緋色の英雄   作:kozmo78

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第17話 不相応な約束

 

 

「今日は買ったなー…コレちゃんと使い切れるのか?」

 

「一人暮らしは必要なモノが多いの。それに明日の事もあるし……飛威炉や菟希ちゃんも来るんだからそんな時に用意が無いとか恥ずかしい思いしたくないの」

 

「それは有難い話だな……菟希も絮吏儕入って忙しそうにしてるし、事あるごとに『璃亞さんに会いたい!』って言ってたぞ」

 

「あら、やっぱり菟希ちゃんは嬉しい事言ってくれるわね。…何処かの誰かさんにも見習ってほしいわ」

 

「はいはい………ちょっと待ってて、電話してくる」

 

 ここ最近増えてきた璃亞の小言を聞き流しながら左手でズボンの脇穴を弄る。…菟希と違って不真面目な男で悪かったな。

 

 

 今日は約束通り、璃亞のショッピングに付き合う事に。

 買い物も昼飯も支払いは全部俺持ち、普段の筋トレ以上の重量に成り代わった荷物も全て俺の腕に掛けられているが……上機嫌な璃亞を見れたので良しとするか。

 

 目まぐるしい生活も土日に入ってひと段落がつき、俺達ヒーロー科にもやっと一息つける時間がやってきた。

 俺としてはキツイって思う程は体力的にも精神的にも疲れていないが、金曜日の授業を終えた後のLINE画面を見ればクラスメイトたちの疲労は一目瞭然だった。

 初日の抜き打ち体力テストに始まり、行き当たりばったりに近いヒーロー基礎学の授業と実践が毎日の如く続けば疲弊するのは当たり前だろう。…印象的だったのは幽里、元々暗めな雰囲気だが気付いた時には屍の如く滅入っていたのは何処か面白かった。

 

 対して、元気の塊みたいな稲生は週の終わりには待ちに待ったみたいな顔で……───────

 

 

『やっっっと休みだー!!ねーみんな!土日にどっか遊びに行か……』

 

『午前授業の宿題忘れてないか?』

 

『あ』

 

『あの量は家で休むついでに勉強も疎かにするなってメッセージだろうな。…遊びまくるってのは無理そうだが』

 

『………予定変更!!土曜遊んで日曜は勉強会やる!』

 

『おー……勉強会の方はスマンが俺は予定あって手伝えないけどな』

 

『えーそうなの!?飛威炉くんの家なら広そうだし頼もうと思ったのに~』

 

『多分思ってる程広くないぞ………そうだ、璃亞の家はどうなんだ?』

 

『私?……まあ問題は無いわよ』

 

『良いの!?璃亞ちゃんの家楽しみなんだけど!!』

 

『最近一人暮らし初めて面白いモノは何も無いけどね、それでも良いかしら?』

 

『一人暮らし!?スゴいじゃん!!じゃあ日曜は勉強会&女子会って事で!空いてる人誘ってくるね~……』

 

 

───────……と言う訳で、今日の買い物は明日の準備も兼ねている。

 

 俺としても誘われた立場として参加できないのは少し心苦しいが“女子会”の体であれば居ても可笑しいだけなのでそこは良かった。

 それに璃亞も人気はありながら人付き合いを敬遠気味だった今までを考えると、家を貸してまで受け入れてくれたのはある意味での成長だと言える。

 

 振り返ってみると………ここまで早くに校内で交友関係が深まるのは久し振りかもしれない。

 特に絮吏儕の頃なんて、誰とも話さないって程ではないが璃亞以外で親交のある相手が居なかった身である。その時代から考えれば環境以上に変化したトコロだろう。

 

 そんな事を考えながら家への連絡を済ませて璃亞との会話へと戻る。

 

「…明依子さん、来れそうだってよ。流石にこの荷物持ったまま帰るのはキツイから頼んでみた」

 

「何だか悪いわね。……勿論、明依子さんにだけど」

 

「そりゃそうだ。俺が運転できれば済む話だけど今は免許とる余裕は無さそうだし……来たらちゃんと感謝しないとな」

 

「私も何か贈ろうかしら、明依子さんの好きなモノとか知ってる?」

 

「うーん……菟希とは料理の事とかファッションの事とか話してるのは印象あるけど具体的なモノは………ま、璃亞からのプレゼントなら何だって喜ぶと思うぞ」

 

 連絡相手は家政婦として今日も家に来てくれている明依子さんで、俺達2人を迎えに来てほしいと頼んだところだ。

 そもそも今日の予定を話した時点で明依子さん側から提案してくれた事で、わざわざ自家用車を出してまでの送迎は気が引けて断りかけたが『遠慮は要らない』とも言われ……結果的に帰りの移動を手伝ってもらう話に落ち着いた。

 

 俺もあの人からの助力は多いし何か恩返ししたいのは同じだが………考えてみると明依子さんの趣味嗜好とかそこまで詳しい事に気付く。

 母さんの事とか家事とかでいつもホント助かっているが日々ずっと家に居るって訳ではない。昔は違うが、ここ最近は週3,4日だし夕飯作り終えたら帰ってしまうので世間話をする機会も少ない。加えて俺の場合は個性練含めたトレーニングと勉強でリビングに顔を出す機会も少ないので尚更だ。

 

 …そう考えると、こういう部分でも昔の自分のコミュニケーションにおける積極性の乏しさを感じる。

 

「折角いつも助けてもらってるのに何となくじゃあ嫌なの。…明依子さんに適う気はしないけどいつか料理を振舞ってみようかしら?」

 

「良いんじゃないか?時間さえ合えば喜んで引き受けてくれるだろうし」

 

「互いに忙しい身としてそこが一番難しいか『プルルルル』……あら、また鳴ってるわよ」

 

「ああスマン。明依子さんからか?………え」

 

「どうしたの?」

 

 待ち合わせ場所の確認で折り返してきたのかと思ったら………画面に表示されている名前は全く違っていた。

 『天蟲久悟』───────……父親とか父さんとか分かりやすく設定もしていない本名のまま、LINEの通話機能の画面に切り替わっている。

 ここ最近は家で面と向かって話す事も減った訳でましてやこんな時間に電話を寄越す事なんて滅多に無い。余りにもイレギュラーな出来事に少し思考が止まってしまった。

 

「……父さんからだ」

 

「え?本当に?」

 

「聞いてみなきゃ分かんないな、確かめてみる……──────

 

 

───────…もしもし」

 

『…急にすまないな。今大丈夫そうか?』

 

「一応な。……あまり待たせると璃亞に悪いんで出来るだけ早めに済ませてほしいけど」

 

『そうか、璃亞と一緒だったか。…と言う事は今何処か出掛けていないか?』

 

「ああ。駅近くのショッピングモールで買い物を終えて丁度帰ろうとしてたトコロだけど………それがどうかしたか?」

 

『あそこか、ならそこまで遠くは……いや折角璃亞ちゃんと出掛けてるのに悪いか………』

 

「………?」

 

 父さんにしては珍しく歯切れの悪い口調で口篭もっている。普段は家族相手でも冗談少なく毅然とした態度で話すのに、まるで電話の向こうで何か悩んでいるように言葉数が減っているのが感じ取れた。

 何か俺が必要な事情でもあるのかとは思うが、明依子さんとの待ち合わせもあるし俺の方から話を進める方が良いかもしれない。

 

「明依子さんにそろそろ迎えに来てもらう事になってるんだ。俺に何か用があるって事で良い?」

 

『…そうだ。ここで遠慮しても話が進まないだけだな、単刀直入に言おう……今からARC関東第12支部に来てくれ』

 

「今から?豪く急だけど何かあったのか?」

 

『今日は業務提携しているサポートアイテムを主体とした企業とのミーティングがあったんだが、その代表が飛威炉に会いたいって言いだしてな』

 

「ホントに急過ぎないか……?ってか会社の伝を使って俺に会おうとするような話は俺に知らせる前に断ってるって言ってなかったか?」

 

『その代表が古くからの知り合いでな、予てから会わせろと煩く頼まれてはいたんだが飛威炉の予定を交えて誤魔化してはいたんだ。だが………飛威炉が雄英に入った以上話が変わってきてな」

 

「ああ……立場的に会って損は無い状況って訳か」

 

『話が早いようで助かる。言うには今回の飛威炉の戦闘服コスチュームをその代表が手掛けたようなんだ。それを含めた話を出来れば今日したいとしつこく………いや根気強く頼まれたのが事の顛末だ』

 

 話し始めは聞き覚えのある内容で今更感もあったが最後まで聞けば想定外の部分もあった。

 

 今週初めて目にした戦闘服、アレは話の中心となる代表とその企業が手掛けたモノだったのか。幾ら注目度のある存在と言えど1人の生徒の被服控除に介入するのは本来在り得ない話だろう。

 どうせ俺の存在は父さんとの付き合いが無かろうと知っていたんだろうが、顔馴染みの息子に持つ関心にしては度が過ぎている気もする。即席で超多忙の父さんを巻き込んだスケジュールを組んだのは余程の期待が俺にあるのだろうか。

 

『…この話を断ってもらって構わない。しかし、飛威炉にとってもメリットが無い話ではないと思っている』

 

「いや、メリットデメリットがどうとかで判断するのは良くないし……深刻そうな感じだけど俺としては断る気は無いけど」

 

『……そうか、すまないな』

 

「ただし璃亞が駄目って言ったら行かないからな。…関係ない璃亞を巻き込むのは嫌だから」

 

『分かった、璃亞との話が済んだらまた連絡してくれ。もし来れたら1階の受付に向かってくれればいい』

 

「了解、後で連絡する。じゃっ───────……」

 

 世間話とか他の話題はせずにさっさと通話を切り上げる。用件は理解できたのでまず璃亞の方へと顔を戻すが……話さずとも電話内容を察してるようにも見える。

 …まあ俺の会話自体はすぐ横で聞いてたんだから、内容は分からずとも何聞こうとしてるかは予測できるだろうな。

 

「メリットとか巻き込むとか、面倒臭そうなモノが聞こえてきたんだけどー?」

 

「…ごめん、急な予定が出来た。今からARCに来いだって」

 

「珍しい……と言うよりそんな話初めて聞くんだけど…」

 

「何やら会わせたい人が居るらしい。俺の戦闘服にも関わってるみたいなんだが………どうだ?」

 

「“どうだ”って……行きなさいよ。ずっと忙しそうだった久悟さんが折角誘ってくれたんだから断る方が可笑しいじゃない」

 

「良いのか?璃亞の為の約束なんだし嫌だったら断ってもいいんだからな?」

 

「私がそんな融通利かない人だと思ってないでしょ。またいつか埋め合わせてもらえば良いわよ………埋め合わせの埋め合わせになるけどね」

 

 今日の買い物自体、初日に色々あった為の埋め合わせだ。ショッピングに付き合うってのが約束だったけれど1日全部璃亞の為に行動するって決めてたから、行くかどうかの判断は任せようと思っていた。

 言うように融通利かない頑固な性格だなんて思った事は無……無いけど、こっちの事情を察して承諾してくれたようだ。

 

「分かった、明依子さんが来たら荷物家に送ってもらうついでに近くで降ろしてもらうか。時間的にはあと………3,4分ってトコロか」

 

「?……えっもしかして、私も行くの?」

 

「…ん?ああ、俺はそう考えてたけど」

 

「聞く限り私が同行しても邪魔になる気がするんだけど……」

 

「邪魔も何も1人で来いとも言ってなかったし問題無いだろ。それにいずれヒーローとして成功を収めるであろう有望な生徒が門前払い食らうとは思えないしな」

 

「それは自信満々過ぎない……?ま、まぁ飛威炉がそう言うなら信じるけど…」

 

 満更でもないみたいな表情だし納得してくれたって事で良いだろう。

 向かう先に居るのはサポートアイテムを専門とする技術職エンジニア、加えて父さんの知り合いって話だから立場もそれ相応にはある筈だ。俺も璃亞もヒーローを目指す身として会う価値は確かだ。

 

 …逆にARCに行って『飛威炉にしか用は無い』と言ってくる聞き分けの無いタイプだったら面倒だが………まあ何とかなるだろう。

 場合によっては政治色の強い詰まらない話だって在り得るが、その時はその時だ。もしそうなったら終わった後に父さんに文句言ってやる。

 

 

 

 

 

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

 

 

 

 

 

 車を走らせて約10分、賑わう市街を離れた場所に聳え立つのが“ARC関東第12支部”。

 

 雄英の校舎にも劣らないビル群に忙しなく行き交う救急車が郊外にある近域を活性化させている。

 それもその筈でARC自体が国内に60棟以上を構える救急専門の病院兼ヒーロー派遣施設であり、この敷地内だけでヒーローを含む重傷者の医療や支部毎に指定された範囲の救急受付、ヒーローと救急隊の派遣やそれに付随する武装準備やその他諸々…………と言った救急に関わる全てを執り行う環境だ。

 

 普通であれば部外者である俺達が入っても迷惑でしかないが一応顔パスはある。別に俺はココに入り浸ってる訳ではないが代表取締役の息子となれば流石に知っているようで苦にせず院内に入ることが出来た。

 東棟の2階会議室に居るとの連絡で言われた通りに扉の前まで来てみたが………

 

「「────……失礼します」」

 

「来てくれたか、出迎えできなくてすまない。立場上人前に出てしまうと下手に注目を……

「キミがあの“天蟲飛威炉”なんだね!!?やっっっと会えたねーほら握手!!」

 

「!ッ………まあ、はい」

 

「…友人の息子だからって遠慮ぐらい考えてくれ」

 

「ずっと昔から待ち望んでいたんだから許してよ~!」

 

 部屋に入った途端声高に歩み寄ってきたのが件の人だろうか。確か医者ではない筈だが父さんに似た白衣を身に纏ったこの女性、勿論見た覚えは無いが様子を見る限り……俺への関心はひどく明白だな。

 初対面にも関わらず強引にでも手を取る様に気圧されそうになったが、何も話が見えていないのに黙ってても意味が無いのに気付く。

 

「私に何か用でしょうか?…先に伝えておきますと、今回提供して下さった戦闘服はとても気に入っています」

 

「そんな畏まんないでよ~アタシは飛威炉くんが小っちゃい時から知ってるんだからー………あれ?隣の子は?」

 

「瑞銀璃亞って言います。飛威炉の……クラスメイトです、もし邪魔でしたら部屋から出ますので……」

 

「ミズガネ………ああ!推薦入学の!名簿もらった時に見た覚えがあるよ、こんな可愛い子だったんだねー」

 

「璃亞、予定の邪魔して申し訳ない。こんな突拍子もない話、来てもらったのだから意味のある話にさせてもらうよ」

 

「いえいえ別に……私が押しかけたようなモノなので」

 

「えーあの久悟先輩が仲良くしてるって何その話ー!そっちも面白そうなんだけど…………そう言えば名乗ってなかったね!アタシは栗衛愛穂くりえいとほ、“KURI8クリエイト”の社長だよ!」

 

「えっKURI8って最近話題になってるサポートアイテム会社の!?社長が表に出ないからその点でもテレビで話題になってたけど……この人が…」

 

 璃亞は驚いていたが、メディアに興味の薄い俺としては目の前に居る本人の名前を知ってもピンとはきていない。

 …がKURI8と言う企業名は憶えている。戦闘服を目にした時点でケースにも各装甲にも記載されていたのには気付いていた。俺の知識じゃあサポートIアイテム企業なんて大手のトコロしか知らないから興味が少しだけ湧いたのに、この1週間が忙しすぎて脳から抜け落ちていたのをこのタイミングで思い出す。

 

「ホントは今日終わらせなきゃいけないタスクぐらい積もる話はあるんだけど………多分ここに居る全員が時間が無さそうだし仕方ないか~。ね?久悟先輩?」

 

「そうだ。出来るだけ簡潔に済ませてほしい」

 

「ん~じゃあ先ずは何故アタシが飛威炉くんの戦闘服を手掛けた、ってかどうやって手掛けられたのかから話そうと思ってるんだけどね?」

 

「確かにその点は気になってました、たかが1人の学生にやる施しではないでしょうね」

 

「ハッキリ言うねぇ飛威炉くん。…今回の戦闘服に関われた理由なんだけど、アタシも雄英出身で当然サポート科に居た身なんだよね。特にアタシみたいにチョー腕の良いメカニックには大事な生徒たちの被服控除政策に携わる話も来やすいって訳だ。巷じゃあ知られてるようだけど“雄英出身”と言うパイプはヒーロー科以外の方が強いのさ!」

 

「そうなのか?璃亞」

 

「知らなかったの?…ってこっちが言いたいんだけど。現代はヒーロー飽和社会、幾ら雄英がトップヒーローのイメージが強いと言えどヒーロー志望なんて腐るほど居るの。逆に普通・サポート・商業科は大手企業の引く手数多、キャリアアップの観点なら肩書の強みは他クラスの方が活かせる……と言うのが最近の通説よ」

 

「あー……言われてみれば確かに」

 

 ヒーローを目指す立場でしか視点を持っていなかったが、璃亞の言葉と目の前に有名らしい技術者の提供理由の一端を聞けば雄英と栗衛さんの繋がりは理解できた。

 たまに廊下ですれ違ってきた他の学科はここ1週間で関わる事すら皆無だった。俺自身1-B以外の他クラスの生徒と何だかんだ余裕が無かったからか話そうともしていないし、入学式ですら分断される1-Aである以上タイミングも無かったんだがな。

 

 とは言え、彼等も極限倍率の入学試験を通った者たちで特にサポート科と商業科は技術成長・授業環境共に専門学校としても群を抜くモノだと聞いている。

 そもそものヒーローを取り巻く状況を考慮すれば企業として欲しがる生徒は栗衛さんの言う通りであるとしても納得できるか。

 

「元々飛威炉くんが雄英に行くのは聞いてたけど戦闘服製作の参考にもらった入学試験の映像を見た時………もう惚れ惚れしたよ!あそこまでの活躍、ここ何年かでも見た事が無かったね!」

 

「だから……あそこまで俺の『個性』に精通した装甲を造れたのですね、流石の腕だ」

 

「お!良い事言ってくれるじゃん!って言う訳で雄英の何人かの生徒も手掛けてるんだけど飛威炉くんの分は意地でもやりたいって契約勝ち取った流れなの!実際アタシみたいなキミの所望する者は滅茶苦茶居たんだけどやっぱりソコは運命が導いてくれたって事でしょ!ねえ久悟先輩!!」

 

「…覚えてないのか?雄英からこちらにも話が来て渋々指名しただけだが」

 

「リアル思考な話は今要らないの!そっちのが後のトップヒーローの逸話っぽいじゃん!!」

 

 変に見栄張ったトコロを看破されてしまったが今の話で少なくとも俺に相当な期待をしてるのが分かる。

 生徒が知らない裏側でサポート事業としても話が進んでいたようでまあ簡潔にまとめるなら……俺をトップヒーローに成れる程だと見込んでくれたようだ。想像以上のモノを寄越してくれた今となっては入学試験で手を抜かなくて良かったとも言えるな。

 

「だから、今後とも御贔屓に……って話をしたかったんだけど!」

 

「………?」

 

「折角だからさーもう少し面白い話をしておきたいんだよね~、ってかソレが今回1番のトピックだね!」

 

「来月の中旬。何があるかは知っているよな?2人共」

 

「“雄英体育祭”……ですよね」

 

「そうソレ!日本で開催されるイベントでナンバーワンの注目度を誇る、1年に1度のお祭り事だね!!特に君たちヒーロー科にとってはゼッッッタイに無視できないのは言うまでも無いけど!」

 

「多くのヒーロー・企業が将来の引き抜きの為に観戦され各学年の優勝者はトップヒーローの確約を貰うと言っても過言ではない……ですよね?しかし参加者は原則で体操服着用、今回頂いた戦闘服を扱う場面は無かった筈ですが」

 

「そこはホント残念だね~……ま、性能差で順位が変動するのを避ける為だから仕方ないんだけどね。だけどソコで話は終わりじゃないの!」

 

 新学期が始まって1週間、本来校内で話題に挙がるのはまだ慣れない授業についての筈なのに事の中心になっているのは雄英体育祭だ。

 あと1ヶ月ほどで迎えるその行事が持つ“意味”も把握している。

 …しかし、栗衛さんとの間では構想外のモノも存在しているようだ。

 

「聞いておくけど、飛威炉くんの目標は?」

 

「現時点で決まった目標はありませんけど」

 

「ありゃ?」

 

「…ただし、誰にも負ける気は毛頭無いです。璃亞もそうだろ?」

 

「その発言しておいて人に聞くのソレ?…まあ私もそうだけど」

 

「おお良いねぇその志!ではそんな君……いや想定はしてなかったけどそこの2人に!とっておきのプレゼントを用意してあげよう!!」

 

「「プレゼント?」」

 

「アタシたちサポート職がヒーローに贈るのは勿論サポートアイテム!とびっきりのモノを用意してあげよう!!」

 

「へぇ………」

 

「わ、私も良いんでしょうか……?」

 

「元々の予定は違ったけどその方が面白そうじゃん!君も優秀だって話は聞いてるんだしこれも運命って事で良いじゃん!!」

 

「…ただし、飛威炉に関しては私から条件を加えさせてもらう」

 

 栗衛さんからしたら俺だけに用があったかもしれないが璃亞も含めて商品提供を考えてくれたようだ。

 現時点で分不相応な話ばかりで損得勘定では成立しない気がしてならないが、父さんが話に絡んでくる以上そんな甘い話は無いと理解している。

 

「アタシはそんな風に思ってないけどね~ココで恩売っておけばより良い関係築けるって言うのにー」

 

「契約相手の前で言うなそんな話。璃亞の方は是非任せるが飛威炉に戦闘服もくれてやってるのにまた甘やかすのは飛威炉の為にもならん。次の体育祭で結果出さない限りプレゼントなんて贈る必要はない」

 

「…結果って?」

 

「優勝で手を打とう」

 

「っ………!飛威炉……」

「優勝!?ひゃ~これは手厳しいねぇー……良いんだよ?アタシとしてはあの舞台で良い感じの活躍してもらえば早くに見込んだアタシの株も高まるし断っちゃってー?」

 

「断っても良いぞ?だが……そもそも体育祭で不甲斐ないようだったら今後栗衛との契約は無かった事とする。実力の足りない者に過分な期待なんて背負わせてはいけない……それで良いな?」

 

「もっと手厳しー!?言い過ぎじゃない!?」

 

 優勝、と来たか…………確かに難しい条件だな。

 

 俺だって過去の体育祭は観た事がある。近年話題に挙がるヒーローが若き日の活躍として口々に言うのがソレだ。雄英に来る者ならその日自分に脚光を浴びるのを夢見て入学するのだろう。

 …だがしかし、簡単にはいかない。

 名の通ったヒーローでも全員が全員優勝してる訳ではない。それどころか早々に敗退して決勝トーナメントに名が無い事だって憶えのある事だ。

 そんな難題を1年次で成し遂げろって無茶な話だが……───────

 

「オッケー分かった、それで良い」

 

「マジ!?」

 

「負ける気は無い……そう言っただろ?その話があろうが無かろうが目の前に現れる障壁に挑み続ける、ここで『3連覇しなきゃ認めない』とでも言われようが変わらないさ」

 

「…良いだろう。来月、楽しみにしているよ……それで良いな、栗衛」

 

「アタシに聞いちゃう!?ま、まぁ2人が納得してるならいいけど……」

 

「んじゃまぁ……帰るか。璃亞、行こうぜ」

 

「そうね。…でも、連絡先ぐらい交換しておいた方が良いんじゃない?」

 

「ああ忘れてた………連絡先はコレで、もし戦闘服で何かあったらまた…───────」

 

 

 久し振りに感じる休日にしては話が飛躍し過ぎたが───────……結局はいつも通りだ。

 

 まあ1ヶ月後に迎える身がより引き締まったって感じだ。

 雄英体育祭、強敵になりそうな奴は何人も居るが楽しみなのはやはり隣の璃亞……だな。何度も特訓を共にしてきたがしっかりと拳を交えた事は無い。

 大会の構成が変わらなければ最後は決勝トーナメント、直接対決が臨める場に俺の名前が無い………なんて事は避けないとな。

 

 

「璃亞。……体育祭、楽しみにしてるぜ」

 

「ふふっ、まるで優勝は余裕みたいにしてるけど………負ける気無いから」

 

 

 

 

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