入学して2日目、午前は一般の高校と遜色のないモノである。強いて言うなら、偏差値70超の触込み通り授業範囲と程度のレベルが高い事、そして各授業の担当を現役ヒーローが受け持つ事が異なる点だと言えるだろう。
だが、午後からが本番と言えるモノであり……─────────
「…午後からはヒーロー基礎学だ」
「遂に来た……っ!」
「楽しみだったんだよねー!!」
「何やんだろー!」
「ヒーロー科と言えばコレだろ!!」
「静かにしろ。…3秒後に黙らなければ全員除籍にするが」
雄英高校に来た理由でもある授業にクラス全体が湧くが……イレイザーヘッドの威圧を受けて一斉に口を閉じた。
もう『除籍』のワードを聞く度に教室中が震え上がるのでざわつくクラスを静かにするのには相応しいかもしれない。
「早速だが今日は戦闘訓練をやる。…横見てみろ」
イレイザーヘッドが手に持つリモコンを操作すると左に見える壁が動き始めた。
機械的に動く収納棚には番号が記されたケースが備わっている。何かと思ったが、これから行われる戦闘訓練の事を考えるとそれなりに予測がついた。
「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って用意した戦闘服だ、着替えたら順次グラウンドβに集まれ。
…10分後に全員集合していなかったら今後一切ヒーロー基礎学は受けられない事としよう。合理的に動け、分かったな?」
「「「「「…っはい!」」」」」
……まるで軍隊だな、この様相は。
命令だけして教室から早々に出ていき俺達20名だけが取り残される。まだ2日目なのに何処か慣れてきた部分もあるな。
しかし、無駄に考えている暇も無いのでさっさとケース取って更衣室に向かうか。
「(ん、重いなコレ……これは多少要望は通っていると良いんだが…)」
「飛威炉くん!何するんだろーね?」
「ああ、確かにカリキュラムにも抽象的な内容しかなかったしな。…まぁでも、戦闘訓練と言ってもいきなりクラス全員でバトルロワイアルとかはしないんじゃないか?」
「最初の例えとしては殺伐とし過ぎじゃないかしら?……私としては戦闘服を初めて着ると思うと緊張する部分もあるわね」
「それ分かるー!自分で考えたってのが嬉しいと言うか、不安になると言うか……何かいっぱい考えちゃうよね~。璃亞ちゃんのはどんなの考えたの?」
「それは…後のお楽しみって事で良いかしら?」
「えーじゃあウチもそれで~、飛威炉くんはどんなのなの?……なんだか凄い重そうだけど」
「やりたい事を手当たり次第に要望に乗せたらこうなってな。この重さなら緊急時に対応できるか不安になってきたトコロだ………軽量化がまず最初の課題だな」
「飛威炉のソレは汎用性高いからね、特にサポートアイテム関連には」
「もしかしてロボットみたいに使えるって事!?面白そー!!」
「いや流石にそこまで手厚いモノは1年次に渡さないと思うぞ?まあ……地位とか人脈あれば可能性はもっと広がりそうだけどな」
地位と人脈。
ヒーロー目指す上では邪魔になりそうなモノだとも考えられるが、俺の目論見にとっては重要な要素に成り得る。
無論、俺の欲望は“人を救う事”に準ずるモノでありチヤホヤされたいとか名声を手に入れたいとか、そんなのは1ミリも考えた事が無い。…だが考え無しにトップヒーロー目指せる程甘い話ではないのは確かだ。ヒーロー足り得るには高潔な精神と、どんな理想も叶えられる実力が必要である。
その為ならどんな力だって利用したいし、それが俺のこの『個性』を最大限に活用できるなら尚更だ。今現在考えているアイデアは被服控除の許容範囲外のモノもあるが出来る事ならいずれ……─────────
…いや、今それはどうでもいいか。まずは目の前の事に集中しよう。
苦難を与え続けると言われた以上、どんな厳しい内容が待ち受けていても心構えなければならない。さあ、何が待ち受けているか……………
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「いや苦難と言ってもこれは………流石にキツイな」
「ホントだよー!!あの2人仲良さそうだったもんね~体力テストも高かったし!」
「仲良いもなにもあの2人幼馴染だって言ってたぞ?連携だったら勝てる気がしないな」
「う゛っ………でもそこはウチ達だって負けないよ!気合でカバー出来るって!!」
「…そうだな」
訓練内容は2対2の屋内戦。ヒーロー基礎学の最初の授業が実践ってのは面白い話だが………現状は呑気にしてられないのが事実だ。
ヒーロー役と敵役に2人ずつで分かれ、ヒーロー側は最上階にある核兵器型オブジェクトの回収と敵役2人捕縛を、敵側はそれの防衛とヒーロー2人捕縛を勝利条件とする。
細かいルールは他にもあるが……問題はそこではない。
俺と稲生がヒーロー側で、敵側が蝗賀と楓馬である。昨日の親睦会のおかげで知り合えた2人だが戦わずとも強敵である事を事前に知ってしまっている。
「蝗賀の『個性』が確か“トノサマバッタ”で楓馬が昨日見た感じ……風を扱う系だと思うな」
「匠っちの足何かに似てるな~って思ってたけどバッタか!楓馬くんも体の周りなんか渦巻いてたし、2人とも昨日凄かったねー、匠っちが4位で楓馬くんが3位だっけ?」
「ああ。特に移動系の種目は目を見張るモノがあったな、もし役回りが逆だったら勝ち目は無さそうだった」
「あっちがヒーローの方なら捕まえれる自信が無いよね!すぐに目標にタッチされそうだし」
蝗賀の方は昔の集まりのおかげで憶えている。前髪にもある触覚と昨日強靭な歩脚は飛蝗の一種であるトノサマバッタに由来する力だ。彼の父親の能力から考えれば縦横無尽に跳びまわる敏捷性が持ち味だと推測できる。
楓馬の方は昨日少ししか見てない以上想像でしかないが……多分風を扱う『個性』だ。立ち幅跳びの時に風を身に纏って浮遊していた姿が印象的で、暴風を巻き起こすタイプではなく精密な操作が楓馬の得意分野であるように見受けられる。
2人共機動力に長けた能力で組み合わせとしても適している─────────いや、適してるかどうかの話ではない。彼等の関係性を見れば連携の点で隙を見つけるのは難しそうだ。
「作戦はどうするの?……飛威炉くんにゼーンブ任せるから!」
「一応考えはある。その為に稲生の事もっと詳しく教えてほしいんだが……
…準備しながら聞いてくれ、まずは……─────────
閑静なビル3階……俺は足や胸部には装甲に近いパーツを持つ戦闘服を纏い、稲生は腕部にガントレットを持ち黒と黄を基調としたレザースーツを着て、対人戦闘を行うには手狭で入り組んでいる室内を警戒しながら進む。
万が一今までの階に隠されていないか、隈なく探してみたが想定通り核は何処にもなかった。探索のせいで少し時間を使ってしまったがコレは必要経費あ、作戦に支障は無い。
4階へと繋がる階段に伸びる通路を歩いていると………、見覚えのある2人が行く手を阻む。互いに補足した瞬間に、彼らの方からクナイのようなモノが飛んできたが……こちらに届く前に撃ち落とした。
「随分な挨拶だな……だが、やはりここに居たか。どのルートを通っても各階の階段は必ず通るしな」
「まーこの構造はそう考えるように造られてるんだろな~」
「俺が教えたから分かったんじゃないのか?匠」
「いーや言われんでも気付いてたね。…ってかあんまり駄弁ってても怒られるだけだな」
「同感だ。……もっと気付きにくい奇襲仕掛けてこなかったのを後悔させてやるよ」
そう言って階段前に立つ2人目掛けてエネルギー弾を放つ。
蝗賀へと放たれた弾は簡単に避けられ、楓馬の方は彼の眼前で霧散した。弾幕を張る程の密度は無く、数発放たれたエネルギー弾を抜けると蝗賀が壁を蹴るように跳ねながら近付こうとする。
「(牽制用に力を抑えたが…簡単じゃなさそうだな。)稲生、作戦通りだ!先に進め!」
「うん!!」
「いや行かせんよ─────っと!…俺の相手はあんたって訳か」
「まずは1対1だ。…他所見したら危険だぜ?」
「ヒュー!久しぶりに会ってすぐにその誘い文句は言うねぇ~でも!そうゆーのは女子に言われたいけどなっ!」
「(速いっ!油断してたら即人数差を作られるな………!)」
階段に向かう稲生を邪魔するのは防げたが、四方を窮屈に囲むこの空間で蝗賀と相対するのは骨が折れそうだ。壁を跳びまわるように移動する事で素早く後ろに回り込まれるのは脅威である。
アクロバティックに壁を蹴り、瞬く間にその脚が俺の顔のすぐ横に迫ってきたが何とか反応する。
『個性“トノサマバッタ”!トノサマバッタに出来る事だったら大体出来るぞ!!触覚を使った危険感知や昆虫がよく持つ複眼レベルでの視力もあるが一番の強みは何と言ってもその脚!マジでバッタみたいに跳びまわれるけど……人間大の虫って考えるとなんか滅茶苦茶嫌だな!!考えたくもねーぜホント誰だそんなこと言った奴ぅ!!………オレだってぜ!!!』
「ぐっ、タイマン張るのは良いけど……あっちは大丈夫なんかねー?ヤスを舐めてるなら痛い目合うぜ?」
「舐めちゃいないさ。言うなら……コンビを信じてるって方が正しいけどなっ!」
「おっと危な!…まるでこっちは勝てるみたいな言い分だが簡単じゃないぜそれは!」
「(その通りだな、今のトコロは想定通りだが…────────
『…まず、あっちは2人共何処かの階段前に居座る筈だ』
『何でそう思うの?』
『あの2人は近接戦闘が得意の筈、それに遠距離での攻撃やトラップ仕掛けるのは推測でしかないが出来ない筈だ。…楓馬の風の範囲次第でワンチャンあり得るけど』
『防衛には向いてないって訳か!…でもそれなら二手に分かれて突撃仕掛けて来る可能性もあるんじゃない?』
『いや、多分俺を警戒して人数不利を作りたくない筈だ。いくら通信があると言えど俺との1対1が出来て逃げられでもすれば“核の防衛”って言う条件はキツくなる、どんなに2人の機動力が高いと言えど』
『お~自信満々じゃん!階段前なのは……あっどの階も階段通んないと上がれないからって事か!』
『ああ。天井ぶっ壊して強引に探す事以外絶対に避けらない訳だから待ち伏せするには丁度いいだろう。核の配置はそうだな………各階との距離も考えて3階に居る可能性が高いだろうな』
『オッケー!じゃあまずそこに行って……どう戦うの?』
『配置によるが俺と蝗賀、稲生と楓馬で1対1の構図を作る。…楓馬は強敵だがいけそうか?』
『飛威炉くんに考えがあるんでしょ?なら大丈夫っしょ!……人と戦うのは初めてだからあんま自信は無いけど』
『離れなければ俺のエネルギー弾を警戒して純粋な1対1にはならないさ。で、そうなったらコレ使って……────────
「…捕縛テープ使えば良いのにキックの応酬だな、もっと穏便にいかないか?」
「多少怪我してくれなきゃ捕まってくれないだろー?って事で許してくれっ!」
「っはいはい……(生半可な相手じゃないな、あっちはどうだ……?)」
「きゃっ!?危ないな~……!」
「…すぐに終わらせてやるよ」
「手加減してよねーホント!!」
「(…そりゃそうか、互いのどっちかが勝って2対1ってのは甘い考えか)」
「さっきのセリフそのまま返すぜ!余所見は許さねーよっ?!」
視線を奥の方に移していると、蝗賀の攻撃が止む事無く飛んでくる。俺の方も余裕が無いとはいえ向こうの戦闘も厳しさを増しているようである。
会敵して1分が経ったが状況は良い方向には向いていない。
蝗賀と何度も拳……いやどちらかと言うと脚を交えているが想定以上の戦闘能力だ。目に追えない程の機動性は勿論の事、跳ねまわりながら勢いを増す脚部による蹴りはただ受けているだけでは対応しきれない威力である。
楓馬の方は……正直危なそうだ。流石に室内全体を支配できる攻撃範囲でなかったのは良かったが、階段を進むのを遮るように彼の周りで渦巻くあの風は相当なモノだ。その点、稲生の『個性』によって生まれる静電気は相性が良さそうで風の膜を突破しているようだが………ただそれだけで負けてくれる程の相手ではない。
「くらえっ!“ビリビリネット”!!」
「………っ」
「簡単に避けられた!?でも、まだだくらえっ“ビリビリビーム”!!」
「……風を抜けてくるか、だが…反応できない速度ではないな」
「むっ、だったら効くまで続けるだけだもんね!!」
「(大丈夫かあっちは……?…まあ良い、このままじゃジリ貧だ。そろそろ動くか……)」
「時間も減ってきたんじゃねーか!俺も早く終わらせてあっち手伝いに行きたいんだが……まー大丈夫かもしれないけどなっ!」
「ぐっ、痛ーなぁ……ぼちぼち、反撃させてもらうか」
壁を跳ねてのヒット&アウェイ、それを繰り返されて多少消耗してきている。四方八方に攻撃されていると身体的にも頭脳的にもダメージがあるがいい加減状況を打破しなければいけないな。
…キック主体の戦闘スタイルと行動パターンはある程度把握できた。あと必要なのはイメージだ、視覚と聴覚を集中させて次の攻撃タイミングを予測して……────────
「(次左の壁蹴ったらこれまでで一番回数の多い……)右後方からの膝蹴りだよなっ!」
「うおっ!?危なっ!?」
「(…反応されるか、だが次はこっちから仕掛ける!)」
「今度は多いな!?だが当たって堪るかよっ!」
蝗賀の離れる時を狙って先程よりも密度の高い弾幕を放つ。手に入れた戦闘服のおかげで飛行しながら足や胸部からもエネルギー弾を放つことが出来るようになり、今まで以上に負担なく攻撃の幅を広げられた。
しかし威力にも自信はあったがどの弾も掠る事無く避けられる………が、俺の目的はそこではない。
「(ここは一本道、そうやって避ければ階段から離れる!!)じゃあお先にっ!」
「おい、タイマンはどうした!?…スマン楓馬!そっち行っちまった!」
「(これで一時的だが2対1、だが強引に楓馬を突破しようとして後ろから蝗賀に詰められちゃ意味ない………のでっ!)稲生、任せたぞ!!」
「うん!いやっ使うのコワ~いっけど!!」
そう言いながら彼女の腕に纏うガントレットを俺の後方から追いかけているであろう蝗賀に向ける。それに気付いて楓馬も風を纏わせたクナイを投げていたが、俺もエネルギー弾放ってそれを防ぐ。
このタイミング、この人員配置を予期して稲生に渡しておいたあのガントレット。これが不発だと困るが………
『腕の奴?良いの渡しちゃって?……ってかコレ重っ!』
『そのガントレット、俺のエネルギーを肘近くのトコに溜めておいて横のボタンを押せば一度だけ放出できるようになってるぞ』
『スゴッ!?ホントに良いの私が持ってて?』
『逆に使ってほしいんだ、蝗賀たちが油断して俺に視線が向いた時に合図を掛けるから………因みに試運転はしてないし、どれぐらいの威力かも把握してない』
『ちょっと怖いんだけど!?大丈夫なのかな~……』
『使わないに越したことはないんだがな。……まあ作戦の1つってだけだ』
「(その作戦を使うんだけどなっ!)威力は知らん、怪我しないでくれよ?!」
「いっけーっ!!」 カチッ
「ちょっヤバ!?っぐは………!?」
「…匠っ!!」
「いっったいんだけどー!?」
ガントレットから放たれたのは先程の俺の弾幕とレベルが違う、通路を埋める程ではなくとも人1人はあるエネルギー弾。
慣れてない使用者には負担は大きかったかもしれないが放たれた弾はちゃんと蝗賀の方へと飛んでいき、虚を突いたことで直撃してくれたようだ。
「(今の内だっ!)稲生、蝗賀の方は任せたぞ!」
「う゛っうん!!」
「チッ、待て……!」
楓馬が後方で吹き飛んだ蝗賀に目が移った瞬間を狙って、彼の横を抜けて上の階へと飛ぶ。流石にこれ程の隙が生まれれば俺の進行を許してくれた。
…こうなれば4階・5階で核を探す俺を楓馬は放っておけないだろう。これで純粋な1対1の完成だ。
「(1階から3階には無かった、って事は上の2つのどこかだ。見つけりゃ勝ちだが………)」
「………っ!」
「(流石にこっちも速いな……撒けるが怪しい、が!)」
鬼気迫る表情で追ってきているが、それはこの階に隠してある証拠とも考えられる。ただし、頭に血が上って俺の行方を追わずに最上階に隠した核の防衛に戻るって考えが抜けてなければの話だが。
俺を追いながら風纏うクナイを投げてくるが、防げない威力ではなく細かい挙動にも追尾してくるまではいかなそうだ。右耳にあるスピーカーに意識を向けながら入り組む通路を曲がって避けながら進んでいると………
「(あれか!触れば勝ちだけど…───────)…いやコレは!?」
「…気付いたか」
「(核にも風が……如何にも触るなって感じの風のバリアだな)」
『個性“風纏い”!自分の周りの風を操り、服みてーに纏うことが出来る!!使い方によっちゃあ風使って空を飛行したりカーテン創ってバリアを張ったりできるぜ!!一時的であれば触れたモノに纏わせる事も出来るぞ!!顔とかにある傷はそのせいで子供の時に出来ちまったもんだけどな!!』
遂に発見した核であったが……簡単にはクリアできなさそうだ。表面を楓馬と同様に空気が蠢き、触らずとも裂傷を引き起こしかねないのが理解できる。
時限式や罠の類は無いと思っていたが現状を見ればそれが間違いだったのが事実だろう。
「楓馬、これの解除方法は?」
「……天蟲なら、言わなくても分かってるだろ」
「…だよな、聞かんでもこうなるのは想像ついてたけどなっ!」
振り向きざまにエネルギー弾を放つも初回の威力以上だと気付かれたか、容易く避けられて距離を詰められる。今居る空間が先程の通路よりも広いお蔭で、縦横無尽に移動できるタイプの俺達2人の『個性』が存分に生きる。
互いに支柱を挟んで牽制し合うが被弾回数はゼロ。このままダメージ無いままだとキツイのはこっちだけど……、1つの綻びに気付く。
「(投げたクナイを拾いながら移動、中距離攻撃の枯渇は望め無さそうだな。…時間を使って核の“膜”が弱まるのを待っても良いが……不確定な要素過ぎるしそもそも時間も無い。しかし、さっきよりも風の揺らめきが薄い。もしかしたら……核の方を維持してると自分の方の密度に制限が出来るのかもな)」
「…ふぅ、あと3分、俺がここで粘らせてもらう……恨むなよ」
「(決めるならここだ!)…このまま大人しくしてる訳ないだろ!脚部装甲、ブーストッ!!」
「!?…ぐっ……っ!」
予めガントレットと同様に溜めておいたエネルギーを高速飛行に利用し、出来るだけ懐に入り込んだトコロでボディ狙いの右フックを放つ。風に押し返される感覚は在れど鳩尾を掠めたようで、突風を起こしながら距離を取られるながら少し呻くような声は聞こえた。
時間を稼がれまいと畳みかけるのだが………その前に、右耳にあるスピーカーに囁きかける。
「……今だ、入ったらすぐに───────」
「くっ……まだ核の方は解いてない…!まだまだ……っ!」
「…ああ!まだコアの溜まってる分がある、コレ食らえば流石に気絶してくれるよなぁ?」
「……そんな大技、避けやすいだけだろ」
「さあどーかな?撃ってみなきゃ分かんないかもな…!」
「っ……!(…何か仕掛けが……?)」
「いくぜっ、食らいやがれ……!…───────
─────“ビリビリビーム”…だっけか?」
「(っ何、わすれ……────)…………っっ!!?」
「はぁはぁ…間に合った…………」
死角で隙を窺ってた稲生による電磁波は楓馬の背中に届き、彼が構えていた身体を前のめりに崩していった。
…いくら風を纏っていたと言えど、稲生が放った閃光は楓馬の身動きを止めるには十分なモノだった。
「…すまんな楓馬、不意打ちで………大人しく捕まってくれ」
「くっ……くそ…………!」
───────………