一般トリニティ生の流儀   作:セイアマン

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歴史人物と酷似した名前の人が出てきますが、一切の関係はありません。


宣戦布告

 

「"キリアが、生きてる……?"」

 

息を呑む。セイアの言葉一つ一つが私に強くのしかかってくる。

 

「そうとも。先生は不思議に思わなかったのかい?トリニティの暗部、その中枢を握っていた行政官が不在なのに、如何して今も私たちは無事なのだろうね?」

 

ハナコやサクラコから聞いたトリニティの暗部。

ティーパーティー過激派、グノーシス分派、アンリ分派、その他敵対的な分派。

それらは全て、キリアが過去に粛清したという。

 

もし、キリアがいなくなったのなら……その生徒達はきっと黙っているはずがない。

復権を求めて大勢大挙してくるはずだ。

 

「先生、キリアが失踪して以降ミカに会っていないだろう?ミカの立場を知っているかい?」

 

「"元ティーパーティーで、元パテル分派の長じゃないの?"」

 

「残念ながら先生、私は先生の答えに『否』と云わざるを得ないよ。ミカは未だ、ティーパーティーであるしパテル分派の首長だとも」

 

「"な──────!"」

 

なんだって、という言葉を飲み込んだ。

ミカも、ナギサも、ミカがティーパーティーから引きずり下ろされると予想していた。

ミカのやったセイアの殺人未遂は、それほど重い罪のはず。

 

「ミカは被害者になった。その罪の全ては鴉魔キリア、彼女一人がミカを言葉巧みに操っていた……ということにされた。他ならぬ、キリアの手によって」

 

キリアが背負っていたのはリオの罪だけじゃなかった。ミカの罪さえ、あの子は背負おうとした。

子供は責任を負わなくていい。責任を取るのが、大人の責務なのに。

 

「詳しい事は────今からゆっくりと、話していくとしよう」

 

 

 ─────────◆────────

 

 

キリア失踪から一日後。

その日はミカの判決を決める査問会の日だった。

ミカの部屋にやってきたミカに反感を抱く生徒達がいた。その生徒達は口々にキリアが死亡したという事を本人達の心とは裏腹に、さも悲劇かのように語る。

 

「───その末、キリア様は先生に突き落とされ、死んでしまわれたのです!」

「ああ、なんてお可哀想なキリア様!ミカ様、シャーレが憎くありませんか?」

「あの憎き先生めに、復讐を!一心不乱の復讐を!」

 

しかしミカは、興味なさそうにしながら窓の外を見た。

 

「ふーん、じゃあ全部順調なんだね。さっすがキリアちゃん!」

 

「な、何を………?キリア様は先生によって、殺されたも同然なのですよ!」

 

「だから何?えっと、確か──そうそう、キリアちゃんがどうなろうと、私は心底どうでもいいんだよね」

 

「こっ、この外道……!アンタには人の心ってもんが無いのか!?」

 

そう言われたミカは、悪事を企む魔女のような凄惨な笑みを浮かべ、生徒達を睨みつけた。

生徒達はそのあまりの気迫に狼狽える。中にはへたり込んでしまった者もいた。

 

「人の心がどう、とか。嘘を言って私に先生を傷つけさせようとしてるあなた達が言えた事?」

 

「この魔女が!お前は黙ってシャーレを襲撃すればいいんだ!」

 

「あはっ、やる気?言っておくけど、やめておいた方が良いよ。言っておくけど、あなた達じゃ私に触れることも出来ないよ」

 

「貴様ぁ!」

 

「今だよ、()()()()()()

 

生徒達が銃を構えた瞬間、何もなかった空間から腕が伸び、飛びかかった生徒を組み伏せる。次の瞬間には生徒の腕はあり得ない方向に曲がっており、銃を構えた生徒は自身の愛銃が捩じ切られる光景を見た瞬間に気絶した。

 

「くそっ!光学系迷彩だ!この技術、間違いない!カラスマの───がは!……ぁ、ぐ」

 

「分派長!に、逃げぐべっ!?」

 

「嫌っ!こないで!いやぁあああが!!?」

 

10秒後、ミカの自室の床は倒れる生徒で溢れていた。

ミカはその光景を見て満足そうにすると、ハグ待ちの体制をとる。

 

「おかえり、従者」

 

「ただいま、従者。」

 

光学迷彩が解け、その小さなからだがミカの翼に包まれる。従者は銀色の髪を風に任せ、主人に抱擁される。

 

「見てたよ、凄い演技だったね。豆鉄砲であんな迫真の演技、私なら出来ないよ」

 

「お褒めに預かり光栄ですわ。文字通り、オモチャの銃であそこまで対応するのには苦労しましたわよ。気が緩んで笑ってしまいそうで」

 

「いつもの丁寧な口調も崩してね。大変だった?」

 

「ふふ、とあるドラマを参考にしましたもの。ミカ様と一緒に見たあのドラマのラストシーン。あそこですわよ」

 

「あー!あのキヴォトスの外から輸入してきたビデオね。確かに似てたかも」

 

ミカが従者───キリアと談笑していると、小型のドローンが二人の元へやってきて、ホログラムを投影し始めた。

ホログラムに映っていたのは、キリアの協力者である調月リオであった。

 

「あら、お疲れ様ですわ。リオ」

 

「キリア。お疲れ様、それに協力感謝するわ。聖園ミカさん、確かにキリアが言うように綺麗な方ね」

 

「もう!キリアちゃん、布教は程々にね☆」

 

「本題に移っても良いかしら?キリア、例の計画───『オペレーション:シー・サイド』について説明して頂戴」

 

「ええ。私の予定通りならば………」

 

キリアが語った内容はまさに荒唐無稽で、しかし確かにその中には徹底して根回しや策謀が渦巻いているものだった。

内容は単純。先生に迷惑をかけた生徒3人で集まって、秘密の海の家に身を置くというもの。それだけなら可愛げはあった。

 

「当然要塞化は進めますわ!変形合体は外せませんわね!」

 

しかし、話はいつの間にか超変形合体ロボ『海の家』の建造計画へとズレて行っていた。

総デザインはリオが担当し、資金、立案はキリアが、優雅にお茶を飲む役はミカが担当した。

そして計画が最終段階になった時……事件は起きた。

 

「キリア。何これ?」

 

「よくぞ聞いてくださいましたわ!これこそ、究極最強変身合体ロボ、海の家Mk.2ですわ!」

 

ゲストとして呼ばれたヒナは困惑していた。

「海の家に招待しますわ!」とだけ書かれたメールを受け取り、ワクワクしながら馳せ参じたところにコレだ。

ヒナが恐る恐る見上げると、海の家Mk.2と目が合った。

 

「……………(ぐぽーん)」

 

「…………………どうも…?」

 

ヒナと海の家が意思疎通を図っていると、スマホから緊急アラートが流れ始めた。

地震+大津波警報が流れ、ヒナとリオが不安になる中、ミカとキリアは落ち着いていた。そのあまり、紅茶まで拵えてモーニングティーを楽しんでいた。

 

「ミカ様、そろそろ来ますわ」

 

「よ〜っし☆任せてよ。活ァ!」

 

ミカの足が思い切り地面にぶつけられる。しかし地面は割れておらず、静かなままである。

これは、ミカが使った『地震脚』によるものである。

地震脚とは、山海経に於いて4000年の歴史を持つ玄龍門、その初代門主が編み出したとされる48の殺人拳の一つである。

時の連邦生徒会長はこれらの技を危険視し、封印した。それ以来、800年ほど封印は解かれていなかったが、何者かによってその奥義が書かれた書物は盗まれてしまった。

 

民明書房より『キヴォトス武術大全』から引用。

 

「あれ……?揺れが、来ない?」

 

「お〜っほっほっほ!流石はミカ様!片脚で地震を止めてしまわれるとは!私、感服いたしましましたわ!」

 

「うーん、キリアちゃん。褒めくれたとこ悪いんだけど……津波は避けられないみたい」

 

「はへ………?ぬわーっ!」

 

キリアは淑女にあるまじき声を出して驚いた……が、身体は硬直せずに至って冷静に、理性的に己の使命を果たさんと駆け出していた。

 

「わっ、キリアちゃん!?変なとこ触っちゃ……わあーっ!?」

 

キリアはミカを高台まで投げ飛ばし、自身は波の中に呑まれていく。しかしその表情はどこか誇らしげであり、不敵なものだった。

 

「ミカ様ぁー!計画は失敗ですわぁあばばばば」

 

「追いつかれる────!くっ!」

 

「はぁ……AMASに飛行機能を付けておくんだったわ」

 

波に飲まれたキリアとヒナ、そしてリオはそのまま流され───そのまま行方不明になっている、というのがセイアの知る見解である。

 

 ─────────◆─────────

 

 

「以上が、キリアの辿った道だよ」

 

「"良かった……元気そうで"」

 

「おや、先生は心配ではないのかい?キリアは海の藻屑となっているかもしれないのだよ?」

 

「"まさか。キリアならきっと、何ともない顔で帰ってきて申し訳なさそうにするよ"」

 

そうだ。キリアはこれまでも、どんな酷い目に遭ってもそれ以上の手柄を持ってバツの悪そうな顔で帰ってきたじゃないか。

連邦生徒会に呼び出された時も、防衛室?の偉い人と何か話してきたと言っていたし、とにかく転んでもただでは起きないんだ。

 

「"それで、怪盗騒ぎとキリアに何の関わりがあるの?"」

 

「ここから先は、私ではなく名探偵とやらに任せるとしようか。なに、適材適所というやつだよ。私は確かに真相を解明するのに長けているが、推理は不得手だからね」

 

セイアがそういうと、扉が開いて、痩せぎすの少女───アキが入ってきた。

アキはノソノソと歩いてきて椅子に座ると、注いである紅茶にこれでもかと言うほど砂糖をいれる。

 

「"アキ、キリアと怪盗の関係は?"」

 

「んく……んく………ぷは。私は、鴉魔キリアさんが件の怪盗ではないかと疑っています」

 

「"それは、どうして?確かに、怪盗の髪色と背格好は似てたし、海で行方不明なのも疑う要素としてはあると思うけど"」

 

「正直、キリアさんが怪盗である確率は3%……もっと低いですね。何故なら、動機が不明だからです」

 

「"動機?"」

 

「はい。普通に考えて、公的に死亡扱いの生徒がワザワザこうして目立つ真似をする必要はありませんからね」

 

「私からも補足説明しよう。現在、トリニティではミカの命令によってキリアは死亡扱いの失踪となっている。だれもキリアの話をしないのはそのせいだね」

 

「それに、クロノスの報道を利用して大胆に犯罪予告をしてみせたあの手際───普通の行政官には無理な芸当でしょう」

 

「"そうかな………?"」

 

キリアの身体能力の高さは、ミカやネル、ツルギほどでは無いけど高い。

トランプカードくらいの大きさと軽さの物なら、軽く300メートルは飛ばしそうなものだけど。

 

「何より、一番疑う要素を減らしているのは鴉魔キリアさんの部下です。彼女達は今、鴉魔キリアさんの命令で怪盗団について調べるために一時的に私についています。私が犯人なら、そんな事は絶対しませんね」

 

本当にそうだろうか。キリアの人柄とやり口をよく知っている私からすれば、アリバイ工作のための布石に思える。

何度もキリアの裏工作を見てきた。だからこそ、この違和感に気づけた。

 

「"その部下の子達から詳しく情報を聞いてみよう。きっと絶対、真相への鍵を握っているはずだよ"」

 

「ええ、私もそうしようと思っていました。鴉魔キリアさん……あなたは『白すぎる』んですよ」

 

アキと一緒に調査拠点に行くと、何人か顔見知りのキリアの部下達が出迎えてくれる。

その瞳は純粋で、私たちを騙していると言った雰囲気はまるで無かった。

 

「こんにちは先生、明智先生もおかえりなさい」

 

「混乱するので私のことは明智と。先生、どうですか」

 

「"どうって言われてもな……"」

 

正直、キリアの部下の子達はただ利用されているだけにしか見えない。何も知らないし、知ろうともしてない。

彼女たちはただ、自分の主人から与えられた命令───アキを手助けするという使命しか頭にないような感じだった。

 

「えっと、そこのあなた。北条マサコさん、あなたです。少し話があります。来てくれますか」

 

「えっ、あーし?おっけ、ちょい待ち?」

 

とても砕けた感じの子を捕まえて、取調室に連れていくと、アキは重々しく口を開いた。

 

「北条さん。あなたに怪盗の協力者で容疑が掛かっています。ご協力願えますね?」

 

アキはSRTの手帳を見せてマサコに詰める。しかしマサコはアキの手帳をはたき落とすと嘲るように笑った。

 

「あはは、オモロい事ゆーじゃん?あーしね、知ってんの。SRT特殊学園は潰れた───そうでしょ?」

 

「…………しかし私は、連邦生徒会から特殊な捜査権限を頂いてます。もう一度問います。ご協力願えますね?」

 

「落ち目の連邦生徒会が何をキョカしたって?あーし、ずっと思ってんだけどさ。あーし達が貧困で苦しんでる間、放置したのはあんた達だよね?」

 

「私に言うべき言葉ではありませんね、それは。七神リン代行に直訴して貰えますか?」

 

「んなのとっくにやったっつーの!アンタらにはわかんないでしょ?あーし達はね、救われたんだよ。あの方に」

 

「"あの方?"」

 

「せんせーには関係ないっしょ。黙っててくんね?」

 

マサコの余りに冷たい視線に思わず口を噤んでしまう。同じような目を、最近どこかで見た気がする──────。

そうだ、キリアの目だ。あの時、スカイタワーの頂上で見せたあの酷薄な瞳。その目に酷似している。

 

「"君は───キリアに似てるね。"」

 

「ほんとっ!?どこがどこが!?…………じゃなくて!黙っててよ、せんせ。」

 

「"私はね、キリアと結構仲良いんだ。だから、ある程度はキリアが何を考えてるのかも分かる……なんて言ったら烏滸がましいけどね"」

 

「……………。」

 

「"きっと、キリアはマサコに命令なんてしてないんじゃないの?"」

 

「──────ひとつだけ。あーしが命じられたのはひとつだけ。『期待に応えろ』ってだけだった………」

 

「なるほど───意図が読めてきました」

 

アキはメモに何かを書いて机の下からそっと渡してくる。何食わぬ顔でそれを受け取って読むと、そこには

『おそらくこの会話は何者かに見られています。恐らく怪盗かと』と書いてあった。

 

『"それなら、少しイタズラしちゃおうか"』

 

キリアがこの光景を見ているというのなら、それ相応の対応をするだけだ。

これは極めて理不尽な思考ゲーム。怪盗と私たちによる、互いが互いを追い詰めていく盤上の駒。

なに、いつもキリアとやっていた遊びの延長線だ。こっちもこっちで楽しませてもらうとしよう。

 

「"怪盗、私と勝負だ。私があなたを捕まえたら、私の勝ち。逆にあなたが私を出し抜いて計画を成功させればあなたの勝ちだ。乗るかい?"」

 

すると、望むところだと言わんばかりに監視カメラが割れる。

私と怪盗の勝負は、今始まった。

 

 

 ───────────◆─────────

 

 

今の。聞いていましたわね?

 

「勿論、聞いていたわ。先生と知恵比べだなんて、勝機はあるの?」

 

勿論ですわ。私、ヒナさん、リオ。そして協力者のアビドス高等学校……もとい、覆面水着団の皆さんの協力があれば100%勝てますわよ。

 

「先生を巻き込むのは気が引けるけど、ゲームなら楽しまなきゃね」

 

「おっ、乗り気だねぇ風紀委員長ちゃん。おじさんもやる気出さなきゃね〜」

 

「ん、侵入ルートの構築なら任せて」

 

「せ、精一杯サポートしますっ!」

 

「あれだけ大量の金銀財宝を持ってこられたら仕方ないですお♧」

 

「ちょっと!アタシは賛成してないんだけど!?」

 

「あ、あうう……な、何でキリアさんがここに……ナギサ様にバレてしまったらどうしましょう…」

 

ターゲットは明確ですわ。D.U.内部、サンクトゥムタワーの地下に位置する防衛室長の秘密金庫を襲撃しますわよ!

私の調べ────というよりは自白に近いですが、不知火カヤ防衛室長は私から10億円の借金を返していないんですわよ。

そのお金の流れを調べるためにも、今回協力していただきますわ。

 

「おじさんも丁度気になってたしね。どうして連邦生徒会は私たちアビドスを見捨てたのかを、ね」

 

「小鳥遊ホシノ、昔に戻ったみたい」

 

「うへ、昔に会ってたかな……?噂は聞いてるよ、キヴォトスで一番強いんでしょ?見たところ後衛だからバックは任せたよ〜」

 

「どうしてでしょう……ホシノ先輩がいつもよりギラついてます………」

 

「やる気があるなら結構。じゃあ全員のコードネームは必須よね。私が────」

 

全員で決めましょう!その方がきっと良いですわ!




リオ考案、コードネーム一覧
・リオ:ロボウーマン
・ヒナ:とげとげマシンガン
・キリア:政治家
・ホシノ:ちびっこギャング
・セリカ:スーパーにゃんこ
・ノノミ:ゆるふわミニガン
・シロコ:わんわんお
・アヤネ:キラリングラス
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