ダンジョンの宝箱の中身を決めるお仕事   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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01:謝ることしかできねぇ

 渋いダンジョン、なんてものを知っているだろうか。

 

 端的に言うと、自動的に発生する宝箱の中身が、よろしくないものしか入っていないダンジョンのことだ。

 

 冒険者の中でもそんなダンジョンは不人気であり、魔物の異常発生が起こっていないか管理するためか、もの好きくらいしか訪れない。

 

 冒険者だってビジネスマンだ。

 

 旨味がない会社(ダンジョン)とは取引をしないし、彼らは命をかけている。

 当然だけど渋いダンジョンには行きやしない。

 

 ただ、そんな渋いダンジョンにも、経営を行っているものはいるわけで、

 

「やっべぇな」

 

 そんな渋いダンジョンの管理人が、俺なわけだ。

 

 

 ここは異なる次元の俺の仕事室。

 8畳という少し広めの部屋は、質素な机と椅子があるだけで、特段目を引くものは存在しない。

 

 まぁ、特段目を引くものが存在しないだけで、部屋全体で言えば目を引くどころか目を背けるレベルなんだが。

 

 床に散らばる書類、書類、書類。

 

 足の踏み場がないとはまさにこのことだ。

 

 だが、絶賛椅子に座っている俺にはそんなものに目を向ける時間はない。

 椅子に座ってひたすら机の上にある書類とにらめっこしないといけないのだ。

 

 書類のタイトルには「48期ダンジョン管理表」とある。

 

 そんな書類とにらめっこしている俺の脳は、絶賛フル稼働である。

 考えるのは、言い訳。

 

 もう言い訳なんてしない。

 

 今は最善の言い訳を考えるんだ。

 

 そんな支離滅裂な思考に気づかないまま、頭を抱えて時間は過ぎていく。

 

ボーン、ボーン

 

 そして、無慈悲にも死刑の音は鳴り響く。

 

「終わった……」

 

 質素な部屋に唯一ある時計。

 そんな時計が宣告の時を告げている。

 

 あー、なんとかならねぇかなぁ

 

 そんな無責任な思考をしながら、俺は机の上の書類を震える手付きで集めていく。

 

 流石に時間に遅れて言い訳なんてコンボを決めたらだめだ。

 そんな正常な思考に流されるまま、無意識のうちに書類をまとめ、部屋を後にした。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「それでは、48期ダンジョン管理成果についての報告を行っていきます」

 

 12人が集まった会議室。

 その中に俺はいる。

 

 誰がこんな机作ったんだよ、ってくらいの大きさの真円のテーブルを囲む12人。

 

 話しているのはスーピス。

 人を刺し殺すことができるんじゃないかってくらいの尖ったメガネをしている厳しそうな女。

 

 いつの間にかというか彼女以外適任がいない司会者に俺達は異論を出すことはなく、ただ淡々と話しを聞く。

 

 まぁ、いつも通りの報告と注意勧告。

 あ、アスタリのダンジョン落とされたのか。

 

「今回は……キサンさんからですね」

「へい」

 

 気だるそうな返事をしながら、いつも通り自然と立ち上がり。先程からにらめっこしていた書類を持る。

 自然と誰とも目線を合わせないように顔の高さまで持ってくる。

 

「えー、今回キサンダンジョンではまたも赤字を叩き出しました」

 

 まずは結論から述べていく。

 音が聞こえない。

 

 これは呆れられている。

 

 それを確信しながら、話を紡いでいく。

 

「内訳としては、第一、第三がそれぞれ約1000マターのマイナス

 それ以外の3つのダンジョンが合わせて10000マターのマイナスです」

 

 えっ

 

 はぁ?

 

 おぉ

 

 どよめいた。

 

 これはもうわかりやすいくらいにどよめいた。

 

 わかっている。

 

 わかっているとも

 

「ププッ、それで、残りの3つの内訳は?」

 

 レオが笑いを浮かべながら質問を飛ばしてくる。

 知っているさ。

 それ、俺も教えたくなくてあえてぼかしてるし。

 

 でも、聞かれたからには話さないといけない。

 

「第二、第四が2500マター。

 第五が5000マターのマイナスです」

 

 心を殺せ。

 これは口にしていい数字ではない。

 ただ、ただ心を殺すだけだ。

 

「キサン……」

 

 ライラが頭を抱えてテーブルに視線を落としている。

 

 やめてくれ、その攻撃は俺に効く。

 

 だが、だがしかし。

 

 俺にはない頭を振り絞って出した言い訳がある。

 

 言い訳が、あるんだ。

 

 だけど。

 

「これはまじですまん」

 

 そんなものが使える範囲の損失であったら、って話なんだよ。

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