一般トリニティ生の流儀 作:セイアマン
うう……ミカ様に色々絞られてしまいましたわ。
要らぬ心配をかけた罰として暫くミカ様のお世話をさせて貰えないのがもどかしいですわ。
私専用のAVALONも墜落してしまい、極秘に捜索はしていますが未だ見つからず……。
ここ最近踏んだり蹴ったりでストレスが溜まってしまいますわね。概ね自業自得なのですが。
しかし困りましたわね。資産の喪失などは別にどうでも良いのですが、暇ですわ。
普段はミカ様のお世話などで忙しい私ですので、いざ何もしなくて良いと言われれば、何もすることがありません。
そうですわ!こんな時こそシャーレに遊びに行きましょう!私ってば賢いですわね!ほほほ。
以前シャーレに訪れた時は確か……私がミカ様の悪口を言っていたフィリウス分派の生徒をお仕置きする為にシャーレ当番だったその生徒ごとシャーレを爆破したんですわね。
勿論、先生は巻き込んでませんわよ!
…………まぁその結果、シャーレの独房に入れられたのですけれど。
さて、今日は無駄に時間がありますので、戦闘機でもチャーターしてシャーレに行きますわよ。
○○○○○○○○○
さて、シャーレに着いたは良いものの……。
誰もいませんわね。どうしたのでしょう?普段業務に追われて死にそうな顔をしていらっしゃる先生なら、居ると思ったのですが。
こういう時は警察組織の人に聞くのが一番ですわね。丁度二人組の警官が居ますので、聞いてみるとしましょう。
すみません、先生を見ませんでしたか?
「先生ぃ〜?寝てたから分かんないや。キリノは見た?」
「ええっ?フブキ、寝ながらパトロールを……?ああそうでした。先生なら子ウサギ公園に行かれましたよ」
子ウサギ公園に?あの無駄に広い市民の憩いの場ですわよね。道案内を頼んでも宜しいでしょうか?
「うえ、めんどくさいなぁ。地図渡すからそれじゃダメ?」
「フ、フブキ……市民が困っているのですから、助けるのが正しい行いですよ!」
地図データを渡してくださいますか?それで結構ですわ。ありがとうございますわ、今日はまだ長いですので、業務遂行頑張ってくださいまし。
それではご機嫌よう!
いやぁ、いい警官でしたわね。暇そうで。
警官が暇そうにしている時ほど平和な時はありませんから。きっとフブキという警官もそれを分かっているのでしょうね。
地図データも貰ったことですし、早速先生に会いに行きますわ!
………そう、思っていたのですけれど。
D.U.は意外と複雑な構造をしており、子ウサギ公園に着く頃には既に日も暮れてしまいましたわ。
何とか子ウサギ公園に着いた頃には辺りは真っ暗だったのですが、不思議と光っている場所がありますわね。
ってうわわっ!?地面が爆発しましたわ!
この場合、周りに対戦車地雷が埋められている可能性が高いですわね。一時後退して銃で一発適当に撃ちながら進むとしましょう……。
ついでにTmitchもつけて、危険地帯「子ウサギ公園」を攻略する様を配信するとしますわ!
○○○○○○○○○○
ご機嫌よう、Tmitchの皆様。鴉魔キリアですわ。
訳あって、私は危険地帯に来ていますのよ!
《アンタ頭おかしいのか?》
《嘘乙、そこ子ウサギ公園だろ。電灯の形で分かるわ》
《知らないの?いま子ウサギ公園ってD.U.いち危険地帯なんだよ?》
《何ぃっーーーっ!?》
聡い視聴者様が居てくれてありがたいですわね。
そう、その通りですわ。私は今、危険地帯「子ウサギ公園」を攻略するためにここに居るんですわ!
《なんでこの間墜落したばっかりなのにピンピンしてんだ》
《この人頭おかしいんです》
キヴォトス人の頑丈さを舐めたらダメですわよ。
ミカ様など、一晩で粉砕骨折が治るくらいですもの。
私なんてまだまだですわ!
《ミカ様って実はウチのネル先輩くらいやばい人…?》
《ヒナ委員長よりは…流石に無いよな?》
さて。歩みを進みますわよ!
見えますか?あそこの灯りが。今日はあそこを目指していきますわよ。
まずは偉大なる一歩から!…………ハイ、落とし穴ですわね。
《鉄槍が……折れてる、だと?》
《キリアちゃん堅くね……?》
いてて……と、このように危険がたくさんですわ。皆様は決して子ウサギ公園に近寄らないようにお願いいたしますわね。
さあ、落とし穴から抜け出したところで先に進みむぎゅっ!
《意外ッ!それは鉄球ッ!》
《ああああキリアちゃぁあああん!!!》
《死んだろこれは……べキャッて鳴ったぞ》
う、うごご……私なら無事ですわ。受ける瞬間に衝撃を殺しましたので、案外平気ですのよ。
ええい、間怠っこしいですわね!このまま突っ切って行きますわよ!
《おいやめろ》
《死んだな。安らかに眠れ》
おーっほっほっほ!通った場所が爆発したり崩落したりでヤバいですわね〜っ!一歩でも立ち止まれば死ですわよ〜っ!
あは、あはは!楽しいですわ!はっはっは!
《イカれてる……》
《見ろよ、あの楽しそうな顔をよ》
《可愛いね。イカれてんのか?》
目標まであと30メートルとチョイですわ!
このまま突っ切りますわよ〜!希望の明日へレディ&ゴーですわ!
《オレD.U.に住んでるロボットなんだけど、クソうるさいwww》
《同じくD.U.住み、バチクソうるさくて笑うわ》
《哀れだなお前ら!ワイもD.U.住みや。終わった》
ご近所の皆様にご迷惑をお掛けしておりますわ!
さぁ、光の元へ着きました…………わ………?
は、えっ?うん…?先生。そこで何を────
「"ッ!?ちが、違うんだキリア!"」
い、いま私の見たことをありのままに説明しますわね……。
先生を探しに子ウサギ公園に来たと思ったら、先生がにこやかに生徒の入浴をガン見していましたわ。
えっ……け、けだもの………。
《エッッッッッッッド》
《穢戸。それは百鬼夜行学園に存在する───》
《こーれ問題でしょ。もしもしヴァルキューレ?》
「アンタどうやってトラップだらけの公園を……それよりだ。先生、なんでアンタがここに居るんだ?」
「"さ、サキ……これは……"」
わ、私……曲がりなりにも、信じて、おりましたのに……先生のケダモノ!犯罪者!性的倒錯者!妖怪足舐め小僧!
「"ちがっ……違うんだ!本当に!私は生徒が心配で……"」
「うるさい!早く出ていけ!」
ミカ様は…こんな変質者に……。
そう思うと涙が出てきますわ。よよよ……と泣いてみたは良いですが、実際の所はどうするべきでしょうか。
先生とミカ様を近付かせなくする?いえ、ミカ様はきっと先生に手を出されたいとお考えの筈。
であれば近寄らせるべきでは……?
《あーあ泣かせた》
《先生お前覚えておけよ、シャーレ当番暫く行かねェからな》
《先生、ちょっとお時間いただきます》
《全ギレユウカさんだ!》
………今はとりあえず、この変態を引っ張っていくところからですわね。
行きますわよ、変質者。シャーレにて話をしましょう。
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キリアに引きずられてシャーレに行く途中、いろんな通行人の人から「ロリコン」とか「変態」などのたくさんの罵声を浴びせられつつ、シャーレに戻った。
「……それで?何か事情があるのでしょう、先生?」
「"キリアは私を信じてくれるんだね"」
「別に……そんな事はありませんわ。絶対に」
いつもキリアは冷たい目をしてるけど、今日はいつもの5倍くらい冷たい目をしてる。というか殺気も篭ってないかなコレ。
「"えっと……かくかくしかじかで────"」
スマホ片手に私の説明……RABBIT小隊についてのこととかを聞いているキリアを見ながら話していると、突然キリアが私の方をチラリと見て、一言「つまらないひと。」とだけ呟いた。
そしてニヤリと笑ったかと思うと、スマホの画面を見せてきた。
「ご覧なさい、先生。これ、先生について書かれた掲示板ですのよ」
「"これは……"」
書かれていたのは、私を擁護するようなコメントで溢れかえったものばかりだった。
てっきり、悪い事ばかり書かれているものだと思った。
「ふふっ、先生。私はこれでもティーパーティーの行政官ですのよ?ミカ様のお世話とは別に、ちゃんと政もしていますの」
「"これ、キリアが?"」
「あら、私のお友達が勝手にやってくれただけですわよ。ですが先生が私に"なぜか"少しでも感謝していると言うのなら、一つお願いがありますわ」
「"お願い?"」
キリアは今までにみた事のないほど綺麗な笑顔で「ミカ様と仲良くしてくださいね」とだけ言い、シャーレの窓を破壊して颯爽と夜空に飛び去った。
キリアが飛んだ跡に残るエネルギーの残滓が、私の顔を優しく撫でた。
次の日の朝、騒ぎを聞きつけたユウカや何故かティーセットと一緒にやってきたナギサ、怒り心頭のヒナたちに弁明会をした。
甘んじてお叱りを受け、シャーレの永遠に終わらない業務を遂行していた時、騒がしい音と共にキリアがシャーレのドアを蹴破りながらやってきた。
「さあ先生!あなたの日常をぶっ壊しに来ましたわよ!」
「"今日はどうしたの?"」
「端的に言うと暇ですの!ですから先生の下らない業務を消しに来ましたわ!」
「"手伝ってくれるの?ありがたいけど……"」
生徒に仕事を手伝わせるなんて、先生としてあまり望ましい事ではないし、ましてや暇だと言う嘘をついてまで私を手伝おうとしてくれるキリアに心癒される。
……と、思ったら。キリアの両手に握られているものを見て血の気が引いた。
「なーに勘違いしてるんですの?消しに来た、とは文字通りの意味ですわよ。雑務リストと重要案件リストは分けてありますわね?」
「"え……うん、一応……"」
キリアは「孫子曰く」と付け足してから持っている火炎放射器のセーフティを外す。
「故に火を以て攻を佐くる者は明なり。水を以て攻を佐くる者は強なり。水は以て絶つべきも、以て奪うべからず……つまり、面倒なタスクなど水に流すより燃やした方が効率的ですわ!」
「"ちょ、待っ……!"」
「着火オンファイアーッ!おーっほっほっほ!先生、見てご覧なさい!綺麗なキャンプファイアーですわよ!」
そう言ってキリアは串の刺さったサツマイモを手渡してくる。
燃える仕事で食べる焼き芋はとても美味しかった。
それからというもの、キリアは「エデン条約締結前まで暇ですわ!」と言って毎日シャーレに遊びにくるようになった。
キリアとの日々は常にドタバタしていて、とても楽しかった。
毎日のようによく分からない苦情や特に意味のない怪文書を燃やしたり、キリア傘下だというスケバン部隊を引き連れてスラム街の王になったり。
そんな日にも、終わりの時が来た。
「先生、エデン条約締結まであと二日を切りましたわ。是をもちまして、私は暇ではなくなってしまいますの。ですから……その、ですね…」
きっと今までの日々が楽しかったのか、とても残念そうな表情をその幼い顔に浮かべながら、おずおずと言ってくる姿が少しいじらしい。
「"いっておいで、キリア"」
「………っ、その、また…遊びにきますわね!絶対、約束ですわよ!」
「"うん、絶対だよ。今度は何して遊ぼっか?"」
「そうですわね──────」
結局、その日は次に遊ぶときに何をするかを考えるのに一日を使ってしまった。
でも、不思議と満足感があって悪い時間じゃなかった。
この作品では
エデン条約編1〜2章→3章途中→カルバノグ1章→エデン条約3章〜4章→パヴァーヌ2章→最終編という解釈です