くそつよユーリ   作:Shrennewosukuitai

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向き合えない

 

非常に億劫な手続きを終えて、私達は漸く検問所を潜り抜けた。巣特有の秩序と清掃の行き渡った道路が、私に懐古感を感じさせる。ロボトミーの巣とK社の巣はかなり似通っていた。

 

突如として、視界の右端から、分厚い装甲車がやってくると、急停止した。扉さえ分厚いのか、重厚な所作でゆっくりと扉が開き、見慣れた、しかし初対面の二人組と遭遇した。

 

「あぁもう、なんでこんなに掛かったんだよ、この辺りを三回もぐるぐると回ったじゃないか。」

 

開いた車の中からは、紺色と青が入り混じった分厚い正装と、整った容姿の二人組が顔を出した。自信と余裕に溢れており、自らの力を信じて疑わない、そういう表情だ。背中を預けるには、丁度良いだろう。

 

「お、ビフォーチームからも来たのか?ちょっと雰囲気が変わったな。」

 

「それはカジノ潜入の為の擬装用の服でした。結果的に役に立たなかったんですけどね。」

 

呆れた表情でソードが答えると、次に彼らの視線は私へと移り変わった。まじまじと、しかし期待を込めた視線で、見つめられている。

 

「こんにちは。貴女がユーリさんですね、今回はよろしくお願いします。」

 

一呼吸置いて、私は丁寧に挨拶を返した。囚人達とは違い、挨拶のできる良識的な大人だ。久々に礼儀正しい人間と出会い、思わず感銘を受ける。

 

「ソードさん、エピさん、よろしくお願いします。」

 

頭を一度下げて、私は悠々と装甲車に乗り込んだ。狭い空間に閉じこまれることは苦手だったが、それでも丁度良い硬さで、座り心地の良い椅子に座り込めば、そんな考えは吹き飛んだ。装甲車の外から、バスの面々が驚いた顔で視線を向けている。

 

「ユーリ嬢、此度は乗合ともろともに交じらずや。」

 

少し返答に迷ったが、私が口を開く前に、ソードが代わりに答えてくれた。

 

「はい、今回の作戦では事前偵察班に所属することとなります。E.G.Oを失った状態のユーリさんに無理をさせられないので。」

 

あれから装備も新調したとはいえ、黄昏なしの私の命はとても儚いものだ。まあ、それは建前で、バスに私を乗せたくなかったヴェルギリウスの意見だと思うけど、どちらにせよ楽が出来るなら楽をするべきだ。

 

「はぁ、心強い味方が一人取られてしまいましたね、無理をさせられないのは、事実ですけど。」

 

囚人達は残念そうに、しかし私に対する信頼は変わっていないようだった。地獄紀行を共にすれば、信頼は自然と生まれるものなのだろうか。

 

「ああそうだ、お前らにとって有用な追加情報がある。今回の目標地点だがな、俺達以外の集団が占拠している状態らしい。だから俺達の方でも普段より多くの人員を投入しているんだ。ユーリさんが同行する理由だな。」

 

「ふん、そうしたところで何処かから集まって来た小蠅みたいな奴らしかいないんだろう。」

 

小蠅ならどれ程良かったことか、今回の敵は、蠅どころでは済まされないだろう。異端審問、釘と金槌、そして義体。最悪、私も身体中に釘を突き刺されて磔にされるだろうけど、2000万アンの誘惑には勝てないものだ。

 

「残念だけど、今回の相手はこの前みたいな屑ではないみたいだ。審査記録をこっそり調べたところ、数週間前にN社からの大量派遣記録が残っていたんだ。しかも目的地が俺達と同じだ。公式的に開示された行動ではないが、K社の側でも審査を通したのを見るに、ある種の取引があったのかもしれないな。」

 

「N社から派遣が来ていることが事実であれば、行く道が順調ではないということです。」

 

一同の間に緊張が走り、困惑が混じる。翼を敵に回すということは、リンバス・カンパニーごと潰される可能性があるということ。私は一応フリーランスの立場なので、影響は回避できるかもしれない。

 

囚人達も同じ事を考えたのだろうか、ファウストが様々な考慮すべき事項を語っていた。生き残れるだろうか、不安が脳裏を駆け巡るが、あくまで今回は事前偵察。支部を墓荒らしする必要はないので、人間だけに集中すれば良い。

 

スマホでカルフ町の地理をポチポチ調べながら、思案に浸っていれば、いつの間にかもう出発する時間だった。

 

入国審査所での一連の騒動を思い出し、思わずドンキホーテに目線を向けるが、現時点では問題意識として捉えていないようだった。エピとソードの鋭い視線が囚人一同、特にダンテに突き刺さるが、ポーカーフェイスの顔では何も伝わらなかった。

 

「さあ、出発しますよ。後で現場にてお合いましょう。」

 

「お前たちが無事にたどり着けたらだけどな。」

 

囚人の面々に軽く手を振り、装甲車の鈍い振動が大地を揺らす。見かけによらず駆動音は静音で、乗り心地は良い。リンバス・カンパニーの財力を示すような性能だった。窓から外を眺めれば、高速で流れゆくビル群が瞳に映り、次いで不安なく生きれる人々の顔が映る。

 

翼、そして巣。財力は人々に余裕を生み出すだろうけど、それは誰かの犠牲に成り立つ生活だ。目を瞑らなければ、巣では生きられない。人間というのは酷な生き物だ。

 

うつらつら、思案に浸り、意識がぼんやりとしているときに、私は耳を揺さぶられた。

 

「ユーリさん、噂は聞いてるよ。枝こそ回収できなかったものの、大戦果を挙げたんだってな。」

 

エピだった。私がそこまで褒められるような立場であることに驚き、思わず聞き返してしまう。

 

「え、っと私、そこまで貢献しましたっけ。」

 

玩具を与えらえた子供のように目をキラキラと輝かせながら、二人は興奮した様子で私に詰め寄り、雄弁に回答した。

 

「管理人を瀬戸際で救助し、終末カレンダーをほぼ単騎で屠り、支部の探索に大きく貢献したとして上層部で話題なんだ。」

 

「それに、ユーリさんが提出してくれた幻想体管理要項、簡潔かつ明瞭で、アフターチームの事後管理にとても貢献したんですよ。各部門が引き抜きぬこうと躍起になるくらいには、貴女の価値は認められているということです。」

 

あまり実感は湧かず、何と返事すればいいか迷いに迷って、私は曖昧な苦笑いをすることしかできなかった。それでも、二人からとても尊敬されているような気がして、悪い気はしなかった。

 

会話の内容は次第に作戦へと切り替わり、三人揃って頭を悩ませることとなった。偵察部門の仕事は、敵戦力の把握、妨害工作、そして支部への経路位置特定と多岐にわたる。

 

ソード、エピ。二人はエリートの名に違わず、彼らの手際の良さと計画の段取りは卓越していたが、それでも一筋縄で済む筈もない。翼とはそういうものだ。

 

会話は弾み、仲が深まってきた頃、車輪の回転速度が緩まり、流れゆく景色は止まり、気が付けば一行はひっそりとした林道が立ち並ぶ、濃い緑色の木々が遠方に見える駐車場へと停車していた。

 

「計画通り、ここからは徒歩で移動します。ユーリさんが居るとはいえ、N社の職員と戦闘に突入した場合、私達に勝ち目はありません。隠密作戦ですね。」

 

ゆっくり預けきった背中を持ち上げ、降車した。凝り固まった身体を伸ばすように、ストレッチを欠かさず、全員の準備が終わるのを待った。

 

数分ほどで、全員の準備は整った。やはりエリートか、手際に無駄なく、効率が良い。腰に拳銃を巻き付け、威風堂々と地に足ついた彼らの姿が印象に残った。

 

草木に伏せて、遠眼鏡で敵影を確認し、いないと分かれば突き進む。林に入ってからは更に身を隠しやすくなった。一歩一歩、着実に進めば、赤い夕焼けと木々の隙間に紛れた釘と金槌の姿が瞳に入る。ソード、エピは未だ気付いていないようで、先行している私は左手でハンドサインを送った。

 

正に中世の騎士甲冑といった風貌の彼らが欠伸を上げ、後ろを振り向いた瞬間に、一斉に次の木陰へと移動する。ソード、エピ。二人とも徹底して音を立てず、身を限界まで伏せて行動している。想像以上の優秀さだ。

 

カルフ町は標高が高く、雪が所々積もり、肌寒い。雪に紛れ、埋もれゆく内に、震えるような寒さは暖かさへと変化していった。風が吹きすさび、確かに冷たいはずなのに、暖かい。意識を心へ向ければ、思い出した。

 

冬の残酷さと、薔薇の香りを知っている。懐かしいあの日の決闘、収容室にて、レイピアを振るう。あの時の贈り物がまだ残っていた。

 

氷の欠片を頼りに進み、真っ赤に染まった夕焼けを背に進む。二人は一心同体となり、お互いの心が完全に通じ合っているようだった。雪を掻き分け、木々を視線からの盾とし、林間道を蛇のように突き進む。

 

鼻孔に漂う濃ゆく、肉が焦げる香り、肉だけでなく、機械油も混ざっている。燃え盛るカルフ町に、私達はたどり着いた。石造りで品格の感じられる道路、高級さを隠しきれていない家々、厳格で、しかし憩いの場となる筈の噴水。それら全てが地獄と化していた。

 

これを地獄と呼ばずに何を地獄と呼ぶのだろう、そんな有様だ。

 

「こっ、これは、人間の所業、ですか。なんてこと、一体何人が磔に。」

 

苦虫を嚙み潰したように強く惨状を見続け、苦しむソードの背をエピが優し気に摩っている。微かな嗚咽と、恐怖が滴り落ちるが、それを噛み砕いて、私達は更に足を進めた。

 

路地の影に潜み、網の目潜り抜けるように町を跋扈する異端審問官どもの監視を逃れ、進む。

 

「シッ、前方の建物の影に一人います、動く気配は、なさそうですね。」

 

現在地から逃れ、シンクレアの邸宅に到達するにはあの大通りを必ず通らなければならないというのに、三人揃ってゴミ箱の裏に隠れながら、作戦を考えていた、その時だった。絶望を齎す口笛がカルフ町に響いたのは。

 

「あ~あ~マイクテスト、マイクテスト。ごほん、釘と金槌のみんな~、そこらへんにネズミが三匹隠れてるから浄化してね。」

 

死の気配が急速に迫ってくる感触、幾度となく経験し、そして乗り越えてきた気配に、直面した。

 

 





キャラのエミュレートが難しすぎる。4000字くらい書く→うまく書けて満足する→一時間後くらいに見返して、このキャラはこんな事しないな?????という気持ちになり書き直す。ドンランとか誰がエミュレートできるんだ。
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