緋色の英雄   作:kozmo78

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第22話 第二種目“騎馬戦”《1》

 

 

───……これで説明は以上!じゃあまず制限時間内に騎馬を作って頂戴!!』

 

「(…さぁどうするか。第一に俺と組んでくれる奴探しを最優先にしなければな……どうやったって俺が持つ1000万ポイントの鉢巻が枷になってしまう。組み合わせによって各騎馬が持つ総合ポイントは変わるにせよ、どう展開したってこの襷を狙ってくるのは明白だ。最終的に持ってる襷が1つでもコレだけで決勝進出確定な訳で、俺をチームに加えるだけで勝てる望みが低くなるだろう。さっきの種目と違って俺の『個性』が向いてるモノでもないし他の選手視点で誘うメリットも少ない……だからと言ってこのままハブられて組み合わせ最悪の騎馬が出来上がったら流石に俺も厳しい。俺を騎手として、騎馬の型さえ崩さなければ空飛んで逃げる策も考えれるが……ルール上どこ迄自由が利くのか判断出来ないな。いや、どうやって説得するか……────

 

「飛威炉、組むわよ」

「飛威炉くん!組もう!!」

「あっあの、私も……良いでしょうか…?」

 

……え、良いのか?」

 

 ミッドナイトの説明を聞き流しながら思案に耽っていたが、思いもしない誘いだった。

 

 手前に見えるビジョンに映るタイマーが刻むこの時間、このまま俺を避けて至る所で騎馬が出来上がっていく想定だったのだが、そんな考えが杞憂に終わった。

 いの一番に来た璃亞なんて引く手数多だろうし、稲生も本人の活発的なコミュニケーション能力を持ってすれば何処の組だって可能性あったし、幽里は……………まあ多分『個性』自体知られてないからアレだが理解すれば解決できる問題だ。

 

 誘ってくれたのは嬉しいが、想定外の速さで問題が解決しそうで逆に気が引けてしまう部分がある。

 

「良いのか、って……何か問題でもあったの?」

 

「問題も何も状況は解ってるだろ?俺と組めば滅茶苦茶狙われるんだが……」

 

「んーでもソレ守り切れば絶対上がれるんでしょ?他の鉢巻狙う必要も無くなるし、メッチャ良いじゃん!」

 

「いやそれはそうだがな?……普通は組まないし俺を狙った方が決勝に残りやすいと思うぞ。特に璃亞なんてココで勝負仕掛けてくると思ってたんだが?」

 

「何で誘ってきてる相手に敵になった時の話してんのよ?あと、私が望んでるのは直接対決であって予選で潰し合う気は無いわよ」

 

「言いたい事は分かるけどさー飛威炉くんとやった方が勝てると思ったの!それに知ってる人との方が戦いやすいし」

 

 「わっ私は……組んでくれそうな人を見つけられる自信が…無くて…」

 

 うーん………もう少し俺の状況を警戒していると思っていた反面、危険を考慮してでも俺を誘ってくれた事実にほんの僅かだが感動を覚えた。幽里はアレだけど。

 

 『俺と組む=他チームからの狙いの的になる』と言う話を理解している以上こちらとしては断る理由は無いんで、二つ返事で応えさせてもらおう。

 …厳しい種目になるかもしれない暗い展望がこうも簡単に逆転させてくれるとは、本当に感謝したい所である。

 

「それで?組まないのかしら?」

 

「…それは勿論、是非組まさせて頂きたい」

 

「いいの?良かった~……他の人と組むとか作戦あるのかな~?とも思ってたんだよねー!」

 

「俺からは断れねぇよ。そもそもこのタイミングで誘ってくれるような人を拒む真似なんてしないし………正直、願ってもない誘いだったよ」

 

「そうなの?」

 

「ああ。まず俺以外の3人、騎馬戦向きの能力だからな。多分幽里とかはどれ程のモノか他の奴等にバレてすらいないし」

 

 「ほ、ホントですか……?」

 

「まぁそもそも同じA組でも詳しい『個性』の内容を理解してないだろーがな?で、稲生も騎手なら特に襷を狙わなきゃいけないルール上接近戦に強いその『静電気』は脅威になる」

 

「え!?ウチが騎手やるの!?てっきり飛威炉くんか璃亞ちゃんかと……」

 

「別にポイント高い奴が騎手やるルールは無いしな。それに微々たる差かもしれないけど俺が騎馬最前列に居た方が動きやすいだろ?」

 

 即席で配置は俺の脳内で完結してしまったが、騎手が稲生で他3人が騎馬を組むのが一番それぞれの役割を熟せる気がする。手前勝手で申し訳ないが。

 

 理由は今言った通りで、俺が騎手やると機動力主体のこの『個性』を生かしきれないのだ。

 それこそ誘われる前に考えてた策の俺が空中移動する奴、アレは特攻仕掛けるのには向いてると思うが防衛にはハッキリ言って意味ない、ってか面白くない。

 誰と騎馬組んだとしても特攻仕掛ける間は置いてけぼりを食らわせるような策であって、幾らこの大会で目立ちたい気持ちはあってもエゴ押し通す程のモノではない。

 

 …そして、願ってもないと思った最大の理由は。

 

「ねえ飛威炉?私だけ何も言ってくれないのかしら?」

 

「…分かってて言ってるだろ。俺の読みが如何ほどのモノか、璃亞なら簡単に分かるだろ?」

 

「ふーん……まあ良いわ。第二種目まであと12分だし、色々と作戦でも立てましょ?」

 

「そうだな、他の組は…………まぁぼちぼちってとこか。先に準備できると言うのは早い者勝ちの特権だな」

 

「ちょっちょ待って!?切り替え速くない!?」

 

 

 …実の所、璃亞さえ居れば作戦とか要らないかもな。

 コレは買い被りなんかじゃなく、今から数分後の15分間………璃亞の“独壇場”になる。そーなるって言い切れるぜ。

 

 

 

 

 

 

『~よォーし組み終わったな?!「Are you ready?」なんて聞かないぜ!!』

『いくぜ!?残虐バトルロイヤルカウントダウン!!』

『3!!!……2!!……1!…ーーーーーー

 

~~~STARTッ!!!』

 「狙うは1000万ポイント!!」

 「ってかふざけんなよ!ほぼハーレムじゃねぇか!!?」

 「舐め腐った態度、後悔させてやる!!」

 

『さぁ始まったぜェ!上位4チームが決勝トーナメントに行くんでなァどんどん潰し合ってくれよ?!』

『まーとは言っても皆が気になるのはトップの鉢巻だよなァ?!ココ奪えば絶対勝つんだからな!!』

『第一種目じゃあ文句なしのトップだった天蟲の騎馬がどーなってんだ………

 

~ってWhat?!!』

 

 

 

「…幽里、周りはどんな感じだ?」

 

 「うん……私達を狙って3組ぐらい来てる…いや、あの来てたけど…」

 

「ウチ達が気付く前に鉢巻を持ってきてるんだけど……」

 

「俺の1000万に目が眩んだ結果だな。無策に突っ込んでくればそりゃな………いや流石だよ」

 

「初手の突撃はこんなモノかしら……舐められたものね」

 

 「オイ……何だ今の」

 「何処やった鉢巻ぃ!?」

 「何か鉄みたいのが見えて…気付いたら……」

『開幕数十秒で3組の鉢巻が取られたァー?!四方から囲まれてた筈の状況を一瞬で解決してみせた!!』

 

 作戦がどうとか指示する前に決着してしまう、璃亞の早業である。

 奪われた方は急襲を仕掛けようと俺らに向かう途中だったのに気付いた時にはもう自分たちの命と言ってもいい鉢巻を失ったのだから、何が起きたかも理解し切れていなさそうだ。

 

 開幕の展開としては大体予想通りだったな。

 奪えば勝利を決定するこの鉢巻を狙ってきたのが3組。見た限りB組が中心となって構成されているようで………これも思った通りだ。

 

 実際、A組の面々は面白い位に俺達を無視して違う騎馬を狙っている。まるで誰かを恐れるように………だ。

 始まってまだ数十秒しか経ってないのに、この種目において如何に“誰”が力を持っているかを証明してくれているようだ。

 

『コレが誰の仕業かって~~……第一種目5位の瑞銀璃亞だァッ!!今大会注目株の1人、あの超有名女優“瑞銀美麗”の娘らしーぞ!!』

 

「おい、プライバシーもクソもないのかよ……」

 

「どうせすぐ知られる事なんだし飛威炉が怒らなくともいいじゃない」

 

「うわ会場メッチャ盛り上がってんじゃん、ウチも初めて知った時ビックリしたし当然だけど……」

 

 「ご家族の方って…来てるんでしょうか……?」

 

「…昨日連絡はあったわ、『お父さんも一緒に行けそう』って。会場のVIP席とかに居るかもね」

 

「そうか、後で挨拶しに行かなきゃな」

 

「飛威炉の方も来てるんでしょ?菟希ちゃんなんてずっと楽しみにしてたし。私も行きたいわね」

 

「菟希ちゃん来てんの!?璃亞ちゃんから写真は見せてもらったから知ってるんだけどね?ねえーウチも会っていい?!」

 

「良いんじゃないか?ワンチャンこう言う場だから家族自体忙しい可能性もあるけどな」

 

『楽しそうに話してんじゃねーか!?ヨユーそうだなオイ!!』

 

 実況席からのツッコミ食らって如何に緊張感のない雰囲気なのかが分かるよ。

 進出の為に激しくなる一方のこの戦場で家族がどうとかの与太話してるのはここぐらいだ。プレゼントマイクが騒ぎ立てた事もあってまたヘイトが高まりそうだな。

 

 さっき教訓もらったばっかりなのに緩みすぎとも思うが、とは言え今回はチーム戦なんで話は別だ。俺だけ気を吐いても足並み整えなければ瓦解する場合だってあるしな。

 

「璃亞ちゃん強すぎ!!守らないとって思ってたら鉢巻増えちゃったよ?!」

 

「フフッ上手くいったのは最初だけよ?」

 

『早速得点が動いたがー……1位にポイントが集まっただけだな!!鉢巻無くなっても脱落はしねーがキビシー勝負になるぜェ?!』

 

 …まぁ、今だけは問題無いだろう。

 璃亞の『個性』“流体金属”、この能力はまず初見じゃ対策しきれない。

 

 騎馬って言うのは簡単に身動きの取れないモノだ。余程統率された騎馬でもない限り瞬時に反応したり空に逃げたりできないのは何処だってそうで、ポイント稼ぐために攻めなきゃいけないのに下手に動けば連携崩してピンチになる………そんなジレンマを抱えてしまう。

 

 そんな状況下で俺達に挑もうとしても、手足のように自由の利く金属の塊に対応しろってのは難しかったようだ。

 金属自体の多さはそれこそ掌に近いが早さは俺が『個性』使って空飛んでやっと逃げ切れるスピード、そんなモノが縦横無尽に飛んでくるなんて騎手からは至難の業だろう。

 

 ……で、それに加えて。

 

『オイ!!5時の方向から来てんぞ!!』

 

「分かったわ。行きなさい“流銀操掌るぎんそうしょう”!」

 

「…にしても違和感凄いよね、芳乃っちにこんな人格あるの」

 

 「人格と言うかその……私であって私でないと言うか…」

『オレはコイツみたいな臆病じゃねーよ!!一緒にすんな!!』

 「…だそうです」

 

「俺も最初見た時は同じような感想だった。ま、確かに視えてなかったら勘違いしやすいよな」

 

 幽里の『個性』“守護霊”………と命名しているらしい。

 “らしい”と言うのは、『個性』が特殊すぎて1つの名前に括るのが難しい事から一番それっぽいモノを選んだようだ。

 頭上で幽里とは真逆の凛々しいような荒々しいような口調で指示をくれ、カバーできない背後の情報を手に入れてくれている。流石の璃亞も全方位見渡すのは無理だけど頭上に司令塔が居れば強固な守備を張ることが可能だ。

 

 この霊体……幽里曰く『カクリヨ』が移動範囲こそ狭くとも視界確保としては十分すぎるし、多少の物質ならこの状態でも干渉できたりする。

 パワーとしては人並で今俺達は幽里に触れてるから視認できるけど、傍目からでは正にポルターガイストに近い現象が起きていると錯覚するだろう。…実際、『個性』だと思わなけりゃその通りだな。

 

 そして、幽里の精神を入れ替えると身体能力の強化も可能。その場合他人からはハテナが浮かぶ程の性格の変化と、元に戻った時の代償に極度の疲労をもたらす…………と言った、何とも癖のある『個性』だな。

 

 

「それにしても皆攻めてこなくなったよねー」

 

「璃亞の実力を知ってるA組主体の騎馬はまだ攻めてこない、且つ鉢巻を失った3組が体制を整えに鳴りを潜めるとなるととまーこうなるだろうな」

 

「あと……12分切るところか、まだまだ長いわね」

 

「ウチ的にはこのまま何も無く進んでほしいんだけど、どー思う?璃亞ちゃんメッチャ強いしもしかしたら取られるの恐れて……」

 

「残念だがそうはいかん。攻めてくるのはまだ・・だからな」

 

 「分かるんですか…?……私はいつ来るかってずっと心が…」

 

「早くに奪っても今のヘイトが移るだけでしょ?だったら時間ギリギリかある程度の準備整えてから来る筈よ」

 

「ああ。ほらあそこ………仰木のとこが今鉢巻取ったろ?今の内に保険掛けてるんだよ、俺達との戦闘に時間使っても進出できるようにな」

 

『ココで動きが!!総合得点2位だった仰木チームが新たな鉢巻を手に入れたゼェ!!さぁさぁもっとカオスを引き起こせルーキー共!!』

 

 

─────……

 ……そんな実況を聞き流しながら時間が進んでいく。後に隙を盗んだと思ったのか何度か騎馬も来ていたが特に脅威にもならなかった。

 それどころか今のトコロ俺はほぼ指示だけで何もしてないな。第一種目トップの名が廃るって感じだ。

 

 

 開幕から約10分、戦いとしては膠着状態に近い。

 鉢巻の奪い合いも開始5分経ってからほとんど収まり、結局は最初の総合ポイント順のままである。観客からしても盛り上がりが少ない内容にも捉えられかねない。

 

 だが、こっからは激しくなるんだ。

 実況の5分を切る合図を口火に上位勢が会場中心で対峙し始める。

 

 

「来たか……」

 

「トップの鉢巻、奪いに来たぜ?直接天蟲とやれねぇのは残念だがな」

 

「全くだ。…折角のチャンスだったのに」

 

「駄弁ってんじゃねえよ。ヒーロー科はおしゃべりの方が好きなのか?」

 

「おー言うじゃねーか。でもそんな事言っておいてヒーロー科と組んでんじゃねえか六埜?」

 

「…一時停戦だ、決勝へ行く為だけに組んでんだよ」

 

『さぁ残り5分を切ったァ!!そして現在トップ4が中央に揃ったぜ?!やっとこさ面白くなってきたー!!!』

 

 真正面には仰木を騎手とする、仰木・潟岩・矢峙・彩の騎馬。

 俺達と同じA組のみで構成されていて、現在次いで2位の座に着けている。

 

 右手には楓馬を騎手とする、楓馬・蟻明・蝗賀・蝶野の騎馬。

 ココは完全なる“虫系個性”連合軍プラス楓馬みたいなモノで、元々総合2位でありつつ迫りくる騎馬達を遠目でも分かる連携で見事捌き切っていた。

 

 そして左手には六埜を騎手とする、六埜と浮島と………あとB組の誰かとサポート科っぽい奴と組んだ騎馬。

 仰木の言うようにあんなにヒーロー科を敵視していた六埜だが浮島たちと組むんだな。別に文句も無いし、六埜の『個性』も知らない以上実力が分からなくとも現在4位に着いているのが体育祭への覚悟を示してる。

 

「何かウチが騎手やってるの場違いな気がしてきた……」

 

「気にすんなって。あと5分耐えれば終わりなんだ、簡単だろ?」

 

 「簡単ではない、ですっ……」

 

「覚悟決めましょ?ここからが正念場よ」

 

「怪我しても知んねーからなぁ?…まず彩と矢峙!!」

 「分かりましたわっ!」

 「……仕方ないですねッ」

 

「(彩の“花肌”を矢峙の“矢印”で加速か!)璃亞と幽里で出来るだけ守ってくれ!」

 「分かったわ!」

 「…うんっ!」

 『ああ!!』

 

 彩からひらひらと舞い上がりながら飛んでくる花弁はなびらが空中に浮かぶ矢印に似たマーカーに触れた途端、急激な加速を得て攻撃的な花吹雪を生み出した。

 

 璃亞と幽里に対応してもらうが何枚かは守り切れないな。

 威力はそこまでだが手数が多く、稲生の頭にある鉢巻に纏わりつき始めている。このままだと………何が起こるか分からない、早急に対処しなければ。

 

「稲生!鉢巻振り回してでも、いや静電気使って取り除け!下手に付きまくったらそのまま持ってかれるぞ!」

 

「わっ分かった!」

 

「そんな暇あるかぁ?だったら貰ってくぜその鉢巻!!」

 

「ヤバ!?」

 

「(飛んできたか!)お前のとの交換でもいらねえよ、璃亞!」

 

「“流銀天蓋るぎんてんがい”!!」

 

『空からの奇襲をかまくらみてーな壁で防いだーッ!!まず仰木が飛んでんのは良いのか?!』

 

『騎馬が崩れなければヨシ!!よ!!』

 

『らしーぜテメーらッ!!』

 

「おっと……守られちったか。まーいつまで持つかよな?」

 

「楽しそーなトコ悪いが俺達も居るからなー?」

 

「っち、邪魔すんなよ。ならお前等の鉢巻貰っていくぜ!」

 

 …ドーム型に展開された金属のおかげで仰木の襲撃を防げたが危険な状況には変わりない。

 蝗賀たちの横槍は入ったのは助かったけどその助け舟すらも結局は敵な訳で、すぐに与えられた数秒の中で突破口を導き出さなければ……。

 

 まずそうだな………戦場の中に上手く隔てられた天蓋の下で不安がる2人をどうにかしなきゃな。

 

 「どうすんの飛威炉くん?!早速追い詰められちゃったよ?!」

 「やっやややばいよぉ……」

 

 「落ち着け。璃亞、上のコレどれぐらい持つ?」

 

 「仰木たちに叩かれ続けたらキツイわね。威力次第であと1,2分ほど……かしら」

 

 「稲生の方も、その鉢巻大分持ってかれそうになったんじゃないか?」

 

 「うん、花弁に引っ張られて……も少し付いたらヤバかったかも」

 

 見ると誰にも引っ張られてないのに自然と動いている。

 彩の『個性』“花肌”は生み出した花弁を自在に操るモノ、1枚1枚に力は無くとも一輪の花ほどにもなれば人の手に近い引力を引き起こす。

 

 矢峙の方は“加速ベクトル”で触れると指し示す方向への加速度を付与する矢印型のマーカーを生成できる。速度を手に入れれば漂う程の速さが強風に吹かれたモノにも近くなり、璃亞の力でも防ぎきるのは不可能に近い。

 今みたいに隔離すればその花弁も他からの攻撃を拒絶できる、が今だけだ。

 

 防御において無敵にも近い“流体金属”も限界はあるのだ。

 生み出した金属への物理的衝撃は本人への疲労へと繋がる………文字通り金属疲労だな。そもそも過度な威力の衝撃には硬化状態を維持できず、盾としての効果を失ってしまう。

 

 現状他の騎馬同士でぶつかり合ってくれてるが、もし今の状態で集中砲火を食らったら1分と持たない可能性だってある。

 四面楚歌のこの状況、打破するには一筋縄ではいかなそうだ。

 

 「カクリヨ、どうなってる今?」

 

 『3組で衝突、鉢巻に動きなし!蓋無くなったらいつでも攻めてきそーだ!ってか命令すんなよ!!』

 

 「分かった(…解除したとして地上戦のままだったら格好の的、空に逃げても仰木と楓馬の騎馬に追われて………最悪鉢巻取られて騎馬崩壊。どれを選択するか……)」

 

 「飛威炉、どうする?」

 

 「…よし決めた。璃亞、10秒後に解除して皆を俺に固定してくれ。1回空に逃げる」

 

 「分かったわ。けどその後は?」

 

 「璃亞は一旦そのままにしておいて消耗を抑えてくれ。空中は俺と幽里で捌いて残り1分切ったら任せる。稲生はまた来るだろう花弁とかを叩き落としてくれ、良いか?」

 

「うん!」「ッはい…!」

 

「じゃあ………行くわよ!!」

 

『遂に天蟲チームがガードを解除した!!残り3分と少し、さぁーどうなる?!』

 

 

 …こんなヒリヒリする展開は久し振りだな。だからこそ、今まで以上に勝つ価値があるってもんだ。

 

 熾烈を極める第二種目、この正念場乗り越えて約束のトーナメントへ行かなきゃいけないんでな………1位の座は譲ってやれないんだよ。

 

 

 

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