一般トリニティ生の流儀   作:セイアマン

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アンチ・ヘイト要素が強いです。


決着

 

「オイ……!なんだよ、この数は!」

 

要塞都市エリドゥ外縁部。貨物列車に乗ってエリドゥまで到達したC&Cとゲーム開発部を出迎えたのは、目測で数えきれないほどのGUGALANNAだった。

それら全てはカメラアイを光らせ、侵入者を討ち滅ぼさんとしている。

 

「数が多い……アカネ、やれるか?」

 

「ここにいる全員で、一人10体以上やれればいけますね」

 

「どーしよー先生!?すごい強そうだよ!?」

 

「"アリスを救うために、やるしかない!みんな、行くよ!"」

 

先生がシッテムの箱を取り出し、C&Cを先頭に、ゲーム開発部が後衛に回り敵陣へ向かって突貫して行く。

 

「オラオラオラオラァ!はッ、テメェとアタシじゃ動きがダンチなんだよ!」

 

「あはははっ!そんなんじゃ当たらないよ〜!」

 

「あなた達のせいだよー!」

 

「ドットを打つように緻密に────!」

 

GUGALANNAを難なく倒すネルを筆頭に、他のC&Cメンバー達も協力して動力部分を破壊していく。

しかし、数とは力である。どこまで行っても終わりの見えない戦闘が全員の体力をじわじわと蝕み、ユズを始めとする戦闘に慣れていない生徒からどんどんリタイアしていく。

 

「チッ、数が多すぎる!オイ、アカネ。起爆準備は!?」

 

「もうしてます!」

 

戦場の合間を縫って敷かれた爆薬が起爆し、GUGALANNAは土台から破壊され地面に沈んでいく。それを見て思わずモモイはガッツポーズをしてしまう。

当然、その隙を逃すようなAIはGUGALANNAに積まれてはいなかった。

 

「あわわっ!───あれ?」

 

「テメェふざけてんのか!アタシのダチに手ェ出してんじゃねェぞ!」

 

マガジン一弾倉分の弾丸を食らったGUGALANNAは即大破。後には残骸と怒り狂ったネルのみがいるだけだった。

しかし、相当無理をしたのかネルは僅かに息をついてモモイに「油断すんなよ」とだけ伝え再び飛び出していった。

 

「くっそ、マジで数が多いんだよ!良い加減にしやがれ!」

 

「リーダー!ちょっと弾切れかも!」

 

「こっちも爆薬がもう……」

 

「狙撃が追いつかない、支援が欲しいところだが…」

 

「このままじゃジリ貧だ!弾数を抑えろ、白兵戦だ!」

 

「りょーかいっ!」

 

「待てリーダー、この反応は────」

 

カリンの視線の先には、多数の戦闘ヘリが列を成してエリドゥへ向かっているという、普通なら絶望してもおかしくはない光景が広がっていた。

しかし、戦闘ヘリに装着されたエンジニア部の垂れ幕がそれを希望に変えていた。

 

『支援射撃、開始!』

 

無数のミサイルや機銃がGUGALANNAを襲う。負けじと応戦するGUGALANNAだったが、自分たちよりも多い戦闘ヘリを前に一体、また一体と破壊されていく。

 

「よし!総員、突破すんぞ!………がはっ!?て、テメェは……!」

 

ネルが頭一つ抜けて飛び出す。しかし、その先には金髪の刺客───飛鳥馬トキが完全武装で待ち構えていた。

戦術兵器『アビ・エシュフ』。その猛威がネルを打ち据える。

 

「……ネル先輩。あなたの動きは読めていました。直情型で、真っ直ぐなあなたなら、私のところへ来るだろう事も」

 

「舐めた事言うじゃねェか、後輩!アタシの行動が読めただぁ?そのセリフは、アタシに勝ってから言うんだな!」

 

「もう一度、地面とキスさせてあげましょう!」

 

エリドゥのシステムを用いたアビ・エシュフにはキヴォトスで最も高性能な未来予測演算装置が搭載されている。

文字通り、次にネルが何をするかが手に取るようにトキにはわかるのだ。

無論、ネルも歴戦の猛者である。僅かな一挙手一投足から攻撃に派生できるネルの動きを読むのは至難の業だが、トキの高い戦闘センスがそれを可能にしていた。

 

「降伏してください。ネル先輩では私に勝てませ……ッ!?狙撃ですか……厄介ですね」

 

「そういうこった。いくら未来が見えても、全方位からなら避けらんねぇよな?……ったく、先生も性格悪ぃ作戦思いつくぜ」

 

「その程度で、私に勝ったなどと思わない事です」

 

トキがアビ・エシュフを回転させながら正確にゲーム開発部やC&Cに弾丸を当てる。周りが全員倒されても尚立っていたネルはトキのマシンガン掃射によって重大なダメージを負った。

 

(クソ……血が止まんねえ。骨も何本か逝ってンなこりゃ……腱も切れてやがる。はっ、ブザマだな)

 

「ゲームセットです、ネル先輩。あなたは負けたんです。もう、立ち上がらないでください」

 

「もう、勝った気でいやがるのか?まだ骨が何本か折れただけじゃねえか!さぁ……来いよ!早く!早く!早く!」

 

「……!死んで後悔しても遅いですよ」

 

「しゃらくせぇ!アタシは勝つんだよ!可能性がある限りな!」

 

「………ネル先輩の勝率は、10000分の1にも満ちません。データからもそう出ています」

 

「………例え那由多の彼方でも。アタシには充分すぎるな!行くぞオラァ!」

 

音をも超えるスピードで吶喊し、ネルはトキをリオの待つスカイタワーのエレベーターまで押し込む。

見るからに傷だらけで、もう少しでも触れば崩れ落ちてしまいそうな身体を奮い立たせながらネルは闘志を燃やす。

 

「───戦う相手を間違えたな、後輩!」

 

「アビ・エシュフ……殲滅モード!」

 

 

 ─────────◆─────────

 

 

「………トキがやられたわ。」

 

そう、ですのね。アビ・エシュフやGUGALANNAを以てしても勝てないとは。であれば、仕方ありませんわね。

プランBで決定しますわよ。

 

「そうね。じゃあ、キリア───私を撃って頂戴」

 

ええ。計画の為ですもの。じき、彼女たちは来ますわ。リオ、貴女は良き先輩として生きると良いですわ。

全ての泥は……ミレニアムの外の人間である、私が背負いますわ。

 

「───例えこの件が終わったしても。私は貴女を変わらない友人だと考えるわ。また、一緒にチェスを指しましょう」

 

ふふ、貴女には一勝だけ勝ち越していますから。いつか、必ずリベンジしに来てくださいませ。それでは、少し痛みますわよ。

ああそれと────アリスさんが起きたら伝えてくださいな。私がもうアリスさんと遊ぶ事は出来ないと。

 

「必ず、伝えるわ」

 

ありがとうございます。では、さようなら。調月リオ。貴女と過ごした時間は長くは無かったですが、とても楽しかったですわ。

 

最低出力の聖剣でリオを攻撃し、気絶させますわ。これで───この場に意識のある人間は私だけ。

どう考えても、私が一番の悪人ですわね。

これから私は全ての泥を被り、世界を救うのですわ。ですがその前に……心残りがありますわね。

 

『もしもし、キリア?どうしたの』

 

ヒナさん、お元気ですか?私は、元気ですわ。

どうです?あれからお変わりありませんか?

 

『キリア、何か辛いことでもあった?』

 

どう、して。そう思うんですの?

 

『友達だから。それに、声だけでも辛そうなのが分かる。今にも泣きそうで、何かを否定したいと思ってる。そんな声だよ』

 

ヒナさんには……何もかもお見通しですわね。

そう、私はこれから、責任を遂行しなければなりませんの。同じ志を持った友人を撃ち、仲の良かった人達から誤解されて、ありもしない罪の罰を受けることになりますの。

そうなれば、ヒナさんとも会えませんし、先生や、ミカ様にも……

 

『待ってて。どこにいるかわからないけど、必ずあなたを見つけて迎えに行くから。私たちは友達でしょう?』

 

ヒナさん。今まで、ありがとうございました。

ヒナさんの言葉で、私……決心がつきましたわ。全てに決着がついたその時───また、お出かけしましょうね。

 

『待っ────』

 

さて。そろそろ来ますわね、勇者を救う仲間たちが。

ここ一番ですわよ、鴉魔キリア。あなたの頑張りで、世界を救うのでしょう。ミカ様が笑って過ごせる世界を作るのでしょう。

 

「"アリス!"」

 

さぁ、始めましょうか。救世の始まりを。

 

 

 ──────────◆────────

 

 

私たちがネルのお陰で開いた道を通り、リオの待つはずの部屋へ向かうと、扉の前にはリオが血を流してぐったりしていた。

 

「"リオ!?どうして……アリスはどこ!?"」

 

「お、ねがい………どうか、あの子を───助けて、あげて………」

 

そういうと、リオは気を失ってしまった。

あの子……つまり、アリスの事だろう。リオが拐ったはずなのに、助けようとする……ここから編み出せる答え。

それは──────真の黒幕の存在。

 

「ご主人様、本当にこの先に行くの?私の直感がビリビリ言ってる。行くのはまずいよ」

 

「"ごめん。アリスを救うために、協力してくれる?"」

 

「もー!しょうがないな、ご主人様は!行こっ、何かあっても、私が守ってあげるから!」

 

アスナの頼もしい言葉を信じ、みんなと部屋の中に入る。

部屋の中には、たくさんの計器があり、椅子に座らされたアリスは様々な種類のプラグを繋がれていた。

 

「ようやく来たんですのね、先生」

 

声に反応してその方向を向くと、そこにはどこまでも冷たく、残酷な目をしたキリアがボタンを持って立っていた。

そのボタンには「破壊実行」と書かれており、そこからアリスの頭にコードが繋がっていた。

 

「"キリア、こんなところで何をしてるの?"」

 

「あら、おバカな先生には分かりませんのね。良いでしょう、説明してあげますわ」

 

普段の明るくて人懐っこい声色は鳴りを潜めて、ただただ底冷えしたような声が響く。

そして心底見下したような表情で、アリスにハンドガンで二、三発撃ち込み話し始める。

 

「リオ様……いえ、調月リオは最初から私の傀儡。先生も、全知たる明星ヒマリも。ゲーム開発部の馬鹿どもも、みーんな私の掌の上で踊っていましたのよ?」

 

「───嘘、だったんですか」

 

ユズが俯きながら問う。その手は震えながらも、拳はしっかりと握られていた。

 

「私の作ったゲームを、面白いって言ってくれたのも!全部、嘘だったんですか!?」

 

キリアは少し黙った後、銃弾と共に言葉を返した。

 

「ええ。勿論……あんなクソゲー、やったのが間違いでしたわ。私の時間を割くに値しませんわね」

 

「っ、嘘つき……!嘘つき!」

 

キリアは泣き崩れるユズを見て目を細め、今にも崩れそうな笑みを浮かべる。

モモイやミドリはユズを慰めながらキリアを睨みつけている。

 

「ああ───それと、才羽姉妹。あなた方はよくも私の計画を邪魔してくださいましたね。全く……こんな魔王に近づくから馬鹿を見るんですわよ?」

 

「………お姉ちゃんが、怪我したのも……キリアさんのせいなの?」

 

「そんな……お姉ちゃんは、一体何のために!」

 

「そうでした。私の本当の計画を伝えていませんでしたわね。私の計画────それは、魔王アリスによる世界滅亡ですわ!ミドリさん、機会をあげましょう」

 

「機会……?」

 

「ええ、そうですわ。貴女が周りの人達を今この場で殺しなさい。武器はこれを使いなさいな」

 

そう言って、キリアはミドリにボウガンを投げ渡した。ボウガンには「聖剣」とラベルが貼ってあった。

 

「さぁ……撃ちなさい、ミドリ。貴女の手で、世界を終わらせるのです」

 

「───終わるのは、あなたの方だよ!」

 

ミドリがボウガンをキリアに向け、破壊実行ボタンを撃ち抜く。撃った際に手に当たったのか、キリアの手からは鮮血が流れ出ている。

キリアの顔を見ると、怒ったような顔をしていて、ミドリを睨みつけている。

 

「バカヤローッ!ミドリ!誰を撃っている……!ふざけるなァーーッ!」

 

「……本性を、表したね。あなたはずっと、淑女のフリをしてみんなを騙していたんだ!」

 

「……ぐ、ぅ…!良いかミドリ、よく聞け……!この世界はな、詰んでいるんだよ!どうせ終わるなら、私の手で終わったとしても何も変わりはないだろう!良いから殺せ、そいつらを撃てぇーーっ!」

 

「鴉魔キリア……あなたは、生きていてはいけない生き物だ!あなたはここで、その野望と一緒に消えなくてはダメなん───先生!?」

 

流石にこれ以上は、見過ごせない。

ミドリに人殺しになってほしくないし、これ以上ミドリがストレスを感じる事も無い。

それに………これ以上、キリアが心の奥底で泣く必要もない。

 

「"キリア。私はキリアと遊びたいよ"」

 

「………それが、どうした!」

 

「"今まで辛かったよね。一人でこんな重い責任を抱えてさ"」

 

「………………。」

 

「"キリアが責任を負う必要はないんだ。セイアは言ってたね。『奇跡でも起きなければ世界は救えない』ってさ"」

 

「………………………。」

 

「"だから、起こそうよ。奇跡を、私と、キリアで"」

 

キリアはどこか救われたような顔を、私だけに見せてから、自分の袖から一つのボタンを出し────撃たれた。

鮮血が散り、キリアの美しい髪が月明かりの下に晒される。

 

「………これで、良かったのね…」

 

「"リオ!?"」

 

慌ててキリアの方を見ると、何発も撃たれているのか、血がドクドクと流れ、止まることを知らないかのように血を流していく。

 

「"キリア!キリア、しっかりして!死んじゃダメだ、誰か、病院を────!"」

 

しかし、私の袖をキリアがクイと引き、私がキリアを押し倒した形になる。

キリアは私の頬に触れ、囁く。

 

「先生……後の、世界を……頼みましたわ…」

 

「"キリア……なっ、どこへ!"」

 

キリアが無理やり立ち上がり、フラフラの状態で窓ガラスへ向かう。しかしそこは、銃弾によって割れており────

 

「"キリアっ!"」

 

キリアはそのまま、スカイタワーの上空から落ちていった。慌てて手を伸ばしても、みんなに止められる。

リオだけは、どこかやり切ったような、申し訳ないような顔をしていた。

 

その後、アリスを無事に救った私たちはヒマリによってキリアのプランを知った。

キリアの本当の目標。それは「私にアリスを救わせる」ことだった。

あれから依然として、キリアは行方不明だ。トリニティはこの事実を静観。訊ねても、キリアの存在など初めから無かったかのようにしか答えは返ってこなかった。

 

ある日、トリニティの古書館に行くと、ウイが私に喋りかけてきた。

 

「先生。どうか落ち込まないでください」

 

「"ウイ……私がそんなに、落ち込んでいるように見えた?"」

 

「はい。顔色が随分と悪いみたいですし、頬もこけてます。何も食べていないんでしょう?」

 

「"食事が喉を通らなくてね。私は、救えたんじゃないのか、私が、何かしてあげられた事は無かったのか。私は───生徒一人も、救えない……!"」

 

優しく話しかけてくれるウイに、思わず打ち解けてしまう。しかし、ウイはどこか遠い目をしながらサンクトゥムタワーを見る。

 

「きっと、その生徒さんは救われていますよ。一度救われた人は、その足で、自分の人生を歩んでいくしかないんです。ですからきっと、その生徒さんは先生に感謝していますよ」

 

「"そう、なのかな。"」

 

「そうですよ。きっと──────」

 

ウイにつられて空を見上げる。

空は、ただ青く、私たちを見下ろしていた。

 

 

 ──────────◆────────

 

 

青い海!白い砂浜!どこまでも広い空!

やはり夏といえば海水浴ですわね!

 

「キリア、はしゃぎすぎ。調月リオがついて来れてない」

 

「待って頂戴……イカ焼きがあるわ」

 

イカ焼き!聞いたことがありませんわね、食べましょう!

しかし今日は晴れてよかったですわね!

 

「そうね。ちょっと眩しいけど」

 

さぁ、ご飯はそろそろ良いでしょう?

夏を楽しみますわよーっ!




ひとまずミレニアム編は終わりです。
次回からは幕間や番外編を書いた後にあまねく奇跡の始発点編をやる予定です。
よろしくお願いします。
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