The Reverberation   作:ささみささじ

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ホワイトデューⅡ 「石に躓く理由も、壁にぶつかる訳も」

 

 ガタンという爆音が響き、少し遅れて芦毛のウマ娘、ホワイトデューが飛び出す。スタートダッシュの速度そのものは目を見張るものがある。しかし、脚質に逃げを選ぶとなれば、一瞬の出遅れは致命的だ。

 "前走の敗因は全く別のところにあるとはいえ、これを改善しなければ後々致命的になるだろう。"という彼女のトレーナーの判断の下、ホワイトデューはゲート訓練を繰り返し行っていた。

 ホワイトはゲートは苦手だが、暗く狭い場所に恐怖を覚えているわけでは無かった。ゲートが開く瞬間の爆音がホワイトの集中を掻き乱し、一瞬の出遅れを生じさせている。

 ホワイトはひとりでゲート訓練を繰り返し、爆音に慣れることを選んだ。しかし、今のところ進捗は良くなさそうだった。

 

 少しだけ走ってから速度を落とす。三十一回の練習に挑もうと、ゲートの周りをぐるりと回って再び中にはいると、隣のゲートから声が聞こえてきた。

 

「もしかして……ゲートの音が苦手なのか?」

「ひえっ」

 

 ウマ娘は耳がいいと言うが、ホワイトデューはそれに輪をかけて耳が良かった。低音の落ち着いた声がゲート内に大きく響き、それがホワイトを驚かせた。

 ホワイトが恐る恐る声の出元を伺うと、人相の悪いしかめっ面で、今にも雷を落としそうな雰囲気を醸し出した、栗毛で背の高いウマ娘が覗いていた。

 

「ええと……あ、隣のクラスのサンダーカッターさん……?(たしかそうだったはず……)なにか御用でしょうか……?」

 

 サンダーカッターといえば、隣のクラスで真っ先にメイクデビューを勝ち上がった怖いウマ娘だと、ホワイトは記憶を懸命に掘り起こして漸く思い出した。

 多分、将来ライバルになるであろうウマ娘として、メイクデビューを勝ち上がった子のレース映像で見たはずだ。金に揺れるウルフカットの栗毛、その力強い先行策と鋭い末脚は、必ずや手強いライバルになるだろうとホワイトのトレーナーは評していた。

 もしかしてゲートの音がうるさすぎて怒らせてしまったのでは、なんてことをホワイトは的はずれなことを思った。

 

「……そうだ、すまない。そして、()()()()()()だな。ワタシはサンダーカッター。よろしく。」

 

 カッターは、必要以上に怖がられていることを察知して、謝罪の言葉を口にした。怖がられるのは慣れているが、慣れていることと怖がらせていることへの罪悪感は別物だ。

 

「え、ええと……ホワイトデューです、よろしくお願いします……、ご要件はなんでしょうか……?」

 

 戦々恐々としながら、ホワイトはカッターの顔色を窺った。よくよく見てみれば、強面でバリバリとした雰囲気だがどこか優しそうな感じもしなくはないのかも、とホワイトは思った。思いはしたが、依然変わりなくビビっている。口から出る言葉は数秒前とほとんど同じものだ。

 

「多くのウマ娘があまりやりたがらないゲート訓練を繰り返しやっているのを見て、気になった。」

「は、はあ。」

 

 ――やっぱり怒ってる、ゲートがうるさくて怒ってる、とホワイトは勘違いを加速させていた。

 サンダーカッターは、吊り目気味で、三白眼で、背が高く見下ろし気味で、1日中口をへの字にしてむすっとしている。怒っていると勘違いされても仕方がないほどに。

 内心は複雑故に負の感情が全くないとは言わないが、怒りの感情は今のカッターにはないのだが。

 

「もしかしたら、力になれるかもしれない。ワタシもゲートの大きい音は苦手だ。」

「は、え?」

 

 しかしながら、ホワイトの見当違いの勘違いと散漫な注意力による聞き逃しなど気にせずに、カッターは解決策のひとつを提示した。

 

耳カバー(メンコ)をするといい。多少はマシになる。」

 

 三秒ぐらい静止して、口元を右手で隠してまた三秒静止して、首を傾げてまた三秒静止して、漸くホワイトは言葉を発した。

 力になれるかもしれない、という言葉を最初の三秒で解し、それがゲート訓練についてのことであるのに次の三秒で解し、耳カバーが出てきた理由が三秒つかってもわからなかった。

 

「耳カバーって、アレですよね?お洒落でつけてる子がいるやつ。」

 

 ホワイトは両耳をそれぞれの手で軽く握って、認識の齟齬がないか確認した。

 

「そう、それだ。ワタシも実際に着用している。なるべく髪色に近い目立たないものを。ゲートの音も幾らかマシになるだろう。」

「あ、なるほど……!耳塞げってことですね、」

 

 カッターは、確かに栗毛の髪色に近い黄色で厚地の耳カバーをしていた。言われなければ気づかないほどに目立たないが、耳を野晒しにはしていなかった。

 懇切丁寧に説明されて、ようやくホワイトはカッターが何を言っているのかようやく理解した。そして"もしかしなくても、このヒトいいヒトなのでは?"という疑問が新たに現れた。

 

「キミのトレーナーは新人だと耳にした。勝利に直結しうる改善点を見抜く力は素晴らしいが、細かい道具を活用するということにはまだ慣れていないらしい。キミもそうだ。漠然と練習を繰り返すのではなく、なにが目的で、なにが必要なのか考えるべきだ。繰り返しの練習に耐える精神と身体は褒めるべき箇所ではあるが、それにも限度がある。」

「は、はい……気をつけます。」

 

 いいヒトではあるのだろう。が、しかし、他のヒトのことを気に掛けすぎているのだろうと、カルテットは察した。それに怖い容姿と雰囲気も加われば、よく知らないヒトは皆避けてしまうのだろう。

 

「……諄々(くどくど)と申し訳ない。キミには期待しているから、つい。」

「ああ、いえ、参考になった……なりましたし、そんなことは全然!」

 

 カッターは、申し訳無さそうにパタリと耳を倒し、口元を右手で隠した。

 ホワイトは、"自覚があるんだ……"と"少しかわいいところもあるんだ"と危うく口にしかけるところだった。

 

 





ホワイトデュー

身長:168cm
体重:微増(身長が伸びてるのでその分です!)
アレ:78-58-82

耳飾り:ラウンドカットのアクロアイトと青い葉の装飾の髪飾りが右耳の根本に。

(過去掲載分にも耳飾りの項目を追加)
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