真オーズ伝説   作:GGアライグマ

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原始祭り

トンタッタ、トンタッタ。

 

 熱い。眩しい。暗い。冷たい。痛い。苦しい。辛い。

 

 目の前に広がる無限の白と黒。闇と光によって身体が溶かされていく。全身がひび割れ、崩れていく。身体中が痛い。苦しい。もう嫌だ。誰か助けてくれ。

 

トンタッタ、トンタッタ。

 

 モゾモゾと全身がうごめく。この白と黒に順応するように。ほんの少し痛みが和らいだ気がする。でもやっぱり痛い。いつまで続くのか。この地獄は…。

 

トンタッタ、トンタッタ。

 

「うるせぇええええええええ! 俺は今、苦しいんだよ!

バカみたいに歌って踊って騒いでんじゃねええええええええ!」

「知るか! おれは今、踊りてえんだ!」

 

 男の声。乱暴な言葉。俺は今、やつの言葉を理解できたことに驚いている。

 いつの間に言葉を勉強したのだろうか? 記憶がない。

 ここはどこだ? 俺は誰だ?

 

「お前も踊れよ! 楽しいぞ!」

「ああん? 踊るっつっても…」

 

 俺は目が見えないはずだ。自分でそう思っていた。だがやってみれば案外目は開いた。

 

「あれ? 目が見える…」

 

 知らない場所だ。真っ白というか金属質というか、そんな壁に囲まれている。装飾がずいぶん細かいな。小さな機械があちこちに見える。

 

「何言ってんだ? 目なんて見えて当然だろ」

 

 下の方に、小さな男がいた。全身の毛が白くて炎のように蠢いている。生物としてありえない気がする。だが、同時に思う。なぜ俺は、生物とはこういうものだと知っている? それを学習した記憶がない…。 記憶喪失というやつか?

 

「おれはニカだ! お前は誰だ!」

「……俺は誰だ?」

「知るか!」

「ぶへぇええええええええええ」

 

 なんかニカという男に急に殴られた。顔がひん曲がって目が飛び出るほどに思いっきり。理不尽だ。

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」

「え? ええ?」

 

 おかしい。痛くない。殴られたはずなのに。顔がボコボコになっていたはずなのに。すぐさま元通り。

 それにニカという男の攻撃もおかしかった。なんか拳が急にデカくなって腕も伸びていたような…。というか、え?

 

「え? え…?」

 

 お、俺の足が、ない…。

 足の部分が、尻尾というか、魚の尾ひれみたいになっている…。

 頭もおかしいぞ…。角がある…。

 

「えぇええええええええええええええええええ!」

「うるせぇえええええええ!」

「ぶへぇえええええええええええええ」

 

 ショック過ぎて叫んだら、またニカに殴られた。こいつ理不尽過ぎんだろ。

 

「おいニカ、さすがの俺も怒るぞ」

「おめぇ声がデカ過ぎるんだよ! ちょっとは周りに気を使え!」

「おめぇも俺に気を使えよ!」

 

 腹の立つ男だ。煽るようなおちゃらけた態度もムカつく。

 正直殴り返してやりたい。やりたいが、やつはとても小さい。俺の拳くらいの大きさしかない。殴れば潰れて死んでしまうだろう。俺は我慢するべきだ。無意味な殺生などしたくはない。

 

「いたぞ! ニカだ!」

「囲め!」

 

 心を落ち着けたいが、なかなか落ちつかない。疑問が尽きない。

 その上、ここにまた別の男達がやってきた。身体は異様なまでに小さい。ニカが拳サイズで、こいつらは指の爪ほどしかない。小人にも程があるだろう。

 チビ人間は鉄のロボットを30体ほど連れている。ロボットは多少大きいが、それでもニカと同じくらいのサイズだ。俺からすればやはり小さい。

 

「なんだお前たち、おれと遊びたいのか!」

「遊ぶわけなかろう! 今日こそはその命置いていってもらうぞ!」

「こいつは第三惑星の古代兵器だ! いかにお前と言えどもこいつの攻撃には耐えられまい!」

 

 ロボットは四方八方に散らばりニカを囲む。そしてビームを放った。

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃ! 当たらん当たらん!」

 

 ニカはとても器用にビームを避けていた。さながら曲芸だ。なぜああも見事に避けられるのか。まるで未来が見えているようだ。

 

「いたっ」

 

 だが、俺は避けられなかった。光のスピードでちっこいやつがチマチマ撃っているのだから避けるのは不可能と言っていい。やつらは俺を狙って撃ったわけではないのだが、ニカが縦横無人に動くから、流れ弾が俺の方に飛んできたのだ。

 それほどムカつくわけではないが、痛かった。何よりチビ人間達の偉そうな言葉使いにムカついていた。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 だから恐がらせてやろうと思って、叫び声をあげてやった。

 

「かっ かっ かは…っ」

 

 俺の叫び声だけで、チビ人間達は白目をむいて気絶した。ロボット達はニカへの攻撃を止めて、チビ人間達を回収し、どこかへと去っていった。

 

「うるせぇええええええええええええええ!」

「ぶへぇえええええええええええええええええ」

 

 またニカに殴られた。助けてやったのに理不尽だ。

 

「ふざけるなよてめぇ!」

「お前はもっとふざけろよ!」

「なんだそれは!」

 

 さすがに我慢の限界だった。俺はニカに拳を突き出した。

 

「へへっ どこ狙ってんだ?」

 

 だが、当たらない。ニカは蝿のようにぬるぬと空中を走り、避け続ける。

 羽もないのになぜ空中で自由に動けるのか。生物として何もかもがおかしい。

 

「くっ くそっ」

「ふぁーあ 欠伸が出るぜ」

 

 ニカはずいぶん余裕があるようで、俺の拳を避けた直後に、俺の腕に乗って欠伸をしていた。俺のことをバカにするように笑いながら。さすがの俺もキレたね。

 

「うおらぁあああああああああああああああああああああ」

「うるせぇえええええええええええええええ」

「え?」

 

 叫びながら殴ると、ニカが避けずに叫び返してきたので、攻撃がふつうに当たってしまった。

 俺の巨体でニカを思いっきりぶんなぐってしまったのだ。俺の拳ほどの大きさしかないニカを…。

 

「ご、ごめん…」

 

 謝っても、もう遅い…。たぶん、あいつは死んだ…。

 一緒に踊りたいと言っていた男を、ちょっと煽られただけで殺すとか…。

 俺、酷すぎね…?

 

「よくもやったなおめぇ!」

「おお! 生きてた!」

 

 だがニカは、無事だった。それどころか、ほとんどダメージを負っていなかった。こいつ、無敵か…?

 その後、俺達は戦った。ただひたすら戦った。ニカとの戦いは楽しかった。戦いというよりダンスみたいだった。お互い顔面も全身もボコボコになるほど殴りあったはずだが、不思議と怪我は残らなかった。なぜ怪我しないのかニカに聞くと「気にすんな」と言われてしまった。気にしないことにした。いやでも気になる。

 戦いの途中で、何度かチビ人間が機械を連れてやってきた。いつも偉そうに何やら俺たちを罵倒し、命令してきた。腹立つから殺してやってもよかったが、それもかわいそうだと思ったので、できるだけ殺さないように軽く追い払ってやった。

 やつらは俺のことをオーツーと呼んでいた。どうやらここの島の研究所で作られた存在らしい。だから記憶がないのに喋れるのか。納得! …できるわけがない。おかしい。何かがおかしい。俺はもともと人間だったはずだ。そういう直感、実感がある。言葉はその時の記憶ではないか? そう思うのだが、重要なところの記憶が抜けている。

 

 1年もした頃、ニカは一言だけ「この星には飽きた」と言って宇宙へと行ってしまった。宇宙ってそんな簡単に出られるものだったのか…。知らなかった…。だが、もうあいつと出会うことはないだろう。そんな気がする。

 

 まあ、俺も戦いばかりの日には飽きていたから別にいいんだが。ニカとは性格が合うわけでもなかったしな。騒がしいやつがいなくなって、ちょっぴりさびしいとか、そんな感じだ。しかし、これからどうしようか。一人になってはこの島にいても退屈だ。俺も外に出てみようかな。

 島の周りは一面海だ。俺は身体が非常に大きい上に足がないので、陸での移動は難しい。できないわけではないが、ハイハイしただけでそこにあった森林も動物も何もかも破壊してしまう。残るのは俺が通った窪みと川のみ。対して、海であればそのような心配はしなくていい。小魚を知らずに吸い込んだり、俺が泳いだ波で船を倒してしまうかもしれないが、そこは許してほしい。俺ものびのびと泳ぎたいのでね。

 

 海は俺にとっても大きかった。全身を思い切り伸ばして、優雅に泳ぐことができた。

 海には人間よりも小さな小魚もいれば、俺と似たような体格の魚もいた。なぜか顔が牛や豚や鳥だったりして、合成生物感は否めなかったが。俺と同じように、研究所で作られた存在なのだろうか。この巨大な魚達は、いくらか好戦的なやつらがいて、俺を食おうとしてきたので、拳で小突いて分からせてやった。巨体の割に柔らかくて動きが鈍く、弱かった。これならニカの方がずっと強かった。俺が強さを見せると、魚達は俺の子分になりたいと言ってきた。喋っているわけではないのだが、そういう意味を発していると何となく感じるのだ。ニカと戦っているうちにそういう能力が身についた。あいつは謎過ぎる存在だな。魚に「ついて来たければ勝手に来い」と言ってやった。だが、そのうち数が増えすぎてしまった。俺達はただでさえ巨体なのだ。この巨体が群れで動けば津波になってしまう。小さな生物は巻き込まれて死に、島の沿岸部は甚大な被害を被る。俺は頑張ってそう説明して、魚達を解散させた。魚達は「残念ですが仕方ないですね… しかし、あなたが呼べばいつでも駆けつけますので!」とか言っていた。

 

 

 

 ………………

 

 

 

 あれから数百年。成人となった俺は性欲をもてあましていた。

 自分と同じサイズの人間が一人もいないのだ。どころか、ニカサイズですらいない。目に映るのは、抱きしめるどころか、指で撫でただけで死んでしまうチビ人間ばかりだ。これでは性欲の捌け口など望めるはずもない。

 俺は性の苦しみに耐えかねて研究所に戻った。俺とニカが暴れたのもあり、島の形はボコボコのままだし、研究所も完全に立て替えられて別の姿になっていたが、一応大きな研究所はあったし科学者もいた。

 俺は素直に彼女が欲しいから作ってくれと頼んだ。科学者達は喜んで請け負ってくれた。俺の身体を研究できることがうれしいらしい。しばらくして、女型の巨人が作られたが、赤ん坊の姿のままですぐに死んでしまった。巨人の研究は難しいらしい。

 科学者はまだやる気だったが、俺は赤ん坊が目の前で死んだのがショックだった。研究はもうやめてくれと頼み、島を去った。だが、科学者から同意をもらったわけではなかった。科学者はきっと研究を続けるだろう。何百、何千人と犠牲者を出しながら、それでもやめないだろう。しかし、成功例が生まれたら、俺はたぶん、嫁に貰いに行くのだろうな。科学者を責めながらも、俺も同罪というわけだ。

 

 それからさらに数百年。海を泳ぐ俺は、手下の巨大な魚から、人魚姫伝説というのを耳にした。魚の尾をした大きな人間が、海王類と呼ばれる大型の魚に対して「お友達になりましょ」とか何とか言って、毎日とりとめもない話を聞かせているらしい。海王類達は、暇だから毎日集まって聞いているそうだ。「大きな人間」「魚の尾」というキーワード。ひょっとして、俺の研究の成功例なのではないか?

 気になった俺は、人魚姫に会いに行くことにした。

 

「ひぃいいい! 恐いですぅ!」

「おお、確かに大きい」

 

 人魚姫は、ニカと同じくらいのサイズがあった。思いっきり抱きしめるのは問題だが、軽くならば死なない気がするくらいのサイズだ。尾は魚の形をして、頭に角が生えていた。どことなく俺に似ている。やはり俺の遺伝子を利用して作った合成生物なのだろうか。だが、問題ない。俺は彼女を嫁にすることにした。

 

「俺と、結婚してくれ!」

「嫌です! 見た目がタイプじゃないんです!」

「分かった! じゃあまた明日来る!」

 

 大きさは恐怖。チビ人間に恐れられ続けていた俺は、彼女からこういう反応をされることも想定していた。だが、諦める気はなかった。諦めたらもう相手いないしな…。俺は彼女の気を引こうとして、持てる物全てを与えようとした。海王類と呼ばれる手下。食糧。戦闘の技術。俺が知る限りのこの世界の歴史。彼女は対して喜ばなかったが、俺はひたすら彼女を甘やかした。

 

 

 それから約3年。相変わらず人魚姫に求婚していると、なんかニカに似ている男がいた。

 

「俺はドン! 海賊だ! 人魚姫は俺がもらうぜ!」

「お前、ニカの子孫か?」

「ニカ? 誰だそりゃ!」

「浅黒い肌に、真っ白な髪。燃えるような背中の炎。伸びる身体。身長もそこそこあるし、絶対ニカの子孫だと思うんだがなあ」

「そりゃあルナーリア族の特徴だ! 俺だけじゃねえぜ!」

「ああ、なんか聞いたことある気がする」

 

 最強の人類ルナーリアとかなんとか。見たのは初めてだが。ニカもルナーリアだったのか? いや、あいつは違う気がするんだがなあ。

 

「まあいいや。人魚姫は俺のものだ! 返してもらうぞ!」

「はんっ! ほしいなら力ずくでやってみやがれ!」

 

 人魚姫も欲しいが、俺は久しぶりにニカと戦える気がして喜んでいた。ついつい本気を出してしまった。島が軽く消し飛んだ。ドンは一撃で気絶したが、生きていた。ニカほどではないが、それなりに強いね。

 そう、勝者は俺だったのだ。だが、人魚姫には暴力的だとかで思いっきり嫌われてしまった。逆に、人魚姫はニカに似ている男を付きっ切りで看病して、そのまま結婚しやがった。ありえねえだろ。俺がこんだけ頼んでもダメだったってのに。まあこのカップルの方が身長は近いけどさ。俺の子孫とニカの子孫が結婚したみたいで気持ち悪いぜ。って、自分の子孫っぽい人魚姫と結婚しようとした俺は何なのかってことになっちゃうがな。

 

 ドンはルナーリア族の王族だったらしい。人魚姫は便宜上姫と呼んでいただけで、友達のいないただの合成生物の人魚だったのだが、王族に仲間入りした。そんで子宝に恵まれた。そのうち俺と結婚してくれる子孫も現れるのだろうか。

 人魚姫の子孫のうち、人間っぽい見た目をした者は、巨人と呼ばれるようになった。俺と同じように角が生えている者は、自分で古代巨人族を名乗った。鬼とか魚類とか呼ばれるのが苦痛だったらしい。

 

 さらに数百年後。ドンの国で問題が起こり始めた。巨人とチビ人間とで共同生活していると、どうしても不憫が出る。巨人が事故のような形でチビ人間を殺してしまう。かと言って一歩一歩にさえ気を配らなくてはならないのでは巨人にとっても窮屈だ。互いの鬱憤は溜まり続け、殺し合いも生まれ、恨みが恨みを呼ぶ。やがて国が真っ二つに分かれて戦争が始まってしまった。人が数多く死に、国土が穢れた。

 俺は俺の嫁になりそうな女巨人だけ拾って守ってやった。頼まれたから戦争の仲裁もしてやった。俺の仲裁の結果、伸び伸び暮らしたい巨人は、チビ人間があまりよりつかない、グランドラインの奥の方へと移住することになった。古代巨人族(笑)は海中で呼吸できたので、海に移住した。他の魚の合成生物達とも協力して国を作るつもりらしい。巨人と戦っていた王族やその臣下は、なんと宇宙へと移住した。ニカの血筋が空を求めるのだろうか。もちろん、国土を汚してしまって、大部分が住めなくなったので、口減らしのためでもある。

 

 さらに数百年後。弱体化したドンの国が、約20の周辺国とその配下の海賊達から攻撃を受け始めた。当初は楽勝ムードだったが、周辺国や海賊は、不思議な魔法を数多く使用することができ、非常に多彩な攻めを行った。ロボット兵器による環境汚染にも躊躇なかった。その結果、徐々に周辺国と海賊側が有利になり始めた。全体を通して見た場合は。

 ドンの国の新しい王族は、ルナーリアや人魚の力を一部受け継いでおり、無敵の炎や海王類の力を借りて、それなりに有利に立ち回っていた。彼等の力がある限り、ドンの国が負けることはなさそうだった。

 

 

 

…………………

 

 

 

「以上が、人型の海王類、オーツーについての報告です」

 

 とある宇宙船のブリッジ。一般的な地味な宇宙服に身を包んだ男が、煌びやかな宇宙服に身を包んだ美しい少女に、声をかける。少女の服は花柄で、スカート部分が非常に長くなっており、クラゲのようにも見える。顔の部分だけが透明で、風船のような形で頭を包んでおり、ダサい。

 

「その巨体と海王類を従える姿から、海の神、ポセイドンなどと呼ばれ、下々民に恐れられております! しかし、その実力は本物!」

「海の神、か… ムーを差し置いて神を名乗るとは許しがたい…」

「私の所見を述べさせていただくと、オーツーを味方につけることができれば、ジョイボーイにさえ対抗できうるかと!」

「こいつはかわいくない。ムーはいらない」

「……! 承知致しました!」




原始ニカ
原始オーズ
原始ポセイドン
古代文明鉄の巨人
原始人魚姫
原始ルナーリア
ドン
ムー
宇宙船

なんか強い気がする言葉山盛り
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