一般トリニティ生の流儀 作:セイアマン
SPY×MILLENNIUM
ご機嫌よう、皆様。鴉魔キリアですわ!
本日はなんと、ミレニアムのゲーム開発部様にお邪魔してますわ!
「こ、これが有名ストリーマー…!」
「あはははっ!すごい、私が映ってる!」
《なんやこのロリっ娘天国は!?》
《キリアたん、入院中めっちゃゲーム配信してたもんね》
《嘘!?いつ入ってきたのよ!ねぇっ!どうやって赤外線レーザーを無視してきたの!?》
リスナーのユウカさん、良い事を教えてあげますわ。こういう場合、協力者がいれば万事解決ですのよ。
「R」という協力者のお陰で難なく入れましたのよ。ミレニアム内を自由に通行できるアイテムも頂きましたわ!
「キリア、今日はなんのゲームするの?」
今日はですね、『大混戦ストリートブラザーズ6』をやりますわ!
今まではアーケードにしか置いてありませんでしたが、近年の情勢的にこうして家庭用据え置き機で遊べるようになったらしいですわよ!
《格ゲー!?やめとけやめとけ!》
《オイオイオイ、キリア死ぬわ》
《壊滅的に弱いんだからやめときなって》
うるせーですわ!『ストブラ』は操作も簡単ですし、私でも出来ると踏んだのですわよ。
今日こそモモイさんに勝ちますわ!私とて成長しているという事を思い知っていただきますわ。
「ふふん!負けないよ〜っ!」
では、ゲームスタートですわ!
〈ROUND 1 FIGHT〉
さぁ!いきなりの大技を喰らいなさいな!あ、あうっ!小パン連打をお辞めになられて!
ぐぬ、こうなれば距離をとり待ち波動ですわ!おっほっほ!どうです?これで近づけないでしょう!
「それじゃ吹っ飛ばないよ〜!行くよ、スーパーモモイスペシャル〜っ!」
ぬ、ぬわああぁ……!?ゆ、YOU WIN………。
また負けましたわ!?ど、どうして…私の戦法は完璧だったはずなのに!
「同じ技連打じゃ、私は倒せないよ!次はアリスが相手してあげて!」
「はい!アリス、頑張ります!」
○○○○○○
ず、ズタボロにされましたわ……。
まさか、歩くことさえままならないとは。さすがゲーム開発部の皆様、ゲームがお上手で……。
《キリアたんが下手くそすぎるだけだよ》
《どうして大技しか擦らないんだ》
《指ついてる?》
失礼ですわね!ほらこの通り付いてますわよ!
よくご覧になられて?
《ちっさ!ほっそ!》
《指がね……良いよね………》
私がコメントと戯れていますと、ゲーム開発部の部室のドアがノックと共に開きましたわ。
やって来たのは先生ですわね。手土産なのか、トリニティの茶菓子を手に持っていますわ。
急いで配信を切り、先生を迎えるために少しだけ身支度を整えますわ。
ご機嫌よう、先生。
お高かったでしょう?
「"キリアも来てたんだ。お茶を淹れるの手伝ってくれる?キリアの淹れる紅茶、美味しいから"」
もちろん構いませんわ。先生が私のお茶が好きだなんて、光栄ですもの。
ユズさん、台所を借りますわよ。茶葉とティーセットは常に持ち歩いておりますの。トリニティ生の基本ですわね。
「やっぱり…そうなんですね。トリニティってお茶キメないとダメなんだ………」
「アリス知ってます!お茶ばかりキメているトリニティ生の事をトリカs」
「アリス!やめなって!」
……なんだか、少しだけトリニティを侮辱されたような気もしなくは無いですが、今はもはや毒蛇の巣では無く、より濃い毒虫が煮詰まった蠱毒そのものですもの。
そう言われても仕方ないですわね。
「そういえばお姉ちゃん、進捗は?」
「あ」
「お姉ちゃ〜ん!言ったよね?キリアさんと遊ぶ時はちゃんと1日分書いてから遊ぶって!」
「待て、待つんだ妹よ。ひとまずお茶でも飲んで落ち着いて……ほら、これアールグレー?ってやつ!」
違いますわ、それは『シルバーニードルズ』と言いまして、香り高いとても良い茶葉ですのよ。
たくさんありますから、お好きなだけお飲みになられてくださいませ。
「"し、シルバーニードルズ…!?"」
「知っているのか雷電」
「"雷電……?うん、この茶葉……20グラムで5000円する奴だよ"」
「ごっ……!?一気にたくさん飲んじゃったよー!勿体無い……」
お気になさらず。トリニティなら好きなだけ飲めますし、私の前で値段など無いに等しいですわ。
ですからご安心してお飲みくださいな。
「とにかく。原稿は終わらせないとだから、お姉ちゃんは頑張って」
「アリスは何をすればいいですか?」
「そうだなぁ、アイデア出しの為にちょっと外を見回って来てくれる?先生と一緒に」
「クエストですね!受注しました!行きましょう、先生!」
私はまだまだここでコンボ練習を……おや?電話ですわね。少しだけ席を外しますわ。
はい、もしもしご機嫌よう。鴉魔キリアですわ!
『───Rよ。今夜、例の場所に来てちょうだい。契約に基づいて、貴女と今後について話し合っておきたいの。誰にも尾けられないよう、細心の注意を払ってちょうだい』
あら。変声機で分かりにくくなっていますが、随分と焦っていますのね。
しかもこんなに秘匿された回線……ミレニアム製でない、カイザー製の電話でかけてくるなんて。
とても用心深いのですね、R様?
『リスクを減らしておいて損はないわ。それに、用心深いのは貴女だってそうじゃない。お互い、誰にも理解されない者同士気が合いそうね。緑の騎士の主人さん?』
ふふ、素敵な夜にしましょうね。生徒会長様?では、失礼いたしますわ。
Rからの電話を切り、私はゲーム開発部の皆様に別れの挨拶をし監視カメラの無い場所に入り光学迷彩を起動しますわ。
そしてそのまま待機していたAVALONに乗り込み、Rの元へと向かう為に監視網から外れるほどの上空を飛び指定された場所へ向かいますわ。
まったく、隠密行動は苦手ですのに。
思いっきりエンジン吹かしてぶっ放したいですわね。それをしたらバレてしまいますが。
私が指定された場所に着くと、陽も落ちて空はすっかり暗くなり、無人の夜景だけが眼前に広がっておりましたわ。
「よく来たわね。『緑の騎士の主人』…いえ、『MORGANA』と呼んだ方が良かったかしら?」
どっちでも構いませんわよ、調月リオ様。
なにやら傷心されたような顔つきですが、大丈夫ですの?食事の誘いでも断られました?
「………そんなところよ。明星ヒマリ──貴女もご存知の通り、ヴェリタスの団長よ。彼女にも協力を呼びかけたのだけれど、彼女には断られてしまったわ」
ヒマリ様なら、断るでしょうね。しかし、本当なのですか?アリスさんが「世界を終焉に導く者」であるというのは。
私、アリスさんの友人としてそんな事信じたくは無いのですが。
「嘘が上手いのね。流石はトリニティ全ての闇…と言ったところね。貴女、知っているのでしょう?天童アリスは『名もなき神々の王女』であるという事を」
ええ。とある方────漆黒の君からの情報ですわね。
アトラ・ハシースの箱舟が、まさかアリスさんだとは。無論、トリニティの預言者様からの情報も当てにはしましたわ。
「そして貴女は来たる破滅を止める為、私に協力を打診して来た。そうよね?」
その認識に間違いはありませんわ。
ですから、アビ・エシュフの兵装の一部に聖剣のエッセンスを提供しましたでしょう?
「ええ。そういえば、貴女のAVALON…私が改良を加えておいたわ。名を『GUGALANNA』。決戦兵器たるAVALONをより汎用化して、ローコスト化を実現したわ」
あら、それは本当に感謝しますわね。
AVALONは基本的に空戦用で、陸戦機が欲しかったんですのよ。
GUGALANNA、良い名前ですわね。アバンギャルド君よりかはマシですわ。あれは流石に…どうかと思いますもの。
「アバンギャルド君は関係ないわ。それより、天童アリス……いえ、AL-1Sの様子はどうかしら?スパイとして潜り込めているみたいだけれど」
そうですわね。特に異常はなさそうですわ。
ですが、何が起こるかわからない状況で油断は出来ませんわね。
一度トリニティに戻り、セイア様に確認してみますわ。
まぁ、セイア様は未来予知能力を失ってしまったのですが。
ですが、記憶は定かですので情報の正誤くらいは出来ますわ。
「理解したわ。では、ここに来た時と同じように帰ることね。私と貴女の関係は決してバレてはいけないもの………くれぐれも、私を裏切らないでね」
勿論ですわ。私の使命は、来たる破滅に備えるための情報収集ですもの。
その為なら、どんな手段をも使いますわ。
もし私が怪しいと思われる行動をしていても、くれぐれも勘違い召されぬよう……。
──────────◆─────────
要塞都市エリドゥ───堅固な防御と、何重もの電子ガード、そして全戦力を投入された決戦兵器アビ・エシュフとそれに追従する無人戦闘機となったAVALON。
明星ヒマリは、そこに閉じ込められていた。
(清楚系天才美少女であるこの私が───しくじりました。それに、滅多に姿を見せないフィクサー…「MORGANA」がリオに協力しているとは)
ヒマリがリオの提案を蹴った際、リオは残念そうにしながら「ならMORGANAと協力する事にするわ」と呟いたのを、ヒマリは聞き逃していなかった。
(MORGANA……あのトリニティの政治家である鴉魔キリアのスポンサーにして、出所不明の潤沢な資金と秘密軍事基地を保有している謎の存在…)
ヒマリがかつて、特異現象捜査部の調査の一環として調べていくうちに発見した軍事基地。
そこでエイミが発見した「N-クリア」と書かれた設計図の欠片。
そしてそこに示されていたMORGANAの名。
ヒマリにとって、MORGANAは明らかな危険人物であることに他ならなかった。そしてそれは突然、リオにも伝わっていた。
しかしリオはMORGANAが危険人物であると知りながら手を組んでいた。
そこから割り出される答えをヒマリが導き出しそうになった時──────ヒマリの耳に、わざとらしい足音が聞こえた。
「あなたは……鴉魔、キリア?トリニティの政治家が、どうしてここに…」
その質問に疑問を覚えたのか、鴉魔キリアは少し首を傾げた後、ニコリと笑った。
何が面白いのかさっぱり分からなかったヒマリはただ困惑を重ねるだけだった。
「明星ヒマリさん、ですわね?私、ここで迷ってしまいまして……私のスポンサー様からお呼ばれしたのですが…道を知りませんか?」
「………!(そういう事ですか。もはやMORGANAはトリニティの政治家である鴉魔キリアを切り、ここで抹殺するつもりなんですね…そうはさせません!)行ってはいけません。すぐに帰るべきです」
「…………?そ、それはどういう事ですの…?」
本気で分からなそうな顔をしているキリアを見て、ヒマリはキリアがMORGANAの傀儡であった事を確信する。
それと同時に、こんな小さく未熟な生徒を操り人形にして、あまつさえ消そうとしたMORGANAにヒマリは怒りを覚えた。
「貴女のスポンサー…MORGANAは貴女を消すつもりです。今すぐ私をこの牢から出してください。物理的なロックは天才病弱清楚系美少女の私には解除できないので」
「は、はい!分かりましたわ!少し離れていて下さいまし。えいやっ!これで良いんですの?」
軽く鉄格子を引きちぎったキリアに僅かにドン引きしつつ、ヒマリはキリアを先導してエリドゥを脱出する。
しかし、その様子は当然のようにリオに見られていた。
「鴉魔キリア………流石は、蠱毒の主ね。どこまでが本当で、どこからが嘘か分からない。だけど私は貴女の政治力を信じるわ。どちらが多くの者を救えるのか──────」
「貴女なら判るわよね。『政治家』さん」
一方、エリドゥから抜け出したヒマリとキリアはAVALONに乗り道なき道を走っていた。
理由は、キリアの所有するミレニアムのセーフハウスに逃げ込む為である。ヒマリが「すぐに皆に伝えるのはまずい」と判断したからである。
「あ、あの…ヒマリ様。私達、これからどうしましょう…」
セーフハウスに着いたは良いものの、不安そうにしているキリアに対し、ヒマリは「シャーレに逃げ込みましょう」と言った。
次の日、二人はシャーレに向かうため出発した…その時だった。
ドォオオオオオオン!!!!
「なっ…せ、セーフハウスが!」
「リオ……!本気なのですね……」
セーフハウスは爆破され、二人は命からがら逃げ出すことに成功した。
ヒマリは危うく自身だけでなくキリアまで怪我をする危険があった事で、完全にキリアを守るべき後輩として認識した。
そんな中、運転しているキリアは誰にも聞こえないように呟く。
「──────計画通り」
そう呟いたキリアの顔は、
──────────◆──────────
計画通り………ですわ!
これでヒマリ様は私のことを完全に信頼しましたわね。
私の立場は「テイよく利用されてトカゲの尻尾切りに遭った哀れな被害者」になりましたわ。
後ろ暗いこと用の社会的な顔を作っておいて正解でしたわね。完璧に騙せていますわ。
トリニティの裏事情などを知らない方々から見れば、私は急に現れて頭角を現した新進気鋭の政治家に過ぎませんもの。
しかし、ヒマリ様が情に厚くて助かりましたわ。
ヒマリ様ほどの智恵の持ち主ならば、少しでもボロを見せればすぐにバレてしまいますもの。
まさかこれ程の手札を切らされるとは思いませんでしたわ。
「キリアさん。安心してください、きっと私が守ってみせます」
ミレニアムへの布石は何年も前から敷いていましたから、これが実って本当に良かったですわ。
セーフハウスを爆破したのも、MORGANAという手札を切ったのも、全てはミカ様の役に立つ為ですわ。
ミカ様は入院中の私に、
「キリアちゃん、せっかく掴んだ私たちの平和を壊す敵について探して。その為なら、危ないこと以外どんな事でもして良いから」
と仰いました。ですから、こうしてミレニアムに潜入し、スパイ活動に勤しんでいるわけですわね。
「キリアさん、シャーレに着きました!先生のいるシャーレなら、MORGANAと言えどきっと私たちを攻撃出来ません」
一理ありますわね。そうしましょう、ヒマリ様。
……まあ、攻撃を指示するのは私なので先生がいなければ威嚇程度はしても良いのですが、シャーレが安全であると認識させれば良いですので、敢えて攻撃はしないでおきましょう。
「ひとまず、暫くはここで待機しましょう…決して、外に出ないように。良いですか?清楚系天才幸薄美少女とのお約束ですよ」
はい!分かりましたわ!
……さて。これからどう調理しましょうね?
『GUGALANNA』
調月リオがAVALONを基に製作した汎用兵器。最大搭載者1名。
AVALONの機動力をそのままに、地上での高速機動を可能にしている。エリドゥのバックアップを受けたアビ・エシュフには遠く及ばないが、高度な演算能力と弾道予測能力を持ち、非常に難関な操作が必要になるが弾丸を回避することが出来る。
また、非常に堅固な装甲を持ち、8.8cm弾を1マガジン分受けても問題なく稼働できる。