百合ゲークラッシャーVS百合ゲーオタク〜百合豚JDは原作主人公に百合ハーレムを作らせたい〜   作:カオス箱

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第4話です。


第4話 王子様(メインヒロイン)は繰り返しの輪の中

 

 

 

「う……ん……、ここは…………? 」

 

 朝乃陽毬は、気がつくと保健室のベッドに寝かされていた。

 一体何が起きたのか、よく思い出せない。

 ぼんやりとする頭を無理やり働かせながら上体を起こすと、枕元に立っていた小金真知と目があった。

 

「目覚めたんやな、良かった」

「真知ちゃん…………? わたし、一体どうなって…………確か、入学式にいて……」

「覚えてねーのかよ。お前、入学式の最中に鼻血噴き出して貧血で倒れたんだぞ」

 

 陽毬の疑問に答えたのは、もう一人の声———向かいのベッドに腰掛けているクリエス・マキナだった。

 何故か彼は女子制服に身を包んでいた。

 元々マキナが女顔で線が細いのも相まって、ぱっと見は普通に女子にしか見えないのが非常に腹立たしい。

 

「…………なんで制服まで女物なんだよお前は」

「趣味に決まってんだろ、カワイイだろ? 」

「変わった子と仲良しなんやなぁ」

 

 真知がなんか勘違いしているようだが、突っ込むのがだるいのでそのまま放置することに。

 

「じゃあウチはこれで。この紙に新入生のクラス分けが書いてあるから、参考にしておきなーや」

 

 陽毬は大丈夫そうだと判断した真知は、陽毬に一枚の紙を押し付けるようにして渡すと、保健室から去っていってしまった。

 

「なんか随分と慌てて出ていったような気がするなぁ」

「そりゃあそうだろ。オレ様達の邪魔をしないように配慮してくれたのさ———なぁ、そこのお嬢さん? 」

 

 マキナはそう言うと、隣のベッドを仕切っていたカーテンを勢いよく開け放った。

 彼が開け放ったカーテンの向こう側には、とある人物がいた。

 そして、その人物を目にした陽毬は。

 ———弾けた。

 

 

 

「き、き、き、キオちゃんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんッ‼︎⁉︎ 」

 

 

 そう。

 そこに居たのは紛れもない、キオ・ハーメル・調。

 先程新入生代表としてスピーチをしていた王子様系美少女にして、この『ツキノベ』世界におけるメインヒロインだ。

 

「おっと鼻栓ッ‼︎ 」

「ぬブッ」

 

 歓喜のあまりフタ鼻血を噴き出しそうになる陽毬だが、すかさずマキナが陽毬の鼻の穴にティッシュを詰める事で、事なきを得る。

 流石に2度も鼻血の噴水をやられたら陽毬の命に関わる。原作キャラに会えた喜びで鼻血出しすぎて失血死でもされたら、転生界隈に後世まで語り継がれる黒歴史間違いなしだ。

 

「ぼ、ボクのファンなのは嬉しいけど、ちょっと興奮は抑えてほしいかな。流石にファンに失血死されたら敵わないし」

「それはそうだよね……反省してます」

 

 推しにやんわりと嗜められた陽毬は、床に蹲って自省タイムに突入する。

 推しキャラに嗜められるとかオタクの恥にもほどがある。穴があったら入りたいくらいだ。

 

「何もそこまでしょぼくれなくても……ほら、何も怒ってる訳じゃないんだからさ」

 

 度を超えた自省ムードに突入した陽毬を気にかけたキオは、陽毬の頭をそっと撫でる。

 その姿に、陽毬は速攻で惚れてしまった。

 

(うわー、まじでキラキラして見える! さっすが王子様だぁ! )

 

 結論:陽毬は単純だった。

 さっきまでのしょんぼり具合はなんだったんだ、と言うかのような目線がマキナから向けられているが、推しの熱に浮かされてる陽毬は気づかない。

 この調子では話が進まないので、マキナは陽毬を軽く小突いて我に返らせる。

 

「おい陽毬、これは絶好のチャンスなんじゃないのか。つーかオレ様が何のためにコイツを呼んだと思ってるんだ」

「えっ、マキナが呼んだの⁉︎ 」

「うん、ほらさっさと本題入れ馬鹿」

「ぬびゅっ⁉︎ 」

 

 マキナに蹴り出され、キオの前に立たされる陽毬。

 

「……………………ぽっ」

「いや照れてる場合かよ。何のためにお前はこの学校に入学したんだ? 」

「わ、わかってるけどさぁ! 推し目の前にして緊張しないオタクがどこにいるよッ⁉︎ お前には人の心ないんか⁉︎ 」

「いーから本題入れよこの馬鹿ッ! 」

 

 マキナに急かされるし、キオは不思議そうな目で見てくるしで、陽毬に逃げ場はなかった。

 板挟みとなった彼女は、意を決して話し始める。

 

「私は———」

 

 


 

 

 突然だが、『ツキノベ』のネタバレをしようと思う。

 キオ・ハーメル・調。

 彼女には、()()()()()()()()()()

 キオの生まれたハーメル家は、代々時間操作の魔術を継承してきた。2000年近くにわたる継承と発展、その完成形がキオだ。

 キオは生まれ持った魔術の才を最大限に活用し、加速に減速、壊れたモノの復元や時間停止、果てには時間跳躍。ありとあらゆる時間操作魔術をものにした。

 『ツキノベ』本編において、主人公であるルカとその仲間達は厄災(ラスボス)に挑むことになるのだが、()()()()()()()()()()()()

 その未来を変えるために未来からやってきたのが、『ツキノベ』本編のキオだ。

 

 

 

 

 

 そこでマキナは考えた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 原作の時点でタイムリープで幾度となく学園生活をやり直してきた彼女ならば、経験している可能性がある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 無論、今の世界がキオにとっての“一周目”である可能性も否めないが、陽毬達は賭けた。

 タイムリープで間男エンドを経験している可能性がある彼女は、他の原作キャラよりかは、陽毬達の話を受け入れてくれる可能性が高い。

 これは一種の賭けだった。

 

 

 

 

 そして。

 

「…………そうだ。今はボクにとっては“二周目”だ」

「! 」

 

 陽毬は、賭けに勝った。

 彼女達の話——転生者云々や、この世界がゲームの世界であること——などを一通り聞いたキオは、しばらく脳内で話を咀嚼した後、ゆっくりと口を開いた。

 

「この世界がゲームとして伝わっている世界から来た転生者……か。まあ、あり得ない話ではないかな」

「あれ、案外あっさりと受け入れるんだな」

「この世界にだって異世界転生を題材にした作品はある。なら、ボクの世界がそうじゃないとどうして言い切れるだろうか? 事実は小説よりも奇なり、とはよく言うもんだろう? 」

「…………驚いてないの? ショックを受けたりしないの? 」

「驚いてはいるよ。でも、納得が先に来てしまったんだからしょうがない」

 

 陽毬の言葉に、キオは首を横に振りながらそう答える。

 自分の生きる世界がゲームの世界だと知らされたら、普通は鼻で笑うか否定するものなのだろうが、キオはそうしなかった。

 元よりタイムリープを経験しているせいで、色々とその辺りに耐性ができてしまっているのかもしれない。

 

「あの男……狭間峡一郎にボクは一度殺されている。皆が正気を失ったように彼に惚れ込み、ボクの言葉には耳を貸さなかった。あれははっきり言って異常だった」

「……キオ」

 

 間男・狭間峡一郎。

 彼に殺された時の話をするキオだが、その身体は僅かながら震えていた。

 

「あの未来を変えるためならば、ボクはなんだってしてみせる。キミ達をいくらでも使い潰すし、ボクだっていくらでも使い潰される覚悟は決めてるよ」

「覚悟は充分みたいだな。なら話は決まりだ」

 

 マキナはニヤリと笑いながらそう言うと、陽毬とキオの手を取って近づけさせる。

 どうやら握手をさせるつもりらしい。

 互いに見つめ合うキオと陽毬。

 しばしの沈黙の後、先にキオが口を開いた。

 

「…………最後に聞くけど、君は何のためにボク達を救おうとするんだい? 」

「皆が幸せになって欲しいからだよ。もちろん、キオちゃん自身もね」

「………真っ直ぐな目をしているね。ひとまず、その言葉には嘘はなさそうだ」

 

 緊張しながら握手を交わす陽毬とキオ。

 その時だった。

 

 

「な、な、な、な、何してるの2人とも…………っ⁉︎ 」

 

 ガラリと保健室の扉を開け放たれると同時に、ひどく動揺したような声があがった。

 陽毬とキオは咄嗟に扉の方を向く。

 そして、凍りついた。

 

「る、ルカッ…………⁉︎ 」

「キオ……………」

 

 そこにいたのは、香愛ルカ。

 『ツキノベ』の原作主人公にして、キオの幼馴染み。

 此方を見て固まっているルカの姿を目にした陽毬は思った。

 ———()()()()()()()()()()

 

(なんでッ……よりによってこのタイミングで出会しちゃったのかなぁ………‼︎⁉︎ )

 

 焦る陽毬。

 理由は、ルカのとある欠点に由来する。

 『ツキノベ』原作主人公・香愛ルカ最大の欠点。

 それは、()()()()()()()()()()()()

 些細な勘違いをきっかけに明後日の方向に暴走してしまうのだ。

 というか、『ツキノベ』のストーリーの3割くらいは、ルカのはやとちりが原因で面倒臭いことになっている。まあ、作中ではそれがきっかけで事態の突破口を開いたり、ヒロインと心を通わせるきっかけになったりしているので、欠点であると同時に長所でもあると言えるだろう。

 が。

 この時ばかりは、そんな甘いことは言ってられなかった。

 

「私の名前呼びながら鼻血噴いてた子だよね? なんでキオと一緒にいるのかな」

「あー、えっと……」

 

 言葉に詰まる陽毬。

 陽毬はルカを勘違いさせないようにと、必死に言葉を選ぼうとするが、そんな猶予は与えられない。

 ぐいっ、とルカの顔が陽毬に近づいてくる。

 怖い、めちゃくちゃ怖い。

 画面越しに愛でていたはずの原作主人公が、今はめちゃくちゃ怖く見える。

 

「キオは昔から女の子にモテモテだったから、よーく分かるよ…………キミ、キオを狙ってるんだよね? 」

「‼︎ 」

 

 瞬間、ルカからの視線が冷たいモノに変わった。

 ぞくりとする陽毬と、困惑するキオ。

 

「私っ、キオを追いかけて必死の思いで入学したのに……ッ‼︎ 6年間ずっと文通してたのにっ……‼︎ ずっと思ってたのにっ……! それなのに、それなのにっ……‼︎ 」

(あ、マズイ。やってしまった)

 

 みるみるうちに敵意に染まってゆくルカの視線を浴びながら、陽毬は絶望した。

 彼女の目的は、原作主人公である香愛ルカに百合ハーレムを無事に作らせること。

 だというのに、キオと接触してしまったばかりに、ルカを的に回すハメになってしまった。

 これでは本末転倒だ。

 

(どうする……わたしはどうすりゃいいんだ…………ッ⁉︎ )

 

 ダラダラと冷や汗が溢れ出る。

 朝乃陽毬の受難は、始まったばかりだ。




ちょいとわかりづらい気がする。
後々補足回を追加します。
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