緋色の英雄   作:kozmo78

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第28話 最終種目ー“ヒーロー科vs普通科”

 

 

 

「────……おっ、2人共居たか」

 

「…飛威炉、来たのね」

 

「えっ、なっ何で……?」

 

 

 …医務室の扉を開けると丁度良く2人が揃っていた。

 

 試合の勝者と敗者、普通に考えれば直後に同居してるのも可笑しい話だ。

 今見えるこの光景こそ2人の仲を示してるとも云える。

 

 にしては、結果にそぐわない表情ではあるな。

 

 

「アンタ次試合じゃないか?」

 

「まだ少々時間があるんでなお見舞いがてら来てみたんですリカバリーガール、急げば間に合いますし」

 

「そうなんですか……ありがとうございますっ………」

 

「まぁ外傷は無さそうだし大丈夫そうだな。…良い試合だったよ」

 

「…………そうね」

 

 

 ベッドで上半身を起こした幽里は何処か清々しい面持ちだ。

 負けはしたものの素晴らしい戦いぶりだった、前評判でしか幽里を知らない観客にしては飛んだダークホースだろう。

 万が一敗北を引き摺っている可能性もあったが……全力を為せたようで安心した。

 

 対して無傷の勝利を収めた筈の璃亞は……何故か浮かない様子。

 最後を除けば完全に終始有利の内容だったし、危なかったとは言え最終的には完勝だったと言える。

 …俺が同じ立場なら同様に思い詰めると確信できるが。

 

 いや、時間も無いし一旦その話は置いておくか。

 

 

「幽里、質問して良いか?」

 

「何でしょうか……?」

 

「最後の璃亞を機能停止させたのは何だ? 俺の予想だとカクリヨが関わっていると思ったんだが」

 

「あっハイそうです……ほとんど博打だったんですけどね…」

 

 

 博打? 幽里が珍しい事言うものだな。

 

 実際、基礎学での実戦でも見せた事の無い技だった。

 幽里の『個性』をざっくり纏めるなら守護霊“カクリヨ”の自律支援と本人への憑依、飽くまでも他者に乗り移るとかは無理だと勘違いしていた。

 本人談だと運要素も絡むって事みたいだが………

 

 

「芳乃も奥の手を隠してそうだったから出来るだけ距離を離して戦ってたんだけど……気付いたら私に乗り移っていたわよ?」

 

「ホントは……触っていれば可能だと考えていたんです…あっ

『騎馬戦の時になんかやれそーな気がしたんだよ!』

 

「今までは触れてる人間が視認できるって話、でも今回のは想像以上に強力な能力だな」

 

「…もっと慣れたら精神を乗っ取れる程に感じたわ」

 

『へッまぁな! だがありゃ多分条件付きだがな、一度でも……いや数回はオレを視てないと這入れそうにないかもな』

 

「あー…そういう事ね」

 

 

 カクリヨからの説明で納得がいった、成程……そう言った条件か。

 

 まず対象者との接触で本来視えないカクリヨが現れると同時に自分以外に憑依できる。

 加えて、騎馬戦などで視せた経験のある俺達に接触無しで憑依を試してみたら……運良く出来たってわけか。

 

 本人からしたら苦し紛れの一手かもしれない。

 …だが、諦めないその覚悟が土壇場で成長させたのだろう。

 

 

────……あっ戻りました……そんな感じですハイ…」

 

「成程、丁度いい感じに璃亞への奇襲になった訳か」

 

「そうですね……っでも…私の体力が無いばかりに……」

 

「そんなに卑下すんなって」

 

「…今日も、今までも……助けられてばかりの私の恩返しと言うか………」

 

「認めて、欲しかったと言うか……私だって戦えるんだって…」

 

「…だけど…完敗だったなぁ……」

 

「………認めてるって言い方やめろ。友達でありライバルだろ?」

 

「そうよ? 芳乃は誰よりも……凄いんだから」

 

 

 …あの時もそうだったな、幽里は自己肯定感が低すぎる。

 

 確かに出発地点は違ったかもしれない。人目に怯えて本来の実力を出し切れない姿はまだ記憶に新しい。

 しかしこの短い期間で見違える程に成長した、尊敬していたであろう璃亞を追い詰めるまでにな。

 

 本人が納得しようがしまいが俺達が否定し続けるさ、“誰かに並び立つ”と言う想いで諦めずに戦い続けられる奴がそうネガティブに考えないでほしいな。

 

 ……なんて話してたらもう時間のようだな。

 

 

「おっと時間だな、じゃあ行ってくる」

 

「…頑張ってきてね飛威炉」

 

「あのっ応援…してます……!」

 

「ありがとな? リカバリーガール、医務室でも観れますよね?」

 

「そうさね。少し画面は小さくなるけど良いかい?」

 

「はっはい! 私が邪魔にならなければ……!」

 

「今年はケガ人が少なくて暇してたから何も問題無いよ」

 

「…だってさ、まぁ気楽に観といてくれ」

 

 

 次はベスト4を争う試合だ。

 相手は普通科の生徒でありながら準々決勝まで駒を進めた六埜勘世、一応俺に……否ヒーロー科に恨みを持っている点で因縁がある相手でもある。

 

 負ける気は微塵も無い────……と宣うのは先の試合で何も学んでないみたいだな。

 

 六埜を舐めてる訳ではない、只の俺個人の自信だけで宣言できる。

 まぁ強いて言うなら………吐いた唾を飲ませる気は無いってだけだな。

 

────……あぁそうだな、流石にちゃんと伝えておくか。

 

 

「璃亞」

 

「何?」

 

「勝った奴が晴れない顔だと幽里に悪いぞ? …シャキッとしろよ」

 

「……そうね」

 

「じゃあな」

 

 

 ソレだけ伝えて扉を抜け出る。

 

 …変に引き摺って後のパフォーマンスに影響出たなら許せないしな。

 

 

 

 

 

 

 

  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 この舞台に戻ってくるのも4度目か? 相も変わらず会場の熱気が高まり続けている。

 

 俺を待って遅延したのではないようだが六埜と主審ミッドナイトは既に指定の位置に居た。

 対面に立つ奴は……ピリピリした雰囲気だな、少なくとも気分の良い試合を待ち望んでいない様子だろう。

 

 

「…何処行ってたんだよ」

 

「ちょっと野暮用があったんでな」

 

「……そうかよ」

 

『どんどん行くぜ! 準々決勝第一試合!!』

 

『今大会注目株の一騎打ち! 天蟲飛威炉vs六埜勘世ィ!!」

 

『レディィィーーー………

 

 

~~~……START!!』

 

 

 開始の合図を聞いて突撃、とはいかず一度様子を見ていようか。

 …今回は初戦と違って『個性』をほぼ把握していない。潟岩は日々の基礎学で確認した分で推測できたが六埜には関しては情報が僅かだ、隠し玉を警戒とかの次元にも居ない。

 

 

「(幽里と同じ、外見では判断できない『個性』だな。発動型だとは思うが……)」

 

「攻めないのか? ……だったら…こちらからっ!」

 

「(早さも普通……身体強化の類でもないか)」

 

 

 動かない俺を視兼ねて六埜から詰めてきた。…見る限り常人レベルの速度だ、まず第一にスピードを生かす『個性』の選択肢はないな。

 

 迎撃する為に弾幕を張っても依然、アイツの手や足に能力由来のモノを帯びる事も無い。

 

 何の変化もなくエネルギー弾にそのまま直撃────……はせず、まるで何処を通るかを識っていたかのように掻い潜ってくる。

 

 

「…この距離この速度で躱すか、何の『個性』だ?」

 

「教えると思うか?」

 

「親切じゃない……な!」

 

「ハハッ…判ってるんだよ……!」

 

「(…対人戦闘の経験も無しにこの反応はおかしい、やはり精神系の能力か)」

 

 

 …俺の弾幕も蹴りも悉く避けられ続けるな。

 超人的な反射神経を手に入れるまでに鍛えたと言うなら話は別だが、細身の身体を考慮すれば納得いかんなぁ。

 近接時の攻撃もそうだ、威力は大したことなくとも嫌らしいタイミングで仕掛けてくる。

 

 この状況を『個性』に結び付けるなら……事前に推測した通りに“精神”に係るモノだろうな。考えつくのは2つ、他者の心を読むモノか直感か予知を強化するモノ。

 …似てるようで実情は違うこの仮説、試す為にも一度仕掛けてみるか?

 

 

「(“New-Humpsher BLASTER”プラス目眩まし!!)」

 

「……ッチィっ!」

 

「(この速度に対してどう────……っ!!」

 

「…ハッ! 視えてないと勘違いしてたなァ!」

 

「(久し振りにパンチ食らったな……やるじゃねぇか)」

 

『~~~ッ遂に天蟲に一撃食らわせたァ!! 完全無欠のヒーロー科を普通科が倒してしまうのか?!』

 

 

 …たかが一発のパンチなのにな、派手に分かり易く会場は盛り上がってくれたよ。

 

 視界を奪った筈なのに当然の如く奴の拳は振り抜かれていた。…もし肌感だけで戦えるんだったら六埜の正体は一般ヒーロー越えの戦闘のエキスパートだな、それも入学試験でパワー不足に悩む必要も無い。

 

────……まぁお蔭でだ、この一撃がその『個性』の真実を教えてくれたよ。

 

 目眩ましに使った直後にイラついた表情を見せた辺り、俺の心を勝手に読み取る“読心術”でも確か有名ヒーローにも所持者が居た筈の“未来予知”でもない。

 だから………──────

 

 

「(技名はそうだな……よし、“Oklahomaオクラホマ BLASTER”)」

 

「………なに!?」

 

 

 手を銃のような形に構え、小さく速い銃弾に似たエネルギー弾を撃ち放つ。

 

 …手の平サイズの通常時と比べると威力は低いがこうやって狙い澄まして乱射したい時は役に立ちそうだな。

 弾幕を避け続けて体勢を崩したトコロを執拗に攻めれば………ほらな? 俺に近付くよりも前にボロが出始めるんだよ。

 

 読みが冴え渡ろうが身体能力に限界は有る、防御策は持ち合わせていない者に受けられる程……楽な光弾を創っちゃいない。

 

 …そうだな、先に俺の方から歩み寄ってやろうか。

 

 

「あの一発は効いたよ六埜」

 

「────……っ!」

 

「『個性』は……視界も無く反応した辺り第六感を強化するモノか?」

 

「────……ぐぅっ!?」

 

「騎馬戦での鋭い読みもソレなら納得だな、反応も速いし」

 

「────……っ!? クソ……!」

 

「だがなぁ、俺に喧嘩売る程には至ってないな」

 

「がはっ!!?」

 

 

 …これじゃ俺が根に持ってたような言い草だな、否定はせんが。

 

 何故ヒーロー科に突っかかってきたかは俺がわざわざ慮る気は無い。

 だが一つの要因に入試試験が絡んでいるんだろうな、奴の『個性』じゃ身体能力に頼らない限り仮想敵を倒せずポイントを稼げない。

 初戦のようにヒーロー科をも倒す実力を秘めてるのに雄英は見抜けず普通科へ………そんなシナリオなら疎ましく思っても仕方が無いか。

 

 まぁそれはそれとして、叩き付けた挑戦状は正しく送り返してやらないとな。

 

 

「っく……まだ、終わってねぇよ……!」

 

「あぁ、勝負は最後の最後まで分からないもんだよな。…璃亞もそうだった」

 

「お前みたいな奴に勝つ為にっ……俺はここまで……

 

「積み上げた分は判ったよ。…だがソレはヒーロー科でも同じだ」

 

 

 基礎学も無くココまで強くなったのは賞賛すべきだ、正に普通科の星だと呼ばれるべき存在だろう。

 

 今こうやって俺が胸倉掴んでても瞳の灯を絶やさずに睨んでいるのだからヒーローの素質だって絶対に在る筈だ。

 

 …暴れても無駄だ、今すぐ離してやるから大人しくしろ。

 

 心内で“New-Humpsher BLASTER”を唱えて勢いそのまま観客席下の壁へと向かって────……

 

 

「……クッソォ……っ! ────……んぐぅっ!!?」

 

「恨みを持ち出すのは構わないが……出る杭は打つぞ」

 

 

 …投げ飛ばした時にはもう気絶していたようだ。

 

 まぁ今のが届いてなくとも良いさ、この勝負の顛末を身に染みて憶えてもらえば何が足らんか気付くだろうし。

 

 

『────……六埜くん場外! 天蟲くん準決勝進出!!」

 

『準々決勝第一試合、勝者は~~~……天蟲飛威炉だァ!!』

 

『一撃は食らったものの最後は完封ゥ! いち早くベスト4を決めてみせたァ!!』

 

「(…まぁヒーロー科には編入すべきだとは思うな。俺が決める事では全く以て違うが……楽しみにはしておくよ)」

 

 

 

 

 

 

 

  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 試合も終わって再び医務室に来てみると………

 

 

「────……おっと今回は多いな」

 

「やっぱり来た! 璃亞ちゃんの言った通りだったね!」

 

「暫くぶりね、飛威炉」

 

「飛威炉さん……準決勝進出…おめでとうございます…!」

 

「いや~やっぱ強いな天蟲!」

 

 

 扉の前にはいつものメンバーが待っていた。

 

 一回戦で惜しくも敗れてしまった幽里と稲生、蝗賀。

 準々決勝が控えている璃亞と────……

 

 

「…で、お前も居るのかよ」

 

「暇だったから来たんだよ……お前に用は無ぇ天蟲」

 

 

 仰木も一緒に居るとはな。適当なこと言ってるがどうせ璃亞を探しに来たついでで残ってるんだろう。

 何だかんだで今日も大詰めだ、常に誰かが出場して揃わないパターンばかりだったからな……懐かしささえ感じてしまう。

 

 …実際は1-Bのメンバーが揃ってはいないんだが決勝にもなれば観客席に集合するだろうか。

 

 

「入れ違いで医務室に来たんだけどね、試合凄かったよ!」

 

「あーゆー試合観てると羨ましくなるねぇ準決勝が。俺も康作に負けなきゃな~」

 

「いや蝗賀も凄かった、どちらが勝ってもおかしくなかったし胸張れよ」

 

「そうだよ! 格好良かったじゃん! ウチなんてほぼ瞬殺だよ?!」

 

 

 確かにそうだが稲生も頑張ってたんだがなー……蝶野が凄かったってだけの話だ。

 

 俺の立場で考えるのも烏滸がましいが、そもそも俺たちの世代は歴代でも屈指の世代な気がする。

 過去の体育祭なんて最終学年のモノばかり観ていたが質なら遜色ないレベルだ。蝗賀とか、例年であれば普通に優勝していても可笑しくない。

 組み合わせの妙ってのは中々に難しいモノだとしみじみ思うな。

 

 …そう言えばココに来たもう一つの目的を忘れてたな。

 

 

「六埜は来たか?」

 

「アイツか? そりゃさっき天蟲にこっぴどくやられた分の治療だぜ」

 

「芳乃も元気になったし大人数だと迷惑だから外に出たのよ」

 

「六埜っちも凄かったよね! 違う科でもあんなに戦えるんだから……少し危機感も出来ちゃった」

 

「多分アイツがその気なら編入するんじゃね?」

 

「……どうだかな」

 

 

 そんな気はしてたが皆にも六埜の評価は概ね高いようだな、人によっては焦りを覚える者も居るんだし。

 編入に関しては本人が折り合いをつけない限りは軋轢を生むだけの未来が視えるが……まぁ雄英側は考えを改めるんじゃないか?

 

 

「ってか席に戻ろうぜ? 次の試合もあるし」

 

「そうね、楓馬くんもベスト4が懸かってるし応援しに行きましょ」

 

「だね!」

 

 

 …なんて話してたら外の声援が次第に高まってきたな、楓馬vs矢峙の試合が始まるってことだろう。

 

 正直なところ楓馬優勢のマッチングなんで如何なるものか………折角の1-A同士の勝負なんだし野暮な考えは捨てて純粋に応援しに行こう。

 

 

 

 

 

 

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