緋色の英雄   作:kozmo78

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第31話 最終種目ー“でも、諦められない”

 

 

 

 

  『璃亞! ………頑張って来いよ』

 

 

 

 

 去り際に聞こえた飛威炉の言葉が、入場口の目の前に来ても残り続けてる。

 

 

 …飛威炉は自分自身に変なトコロで厳しい癖に自分以外には優しい。

 

 アイツにそう言っても「ヒーロー目指す奴なら大体そうだろ?」って誤魔化すけれど間違ってない筈だ。例外は居るのは置いといて。

 

 私にだって……荷が重いような目標を託したりうざったい軽口を言い合ったりしておきながら、根本では私を尊重してくれる思い遣りが有るのを感じてる。

 推薦入試の時だって絶対に受かると信頼してくれてた。

 

 

 

 だからこそ────……意味も無いのに勘繰ってしまう。

 

 

 飛威炉が呑み込んでしまった、かもしれない……“待ってる”って言葉。

 

 

 私の自惚れなら構わない。

 

 素直に激励をくれた、ただそれだけの事だって誰かに諭されたい位だ。

 

 

 …無理ね。そうは思えそうもない。

 

 

 仰木が私より圧倒的に強い、賢い飛威炉なら絶対に気付いてる筈だ。

 

 そもそも私が飛威炉にさえも上回れると勘違いできた時なんて一度も無い。相性は在れど、飛威炉以外に………仰木と楓馬くんの方が実力じゃ敵わない。

 

 “無責任に約束を持ち出して、重圧を増やしたくない。”

 

 今日だって散々決勝で会おうって話したのに、現実味が濃くなれば客観的事実に目を背けられなくなってくる。

 そうやって飛威炉は……………

 

 

 

「(────……嘘すらつかれない方が……いや、私が悪いだけね)」

 

 

 

 

 

 

 

 

『続いて行くぜェ?! 準決勝第二試合!!』

 

『先に会場に来たのはA組の仰木ィ!! 第一試合の天蟲みたく、いやソレ以上にパーフェクトな内容で勝ち上がってきたーー!!』

 

『次に入場口からやって来たのが……同じくA組の瑞銀だァ!! ってことは遂にクラスメイト且つ推薦入学生同士の勝負か? こりゃ因縁深いな!!』

 

 

「だってよ。まるで運命みてーな言い草だなァ?」

 

「…そんな簡単に扱う言葉じゃないわ、運命なんて」

 

「ほ~女優の娘は言うこと違ぇわ。勉強になったぜ」

 

 

 普段の日常で聞き飽きた、仰木のくだらない軽口。

 

 私の平静を乱す為にそんなトラッシュトークを……もしかしたらでもなく、打算的な思考も無しに目の前の奴は口を閉じてないだけね。

 

 

 …でも、この環境下で変わらないで居られるのは恐怖すら覚えるわね。

 

 

 

『誰が決勝に勝ち進むか?!! READY~~~……

 

 

~~~……START!!!

 

 

 

 

「────……何故、何もしないのかしら」

 

「さて~……1つ聞いていいか?」

 

「試合中なのだけど?」

 

 

 会場の熱気が掛け声と共に引き上げられて────……動きもしない戦況によって冷めつつあった。

 

 てっきり仰木の事だから合図と同時に強襲仕掛けて、反撃の隙も与えずに終わらせて来るのだと思ってたわ。

 

 微動だにせず遂には質問だけ渡してきた。…さて、何が目的なの?

 

 

「彩の時もそうだったんだがオレに女殴る趣味は無ぇ。それも璃亞みてーに“そこそこ”強い相手だと手加減しにくいんだよな」

 

「…………………は?」

 

「ぅおっと! ちょい話してる途中だろ~?」

 

 

 余りにも舐めた発言に銀製のナイフを飛ばしてしまった。

 

 

 ………えらく馬鹿にした挑発ね。耳を疑ったわ。

 

 確かに喬華との試合ではそうだったけど、その理由が聞き捨てならない話じゃない。気持ちは解るけど試合中に持ち込まないでくれる?

 

 それに────……“そこそこ”?

 

 

 私への認識を分かり易く・・・・・教えてくれたってことかしら?

 

 

 

「何が言いたいわけ?」

 

 

「だから~……『今の内にリタイアして痛い目合わずに終わってくれるか?』って提案」

 

「じゃないとまぁ致し方ねーけどこのまま捻り潰すしかなくなるしー」

 

「勝つ確率なんてほぼゼロだって事ぐらい、気付かない程馬鹿な頭じゃないだろ?」

 

「穏便に行こうぜェ? 賢明な判断をオレに見せてくれよ!」

 

 

 

 

 

 

────……ふざけないで。

 

 

 

 

 

 

「………気持ちが解ったわ」

 

「へぇ、誰の?」

 

「私のことを────……待っててくれてるアイツのよ!!」

 

 

 “流銀翼宴”を発動して仰木の周囲に展開させる。

 

 アイツの機動力を考慮してもどれかには引っ掛かる配置、たとえ1つが砕かれようと他の鳥で追尾可能だ。

 

 

 いつもは飛威炉だけに向けられる、ただ相手をイラつかせる嫌悪感。

 

 勝負の舞台は無礼講と言えど………敵に辞退を促すのは可笑しいでしょ? 私が素直に『はい』って答えると思ってたなら大間違いよ

 

 

「…んーソレが答えってことで、良いんだよな?」

 

「当然。私が思ってたより……のこと判ってないのね、仰木」

 

 

「そうかァ? まぁ────……“残念だな”」

 

 

………!」

 

 

 突如、ヘラヘラしていた仰木の雰囲気が一変する。

 

 

 仰木の『個性』は“オオギワシ”。

 

 本人からも聞いたし、現にアイツがこれまでに見せてきた能力に一致しない要素は無かった。

 

 

 だけど、人間から逸脱・・するレベルではなかった筈だ。

 

 

 背丈が瞬く間に伸び上がって────……2mを優に超えてしまった。

 

 ジャージを張り裂けながら手足も異形化し、実際に見た経験も無いのにその翼爪と蹄が世界最大級の猛禽類に由来するのだと判断できる。

 

 

「“璃亞が馬鹿正直に教えてくれた奴と違ってェー……手加減しねぇからな?”」

 

「“…みみっちい金属じゃあオレを止める壁にすら成らねぇ”」

 

「“情け掛けてやったのに断ったの、ココで後悔させてやるよ‷」

 

『何だその姿ァ?! 仰木が一回りデケぇ鷲みてーに成りやがったー!!』

 

 

 人間と鳥を融合させたような姿だ。

 

 前の試合の飛威炉みたくオーラを放っている訳でもないのに途轍もない威圧感を感じてしまう。

 

 

 …飛威炉以来の経験ね、戦う前に敗北が視えたのは。

 

 

「“さぁー行っく────……ぜ!!”」

 

 ガキッ!!

 

「(なっ……!? 遅れたとは言え私の盾が……!?)」

 

「“脆いんだよ! そんなんで防げると思ってんのかァ?!”」

 

 

 鳥で囲んでる今でも恐怖は拭えない。“流銀地盾”を構えて正面の攻撃だけでも防ごうって事前に動いた。

 

 なのに、私の鉄壁は薄氷のように砕かれる。

 

 

「(突破されたらヤバい……!?)」

 

「“避けられるもんなら~~……お?”」

 

「(早く、戻さないと────……っ!」

 

「“オレの紛い物がァ~邪魔すんじゃねェ!!”」

 

 

 砕かれて液状化した盾が生んだ一瞬の空白を、すぐさま鳥たちを防御に戻すことで私の回避が間に合うように延長できた。

 間一髪で避けたは良いものの、支払った代償が多すぎるわね。

 

 試合が始まったばかりで金属疲労が………、崩れてしまった金属たちを直そうにも反応が鈍い。

 せめて身体に吸収しないと無駄に血を失うだけなのにそんな場合じゃないなんて

 

 

 避け続けるだけじゃ────……迎撃しないと無理だ。

 

 っ……“流銀鳥宴ー隼”を放って無理にでもスピードに対応するしかないのか。

 

 

「“ハヤブサだっけかァ? 名前の割に随分と遅いんだよ”」

 

「(…解ってるわよ! だけどコレだと……!)」

 

「“鬼ごっこしたいんなら~~もうちょいマシなの寄越せってな! オラァッ!!”」

 

「(間に合わな────……んぅ………!!」

 

「“ほらなァ! さっさと諦めなきゃ終わらねェーぞ?!”」

 

「きゃっ!?」

 

 

 容赦のない殴打が防げない。

 回避は不可能だと判断して金属の膜を纏おうとするけど衝撃は抑えきれる訳が無い、数発受けるだけでひび割れていく。

 

 私は仰木や飛威炉みたいに丈夫じゃないから………直撃もしてないのに身体中に打撲と掠り傷が。

 誰かの攻撃によって、原動力となる血液が肌を伝っているのは初めてだ。

 

 

 致命傷を逃げれば逃げる程に……退路が消え失せていくのが解る。

 

 『個性』の酷使で脳を巡る酸素が薄まって、視えたかもしれない勝ち筋も靄がかり始めてきた。

 

 

『容赦ねェな仰木!? だが準決勝でも圧倒的なのは変わりないか?!』

 

「“あ゛~……やっぱ気分悪ィーな。惚れた女を甚振んのは”」

 

「っ………隠そうとしないのね」

 

 

 …やっと一息入れる暇が出来たと思ったのに。

 

 

 仰木の攻撃が止んだのが嬉しくもない告白がしたかったから?

 

 只でさえ掠れた呼吸音で聴覚すら機能してないのに聞こえてきたのがコレって、崖っぷちの私に不釣り合いな話じゃないかしら。

 

 

「“ん? まぁ薄々気付いてんだろ? オレの人生経験上、狙った女は大概落せてたんだがなァ”」

 

「だったら……私の答えは言わなくても判ってるでしょ…っ!」

 

 

 気付いてはいた以上は……何時の日からどう答えようかは決めていた。

 

 ヒーローを目指すという事と恋愛を結び付けて生活できる程、私はまだ割り切れた性格してないのよ

 

 

「“はぁ~解ってねェな! 自分の獲物を逃がす馬鹿が居るかよ!”」

 

「くっ────……離し、なさい…よ……!」

 

「“なぁ璃亞………お前みたいなツラ良くて気高い女は初めてだ。どうだ? オレと付き合ってみねェか?”」

 

「はぁ……っ…お断りよ……! ココで負けたって認めてやらないわ……!」

 

「“ハハッ! 往生際が悪いこった!”」

 

 

 鉤爪が光る掌が首を掴んで、命乞いを求めるような瞳が目の前に。

 

 観客席から見える景色なら……今の戦況は明白だ。

 ダメージを与えられないのに些末な生成物を繰り出して破壊され続けている様は、誰にだって悪足搔きにしか映っていないだろう。

 

 

 絶対に負けられないのに────……勝負が決してしまう。

 

 

 

 私はここまで、なの?

 

 

 この“壁”は………越えられないの?

 

 

 

『さァー追い詰められた瑞銀ェ! このまま成す術無しかァーー?!』

 

 

「“選択肢だ。1つは降参認めてこの手を離すか、もう1つは無駄に足掻いてオレにぶん殴られるか”」

 

「“…制限時間は5秒! じゃあ行くぜェーー5ォ!……4!…~~~

 

 

 

 『降参』の二文字を促す為なのか、握り絞める力が僅かに緩められる。

 

 

 カウントダウンが進む中……、破片が刺して創られた傷から流れた血液が私の掌に。

 

 

 

 喉を昇ってくる諦めの台詞は塞き止めなきゃ駄目だ。

 

 

 心に掲げるなら、飛威炉との約束と雄英ここの校訓だけにしなさい

 

 

 

「諦め────……られないのよ!!」

 

「“だから……っあァ!? 痛ェ――なァオイ!!”」

 

 

────……咄嗟に生み出したのは黒緋色が混じったナイフだ。

 

 

 一心不乱に私を掴むこの腕を刺した。本来は飛羽に逸らされるのに、頑強な筋肉すら貫いて鮮血が飛び散る。

 流石に傷ついた腕は首を離してくれてやっと満足に呼吸は出来た。のだけれど………

 

 …まずは無意識に近い一瞬の反応に、呑み込めるように嚙み砕かなければ。

 

 

「(鉄分をっ利用する…『個性』だから……っ直に血を含ませると……!)」

 

「“斬撃に弱いっちゃ弱いがこのオレの身体を貫くとは……良い技隠してたなァ璃亞”」

 

「(いや、只のラッキー…よ。土壇場で成長……したってとこかしら)」

 

 

 “Plus Ultra更に向こうへ”。…昔の私だったら斜に構えて気にも留めないかもしれないわね。

 

 出血を伴う怪我を抱えたまま戦ったからこそ起きた幸運。

 ナイフから触れてみると………そうね、確かに強度が違うわ。血液由来の赤黒い部分を中心に鉄をも凌駕する硬さを手に入れたらしい。

 

 それに、『個性』を発動してるんじゃなくて“自分の身体の一部を動かしてる”ような感覚だ。細部に拘った変形は苦手じゃないけどハッキリとイメージが伝達されてるって気がする。

 

 

「“…良いねェ! それでこそオレが見込んだ女だぜェ!!”」

 

「ふぅ……っ…アンタの為に戦ってるんじゃないわ……っ」

 

「“へぇ…口答えできんなら~~もっと元気出してみろォ!!”」

 

「(頭がふらつく、でも踏ん張らなきゃ────……

 

 

 

 新たに成長を遂げたってトコロだろうが現状は好転してくれない。

 

 視界が歪む。吐き気も止まらない。手足も痺れてる。

 

 …でも、戦い続けるの。

 

 

 脳内で描くのは喬華の“花吹雪”。

 

 仰木だったら翼を振り払うだけで防げてしまうかもしれない。だけど、ナイフ1本とかの操作を捌かれて再度襲われたら元も子もない。

 

 限界をとうに超えた物量を維持しなければ───────………

 

 

………いや、血反吐吐く位の覚悟で抵抗しなきゃ勝てないのよ!!

 

 

 

『こりゃトンデモねェな!??』

 

『瑞銀の周りを浮遊してんのは………例えんなら一回戦で彩が魅せた技かァ? 銀幕女優を称える紙吹雪が如く無数の極小金属が煌めいてるぜェーー!!』

 

「“っやってくれんじゃねーか………!”」

 

「ぜぇ……っ…ぜぇ………っ────……!」

 

 

 意識を朦朧とさせながら、…最後の反逆を。

 

 瞬きをする度に眠りについてしまいそう────……またそう・・なりかけた。

 

 

 時間の感覚は遥か彼方に消えてしまったのだ。

 

 最早、私の眼は色でしか捉えていなかった。幽かな視界で………気合だけを頼りに『個性』を保つ。

 

 これが、コレのみが………っ。

 

 

 今の私が振り絞れる、“全て”。

 

 

 

 

 それ、でも────────…………

 

 

 

 

 

「(────……────……分かってる)」

 

 

「(───…私が今成長しようと……差は埋まらない………っ)」

 

 

「(…だからって、無理だとしても────……

 

 

 

 現実は望み通りに「よく頑張りました」って答えてくれない。

 

 

 勝てなくても。

 

 …なんて甘えは捨てたのに。

 

 

 届きそうな場所まで辿り着いたって思いたかった。

 

 

 『恩返し』、そして 『約束』。

 

 

 叶えたかった筈のモノは最後の最後で“壁”に阻まれて────……

 

 

 

 

 

「“~~~……無様な姿がお望みなら仕方ねェな!!”」

 

 

「飛威炉との…約束、が……あるのっ………

 

 

「“……またソイツかよ、いい加減にィ────……あ?”」

 

 

 

 

 

 

 

 ………そして、私の記憶はここで途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ………」

 

「あっ!! 起きたよ皆!!」

 

「璃亞さん………!」

 

 

 目覚めたら、無かった筈の天井があった。

 

 頭もまだ冴えそうにない。…けど、隣に居てくれていたのが誰だったかはすぐに理解できた。

 

 

「ベッドの上ってことは────……痛っ…

 

「っ起きたばっかりなんだから無理に動かなくていいよ!」

 

「そうさね。…貧血起こして倒れたんだからしばらくは安静にしなさい」

 

「貧血……はい、分かりました」

 

 

 眠ってた場所は医務室。

 

 腕を見たら手首に赤色が通った透明な管が刺してある。

 告げられた症状と気怠い身体を考慮すれば………何故に倒れたのかも合点がいく。

 

 

 …心配させたでしょうね。

 

 いち早く反応した雷咲も呼び掛けられた芳乃と喬華の2人も、曇り切った表情しか浮かべていない。彼女たちをこれ以上に悲しませたかもしれないし重症じゃないことに感謝しないといけないかもしれない。

 

 

 

 だけど、第一に認めなきゃいけない事実があるの。

 

 

「…璃亞さん、お疲れ様……でした」

 

「そっか────……負けた、のね」

 

 

 負けた。それも完膚なきまでに。

 

 

 限界を超えてまで出し切ったのだから後悔は無い………って、断言できる人生だったらどれ程良かったんだろうか。

 もし素直に口にしてしまえば、私の存在意義を否定するだけだ。

 

 

 俯きそうになる前に横に振り向くと、既に涙ぐんでる芳乃が居た。

 

 …本当だったら笑って対応してあげたいのに私の表情筋はピクリとも動いちゃくれない。

 

 

「っ………そう気に病まないで下さい、素晴らしい試合でしたから」

 

「ぐすっ……格好良かっ…たで…すっ…」

 

「いや泣かないでよ芳乃。貴女が………って」

 

「ぞう゛だよ゛~ほぼ勝っだよ゛うな゛もんだっだっで~~」

 

「…フフッ、雷咲も泣かないでよ」

 

 

 まるで自分のことみたいに泣いてくれるなんて、雷咲たちは本当に励まし上手ね。

 

 …そのお陰か、自分の感情を少し取り戻せた気がする。

 

 

「あっ、そう言えばトーナメントの方は………?」

 

「璃亞が休んでいる間に準備が終わりまして……もうそろそろですわね」

 

「…ありがとう喬華、じゃあ始まるのね」

 

「そうだね。飛威炉くんと……仰木っちの試合」

 

 

 私が負けたってことは当然、決勝の組み合わせが確定するってこと。

 

 約束の………いや、約束“だった”場所に私はもう名前を連ねることは出来ないんだ。

 

 

 そう、もう二度と。

 

 

「今年の一年生は近年稀にみるレベルじゃないの。アンタの活躍もそうだけど、教師たちはみな鼻高々さね」

 

「リカバリーガール治療共々ありがとうございます……」

 

「感謝は要らないさ」

 

「…レベル高いのかもしれないですが、璃亞さん含んだ準決勝の4人は別格だと思いますわ」

 

「うんっウチもそう思う! マジで現役のヒーローみたいだなって!」

 

 

 リカバリーガールや私の大切な友達が褒めてくれてるのに、どうしてなの?

 

 心を駆け巡るのは負の感情ばかり。

 幾ら後悔しようが……天地がひっくり返っても現実は変わらない。

 

 

 …終ぞ零してしまったのは、抑えきれなかった不本意な拒絶。

 

 

「………ごめんなさい、一人にさせて…ほしいの……」

 

 

 『え?』

 

 

 瞼に滲んでくる冷たいようで熱いものは止め処なく溢れそうに。

 

 声が裏返りそうになりながら────……我慢が出来なかったのだ。

 

 

 

「わざわざ私と一緒にじゃなくて、皆も客席に戻った方が良いだろうし……」

 

 

「そのっ………あのね? 本当……っにィ……───────

 

 

「思ってた以上…に、悔しっ……かった…なって…………!」

 

 

 

 人前で泣くのは飛威炉が抱きしめてくれたあの日以来だろうか。

 

 

 …本当に恥ずかしい。

 

 …飛威炉に申し訳が立たない。

 

 不甲斐ない実力の自分がこんなに後悔するなんて、厚かましいにも程がある。

 

 

 でも………敗北した私にはただ咽び泣くしか出来なかった。

 

 

 

────……そんな私を、かけがえのない友達は寄り添ってくれた。

 

 

「う゛ぇ~り゛あ゛ぢゃ~ん゛!!!」

 

「私も、友達として……っ共に悔しがらせて下さい」

 

「天蟲さんが居ない分、自分が褒めます……! だから、一緒に………!」

 

「みん…な………っ」

 

 

 昔の私だったら、こんな幸せな環境に居なかったんだろうな。

 

 

 抱きしめながら、私の肩を濡らすほどに泣きじゃくってる雷咲も。

 

 背中を優しく撫でて、目尻に涙を湛えている喬華も。

 

 震える手を握り締めて、柄じゃない位に気迫こもった声で励ましてくれる芳乃も。

 

 

 …ヒーローを目指すって決めた学生生活にこんな青春が在ったんだ。

 

 嬉しくもあり、余計に申し訳無いようにも思ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす。どう元気に────……

 

「ごめ~んっちょっとB組で写真撮影が……~~~

 

 

  「ずずっ……ん………?」

 

 

────……あ~アタシ少し部屋出とこっかなー」

 

~~……えーどうしたの皆~私も抱き着いちゃお~~!」

 

 

 

 

 

 だからって、泣き顔晒したって辱めは無くならないんだけどね?

 

 遅れてきた藍と婭夏葉がその後に悪ノリしてきて………また増えた寄り添う重みに、更なる幸せを感じたのは心の内で留めておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

───────………瑞銀璃亞 ベスト4敗退。

 

 

 

 

 

 

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