一般トリニティ生の流儀   作:セイアマン

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神の雷

 

「ご覧ください!空が、真っ赤に染まってしまっています!」

 

クロノス報道局のアナウンサーが空を指しながら懸命に報道する。

それと同時期に、突如として出現した六本の柱から異形の者が現れ、柱の周りに住んでいた人々を襲い始める。

しかし、流石はキヴォトス人と言うべきか、即座に周辺住民同士の共同戦線を構成し、迫りくる異形から互いに互いを守り合っていた。

 

そんな中、シャーレの先生によって緊急招集された超学園連合軍はこの異常事態に対し、七神リンの提案により「虚妄のサンクトゥム攻略作戦」を開始。

各地から集まった生徒のうち、主力を担う戦力を持つ生徒は各自6部隊に別れて行動を開始した。

 

「うへ〜、何回か相手してるけど、やっぱおっきいな〜……」

 

「ねぇ本当に良かったの!?シロコ先輩が行方不明の状態で動くべきじゃなかったんじゃない?」

 

『どちらにせよ、この作戦が失敗すればシロコ先輩も、私たちも終わりです!』

 

アビドス対策委員会の面々がアビドス砂漠に到着する頃には、残存する僅かなアビドス市民と、アビドス地域を根城とするカタカタヘルメット団に続きブラックマーケットの住民たちまでもが戦線に参加していた。

彼らは違法に製造された条約違反スレスレの武器を用いて『色彩』化したビナーを攻撃する。

 

「犬のオッサン!戦えんのかアンタ……!?」

 

「ふっ、ワタシも昔はこの腕でブイブイ言わせたモンで……はぐあああああああ!」

 

「お、オッサーーーーン!」

 

当然のことながら、アビドス砂漠にも異形の敵は大量発生している。

しかし、市民たちの必死の抵抗によって第一サンクトゥム攻略チームは露払いの恩恵を得られていた。

 

「アルちゃ〜ん、しょーじき言ってこの作戦、成功率めっちゃ低いよ?多分カヨコちゃんが考えた作戦の方が─────」

 

「社長、電車をぶつけるなんて成功するとは思えない。そもそも線路が壊されたら終わりなのに、どうやって─────」

 

「わ、私はアル様を信じますっ!死んでもお供します!」

 

不安の声を上げる便利屋68のメンバーに、そのリーダーである陸八魔アルは腕を組み、傲岸不遜な態度でワインレッド・アドマイアーをビナーに向け言い放つ。

 

「何を怖気付いているの?ムツキ、カヨコ。貴女たちの社長は誰か、言ってご覧なさい?」

 

「そりゃ、アルちゃんだけど……」

 

「社長はアルでしょ……?」

 

ダン!と音を立てて陸八魔アルは走る列車の天井を踏みつける。

その表情には一切の油断なく、そして一切の驕りもない。当然の事のように敵を見下す便利屋68の社長、陸八魔アルがいた。

 

「そうよ!貴女たちには私がついているんだもの。失敗?敗北?あり得ないわ。だからどーんと構えなさい!」

 

「アルちゃん……やっぱり、カッコいい♡」

 

「そうだったね。社長がいるんだから、私たちは安心して作戦に臨めばいい」

 

「アル様!素敵です!」

 

自分に対する称賛の声を聞きながら、アルは心の奥底で叫んだ。

 

(い、言っちゃったーーーーっ!?)

 

「ありゃ。今のセリフ、戦線全域に流れちゃってたみたい。アルちゃん、みんなから感謝の連絡来てるよ?」

 

「……………放っておきなさい。私たちは作戦に集中するわよ」

 

引き締まった表情でアルは誤魔化し、ビナーとの戦いに向けて歩みを向けた。

その一方で、キヴォトス各地に散らばったトリニティ先遣隊───キリア直属の部下達は、キヴォトス外の戦術を以て先生が不在の戦場に指示を飛ばしていた。

 

「アビドス地区から連絡です!第一サンクトゥム戦線、完全崩壊を確認!アビドス高等学校及び便利屋68のメンバーが敵にトドメを刺したようです!」

 

「よくやった!と言いたいところだがよォ!アタシらD.U.地区の防衛線構築が間に合ってねェぞ!」

 

「ゲヘナ防衛戦線から連絡です!風紀委員長の出向によって戦力が微妙に足りず、押され気味のようです!AVALON部隊を飛ばしていますが間に合いません!」

 

トリニティの頭脳派の生徒が中心となり、シャーレの一室を占拠して簡易的な司令部を構築しているのは良いものの、圧倒的な処理能力及び作戦決定能力の欠如により、その限界が見え始めていた。

その時であった。倒れていた人影がムクリと起き上がり、フラフラと司令部の生徒のマイクを奪い取る。

 

「こちらHQより山海経地区防衛戦線へ。これより遅滞戦闘を行い、友軍の到着を待て。オーバー」

 

「あ、アンタは……!連邦生徒会、防衛室長の……!」

 

「はい、不知火カヤです。それよりも百鬼夜行自治区の第一防衛線が突破されています。すぐさま兵站の移行と破壊工作を」

 

「なんで……アンタが?ウチのボス曰く、アンタ確かお飾りの防衛室長やってんだろ?なんでそんな的確に指示ができるんだよ」

 

カヤはその発言に対して深くため息を吐き、僅かに軽蔑の入った口調で「それでもキリア先生の弟子ですか?」と言う。

カヤの無能ムーブはゲヘナ生徒会『万魔殿』の議長であり知恵者、羽沼マコトからヒントを得たものである。

 

「キリア先生は私に、他の為政者を見るようにと仰いました。トリニティ式の謀略、ゲヘナ式の政治、そして連邦生徒会式の陰謀。これらを合わせた私が無能であるはずがないでしょう?」

 

「確かにそうかもしれないが……まぁ良い、疑問は晴れた。宜しくな、カヤ防衛室長」

 

「これも全て、私の計画を成功させる為。それに、弟子として師匠の期待に応えるのは当然ですから」

 

カヤは不敵な笑みを浮かべ、虚妄のサンクトゥムを見据え一息つき、指示を出し始めた。

司令部や数多の兵士達の頑張りで前線を押し上げたキヴォトス連合軍は第二のサンクトゥム攻略戦に突入する。

 

「要するに、あのワンサカ湧いてくるロボをブッ壊しまくれば良いんだろ?アタシの得意分野だ、任せとけ」

 

「きひひっ……!きひゃひゃひゃひゃ!」

 

「ツルギ、先生に頼られて嬉しいのは分かりますが、作戦開始時間です」

 

「あぁ─────。狩りの時間だァ!」

 

廃工場から湧き出してくる戦闘ロボット達がその勢いを増し、ミレニアム産の戦闘ロボ達が蹴散らされていく。

ミレニアムの生徒達がその情熱をもって作った努力の結晶が壊されていくたびに後方ベースキャンプでは悲鳴や嗚咽が溢れた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!わ、私の破壊式・滅殺君一号がぁぁぁ!!!!」

「そんな、デストロイちゃんがやられるだと…!?」

「ユニコォオオオオオオン!!!!!!!」

 

「ちょっと!あなた達静かにしなさいよ!戦闘ロボの指揮権を私に委譲してちょうだい、私なら十全に全て操れるわ!」

 

「ユ、ユウカェ……!」

 

早瀬ユウカの演算能力は高い。最新式スーパーコンピューターをはるかに上回るスピードで何千もの並列思考すら可能な演算は、たった一人で機械の軍隊を動かすことが出来るほどだ。

それも、弾道予測をリアルタイムで行いつつである。

 

「す、すげぇ……弾が勝手に避けていく!」

「なあシッテムの箱ってユウカが居れば要らないんじゃ」

「よく喋る!」

 

「今よ!切り開いたわ、突入して!」

 

ユウカの号令と共にキヴォトスの中でもトップクラスの暴力を持つツルギと、最もタフなネルが切り込み、その後ろに正義実現委員会の面々やC&Cのエージェント達が続く。

 

「しゃあっ!行くぞオラァ!」

 

「皆殺しだああああ!!!!」

 

第二サンクトゥムの守護者であるケセドは、本来の使命であり預言である『慈悲深き苦痛を以て断罪する裁定者』としての存在を失いつつ、オヤツ感覚で自身を滅ぼさんとする生徒達に恐怖を覚えた。

しかし、『色彩』に操られたケセドは最早逃げることすら能わず、その存在を滅ぼされた。

 

「作戦成功よ!やったわ!」

 

「へっ、大したことなかったな……」

 

「きひひっ、きひゃひゃひゃひゃ!」

 

無邪気に喜ぶユウカ達の元に、緊急アラートによる警告が鳴り響く。

警告レベルは4。陣地及び拠点壊滅の危機レベルのエネルギーをもった存在が急激に出現した事を表す。

 

「嘘でしょ!?計算外だわ!この反応、ここら一帯を消し飛ばすつもり!?」

 

「あん?おいちょっと、その反応をモニターに映してみろ」

 

「え?ほら、これでいいで……しょ!?」

 

モニターに写っていたのは、空を高速移動しながら虚妄のサンクトゥムそのものに向かって光り輝く銃弾を撃ちこんでいる真紅の機械騎士がユウカ達に向かってピースサインを出す所であった。

 

「まったく……もう!どこに行ってたのよ!」

 

「灯だ!トリニティの灯だ!」

「何とでもなるはずだ!」

「ガン○ムだと!?」

 

「……イヤ、どっちかっつったらザクだろ」

 

真紅の騎士はそのままサンクトゥムタワーの頂上近くまで飛んでいく。その軌跡がエメラルド色の光となって流れていく。

その軌跡が止まった時、空に白い輝きと共に巨大な光の剣が出現する。

 

「…………勝った。」

 

誰かがそう呟いた次の瞬間、剣は振り抜かれ第二の虚妄のサンクトゥムタワーは真っ二つに叩き斬られ、その傷口からボロボロと焼け焦げた敵が灰と化し空気に溶けていく。

 

「見て……空が、青い……」

 

「あの姿……まさに、世界の防人に相応しい…」

 

雲も紅い空も剣の一振りで消し飛ばした紅い騎士は地上に降りてくると、その胸部装甲を開き、自らの主人を地面に下ろす。

慌てて駆けつけた面々が見たのは、仮面の少女が杭のような何かを虚妄のサンクトゥム跡地に突き刺す所だった。

 

「────漆黒の君、対F.ST兵装『聖鞘』の配置が完了しましたわ」

 

少女が虚空に向かって呟くと、聖鞘と呼ばれた杭はヒビ割れ、それと同時に神秘で構成された巨大樹が空に向かって根を伸ばす。

青空に張り付いた樹には11の実がなっており、それらは神々しい光を湛えながら浮遊していた。

 

「あ、あなた……キリアちゃん、よね?」

 

「…………時は来ましたわ。ユウカさん、決戦は近いですわ。貴女の力が必要になりますの、先生からの連絡をお待ちになられてくださいまし」

 

「心配してたのよ?急に消えて……死んだって噂も出てて……話したいことも沢山………」

 

「全てを超えた先で、またお会いしましょう。では、さようなら」

 

そう言うとキリアは再びコックピットに乗り込み、亜音速で飛び去ってゆく。

後に残されたユウカは拳を握り締め、未来への不安を心の底へと押し込めた。

 

 

 ──────────◆──────────

 

 

ここまで来ればユウカさんから逃げ切れますわね。

ユウカさんはその類稀なる演算能力で私の行動原理を解析して執拗と言えるほど追跡してきますもの。

ファンを名乗って私のセーフハウスまで来た時は驚きましたわよ。

 

それにしても、あの処置で良いんですの?

漆黒の君を信用しないわけではありませんが、些か物足りないような気もしますわ。

 

『クックック……より破滅的なものを望みますか?あるにはありますが……』

 

良いですわよ別に。どうせ、何らかのリスクがあるんですもの。

大方、使用者の魂を削るとかそんなものでしょう?

 

『おや、よくご存知で。これは─────』

 

ゲマトリアの技術がちゃんと発展していて良かったですわ。

これで碌でも無いものを出されたら、思わず私手が出てしまうところでした。

それでこそ、我がトリニティの秘奥義を開示しただけはありますわね。

 

『アレには随分と助けられました。貴女の武装にも厭と言うほど詰め込んでいますから、安心して戦ってください』

 

武装────このラインのはっきり出るサイバーチックなボディスーツに仮面を渡された時は、どうなる事やらと思いましたが。

案外、着てみれば動きやすい上に普段よりも調子がいいですわね。

 

『トリニティ最古の神秘と鴉魔キリアの神秘を融和させたものですからね。思う存分暴れることができますよ』

 

大変でしたのよ?またもウイさんを怖がらせてしまう羽目になりましたし。

あの時、気絶して泡を吹いたウイさんを介抱するのにどれだけ気を使ったか!

 

『しかしこの力があれば──────』

 

ええ、キヴォトスを救えますわ。

奇跡なんかに、私達は頼りませんの。

全ては必然。積み重ねた努力の上に成り立っていますもの。

キヴォトスを救うのは私……いえ、私達ですわ。

 

『では、そろそろ私は先生に連絡を入れてきます。勝利報告を待っていますよ、鴉魔キリア』

 

そう言って、漆黒の君は通信を切りましたわ。

さて、次のサンクトゥムを切除しに行くとしましょうか!

 

そう思った矢先、別のアドレスから通信がかかってきましたわ。

番号からしてカイザーグループですわね。プレジデントでしょうか?

 

『キリア、私よ。ビッグシスターと言えば分かるかしら?』

 

リオ!?貴女が何故カイザーのアドレスから掛けてくるんですの?

協力者ではあるにしろ、カイザーの上役は皆確保されて独房にいた筈ですが。

 

『鴉魔キリア、そこは私から説明させて貰おうか』

 

おや、プレジデント様。ご機嫌よう、鴉魔キリアですわ。

本日はどのようなご用件……いえ、単刀直入に言いましょう。なぜ?と。

 

『そこなビッグシスターが鴉魔キリアの協力者ならば、と救助に来たのだよ。無論、その恩に報いないような私ではない』

 

『助けたお礼と言って、カイザーの全設備の指揮権を一時的に借り受けているのよ。今頃、戦場の各地にAMASが援護に行っているはずよ』

 

それは助かりますわね!見たところ負傷者が絶えないようでしたから、そういうところは機械に任せてれるなら任せたい所でしたのよ!

 

『それと、ヒナから伝言よ。「私の所は来ないで良い」って。あの子一人でサンクトゥムを叩き折るつもりかしら?』

 

ヒナさんも口下手ですわね。ですが、その心意気は伝わりましたわ!

どこかの誰かが動かしているAVALON部隊が私の部下なら駆けつけるはずですから、ピンチでも諦めないよう伝えてくださる?

 

『勿論よ。それで、キリア……アトラ・ハシースの箱舟の位置を大まかに割り出したわ。今から防衛機構の突破を試みてみる。そっちは任せたわよ』

 

『鴉魔キリア。我々カイザーグループに出来ることは全てしてやろう。鴉魔グループとの繋がりを得ることも大事だが、キヴォトスが滅びては商売上がったりだからな』

 

ええ、勿論ですわ!色の良い返事をご期待なさって!

 

『では、健闘を祈る』

 

そう言ってカイザーからの通信は切れましたわ。

激励を頂いたからには、私も頑張らねばなりませんわね!

 

行きますわよ!

目標、第三サンクトゥム。エネルギー充填10000%!『聖剣』開帳、ここで決め台詞を……!?

今回の縛りはソレですのね!仕方ないですわね……!

 

天光満つる所に我はあり、黄泉の門開くところに汝あり!出でよ、神の雷!

インテグネイションッ!!!!!

 

私の掛け声と共に聖剣が開き、大きな力の奔流となって第三サンクトゥムを真っ二つに斬り倒していきますわ。

この『武装』、力を引き出すのに一々お題をクリアしなければならないのが面倒ですわね……。

 

漆黒の君。全てが終わったら覚えていなさいな!

 




『武装』
鴉魔キリア専用のバトルスーツ。
普通に引き出せる能力は70%までで、それ以上を引き出そうとすると脳裏に浮かぶ「お題」をクリアしなければならない。
古くはトリニティ創始期に儀式部という組織が開発した集団儀式を一枚の服に押し込めたもの。
仮面はあらゆる攻撃から数回だけ身を守る効果をもっている。
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