緋色の英雄   作:kozmo78

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第24話 お呼ばれ

 

 

 

 

………~~TIME UPタイムアップ!!!』

 

『早速上位4チーム見てみようッ!!』

 

『1位 天蟲チーム!!』…メンバー:天蟲・瑞銀・稲生・幽里

 

『2位 仰木チーム!!』…メンバー:仰木・潟岩・彩・矢峙

 

『3位 楓馬チーム!!』…メンバー:楓馬・蝗賀・蝶野・蟻明

 

『4位 六埜チーム!!』…メンバー:六埜・浮島・甲斐・布崎

 

『以上4組が最終種目へ……進出だァァーーー!!』

 

 壁を解除したら聞こえていた以上の歓声が轟いていた。

 得点の変動だけなら面白い試合じゃなかったと引き起こした張本人が言いたくなる位の展開な気はする。会場の盛り上がり的には許してくれた戦い様だったのだろう。

 

 周りの雰囲気は………浮かれた選手は居ないな。

 制限時間の半分で決まっていた順位で終わったし最後とか不本意な膠着状態だったからな。勝負事でよくある『滑り込みでギリギリで突破』……みたいな感情を揺さぶるシーンも魅せようのなかった内容だ。

 決勝トーナメント進出組も晴れやかな表情のは少ないのか。

 

『これから1時間程昼休憩挟んでから午後の部だ!! また会おうぜッ!!』

 

 実況の指示も終わって反省の声も耳にする中、文句あろうが無かろうが一緒に戻らなきゃいけない控室へと進路を共にする必要がある。

 決着を考慮すれば帰り道でも恨みが聞こえてきても仕方ない。実際、文句の無い勝利を成し遂げるのなら勝ち方も考えなければいけないのかもな。

 

 …今更生意気なこと考えても意味合いか。

 得点的には断トツトップだし、勝ったんだから特に心残りも無いんでな。ちゃんと稲生たちも喜んでるし。

 

 後の展望も見据えながら歩いてると璃亞が隣にやって来た。

 個人的には第二種目のMVPで客席に居る筈のスカウトの目には絶対に評価の対象に映った気がするな。

 …俺から誘って組んだ訳じゃないが、誇らしい気分でもある。

 

「飛威炉、先に食べに行くの? それとも先に挨拶しに?」

 

「まぁ……戻った後の連絡次第だな。こっから俺ん家と璃亞の方に挨拶行って、多分居るであろう栗衛さんのトコにも行って飯も食いに行って………そんな時間無いな」

 

「そう言えば種目中にそんな話してたわね。状況が状況なだけに忘れてたわ……」

 

「あーあとアレか、稲生たちに菟希紹介しなきゃな」

 

「予定だと組み合わせの発表の後にレクリエーションあるみたいだけど出れなさそうじゃない? 別に強制じゃないんだし良いんだけど」

 

「実際出るかどうか迷ってたんだがな。…思ってたより疲労が多いってのもある」

 

「補助したとは言えほぼ3人背負って2分間飛んでたんだから当たり前でしょ? 私も休むから付き合いなさい」

 

 付き合うって………別に一緒じゃなくても良くないか?

 場合によってはトーナメントの初戦で当たる可能性だってあるし、もしそうなったら正直気まずいだろーし……

 

 …とは言わないでこう。文句垂れて何言い返されるか想像がつく。

 

 控室に戻ったらまず連絡の確認だ。

 残すは決勝トーナメントのみで、お互い伝えておきたい話も生まれてるかもな。栗衛さんとか特に、気持ちとしては嬉しいけど今は決めきれない将来的な提案が積もりまくってる気がする。

 『次の戦闘服は全身兵器に…』とか『エネルギー燃費の改善の為に第二のコアを…』とか、な。

 

 他の生徒よりも一足早く着くと何処か解放された気分になる。

 気を張ってた、と言い切れる程に思い詰めてた実感は無いのだが……何だかんだ精神的にまだ未熟な部分はあると認めようか。

 さっさと連絡云々を確認して今後予定を………ん? いやっえー…そうなるか……

 

「どうだった?」

 

「…いや面倒臭い事になったなって」

 

「何よ、また誰かに呼び出されでもしたの?」

 

「呼び出されたのはそうなんだが、メンバーはさっき話した面子通りでな?」

 

「じゃあ良いじゃない」

 

「呼び出し人が全員一緒だ、って言ったらどう思う?」

 

「…じゃあ良くないじゃない」

 

 連絡の文面はこうだ、『時間出来たら来賓席に来てくれない? 璃亞ちゃんのご家族と糸穂さんと一緒に居るから丁度会っておきたいの』……ってな。

 

 母さん達が来てるのは聞いてたけどこのタイミングで揃ってるとは……。

 事実を知った璃亞も嬉しそうには見て取れないって表情だ、少なくとも望んだ展開だと呑み込めていなさそうだ。

 

「え? 何で一緒に居るのよ。栗衛さんと天蟲家が一緒に居るのは分かるけどお母さん達は関係ないでしょ……」

 

「まず俺ん家と美麗さん達が俺らの知らぬ間に話でもしてて栗衛さんがそこに面白半分で突っ込んできた………みたいな感じじゃないか?」

 

「面白半分は言い過ぎだと思うけど概ねそうかもね。飛威炉と栗衛さんってそんな仲良くなってたの?」

 

「仲良いと言うか逐一連絡は取ってるぞ。最早約束関係ない位に俺の要望通したサポートアイテム作ってるみたいでな、璃亞の方にも連絡来てるんじゃないか?」

 

「…ん、いやそっちは久悟さんが体育祭終わるまで……みたいな話つけてるんじゃないかって思ってただけ。それだけだから」

 

「そうか。場所は来賓席の方だってよ、行こうぜ?」

 

 璃亞の視点から見たら確かにそうか、結構厳しい父さんだったら『飛威炉、まだ結果も残してないヒーロー志望なんだから楽な補助なんて認めないからな?』とか言いそうでもある。

 

 ってか実際言ってたけどな? 俺にも栗衛さんにも約束達成前に大切な時間使うなって釘は刺されているが………もう栗衛さんの知的好奇心は俺の手から離れている。

 

 ワンチャン叱られる可能性だってあるけど、ソレは仕方ないか。

 俺からもきつく言うべきだったと後で反省すればいいだけで………嫌な未来には腹決めてるんで、早く会いに行こうか。

 

 

 

 

 

  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

「待ってたわよ、2人共」

 

「璃亞さん! 凄かったよさっき!!」

 

「ありがとね菟希ちゃん♪」

 

「飛威炉くん! 正直言って見込んだ以上だったよ! もー早くに『KURI8』がスポンサーやってますって言いたい位だったよ!!」

 

「ソレは面倒な事になるから止めてくれ」

 

 他の階層とは空気感も違うこの来賓席VIP席、何処も彼処も見た事があるような(俺は知らん、菟希と璃亞が言うには有名人の巣窟らしい)正に出来るだけ人目を忍ぶ為の環境だ。

 観客席にしてはパーテーションも多いし高級バーみたいな飲食エリアとか設けられてるし、過去の経験でこういう場に慣れてないとは言わないが好みではない雰囲気である。

 

 …とは言っても入口で俺たちと待ち合わせしてるってだけで名も知らない著名人の視線が集まってしまったのだが。

 

 片やヒーローの支援者の第一人者の筆頭と、片や国内で多大な人気を博す有名女優と作家としても彼女を支える夫に目が惹くだろう。

 加えて、現時点では認知度は低くとも今回の体育祭に事業提携している企業の代表、そして1年次の部で成績トップで決勝トーナメント進出した生徒2人。

 それ以外で有名な要素も存在するが、差し引いても余りある程に注目度を誇る組み合わせかもしれない。

 

 って言う点だけでなら璃亞も気にする状況ではなかったんだがな………

 

「元気そうで良かったわ、璃亞」

 

「急に行くって言っちゃってゴメンな? 仕事が上手くケリついてな、でも今日の活躍見れて良かった! 璃亞があんなに成長してるなんて」

 

「…久し振り。お母さん、お父さん」

 

 未だ、ぎこちない空気を滲ませる璃亞の表情。

 ハッキリとした衝突や喧嘩は無いし折り合いはついているらしい。…だが、そう簡単に蟠りが抜け切るとは思えない。

 心根が優しい璃亞にとっては両親が歩み寄りに努めようと尽力してくれてるのに……と罪悪感を抱えてしまっている気がするな。

 

「璃亞ちゃんの親御さんにも話を通したかったので丁度良かったんだよね~! お蔭で双方の家族からの承諾も取らせてもらえたよ!」

 

「承諾、と言うのは……?」

 

「流石に個人間の契約で済ますほど無責任な人間じゃないよ私は! 飛威炉君はともかく璃亞ちゃんとも良い関係築けそうなんだからしっかりと義理は立てないとね!」

 

「…成程。俺の方はこの後次第って事だろ父さん?」

 

「ああ。ここまでの頑張りはとても誇らしい事だが……ソレとコレは話が別だ。引き続き頑張ってくれ」

 

「先輩ってホント堅苦しーよね!」

 

 それに関しては激しく同意するな。意見を変えてくれと言う気は無いが……。

 

「2人は次のレクリエーション出るの?」

 

「いえ、私たちは休もうと思ってます。トーナメントもありますし」

 

「そっかー今回の企画にはKURI8も提供した部分もあるんだけど仕方ないね~」

 

「次のって……借り物競争でしたか。サポートアイテム会社って体育祭の企画にも参加するんですね」

 

「そーだよ! そもそもどの種目・企画も多くの有名企業が挙って事業提携するから倍率とてつもなかったけどね! だからこそ得られる認知ってモノがあるのよ!!」

 

「へぇー……なんかスゴイ人と関わってるんだね璃亞さん達!」

 

 一応家族なんだから他人事みたいに言うなよな、菟希。

 …とは言っても、菟希はまだ中1だし事業提供とかスポンサーがどうとか面白味の無い話か。

 

 レクリエーションに関しては………実際誘われてはいるんだけどな。

 一緒に頑張ってくれた稲生と幽里も出るらしい。稲生はこう言った行事に積極的なのに違和感は無いんだが幽里も出るのかと驚いた。

 

 元々出る予定でも、想定外だったのは今の俺の“疲れ”。

 第一種目ではまだマシな出量で済んだがさっきのは大分キツかったな。燃費を考慮すれば継続して放出するよりも瞬間的な方が楽……って話を無視するレベルの無茶だった。

 今の残量で言えば6割と少しと言ったトコロだろう。

 

 俺の場合安静にしてれば微量ながら回復はするんでな、誘ってくれたのに申し訳ないが休ませてもらうとは言わせてもらった。序でに璃亞も同じで。

 

「そう言う菟希はどうなんだ? 今日観て雄英に興味持ったんじゃないか?」

 

「あら菟希ちゃん雄英行きたいの?」

 

「いやっ行きたいって言うかその……面白そうだな~ってね?」

 

「菟希ちゃんも雄英に!? 入学したら是非戦闘服コスチュームはウチにお願いね!!」

 

「あっすみません、ヒーロー科は行かないんでアレなんですけど他の科だったら私でもいけるかもなって…えへへ」

 

「妹さんも雄英………なのね。その気があったら私の事務所にスカウトしようと思ってたのだけど」

 

「え!? っそんな、どどどどうしようお兄ちゃん?!」

 

「俺に聞くなよ」

 

 菟希が雄英か、初めて知った話だなソレは。

 驚いて当人を見れば……美麗さんの勧誘に揺らいでるんだが。俺に聞いても何にも助け船は渡さないからな? あと別にスカウトされていいし。

 ヒーローでさえ女優とかの副業を営んでる者も居るから学業に差し支えない範囲なら問題無いだろう。そもそも自部署からのスカウトなんて今に始まった事じゃないだろ?

 

「2人はご飯どうするの? 私たちはこれから一緒に食べに行こうって話になってるの」

 

「当然ちゃんと個室のトコね! 大女優と“ドクターヒーロー”が家族ぐるみで食事会開いてるなんて見せちゃ危険だから!!」

 

「失礼なこと言うならお前だけ参加させないからな」

 

「すみませんでしたーッ!!」

 

「申し訳ないのですがクラスメイトに誘われてますので……もしご縁がありましたら次の機会で宜しいでしょうか?」

 

「いえいえ気にしないで飛威炉くん! その方が璃亞も楽しいだろうし!」

 

 想像通りこのメンバーで食事も共にするみたいだったがお断りさせてもらおう。

 いずれ瑞銀家の方々とはやるとは思うしな。レクリエーション不参加の事もあるし昼飯ぐらいクラスメイトと食わないと付き合い悪すぎる。…少し昔の俺とは状況が違うんだ。

 璃亞だって騎馬戦やってる途中で交わした約束を覚えてる筈、今回ばかりはクラスメイトとの食事を優先させてもらおうか。

 

「あと朱寧さん、菟希ちゃん連れてっても良いですか? 友達に会いたいって言ってる子が居て」

 

「マジ!? なんで!?」

 

「勿論良いわよ。良かったじゃない菟希、楽しんできてね」

 

「うっうん……なんか緊張してきちゃったけど…」

 

「大丈夫よ、良い人ばっかりだから」

 

 急に初対面の集まりに呼ぶってのは流石の菟希も気が引けるか。

 躊躇する気持ちも納得だが……どうせ問題無いだろう。今みたいな金持ち特有のお呼ばれだって何回も経験してるのに居心地悪そうな空気醸してる姿は見た事が無い。

 

 発起人も稲生だろ? この組み合わせだったらまず気まずくはならないって。

 それこそ珍しく自分から話に入ってきた幽里とも仲良く出来るんじゃないか?

 

「それじゃお友達待たせちゃ駄目ね。璃亞、頑張ってね? 私たちココで応援してるから」

 

「くれぐれも怪我しないように……ってのは可笑しい話か。頑張ってくれ!」

 

「…うん。飛威炉には負けないから」

 

「飛威炉もね? 全力出し切れるように頑張ってきて……ゴホッゴホッ

 

「ああ。優勝してくるよ」

 

「大胆不敵じゃんね!? 期待しちゃうじゃないの~!」

 

「負けたらあの話は無しだからな、飛威炉」

 

「分かってるよ。…菟希行くぞ」

 

「は~い」

 

 軽く会釈をしてからフロアを出る。予定あったのに菟希連れていく事になったけど許してくれたのに感謝しないとな。

 

 …そう言えば璃亞の立場ばかり考えてたけど家族に戦う姿を見られるのは俺も初めてか。いつも俺が何かやらかしたことを後になって知るパターンが多い。

 勝手に撮影されてた映像をニュースで一緒に観るってのも同じ位記憶に残ってるのだが。

 

 結局は何処行っても視線を集めてしまうんだな……と考えながら客人用通路を歩いてると菟希が不安そうに尋ねてきた。

 

「ねー私と会って幻滅されたりしちゃったらどうしよ~」

 

「無いから安心しろ。所望した本人は菟希と似てる気がするから俺には仲良くなるイメージしか湧かないな」

 

「似てるってどの部分?」

 

「誰とも仲良くできるトコロ」

 

「おっ…お~……ふーん私の事そんな風に思ってたんだ~~へー!!」

 

「…言って損した」

 

 折角褒めたのに調子に乗り過ぎだ。あまり俺がしない事だからってそこまでは求めてねぇよ。

 まぁ次の予定考えたら下手に気乗りしないまま行くよりはマシか?

 

 …そう言えば飯食う約束しといて詳しい場所までは聞いてないな。璃亞なら知ってるか………って聞こうと振り返ったら何故か神妙な面持ちをしていた。

 来賓席抜ける時も気になってはいたんだが何かあったか?

 

「ねえ、菟希ちゃん」

 

「んー? どーしたの?」

 

「菟希ちゃんから見て、お母さん達はどうだった?」

 

「…もしかして気にしてた? 昔璃亞さんに許せない~って言っちゃったの」

 

「そう……ね。…めんどくさい私でゴメンね」

 

「いやいや! 正直こっちも今日話してる時思い出しちゃったから!」

 

 申し訳なさそうに菟希へと告げたのは両親のこと。

 自嘲気味に微笑む様に本心では訊きたくないであろう心情を察してしまう。菟希もソレを聞かれて想起したようだな、自分が泣きながら告げた言葉を。

 

────………

『ぐすっ…うぅ……ゴメンねっわたしぃ…何もッ気づかなくって……』

 

『…泣かないでよ菟希ちゃん』

 

『でもぉ…わたし許せないよ……璃亞さんこんなに頑張ってるのにぃ…璃亞さんのお母さんはっ…!』

 

『お母さんは、悪くないわよ…。悪いのは……』

 

『自分、なんて言わないでよッ! 絶対璃亞さんはッ……うぅ』

 

『……菟希ちゃん』

 

 

 …初めて璃亞が俺ん家で飯食った日の翌日、誰よりも心配していた菟希が璃亞が抱えていたモノを知った。俺の方は一度璃亞の家に行った段階で何となくは察していたんだが、菟希からしたら受け入れ難い話だったのだろう。聞いた瞬間ボロ泣きし始めていたのを印象に残っている。

 

 璃亞が言うように、確かに双方とも罪は無い。いくら家族と言えども立場上2人が一緒に過ごせる時間を増やすのは難しかったとは思う。

 しかし、家族が“家族”だと思えない違和感………誰が見ても肯定する程に恵まれた家族仲を持つ俺達からでは計り知れないのだろう。

 現在は呑み込めたようだが当時の菟希が許容できないのも無理はない。

 

「あの時はさ、私が事情とか考えずに言っただけでさ。今になって思えば自分勝手だったんだなって思ってるよ?」

 

「そんな事無いわよ。菟希ちゃんに助けられた部分はいっぱいあるんだから」

 

「…うん。璃亞さんのお母さん方も勿論良い人たちだったし、もう何も心配してないよ」

 

 そう言って彼女へと向き直った菟希の表情は何処か吹っ切れた表情だ。

 今日も体育祭で俺と璃亞を観に来ただけじゃなく、瑞銀家両親を見定める目的もあったのかもしれない。

 …そんな人を見下す考えをあの菟希が思い至る訳ないな、俺じゃあるまいし。

 

「実際雄英に来てからはずっと楽しそうだしな、昔の璃亞とは誰が見ても雰囲気変わったと言うんじゃないか?」

 

「フフッどーかしらね。ただ一生懸命に学校生活過ごしてるから、かもね。誰かさんが張り切り過ぎて自分がナーバスになるのは馬鹿らしく思えない?」

 

「誰が張り切り野郎だよ。俺の普段の頑張りそんな風に思ってたんかい」

 

「そこまでは言ってないわよ? 自分から勝手に言うって事は自覚あるんじゃないかしら?」

 

「………んー?」

 

 何だ、数秒前は物憂げな感じだったのに。…元気になって何よりだよ。

 

 話してる内にフードコート前まで来たようだ。

 観客は当然のこと、選手問わず1年生ほぼ全員がこの階で食事を済ませるのもあって凄まじい人の数。雄英が運営する以上は質も量も再現無さそうだからこその賑わいである。

 

 結局俺の方は待ち合わせ場所も分かってないな。この盛況具合だったら一度連絡通した方が楽だろうか?

 …まずは2人に確認取るか。

 

「なあ稲生たち何処に居るか知って……どうした立ち止まって」

 

「ちょっと待って。じゃあ次私が璃亞ちゃんに質問して良いー?」

 

「もうフードコート着いたぞ? 揃ってから聞けば……

 

「お兄ちゃんは聞いちゃ駄目ッ!!」

 

…急になんだよオイ」

 

「良いわよ。じゃっこっち来て?」

 

 あと数メートルで着くって距離なのに質問? それに俺が聞いちゃマズイ話ぃ?

 …変にキナ臭い雰囲気だな。

 気付けば人目の少ない階段傍まで行ってコソコソ話してるし。

 

「(流れ的に俺が聞いちゃいけない話になるか……? ごく稀にこんなのあった気もするが同じ件か? …聞き耳は立てないでおくけど)」

 

「ねぇ璃亞ちゃん、何度も聞いて悪いんだけどさー……」

 

「…ああその・・事ね」

 

「あのさっな~んか話す感じ違うって言うか見る目違うって言うか…」

 

「分かっちゃうのね、やっぱり」

 

「え!!? って事は……!?」

 

「(…何だ?)」

 

 

 

────……その後、何話したかも教えられず稲生たちと会う事となった。

 

 菟希はウザい位にほくそ笑んでたし璃亞は俺を見た途端そっぽ向きやがったし……何だってんだホント。陰で笑われるような事したかな、俺。

 昼飯の時はもう元には戻っててちゃんと楽しそうに菟希とも話してくれていた。誰かに自分の妹を紹介するのは璃亞の時以来で気恥ずかしい事この上なかったな。

 

 …ソレに気付いて璃亞に『飛威炉、何恥ずかしそうにしてんのよ? ねぇ皆、私に菟希ちゃん紹介した時もこんな感じだったのよ?』と弄られて受けたこの恥は、決勝で返すとは決めさせてもらったよ。

 

 

 

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