速に停止、時空間異常の無力化など多種多様な時間操作魔術を体得している。先ほど落下速度が大幅に遅くなったのは、自身の周囲の時間を遅くしたためであり、その後に放った光線は時空間異常を破壊する魔術だ。これほどの腕前ならば、上府魔術高専の入学試験を主席合格するのも納得だ。
そんなことはさておき。
皆の無事を確認し終えたキオは、未だに足にしがみつき続けているルカと陽毬を引き剥がそうとする。
「ほら、いい加減離れてくれ。流石に動きづらい」
「やだ。折角の機会だから今日1日はこうしていたい」
「キオちゃんの柔らかさを堪能したいです。すーはーすーはー」
「吸うな吸うなっ‼ ボクは猫じゃないんだぞ⁉ 」
幾ら言っても全然放してくれなかったので、キオは強めに足を振ったことで、ようやく2人を振りほどくことに成功した。ちなみに、ルカと陽毬は振りほどかれた時でさえもご満悦そうな顔をしていた。駄目だこいつら。真智が遠い目をしているぞなんとかしてやれ。
それにしても、だ。
やはりというか、穴の底は非常に暗かった。壁には等間隔に松明がかけられてはいるものの、その数は少ない上にさして明るくもない。別途で明かりを用意する必要がある。
「暗いな……おい誰か懐中電灯とか持ってないのか。もしくは周囲光らせる魔術とか」
「………………」
薄暗い周囲を見渡しながらキオがそう尋ねるが、全員が黙り込む。
よく見ると、松明で照らされた彼女達の顔には、おびただしい量の汗が流れている。
「ごめん、何も持ってきてない」
「気持ちが逸り過ぎました………………」
「キオが全部やってくれると思って」
「だってよくわからへんし」
「………………………………」
皆の返答を聞いたキオは、頭を抱えた。
どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。集団自殺しにきたんじゃないんだぞ?
「………………まさかとは思うけど、君達は準備もなしにダンジョン突撃する気だったの? 」
キオの言葉に、陽毬達は返す言葉もなかった。
入学してすぐの時点で、教師や上級生から口酸っぱくなるほどに"ダンジョンに行くときはちゃんと準備していけよ? "と言われていた筈なのだが、どうやら彼女達は、歌恋を追うことばかりを考えていたばかりにすっかり失念していたらしい。
ルカや真智はともかく、煩悩の塊でキオ推しな陽毬ですら、推しに呆れられる恐怖ですっかり縮み上がっている始末。キオの威圧は彼女達には効果抜群だった。
「かくいうボクも、懐中電灯や脱出用の魔道具とかはぜんぶマキナに持たせていたし……どうしよう」
「い、一応学校が管理してるダンジョンなんやからさ、最悪教師とかが助けに来たりするんとちゃうの? 」
「………………そうだといいんだけど」
真智の言うとおり、ここは学校が管理しているダンジョン。
生徒や教師が魔術の試運転や野外実験のためにちょくちょく潜っているような場所なので、迷ったときや出られなくなった時のセーフティーネットは万全なはず……だ。そうだと思いたい。そうでなかったら困る。
とにかく、ほぼ真っ暗闇の中を動くわけにもいかないので、陽毬達は壁に掛けられた松明の近くに身を寄せ合うことにした。
「ったく、こんなところに本当に退田歌恋ちゃんがいるんか……? 」
「いる! 原作知識を信じなさいっ! 」
「ねえねえキオ、陽毬はさっきから何を言ってるの? 」
「………………知らなくていいよ、多分」
太陽の光がほとんど届かないほぼ完全な闇に包まれていながらも、4人はさほど恐怖を感じてはいなかった。それは皆と一緒にいることによる安心感からなのか、はたまたそれ以外の要因によるものなのかはわからない。
だけど、陽毬は。
なぜかこの時が楽しいと思っていた。
本当はもう少し書きたかったけど、あまり更新期間が空くのもアレなので今回はここで切ります。
次回はもうちょい早く仕上げたいです。