「・・・長、艦長、お時間ですよ」
目が覚める。
強い魔導灯の光が目に入る。
「もう、時間か」
「はい。あと30分で出航の時間です。必要な荷物は魔導車に全部運んでおきましたよ」
いつものごとく完璧な仕事を。
「ありがとうな。フェリナ。それと、私室くらいではちゃんと名前で呼んでおくれよ」
「あら、あなたは公私混同は嫌いな人だと思っていたわ。フューリランド?」
以前部下にしていた話を聞かれていたらしい。何とも耳聡い。
ベッドの上で複雑な気持ちで考えていると、妻が急かす。
「ほら、(影)の艦隊が大手を振って活躍できる機会なんてそうそうないわ。かわいい部下の方々もあなたを待っているんでしょう、早く行きなさいな!」
そういって背中を押す手を、いとおしく感じた。
どこへ行っても必ず帰ってくると信頼してくれている手だ。
「いってらっしゃい、あなた。」
「いってくるよ」
★★★
「・・・長、艦長、報告に上がりました」
「ん、お、すまんな。もう提示報告の時間か・・・」
ミリシアル本国の港を出港しすでに3日、今回の目的地であるスティロフ諸島はあと1日というところまで来ていた。
現状のスケジュールには何も問題なく、むしろ好調過ぎて怖いくらいだ。
「現在、スティロフ諸島の北方780㎞に達しています。これといった異常はありません。スティロフとの通信が時々不安定になること以外は・・・」
「それは本国からでも特に変わらんからな。突然の機器の故障でもないわけだし、やはり何者かによる介入とみるのが正解か・・・」
数週間前からたびたび起こっている通信の不安定さ。スティロフ海域で何か特別な事件が起こったなどという話は聞いていない。
ほかにも時間が決まっていることなどから考えるにほぼ間違いなく人為的なもの、特に考えられるのは今上から下まで話題になっている「グラ・バルカス帝国」とやらなのだろう・・・。
艦隊の上層部で何度も交わした議論だ。結論は出ている。
そうつまり、カルトアルパスのようになる可能性があるということだ。
当然、あの場にいた船よりは確実に対抗できる艦たちしかいない、いないのだが・・・。
「報告は以上かな?」
「はい、以上となります。」
「空軍からの援護の連絡は来ていないか?」
「はい、来ておりません。」
「そうか、下がってくれ」
「は、了解しました。」
部屋を出る部下を見つつ、棚からスティロフ諸島近海の海域図を出す。
今できることは、相手がどのような戦力であっても、勝てるような・・・いや、生き延びられる戦略を立てることだ。
夜はまだまだ長いぞ・・・。