The Reverberation   作:ささみささじ

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へんなところあっても見逃してほしい。


ホワイトデューⅠ 「途中の人」

 

 地元で一番の末脚も、中央に来たら路傍の石と変わらない。集められた原石であっても、比較されてそこそこ止まり。

 非常によくある話であり、ホワイトデューという芦毛のウマ娘の身にも降り掛かった話でもある。

 勝負事への未練はたらたらと、しかしながら実際お試しで走った時の戦績がこれでもかというほどにボロボロであったので、勝負の世界から離れて、青春という与えられたモラトリアムを消化しようとしていた。

 

 それがどうだ?紐を付けたスマホが15秒ごとに煩く鳴り、これに合わせて1ハロン丁度を延々と、疲労でぐでぐでになるまで走り続ける。これが毎日だ。

 辛うじて中々良さげだった勉学もそこそこぐらいの成績にまで落ちるし、遊びに行く時間は減るしで散々な目に遭っている。そんな風にホワイトは嘆いた。

 

 春のG1戦線も中盤。NHKマイルカップが開催され、日本ダービーも二週間後と目前に迫り、トレセン学園の空気が割とお祭りになっているこの状況の中で、メイクデビューを目前にしたウマ娘達は浮足立たせながら、自分達を追い込む。無敗の三冠ウマ娘だとか、盾を持って帰るだとか、グランプリ制覇だとか。

 夢が諦められないから走る。誰だってそうだ。

 

「ホワイトさん、水分補給は如何ですか?」

 

 大体5kmを一定のペースで走り切り、ぜえひいと肩で息をしているホワイトの前に、優しげな糸目で青鹿毛のウマ娘が現れた。

 名をラブザビバーチェ。愛を冠しているのに恥じぬ慈愛と懇篤を振り撒く彼女は、いわゆる良家の令嬢であった。つまり、路傍の石ではない方のウマ娘で、メイクデビュー前であるのにも関わらず、非常に注目が集まっているウマ娘のうちのひとりでもある。

 

「ビバーチェさん、ぜぇ、ありがとうございます……。」

 

 渡されたスポーツドリンクを、ホワイトは咽ないようにゆっくりと飲んだ。

 ビバーチェがホワイトを気に掛ける理由は幾つかあるが、そのひとつにメキメキと実力をつけているから、というのがある。近くで観察することで、なにか新しい発見が得られるかもしれないと彼女の感が囁いたのだった。

 

「この後のご予定は?もし良ければ並走でも如何?」

「坂路5本の後でよければ!是非!」

 

 それしにても、と、ビバーチェは思った。トレーニングをやる前はやる気が無いように振る舞っているのに、朝練は開始時刻前からストレッチを十全にしているし寝坊しているところを見たことがない。午後も傍から見てもかなりハードなメニューを消化している。

 

「……いえ、坂路もご一緒しても?」

「モチの是非!一緒に行きましょう!」

 

 動き始めれば火が点くというやつ、であるのだろうか。その性質を見抜いて、既に上手いこと乗せている、というのは指導者として目を見張るものがある。その上、成果も出ているとなれば、注目するのはごく自然なことだ。

 そういえば、ホワイトが無敗の三冠ウマ娘になるとか盾を手に入れるなどの目標を話していることを見たことがないと、ビバーチェは思い出した。

 

「ところでホワイトさん、メイクデビューは目前ですけども、目標などはございますか?」

「……うーん、ガクチカってあるじゃないですか?学校生活で力をいれて取り組んだこと……だったっけ?」

 

 就活とかあんまり考えたくないんですけど、先生とか割と頻繁にその手のこと話すじゃないですかとホワイトは続けた。

 

「その話を聞いて、頑張った、って胸を張って言えることがあんまりないなぁ、って。運良くトレーナーに拾ってもらったし、三女神様のお導きということでガチめに頑張ってみよう!ってやつです。割と不純な動機ですケド。」

 

 ふふふ、とビバーチェは微笑んだ。頑張る理由を笑うようなことはしないが、これ程までの原石が、そんな可愛らしい理由で走るのかと愛おしく感じたのだ。

 しかしながら、可愛らしい理由ひとつだけでは、打ちのめされた時に立ち直れないかもしれない。手折るのは容易いが、自身がより高みへ至る為には、切磋琢磨できる好敵手が必要なのだ。そうならないためにも、精神的にも強く育てておきたい。

 

「いえ、不純とは思いませんよ。私だって言わば箔付けの為に走るようなものですから。」

「確かに言ってましたね、トレーナーか教官になる、って。」

 

 ラブザビバーチェの家系は、優れた選手であり優れた指導者を両立する人物を輩出してきた。ならばこそ、とビバーチェが自身にそれを課すのも道理だろう。

 そういうわけで、デビュー前にも関わらず特に注目されているウマ娘のうちのひとりとして、ラブザビバーチェは有名なのだ。

 

「ええ。なのでクラシック路線へ進む予定です。クラシック三冠はやはり一番注目されるといっても過言ではないレースですから。勿論、順調に勝ち星を積み重ねられたらの話ですけどね。」

「なるほどぉ。わたし、ついこの間まで自分の脚質すらわからなかったヤツなので距離適性もまだびみょーにしかわからないんですよね。馬場に関しては芝が得意なのは確定なんですけど。」

 

 ホワイトは頭を掻きながら、恥ずかしそうに笑った。

 

「では、ホワイトさんがもしよければですが……クラシック三冠路線を走りませんか?」

「そこまで行けるかわかんないですけど、もし、同じ舞台に立てたら是非。」

「レースに絶対はありませんから、絶対とは言えませんが……ホワイトさんなら。」

 

 此処まで期待されたら答えたいし、ビバーチェと走るのはワクワクさせるなにかがある。それを極上の舞台でできるのなら、頑張るしかないだろう。ホワイトはそう心に秘めつつ、気合を入れ直すために両手で自身の頬を叩いた。

 

「よし、それじゃあまず皐月賞に出られるように、頑張るぞー!坂路5本!」








ホワイトデュー
直情的でトレーニングだけは頑張る頑丈ウマ娘。頑張りがから回ることも結構ある。
ちょっとサバサバしてるように見えるけど、踏み込んできた人は無碍にはできないのでなんだかんだみんなと仲良し。
キラリと光る闘争心はきっとみんなを驚かせる……かも。
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