一般トリニティ生の流儀 作:セイアマン
数日ほどシャーレでヒマリ様と過ごしましたが…
暇ですわね!ええ。勿論、策謀はいつも巡らせてはいるのですが、それでもする事が無いんですのよ。
「"ヒマリにキリア……?珍しい組み合わせだね"」
「あら、先生はこの超絶怒涛の美少女である私とキリアさんの交流に何か疑問でも?」
「"疑問はないけど……ただ珍しいなって"」
私の唯一誤算は、ヒマリ様が想定よりも過保護であったという事ですわ。
私が何か発言しようとする素振りを見せると、ヒマリ様は決まって割り込み、会話の主導権を握って来ますわ。
恐らく、私の思考能力が低いと考えられているのでしょうが……少しバカの演技が過ぎたのでしょうか?
「シャーレに滞在させて貰っている身で申し訳ないのですが、あまり踏み込むのは良くないですよ、先生」
「"ごめんごめん。でも何か本当に困ったことがあったら相談してほしい。責任は、私が取るからね"」
でしたら!先生、私も先生とご一緒したいですわ!私、暇で暇で困っておりましたの!
責任、取ってくださるのですわよね?
「"うん、行こっか。丁度ミレニアムに行くところだったんだ。ヒマリもどう?"」
「……………先生がいるならば、私はシャーレに残るとしましょう。先生、くれぐれもキリアさんを頼みましたよ」
ヒマリ様からの監禁状態から脱し、ミレニアムへ向かうと、先生はヴェリタスの部室へ向かいましたわ。
私と先生が歩いていると、部室の前でたむろするゲーム開発部の皆様と合流しましたわ。
「あれ?先生……それにキリアさんも。どうしたんですか?」
「"やほ、ヴェリタスに呼ばれてね。キリアは私の付き添い。ゲーム開発部のみんなも?"」
「うん!マキが面白いもの見つけたんだって!なんかの参考になるかもしれないから見に来ようと思って!」
では入りますわよ。ごめんくださいな、ゲーム開発部並びにシャーレ、ティーパーティーの行政官もいますわよ!
「はいはーい!入って入って!」
小塗マキさんが部室の扉を開けてくださいます。
中に入ると、白い出来損ないのタコのような機械が安置されていましたわ。
一見すると意味不明なデザインとシステムですが、よく見るとAVALONに酷似した部分がありますわね。
ハレさん、分析データを幾つか頂けますか?
私、これに類似する機構を知っているかもしれません。
「ああ、それならコレ読んで。私もAVALONに似てるなって思ってたんだ。ハードの方はエンジニア部に見せないとだけど」
ハードなら大方分かりますわ。
私が謎のロボットの分析データを読んでいると、目の端で捉えていたアリスさんがフラフラとロボットに近づきましたわ。
一体何をするつもりなのでしょう…?万が一の事があれば、この場で戦闘行為も已むなしですわね。
「………AL-1S。行動を開始します。プロトコル『ATRAHASIS』を実行します」
「あ、アリスちゃん…?」
明らかにアリスさんの様子が変わりましたわね。
これはもう動いて良いと判断しますわ。AVALONを
多少ヴェリタスの部室の扉が損壊しましたが、必要経費として割り切って貰いましょう。
「"キリア!?"」
総員退避ですわ!
「───高エネルギー反応確認。全体検索……エラー。推定、E-S0D。対処を開始します」
そういうと、AL-1Sは背に抱えていたレールガンを持ち、一番近くにいたモモイさんを撃ちましたわ。
しかし、亜音速で移動する私ならばギリギリ庇う事ぐらいは出来ましたわ。
先生、何を呆けているんですの!私は退避と言ったんですのよ!
今すぐに逃げてくださいな!
「チャージ1000%、射出します」
こ、この波動……見覚えがありますわ!
あの時はよくも撃墜してくれましたわね!
今度は負けませんわよ!聖剣抜刀、シールドフォーム!ムセルターボ!
AL-1Sの砲と私の聖剣で構成された盾が激突し、拮抗しますわ。
くっ、エネルギーの余波が周りに弾けて周りに散らばってしまってますわね……。
互いに譲り合わず、時間にして約10秒の永い時間が経った時、突然AL-1Sが小さい影によって大きく吹き飛びましたわ。
気がつけば、私の上にも何人か乗ってますわね……私を踏み台にしたぁ!?
「チッ、判断速度は悪くねェがやり過ぎなんだよテメェは。つーかどうなってる!部室がめちゃくちゃじゃねぇか!」
「ねぇねぇ!これどうなってるの!?亜音速で動く乗り物なんて初めて!」
「少しだけ大人しくしていてくれ。状況把握を済ませたい」
「協力をお願いしますね」
C&Cのエージェント……ホいつの間に。
アリスさんは鎮圧出来ましたの?それなら私も戦う理由はありませんわ。
今少し面倒な状況でして、アリスさんが急に暴走を始めたんですわよ。
「あァ……?暴走、暴走ねぇ。おいコウモリ、詳しく説明しろ」
コッ……!?み、美甘ネル様。私がコウモリとはどういう事でしょうか?
私、貴女とは初めてお会いする筈なのですが……。
「初めて、だぁ?お前忘れたのか、お前が中2だかそこらの時にミレニアムに裏社会の────」
ちょーっとお待ちになられて!?ネル様、いえネル先輩!少しこっちでお話ししません事?
ええそうですわ!新しい茶葉が入っていますの!よ、良ければ皆様もいかが…………?
「ハァ……だりぃ。別に隠す事でもねェだろ?お前がミレニアムに潜伏してたマフィアを口先だけで潰したってだけじゃねぇか。アタシらの仕事を奪ったのはアレだが、良い事なんだから良いじゃねぇか!」
あ、あれはただ……目障りだったんですのよ!
それよりも、怪我人は居ませんの?あれほど激しく戦闘……私は回避してばかりでしたが。戦っていた以上負傷者が出ていても……
「先生……!お姉ちゃんが、お姉ちゃんが!」
─────────◆──────────
モモイが倒れてから、三日が経った。
アリスの砲撃に巻き込まれて崩れた瓦礫がモモイの頭を強打し、モモイはそれきりずっと寝たままだ。
キリアは私を含め、皆に深く謝罪して、責任を取ると言ってずっとモモイの看病をしながら落ち込んだ顔をしている。
今もシャーレの医務室でモモイは寝ている。
「キリアさん……モモイ……」
ヒマリはどうする事も出来ない自分に憤ってか、自分の爪を噛んでいる。
私に、何かできることはないかな。キリアはまだ医務室にいるだろうから、話をしてみよう。
「"キリア、少し良い……?"」
医務室をノックしても返事はない。何度呼びかけても反応はなく、ノックの後には静寂が木霊するだけだった。
「"開けるよ……?あぁ、寝ちゃってたのか"」
キリアはモモイの眠るベッドの側で椅子に座りながら眠っていた。
普段はどこか大人びていて隙が無さそうなキリアも、こうして寝ていると年相応に子供らしい。
「んぅ………」
「"これは……メモ?何が書いてあるんだろう。"」
寝ているキリアの手から一枚のメモが溢れる。
キリアに内心でごめんと謝りつつ、中身を見ると、そのメモには、たった一言だけ書かれていた。
「"ま、お、う、は、だ、れ……魔王は誰?これは一体……"」
魔王とは一体何のことなのだろう。それに何を思ってキリアはこんなメモを───?そんな事を考えていると、ミドリのモモトークから着信が来た。
「先生……アリスちゃんが、アリスちゃんが………!」
その連絡を受けて、急ぎでミレニアムに向かうなりミドリが不安そうな顔で抱きついてきた。
話を聞けば、アリスが部室に篭って出てこないのだという。
「"アリス、入るよ。"」
部屋に入ると、アリスは部室の隅でうずくまって泣いていた。その姿はいつもよりも小さく、怖がっているようにも、怯えているようにも見えた。
「"アリス。大丈夫?ご飯も食べないでずっと篭ってるって聞いたよ。ほら、一緒にモモイのお見舞いに行こう?"」
「………アリスには、出来ません」
「"………どうして?"」
「アリスの、せいで……モモイが、怪我をしました……。全部、アリスのせいです」
「"アリス……………。"」
「どうしてこうなったのか、アリスにも分かりません……あの時、何かが…アリスの知らない『セーブデータ』があるように感じて……」
「それでも確かなのは……アリスが、モモイを───!」
その時だった。ゲーム開発部の部室のドアから、冷たい声が聞こえてきたのは。
振り向くと、書類でしか見た事のないミレニアム生徒会長の調月リオがそこにいた。
「やはり、こうなってしまったのね。危惧していた通りになってしまったわ。あの子のお陰で少しは被害者を減らせたようだけれど」
「"会長────?"」
「ああ、貴方がシャーレの先生ね。先生との記録的な出会いがこうなってしまったのは、非常に残念ね」
「"何をしにきたの?"」
「ええそうね、本題に移るわ。私は貴方たちに『真実』を教えにきたの」
そういうリオの顔は、どこか確信に近いものがあった。
──────────◆──────────
先生への工作も完了ですわね。
私がここ三日間でセイア様やハナコさんを交えた3人で考察したアリスさんの正体に踏まえて、ウイさんから引き出した情報も合わせて考えた結果──────
アリスさんは、兵器に過ぎないという事が分かりましたわ。
勿論、アリスさんにはアリスさんの人格がありますわ。しかし、その純真無垢なアリスさんを利用し、世界を滅ぼそうとしている者がいますわ。
それこそ、漆黒の君やリオ様の言っていた「無名の司祭」ですわね。
その存在を伝えるため、監視されている可能性も考慮して「魔王」…いわゆる真の黒幕の存在を先生に伝える必要性がありましたわ。
結論として、アリスさんを破壊したとしてもまた別のアリスさんが生み出される事は想像がつきますわ。
であれば。言い方は最悪ですが、アリスさんを完全にこちらの手駒にしてしまえば良いのです。
数年前に開発された精神ダイブ装置や、電子ダイブ装置などもありますもの。
洗脳など幾らでも出来ますわ。それに機械に頼らずとも……その手のことは飽きるほどやってきましたもの。
「キリアさん、起きていますか…?」
むにゃむにゃ。はっ!今起きましたわ!
おはようございますわ、ヒマリ様。ご機嫌麗しゅう。
「インスタントですが食事を用意しました。下で待っていますね」
分かりましたわ!…………ふぅ。何とか悪だくみがバレなくてすみましたわ。
悪い顔をしているのがヒマリ様にバレたら疑われてしまいますものね。
「ねぇ、三日前からなんで悪い顔してたの?」
ええ、それは勿論世界の安寧のため…アリスさんを消すことで世界が平和になるのなら、私は心を捨てますわ。
いえ、とうに失っていましたわね……ですが、やらねばならない事なのです。
「じゃあ何で最初からアリスと敵対しなかったの?」
私とて、人殺しにはなりたくありませんもの。
それに……あの子は私には眩しすぎます。少しでも、あの子の側で何かを見つけたかったのでしょうね。
「ふーん。因みにさ、それ私に言って良かったの?」
えぇ………え?あれ、モモイさん…?
お目覚め、でしたの………?
そそ、それは良かったですわ!早速皆様にご報告をしませんと!
「ふっふっふ、実は三日前から動けはしなかったけど起きてはいたのだ!それで、詳しく聞かせてよ」
モ、モモイさん……いえ、モモイ様……お手柔らかに……
モモイ「間抜けは見つかったようだな」