軍艦10隻、大破。死者1000名以上。中将5名含む生き残りは全員捕虜。対して、敵軍に目立った被害はなし。
これが、ビッグロックで暮らしているスパイから届けられた報告である。散々たる結果だ。世界政府の完全敗北。こんなものは報道できるはずがない。
「困ったな、イム様に知られたらまたお怒りになられる」
「これ以上悪戯に海軍を消費するのは得策ではない」
「知将センゴクに、知恵を借りてみるか」
この状況を、なんとか互角っぽく報告してほしい。無理難題を押し付けられたセンゴク。
「だから言ったではないですか! 半端な戦力で挑んでいい相手ではないと!」
「そんな過去の話をしている場合ではない。大事なのは今だ、センゴク」
「なっ」
「世界を不安にしてはならない。海軍にこのような敗北があってはならない。特に今は、大海賊時代だ。オールドンの件もある。このような情報が世に知れ渡れば、やつらに追い風となってしまう」
「私に、どうしろと!」
「戦果は互角であったと、そういう報告書を作れ」
「は……?」
意味が分からず、固まるセンゴクであった。
しかし、そこは知将。適当にビッグロックの大物という設定の人物を作り上げ、死亡リストに名を連ねさせた。「こちらは中将5名が全員生存! 敵方は大幹部が5名死亡! 見ようによっては海軍の辛勝である!」そんな見出しで新聞が世に出回った。ムーちゃんは満足した。五老星はホッと胸をなでおろした。
とは言え、海軍内部では、不満爆発である。1000名を超える同僚達が帰ってこない。にも関わらず、助け出そうとしても、突っぱねられる。どころか、「調べようとするな!」と、怒られる。もともと、乗り気のしない戦いだったのだ。七武海を取り戻すために、最強の国家と戦うなど。正義などない海賊のために、1000名以上の仲間が犠牲になったかもしれない。認められることではなかった。
結果、元大将であり優秀な指導官であったゼファーを中心に、多くの海兵が離脱。ネオ海軍を名乗ることとなった。
ハンコックが釈放されたのは、彼女が美しかったからだ。美しさによってジンベエを味方につけたからだ。ハンコックの性格は残忍である。機嫌が悪い時は民間人も巻き込んで石にし、壊す。すなわち殺す。モリアやドフラミンゴとそう大きな違いはない。
モリアもドフラミンゴも、ジンベエを味方につけられなかった。それでは解放される理由がない。ビッグロックで捕虜と実験の日々が続く。
だが、ドフラミンゴはドレスローザの王。国民には表向き慕われているし、ファミリーに至っては信奉してさえいる。奪還を求めて彼等が動き出すのは自然な成り行きと言えた。
「おお! これは情熱的な踊り!」
「べへへへへ。裏オプションもあるぞ」
ファミリー達はガールズシップを装い、ビッグロックに密航する。
何人か女を失ったが、ホビホビは最強能力。見張りの兵をおもちゃに変えて、記憶を抹消。ドフラミンゴの部屋に到達する。ドフラミンゴもおもちゃに変えて、記憶を抹消。「何しに来たんだこいつら?」と思われながら、ファミリーはおもちゃのドフラミンゴと共に島を脱出した。そして国に到着後、おもちゃから元に戻す。突然ドフラミンゴを思い出した見張り達はビックリ仰天だった。ポセイドンはあまり興味がなかったので気にしなかった。モネはずっと慰めものとして頑張った。
続いて、モリアの関係者も前半の海からはるばるやってくる。「死ぬ部下はいらない」という方針のために部下は少ないが、その少ない部下にはとても信頼されている。それに、国土はオールドンに所属しており、モリアは領主として登録されていた。領主不在では困る。
「ドン達は司法取引によるモリアの身柄返還を求めています。お金には余裕があります」
「そりゃそうだろうよ、お前はゴルゴルの実の能力者」
「フォスフォスフォス、俺が技術提供してやってもいいぜ」
「おお、それは喜ばれるでしょう」
オールドンの使者、ギルド・デゾーロ。並びにホグバック。
お金と技術。特に技術はポセイドンも喜ぶほど高度なものだった。モリアは解放された。
次に、クロコダイル。彼は海賊退治をしていたので、拠点のアラバスタ国民に少しだけ慕われていた。そのため、数名の使者が前半の海からやってきた。だが、そこで行われたのは彼が行っていた悪事の暴露。何せクロコダイルはジェルマとも取引をしていたのだ。悪事の証拠はいくらでもあった。アラバスタの使者はクロコダイルの取引を即座に停止。お土産を買って帰っていった。
ドレスローザとオールドンによる、救出成功。世界政府も、ならば我々もと、救出チームを結成する。目的は司法取引ではない。奪還だ。捕虜交換などすればムーちゃんの耳にバスターコールの完全敗北という真実が届いてしまう可能性があった。それだけは避けたかった。
「へっ 56皇、赤髪と来て、ついには海の神か つくづく俺も運のねえ男だ」
決死の救出作戦。世界政府が命運を託したのは、陸軍中将、56皇殺しのヒグマだった。
ヒグマはこれまでは小物演技で結果を出してきた。だが、中将はジェルマの牢に囚われている。小物のままで牢に近づくのは難しかった。
「おい、戦士の国ガーディってのはここかい?」
「そうだが、お前は誰だ」
「へへっ 名乗るほどのもんでもねえさ ただ、最強ってのを目指してみようと思ってな」
「お前、強いな…?」
にやりと笑うガーディの戦士。ヒグマもニヒルに笑い返す。
ヒグマが選んだのは、正攻法。ガーディでは、強さこそが全て。王に勝てなくとも、武道大会である程度の結果を残せば、いくらかの特権を貰える。その特権を使い、牢に近づくという作戦だった。
「チッ、俺としたことが3年もかかっちまった」
「ありがとう、ありがとう 恩にきる」
結果、救出成功。本来であれば、一個人としてはありえない大戦果。
だが、この作戦はムーちゃんに報告できないものだった。ヒグマの職歴は空白の3年となる。様々な思惑が絡み合い、ヒグマは陸軍准将への二階級降格処分となった。