百合ゲークラッシャーVS百合ゲーオタク〜百合豚JDは原作主人公に百合ハーレムを作らせたい〜 作:カオス箱
今回はマキナくんちゃんが色々教えてくれる回。
百合ゲー要素がまだ出ないのは許してほしい。
大好きだった百合ゲーの世界に来てしまった百合オタク・
本当ならばすぐにでも原作キャラをひと目拝みたいし、なんなら抱きついたり吸ったり舐めたりしたいとも思っている。
陽毬の心の欲棒(意味深)はすでにBINBINだった。
が。
ここでひとつ、問題が浮上した。
「わたしこれからどうしたらいいの⁉︎ よくよく考えたらコレ異世界召喚とか異世界転移ってヤツだよね⁉︎ 食う寝る所に住む所とかどうしたらいいの⁉︎ 」
「さっきから思ってたけど、テンションの乱高下っぷりが半端ねえのなお前」
あたふたしている陽毬の背後で、2度も金的されて悶絶している女装神官クリエス・マキナが、素朴なツッコミを入れる。
そう、思ったより切実な問題があった。
異世界転生ではなく異世界転移であるため、今の陽毬はこの世界では衣食住の保証がない状態。いわば、身の着のまま見知らぬ土地に放り出された様なもんである。
このままじゃ愛しの原作キャラ達を愛でるどころか、魔獣や悪い魔術師が闊歩するこの世界でホームレス生活を送らなければならなくなる。
間違っても二十歳間際の女子大生が、そんな生活を送っていいはずがない。
陽毬はパニックになり、近くにいたマキナに泣きついた。
「マジでどうしよう‼︎ このままじゃわたしホームレスだよ⁉︎ 百合の花園を遠目に眺めながらの路上生活とか嫌だよぉっ! 」
「揺らすな泣き喚くなしがみ付くなぁっ! てか2回も金的した相手によくもまあ泣きつけるよなぁお前⁉︎ オレ様じゃなきゃ即【禁則事項】ルート一直線だからな⁉︎ 」
マキナはなんとか陽毬を引き剥がす。
彼からしても、流石に陽毬を放置するのは忍びない。そこまで薄情にはなれないのだ。
そこでマキナは、ある提案をした。
「…………ウチ来る? 」
マキナの提案は、陽毬にとってはまさに救いの手であった。
あまりの嬉しさで、陽毬は異性であることを忘れ、ついついマキナを抱きしめてしまった。
その後、マキナくんちゃんが顔真っ赤にしたのは言うまでもない。
「ほら上がれよ」
「あ、うん……お邪魔しまーす…………」
そしてなんやかんやあって、陽毬はマキナの住むマンションにやって来た。
未成年の一人暮らしにしては無駄に綺麗なマンションの一室に、陽毬は恐る恐る足を踏み入れる。
「何緊張してるんだよ。もしかして男の部屋に上がるの初めてか? 」
「いやそれくらいわたしにだってあるしっ! 一応兄が居たからッ‼︎ 」
マキナの揶揄いにムキになる陽毬。
見事なまでに図星だった。
(つーかコイツ、変態のくせにやたらいい匂いするなぁ…………やっぱ女装してる奴って色々と努力してるんだなぁ……)
「…………なんだよその目は。なんかオレ様を見る目が獣じみてて怖いんだけど」
「いやないないない。あんたみたいな変態相手にそれはないから」
陽毬はマキナの言葉を否定しながら、彼に促されるがままにソファーに腰を下ろす。
「今更なんだけどさ…………アンタ、一体何者? 『ツキノベ』にアンタみたいなキャラ居なかったよね? 」
ここでようやく、陽毬はマキナの素性について探りを入れ始めた。
そう。
聖職者のコスプレした女装野朗を目の当たりにしたら、そりゃあ色々と探りたくなる。
ここまでの道中で、ここが『ツキノベ』の世界であることは、陽毬にもよくわかった。
だからこそ、マキナの素性がわからない。
「教えないともっかい金玉蹴るよ。バベルの塔蹴り倒すよ」
「ちゃんと話すからやめてくれ、タマがひっこんじゃう」
すっかり陽毬の金的に萎縮してしまったマキナは、陽毬の隣に座ると、にんまりとした顔でこう言った。
「んー。はっきり言うとね、オレ様は転生者なのサっ☆ 」
「…………は? 」
てんせいしゃ。
その言葉を聞いて、陽毬は一瞬フリーズした。
陽毬だってオタクだ。近年の流行りくらい分かっている。
転生者。
死んだ人間が、前世の記憶と人格を保護したまま、別の世界で新たな命として生まれ変わること。
にわかには信じがたいが、実際に陽毬が『ツキノベ』世界に来てしまうという、非常識な出来事が起きている以上、転生者とやらの存在を否定しきれない。
(転生者って……近年のネット小説とかでバカみたいに見かける、あの転生者のコト? )
(その通りだぜ。じゃなきゃお前を一目見ただけで異世界転移なんか浮かばねーだろ)
(こ、こいつッ⁉︎ 直接脳内に———っ⁉︎ )
眼差しだけで言葉を交わし合う2人。
というか2人揃ってノリが良すぎである。
「オレ様だけじゃない。この世界には沢山の転生者がやってきている。どいつもコイツも狙いは同じ———『ツキノベ』キャラのハーレムさ」
「⁉︎ 」
マキナの言葉に驚く陽毬。
ゲームの世界に来てしまっただけでも驚きだというのに、その上さらに、自分以外にも『ツキノベ』世界に来ている人がいるというのだから、そりゃあ驚くのも無理はない。
「わたしの他にもいるの……⁉︎ 現実世界からこの世界に来た人が⁉︎ 」
「うん。お前がこの世界に来れたんだ。他のやつだって来るに決まってる。よく言うだろ、“転生者一人見かけたら100人いると思え”ってさ」
「聞いたことないんだけど」
某害虫と一緒くたにされる転生者の皆さんが可哀想だ。
だが、不思議と納得はいく。
世の中、“自分だけにしかできないこと”というのは案外多くなく、大抵の物事というのは、“自分以外にも出来る人がいること”だ。
少なくとも陽毬は、そう思っている。
「って、なんでわたしが異世界転移して来たって分かったの? 」
「いやだって急に目の前がピカーンッ‼︎ って光ったと思ったら、次の瞬間にはお前さんが地面でぐーぐー寝てたんだぜ? 明らかにまともじゃないだろ。てかお前の転移の瞬間、ネットに拡散されてる」
「だああああああああやめてえっ‼︎ 普通こういうのって人目につかない場所に転移したりするよねッ⁉︎ なんで衆人環境下にいきなり転移するかなぁっ⁉︎ 神様馬鹿なんじゃないのっ⁉︎ 」
【悲報】転移直後から嫌な方向にバズってしまった件。
ゲームの世界に来てしまうだけでもヤバいのに、その上転移の瞬間が撮影されていてネットにバラまかれてるとか、はっきり言っておしまいだ。
『ツキノベ』世界が現代日本だったのが災いし、陽毬は一躍してネットのおもちゃとなってしまったのであった。
「うわ、もうコラ画像出回ってる……勘弁してよもう……」
「“涅槃女子降臨”、“宇宙人襲来、“ゲリラマジックショー”……噂話が大好きなのは、現実世界と一緒なんだな」
「まだ二十歳にすらなってないってのに貝塚土竜爺と同類になるとか嫌なんだけどっ⁉︎ 助けてヨォマキナえもん〜ッ‼︎ 」
「どうせネット民は1ヶ月したら新しい玩具に夢中になるから気にすんな気にすんな」
「慰めになってないんだけど⁉︎ 」
うら若き女子大生でありながらネットのおもちゃにされてしまった陽毬は、涙目になりながらマンションのベランダに飛び出した。
「はあ……」
陽毬はベランダの外の景色を眺めながら、ため息をついていた。
異世界転移して、女装野朗の家に転がり込んだ挙句にネットのおもちゃになっていた。人生何があるか分かったもんじゃない。
外は暖かな春の陽気に包まれている。陽毬の身に起きたことなんて全く知らないかのようだ。
「はあ……これからどうしよう……」
悲しみを紛らわそうとして、陽毬はスマホを弄りながら、『ツキノベ』について考える。
身の着のままで『ツキノベ』世界に来てしまった陽毬だが、スマホに関しては、ズボンのポケットに入れっぱなしだったのが功を奏し、転移の際に持ってくることができたのだ。
スマホで日付を確認すると、
「4月1日……ここが『ツキノベ』の世界なら、1週間後には入学式なんだよな……」
4月8日。
それが『ツキノベ』の物語のスタート地点。
原作主人公である
転生者達は、必ずそこを狙う。
「……ってことはヤバくない? 原作云々とか言ってらんないよね? 」
陽毬は気づいた。
そんなに異物が沢山いて、原作通りにストーリーが進む保証があるだろうか?
絶対どこかでズレるに決まっている。
「ひょっとして今のこの状況、思った以上にヤバいんじゃ……」
落ち込む陽毬。
その時、彼女の視界にあるものが映り込んだ。
「ん? 」
向かいのマンションのベランダ。
陽毬がいるのとちょうど同じくらいの階層。
そこに、誰かがいる。
目を凝らしてよく見てみる。
———しかし、それは最悪の出会いだった。
「あいつ…………は…………ッ‼︎ 」
その男を見た瞬間、陽毬は怒りで我を忘れそうになった。
あの無駄にチャラチャラした金髪野朗を、陽毬は知っている。
———
「………………ッ‼︎ 」
陽毬の脳裏に浮かぶ、
百合の花畑を根こそぎ枯らした上に、1人の少女を犠牲にして笑い合う地獄。
あれを陽毬は許してはいない。
「お前に百合の花を枯らさせはしない。絶対にわたしは百合ハーレムを拝んでみせる…………ッ‼︎ 」
この時、陽毬は誓った。
何をしてでも百合ハーレムを守ると。
次回、ようやく原作入り。