アクセル・ワールド・Another――灰狼の咆哮――   作:刹っちゃん

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Prologue 略奪者の最後

 

 

「くそっ。くそ! くそおおおおおおおおッ!!」

 

 ダスク・テイカーこと、能美征二はひとしきり咆哮し、なおも言葉を撒き散らす。

 

「認めない! こんな展開は許さない! 誰か、誰でもいい、ここに来い! ボクを助けろ! そうすればポイントをやるぞ!!」

 

 

 

 ――もう、たくさんだ。

 

 

 

 ハルユキがそう思ったとたん、タクムもハルユキを見て、言った。

 

「……終わりにしよう、ハル」

 

「……ああ」

 

 頷き、ハルユキは歩き始めた。全ての決着をつけるために。

 

 ダスク・テイカーは、近付くシルバー・クロウを認めた途端、高い声で喚いた。

 

「や……やめろ! そうだ、これからはボクがお前らにポイントを供給してやる! 悪い取引じゃないだろ! 何ならレギオンに入ってやってもいい!!」

 

 ハルユキは、歩きながら右手を持ち上げた。揃えた指から、白い輝きが長く伸びた。

 

「やめろ、嫌だ、失くしたくない! ボクの力だ! ボクの《加速》なんだ!! 嫌だ、イヤだ……イヤだあああああぁぁぁぁっ!!」

 

 ダスク・テイカーは上半身だけの体を跳ね返させ、裏返すと、短い触手で地面を掻いて遠ざかろうとした。

 

 心を凍らせて、ハルユキは高く光の剣をかざすと――。

 

 躊躇なく一閃させた。

 

 かっ、と空気が震え、細い光のラインが白い舗装タイルに走り、伸び、その先を這うダスク・テイカーを呑み込んだ。

 

 宵闇色のアバターは、音もなく正中線から左右へと分かれた。

 

 直後、赤紫色の巨大な火柱を噴き上げた。炎の中から、無数のリボン状の光が空へと解き放たれ、空気に溶けて消えてゆく。リボンは全て、微細なデジタルコードで綴られていた。それはかつて一度だけ見た。バーストリンカーの最終消滅現象に他ならなかった。

 

 この瞬間、梅郷中学校に君臨し、ハルユキたちを圧倒的な力で蹂躙し続けた《略奪者》は、加速世界から永遠に退場した。

 

 立ち尽くすハルユキの視界に、サドンデス・デュエルの決着を宣言するシステム・フォントが赤々と輝いた。大量のバーストポイントが加算され、レベル5への上昇が可能な旨のメッセージが続いた。

 

 しかし、勝利の快哉も、達成感すらもハルユキの胸には生まれなかった。

 

 ただ、全てが終わったのだ、という意識だけが静かに広がり、全身を満たした。

 

 

 

 

 ハルユキ達を巡る、この長く辛い戦いから二ヶ月後。

 

 それほど遠くない東京のとある場所で――《ある組織》の意思によって……。

 

 一人のメタルカラーが誕生しようとしていた。

 

 ――そのアバターの名は……ウルフラム・サーベラス。

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