百合ゲークラッシャーVS百合ゲーオタク〜百合豚JDは原作主人公に百合ハーレムを作らせたい〜   作:カオス箱

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新章突入です。
今回からはようやく学園ものらしくなっていくと思います。
陽毬の変態っぷりにも磨きをかけていきます。


退田歌恋編
第8話 上府魔術高専オリエンテーション


 上府魔術高専の入学式から一夜明けた翌日。

 

「ばっかうま! ここの学食馬鹿みたいに美味いっ! 」

 

 朝乃陽毬は、上府魔術高専の学食に舌鼓を打っていた。

 学生寮の隣にある食堂は、朝御飯を食べに来た寮生達でごった返している。

 陽毬・キオ・ルカ・マキナ・真知の5人は、朝日に照らされた窓際のテーブル席で、仲良く朝食を取っていた。

 

「なんだそのオーバーリアクションは。昨日の晩御飯も学食だったろ」

「いや美味いものは何回食っても美味いんだって! ねえルカちゃん! 」

「うんうん! 特にこのクロワッサン! 外のサクサクと中のフワフワのバランスが神懸ってる‼ こんなパン食べたことないかも! 」

「わたしはこのコンソメスープ! サイ〇リヤやガ〇トなんかとは比べ物にならない味わいっ……やばい飲み過ぎて漏れそう! 」

「いいからトイレ行ってこい‼ 鼻血だけじゃなくて聖水(最大限の隠語)まで噴き出すつもりかテメエは! 」

 

 朝からイかれた会話が繰り広げられる中、キオが不機嫌そうにマキナに指摘する。

 

「マキナ、陽毬だって一応女の子なんだし、もうちょっとデリカシーとか考えた方がいいと思うんだけど」

「キオちゃん、残念やけど陽毬ちゃんにはそういう配慮はノーサンキューやで。なんせ昨晩、一晩中壁越しにキオちゃんの匂いかぎながら致していたからな」

「こいつ退学処分にした方がいいよ。絶対近いうち事案発生する」

「………………不安しかない」

 

 次々と引き起こされる陽毬の奇行に、流石のキオも乾いた笑いすら出なかった。

 そんな感じで、学園生活2日目が幕を開けようとしていた。

 

 


 

 

 入学2日目。

 陽毬達を待ち受けていたのは、校内オリエンテーションだった。

 無駄にだだっ広いこの上府魔術高専の敷地内を、新入生が自由に歩き回って見学できるのだ。

 敷地内のあちこちでは、教師陣や色んな部活がパフォーマンスじみたことをやっていたり、有志による出店が開かれていたりと、その盛況っぷりはかなりのもの。その光景は、さながら普通の学校の学園祭のようだった。

 

「いやー野球部の練習風景はすごかったなー。Wボールとか如意棒バットとかをリアルで見られるなんて思わなかったよ。最後はピッチャーの首が360度回転! まさにパーフェクトクローザーだった! 」

「サッカー部の“イ○イレ必殺技を魔法で再現してみた”も面白かったわ~。ゴットハンド10連はホンマド迫力やったで」

「チェス部のあれは……何だったんだろう? 普通に対局するのかと思ったけど、なんか空中に浮かべた駒の上を飛び移りながら碁石ぶつけ合っていたけど。まさかあんなルールがあったなんて驚きだよ」

「もうわけわかんない」

 

 魔術を用いたスポーツやチェス対局の観戦をしたり、よくわからない出店の食べ物を味わったりと、ルカ達は随分と満喫していたようだが、陽毬はめちゃくちゃ疲れ切ったような顔をしていた。朝食時のはしゃぎっぷりからは考えられないほどの有様だ。

 目の前で湯水のように湧き出てくるハチャメチャな現実に、ツッコミと理解が追い付かず、陽毬の精神はゴリゴリと削られていった。SAN値はとっくのとうにマイナス方向に振り切ってしまっている。もし今某邪神と遭遇してしまったら、即狂気エンドは確実だ。

 ルカは陽毬の疲弊っぷりに目もくれずに、キオや真智と一緒になってはしゃいでいる一方、マキナだけが陽毬を心配していた。

 

「なに驚いてるんだよ。お前の知っている原作とやらでもあったイベントだぞ? 」

「いや、原作からして色々とぶっとんでたから覚悟はしていたけど………………リアルとなるとガチでキツイ」

「それはわかる。特にお前は転移者だ。この学園に入学するまでの15年間で『ツキノベ』世界の常識にどっぷり染まってしまった他の転生者共とはワケが違う。いくらゲームという形で知っていても、リアルとゲームは違う。この世界の突飛さに対する免疫という点では比べ物にならねえだろうさ」

「うう……くそっ、これくらいで現実逃避するな朝乃陽毬っ‼ わたしはルカの百合ハーレムを守るためにこの世界にやって来たんだぞ! これしきのカオス、喜んで受け入れて見せようぞっ! 」

 

 マキナの励ましによって元気を取り戻した陽毬は、意思表明と言わんばかりに、ずがずがと前進していく。

 が、

 

「あ、陽毬気をつけて。その辺は降霊同好会のブースだから――」

「ぎゃああああああああああああああああああああおばけがオドループぅううううううううううううううううううっ‼ 」

 

 なんということでしょう。

 陽毬が突っ込んだ先には、オカルト好きな馬鹿共が降霊術で呼び寄せた幽霊4000体が廊下一面にぎちぎちに詰まっていた!

 自分から幽霊の大群に突っ込んでしまった陽毬は、赤青黄色と顔色をゲーミングに変えながら絶叫し、そのまま倒れてしまった。

 

「ちゃんと前見ないからそうなんねん……ほらルカちゃん手伝って。はよ引きずり出さんと憑りつかれかねんで」

「あ、うんっ」

 

 流石にこうなってはルカ達も救助に入らざるを得ない。この状態で陽毬を放置したら、そこら辺にいる幽霊たちが憑りついて余計にカオスな事態になりかねないからだ。

 そんなこんなでてんやわんやしていたところに、

 

「あのーすいませーん! ちょっとよろしいでしょうかー? 」

「ん? 」

 

 見知らぬ男子生徒が駆け寄ってきた。

 最初ルカは、皆の内の誰かの知り合いかな? と思ったのだが、皆の反応を見るにどうやらそうではないらしい。ではこの少年はいったい何者なのだろうか。

 

「あのう、一体なんの………………? 」

「ちょっと部活棟まで来てくださいませんか? うちの部長――小家楼那先輩があなた達に用があるみたいでして」

「???? 」

 

 突然の誘いに、ルカの頭の中はハテナマークまみれになった。

 

 


 

 

 男子生徒に案内されるがままルカ達がやって来たのは、本館の裏に位置する部活棟。

 ちなみに陽毬はなんだかんだで無事に復活したよ。よかったね!

 そうこうしているうちに、一行はひとつのドアの前にたどり着いた。

 

「この先で部長が待っています。どうぞお入りください」

「えっと……わたしが気絶してる間に何があったの? 全然状況が読み込めないんだけど」

「いいから先行け、つっかえてんだよ」

 

 全然状況が読み込めずに困惑する陽毬だったが、マキナにケツを蹴っ飛ばされて部屋の中へとぶち込まれる。

 押し倒すようにドアを開き、そのまま勢い余って床にぶっ倒れた陽毬は、尻をさすりながらマキナに文句を言う。

 

「ってえ~、マキナの野郎っ、乙女の尻は大事にしろっての!」

「男の急所も大事にしない奴が何言ってんだ」

 

 が、陽毬の抗議は正論でバッサリカットされてしまった。

 そのまま陽毬は文句を垂れようとするが、その時、部屋の奥の方から気だるげそうな声が割り込んできた。

 

「おーい、私の眼前でしょーもない痴話喧嘩見せつけるんじゃない。こっちは早く本題に入って早く終わらせたいのよ」

「この声は確か……」

 

 声のした方、部屋の最奥にあるデスクには、眠たそうな目をした紫髪の少女が鎮座していた。

 陽毬達は彼女を知っている。

 昨日のルカと陽毬が戦った天覧魔術試合(マジシャンズ・ロンド)の見届け人として、そして二人に魔道具を貸し与えた先輩。

 

「あなたは昨日の――」

「自己紹介がまだだったわね。私は小家楼那(おうちろうな)。この魔道具制作部の部長を務めているわ」

「魔道具制作部……まさかこの部屋にあるのって全部そうなんか? 」

「その通りよ。ここにあるのは全部私が丹精と怨念を込めて作った魔道具。うっかり触ったら取り返しのつかないことになるかもだから、せいぜい気をつけなさいな」

「うっそぉ……おっかなさすぎでしょぉ……」

 

 楼那の忠告を聞いたルカは、おっかなびっくりといった感じに周囲を見渡す。

 陽毬達が足を踏み入れた部屋の中は、そこかしこによくわからない道具が散乱している。

 例えば、七色に光るフクロウの剥製だったり、ミニチュアの土星のようなものが天井付近を浮遊していたり、背表紙内をところせましと動き回る文字だったりと、あちこちに常識では考えられないような異常な物品が存在している。

 

「で、だ。面倒くさがりのキミがわざわざボク達を呼んだ理由は何だい? 」

 

 陽毬達が周囲の魔道具の数々に呆気に取られている中、ただ1人冷静なキオは、楼那にそう問いかける。

 すると楼那は、まるで何かを催促するかのように手のひらを差し出してきた。

 

「何その手、カツアゲ? ボク達お金持ってないよ」

「誰がそんな面倒くさいことするのよ。魔法剣の弁償代に決まってるじゃない」

「結局カツアゲだよね? 」

「カツアゲじゃないし、正当な権利の行使だし」

 

 楼那はキオの言葉に若干むくれ気味にそう返すと、近くの床に置いてあったダンボール箱をデスクの上にあげ、その中身を取り出す。

 彼女が取り出したのは、刀身からうっすらと七色の光を放つ二本の剣だった。

 昨日の天覧魔術試合(マジシャンズ・ロンド)で陽毬とルカが使った魔法剣である。

 

「ほらこれ、見てみなさいよ。昨日の天覧魔術試合(マジシャンズ・ロンド)の時に貸した魔法剣よ? 」

「見た限り特に壊れているように見えないんだけど」

「貴女、それ本気で言ってる? 一目でこの惨状が分からないなんて、はっきり言って魔術の才能無いわよ。いますぐ転校してしまいなさいよ」

 

 陽毬の言葉を聞いた楼那は、呆れたように深い溜息をつくと、ダンボール箱から取り出した魔法剣を陽毬の顔の近くまで持ってゆく。

 

「見た目は大した変化はないけど、内部の魔術回路がボロボロ。言うなればショートを起こしてるの。普通に使ったらこんなことにはならない。大量の魔力を一気に流し込むでもしないとこんなことにはならないわよ? これどうしてくれるのよ、材料費とか結構かかったのよ? 」

「え、いや、それは………………」

 

 楼那の気迫に気圧された陽毬は、じりじりと後ずさりする。気分は先生に詰められる悪ガキ、要するに最悪な気分だ。

 そうしてどんどん部屋の入口の方へと後退していった陽毬の背中は、ドアに接触する。

 その時だった。

 

「入るぜ、この野郎っ! 」

「ぼふあんっ⁉ 」

 

 ガラの悪そうな声がしたかと思えば、直後、陽毬の寄りかかっていたドアが勢いよく蹴り開けられた。

 当然ながら、ドアに寄りかかっていた陽毬は勢いよく目の前に投げ出され、本や杖の散乱した床に顎や胸を強打する。

 

「陽毬ちゃん大丈夫っ⁉ 」

「いったぁ~~っ! ったく誰ぇ⁉ ドアの開閉ぐらい丁寧にできな――」

 

 顎をさすりながらドアの方に顔を向ける陽毬だったが、そこで彼女の動きが止まる。

 陽毬につられて死線をドアの方に向けたキオとマキナも、陽毬同様に動きを止めていた。

 ティーカップ片手に椅子に腰かけたままの楼那は、状況が理解できずにキョロキョロとあたりを見渡すルカに目もくれず、ドアを蹴り開けた来訪者のほうに顔を向けている。

 

「おや、もう来たのか」

「………………………………」

 

 蹴り開けられた魔道具創作部のドア。 

 そこに居たのは、やたらと目付きの悪い桃色髪の少女だった。

 着崩されたブレザーに、ジャラジャラとそこかしこにつけられたシルバーアクセサリー。無頓着に伸ばされた桃色の髪に、右頬にうっすらと浮かび上がっている魔法陣のような紋様。誰がどう見ても、彼女の素行がよくないのは一目瞭然だった。

 しかし。

 彼女の発する刺々しさ全開のオーラに気圧されながら、陽毬は内心でその出会いに歓喜していた。

 何故ならば、陽毬はその少女との遭遇を待ちわびていたからだ。

 

 

 少女の名は退田歌恋(のきたかれん)

 数奇な運命を背負った『ツキノベ』ヒロインのひとりである。

 




新章のメインを張るのはヤンキー系ヒロインの退田歌恋ちゃん!
……この時点で苦労する監事しかしないのはなんでなんでしょうかね。不思議ですね。

今章からはあの間男くんも本格的に動かしていくつもりですので。
ある意味ここからが本番です。
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