百合ゲークラッシャーVS百合ゲーオタク〜百合豚JDは原作主人公に百合ハーレムを作らせたい〜   作:カオス箱

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一カ月間開けて申し訳ないです。



第9話 2人目のヒロイン・退田歌恋(のきたかれん)

 退田歌恋(のきたかれん)

 キオは彼女のことをよく知っている。

 原作(ツキノベ)においては、キオに続く第二のヒロイン。

 兎に角短気でキレやすい第一印象と、物語が進んだ後に露となる男気溢れる性格のギャップから、数多くの男性プレイヤーを乙女に変えてきた――というのは陽毬談。作中世界の住人であるキオも、陽毬の歌恋評は別段間違っているわけではないと思っている。

 ループ前、すなわち羽間峡太郎(間男)が介入する前までは、キオも歌恋とはうまくやれていた。だが、峡太郎の介入ですべてが台無しになった。

 芯の通った性格だった彼女が堕落していく様を見せつけられるのは、キオの心を傷つけるには充分だった。

 半年以上にわたってはぐくまれた友愛がたった数日の愛欲に打ち砕かれる様は、ループで過去に戻った今でもなお、悪夢としてキオを苦しめている。

 

 だが、今ならばまだ間に合う。

 早いうちに歌恋をこちら側に引き入れなければ、またあのバッドエンドにたどり着いてしまう。

 故にキオは、決意を固める。 

 

 ――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 


 

 そして現在。

 歌恋は楼那を睨みつけていた。

 

「………………で、何の用かしら」

「テメエの作った魔道具をクーリングオフしに来たんだよっ!! 」

 

 楼那がすました顔で用件を尋ねると、歌恋はキレ気味に何かを投げつけてきた。

 それはなんかやたらとカラフルな色をしており、

 

「これは……なんですか? 」

「テメエの作ったコレ、えーとなんだったか……確か、魔導爆弾だったか。全然使い物にならないじゃねーか! なにが"魔力を込めてポイするだけ。ね、簡単でしょ? " だ! 魔力込めただけで爆発するし、かと思えば爆発しないし……不良品押し付けてんじゃねえよクソアマがっ!! 」

「あのねえ、それは貴女が乱暴に魔力を入れたりするからそうなるの。例えばだけど、バケツからバケツに水を移し替えようとする時、一気にバケツをひっくり返したらそりゃこぼれるに決まってるでしょ。それと同じよ」

「うるせえっ! とにかく、こいつは慰謝料代わりにもらっていくからよ」

 

 歌恋は楼那の指摘に全く耳を貸さずに逆切れすると、近くの棚から適当に小箱を手に取り、そのまま部屋を出ていってしまった。

 彼女が去った後の魔道具部の部室は、まるで嵐の後のように静まり返っていた。陽毬もルカも他の皆もぽかーんと口を開けたまま、

歌恋が開けっ放しにしたドアを見つめていた。

 

「まーた勝手に持って行っちゃって……これだから」

「また………………? 」

「歌恋……あの子とは中学時代からの知り合いなんだけど、昔っからあんな感じなのよ。私の魔道具を勝手に持って行って、思うように使えないと癇癪起こして返却してくる。ったく、いつになったら成長するのかしらねえ。あー怠」

 

 そうぼやくと、楼那は唐突に机に突っ伏してしまった。

 

「なんだか疲れたわ………………おやすみ~」

「えっとちょっと――って寝てるぅ⁉ 」

 

 心配して慌てて駆け寄る陽毬だが、その時にはすでに楼那は寝息を立てていた。某猫型ロボットを親友とする男子小学生ばりの爆速睡眠だ。

 身体を揺すってみるが、反応はない。そういえば、原作でも楼那は暇さえあれば居眠りしていた。こうなってしまっては意地でも目覚めない。

 

「………………どうする? 」

「お昼寝の邪魔しちゃ悪いし、出ようか」

 

 部屋の主が寝てしまった以上、このままここに居座るのもなんだか感じが悪いので、陽毬達は一旦外に出ることにした。

 春の陽気が差し込む廊下を歩きながら、一行は作戦会議に移行する。

 議題は勿論、退田歌恋についてだ。

 

「退田歌恋……お次のターゲットはアイツってわけか。ありゃ一筋縄ではいかなそうだぞ」

「それでもやるしかない。あの胸糞な未来を防ぐためには」

「うん」

 

 キオの言葉に強く頷く陽毬。

 キオを傷つけ、何よりも尊い百合の花束を汚した羽間峡太郎(クソ野郎)を、陽毬は決して許すつもりはない。今はまだ表立って行動を起こしていないようだが、先手を打っておくには越したことはないのだ。

 そうと決まれば、さっそく行動にでるしかない。

 

「そうとなればさっそく彼女を追いかけるしかないんじゃないか? で、心当たりとかあるのか? お前の自慢の原作知識とやらの出番じゃないのか」

「んー、あるっちゃああるんだけどぉ……」

 

 マキナに尋ねられた陽毬は、歯切れの悪そうな返事をする。

 怪訝そうな顔をした真智やルカが、陽毬の顔を覗き込む。

 

「どないしたんや、なんか問題でもあるんか? 」

「……………………ダンジョン、って知ってる? 」

「?????? 」

 

 瞬間。

 陽毬の口から出た聞きなれない言葉を耳にした、キオ以外の全員の目が点になった。

 

 


 

 その頃。

 

「ぐっ………………⁉ はあっ………………! 」

 

 滅多に人の来ない学園の敷地の端っこ。

 鬱蒼とした森の入口で、退田歌恋は胸を抑えて地面に(うずくま)っていた。

 

「がっ……かはっ……ああああああああああああっ⁉ 」

 

 身体の内側から冷えていくような感覚と途方もない激痛に加え、猛烈な吐き気と頭痛、それに眩暈(めまい)。まるで身体の不調という概念が束になって襲ってきているかのような苦痛が、少女の身体を容赦なく蝕んでゆく。

 歯を食いしばって苦痛に耐えながら、歌恋は顔をあげる。

 その瞳には、白い光を放つ魔法陣のようなものが浮かんでいた。否、瞳だけではない。歌恋の背中にも、制服越しに同様のものが浮かび上がっているのが見える。

 それほどまでに苦しみながらも、歌恋は止まらない。断続的に襲いかかる苦痛に焼かれる身体を引きずりながら、彼女は森の中へと入り込もうとする。

 彼女にはそうしてまでも、やらねばならないことがある。

 

「この呪いを解いて見せる……そのために、アタシはここに来たんだ……っ‼ 」

 

 


 

 そして。

 それを物陰から見ていた人物が、一人。

 

「これはチャンスだ」

 

 羽間峡太郎(はざまきょうたろう)であった。

 鮮やかに染め上げられた金髪に着崩された制服、それに加えてジャラジャラとつけられたシルバーアクセサリー。どう見ても品行方正とは程遠い容姿の青年は、身体を引きずるようにして森の中へと入り込んでゆく歌恋の姿を、ほくそ笑みながら見つめていた。

 

「ルカは逃してしまったが、他にもヒロインはいるんだ。幸い、お前のウィークポイントは熟知している。そこさえ突けば、テメエは俺に堕ちるんだよ………………退田歌恋」

 

 どこで介入すれば効果的に歌恋を自分のものにできるのかは、原作知識でわかっている。

 自らの原作知識という名の攻略本の存在が、峡太郎に安心感を与える。原作展開(みらい)を知っているというアドバンテージを最大に生かすには、今は機を待つ必要がある。

 それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 自分が負けるはずがない。

 全てを手に入れるのは自分だ。

 

(俺が――この世界の主人公だッ‼ )

 

 物陰から歌恋を凝視するその顔には、およそ人とは思えないレベルで邪悪な表情が張り付いていた。

 




ちょっとボリューム少ないけど、区切りがいいので今回はここまで。

実はツキノベのヒロイン達の名前、小説投稿サイトの名前から取ってたの知ってました?

香愛ルカ→Arcadia
キオ・ハーメル・調→ハーメルン
小家楼那→小説家になろう
退田歌恋→ノクターン
暁月語→暁

あんまり意味はないですが、ちょっとした遊び心です。
それだけです。
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