緋色の英雄   作:kozmo78

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 途中、そのシーンの挿入イラストがあります。

 拙いモノ且つ別に見なくても問題無いですが興味がありましたらご覧ください。


第32話 最終種目ー“雄英体育祭1年決勝”

 

 

 

 

  「飛威炉!」「お兄ちゃん!」

 

 

 …最悪な気分って時に聞き覚えのある声だな。

 

 反応する意欲も無かったが振り向かざるを得ない。

 

 

────……如何した、2人してここまで来て?」

 

「…決勝でしょ? 最後なんだから出来るなら会っておきたかったの」

 

「っ私は、お母さんに…ついて来て……ズズッ………」

 

「菟希、そんな状態だったら来なくても良かったぞ」

 

「うっさい」

 

 

 只でさえ通りすがりが足取りを止める位の認知度とルックスなんだ、泣きべそ掻きながら歩いてたら嫌が応にも注目されちまうんだが。

 現に背後で「え? あの可愛い子なんで泣いてんの?」とか駄弁り始めてんぞ。

 

 そもそも、母さんは身体労わってこんなむさ苦しい所まで寄越してほしくなかったな。

 まぁ激励が目的ってなら俺の立場として断る義理は無いんで断りようもない。

 

 

 …しかし、こう3人揃っても和気藹々ともなれない。なれる筈が無い。

 

 

2人共・・・、よく頑張ったわ」

 

「あぁ……本当にな」

 

「正直なところ、今すぐにでも璃亞ちゃんの元に行って褒めてあげたいの」

 

「そう! 別にお兄ちゃんに会う気は無かったから!!」

 

「何で試合前にキレられなきゃならねぇんだ………?」

 

 

 まだ余計に赤くなった眼を拭い切れてないけど、一応元気そうで良かった。

 

 

 

 見届けは、したよ。…あの結果に何の文句も無い。

 

 

 むしろ感動さえしたのだ。

 

 璃亞の勝利への渇望と覚悟。試合を観てるだけだってのにひしひしと伝わってきた。

 

 己の血液を利用する、そんな荒業を土壇場で生み出したんだ。

 

 

 昔っからそうなんだ。

 あんなに涼しげな見た目で、落ち着いて俯瞰できて、聡明ってカテゴリでも俺なんかとっくに超えられてる。

 

 なのに、真剣なんだよ。

 俺と個性練してた時も……日々の基礎学でも……今日だってどんな相手でも気力振り絞って戦い抜いてきた。

 

 俺の眼には、何時だって気高くて美しく映っていたんだ。

 

 

 

────────…………そんな璃亞が“あの”仰木に負けた?

 

 

 悔しくも俺の脳は2人の試合の勝算を弾き出そうとした。…よって、想定はしていたのは事実。

 

 だからって認めるかどうかは話が別。

 俺の心根は“想い”ってのを度外視して込み上がる怒りを抑え切れる程、申し訳ないが大人ではないんだ。

 

 

「………でね? ちゃんと伝えておくわよ」

 

「なんだ」

 

「背負ってあげて」

 

「……………っ」

 

 

 矛盾が脳内を掻き乱してた俺に、母さんは淡々と使命を下した。

 

 先に告げられた短い言葉は字数以上の重みがある。当然のことだが、前の試合で悔しい想いをしたのは俺だけじゃないんだ。

 

 

「あの子がどれだけ頑張って来たか。…貴方が一番解ってるでしょ?」

 

「いーや! 私だもん~~って言いたいけど、多分違うん、だよね………っ」

 

「ふふっ菟希はこの後一緒にいっぱい褒めてあげましょうね?」

 

「うん………うぅ~~璃亞ちゃん………」

 

「飛威炉? “2人の”母親として、私の願いを聞いて頂戴」

 

 

 “2人の”……ってのは『俺』と『璃亞』を指してるんだろう。

 血は繋がってなくとも、璃亞を母さんにとってもう一人の“娘”のような存在だってことだ。

 

 となると、親友ライバルが家族か………。

 

 …悪い気分じゃあないな。

 

 

 今となっては約束なんて如何だっていいさ。栗衛さんに悪いけど。

 

 俺が見据えるは“仇討ち”に他ならない。

 

 

 

「“絶対に”勝ちなさい」

 

「────……承ったよ。行ってくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガチャ

 

「お? やっと来たか」

 

「………………ッチ」

 

「会って早々その態度か? 随分……気が立ってるみたいだなァ」

 

 

 準決勝が終わって20分、居ても欲しくない件の相手が居座ってた。

 

 試合では『個性』で巨大化してたが今は元通りだな。

 周りを見ると……血に濡れた羽も落ちてる。璃亞の最後の猛攻が為した怪我だと知ってはいるけど、ムカつく減らず口とニヤケ面を見りゃ引き摺ってなさそうだ。

 

 …それに、気が立ってる?

 お前と会って良い気分になったのは記憶に無いんだが璃亞に頭でもヤられたのか? いや、元からだったか。

 

 

「思ったよりのんびりしてたようだが、もしやお見舞いでもしてきたか?」

 

「は? ………今の俺が顔合わせても迷惑なだけだろ」

 

「ほう~それ位は理解してんだな」

 

「……………」

 

 

 黙れよ。この場でその口縫い付けてやろうか?

 

 お見舞いなど医務室に居る筈の璃亞が望んでるとも思えない。…正直、このタイミングで励ます目的であろうと平常心で話せる自信も無い。

 

 控室に来る途中────……

 

 

  『あ! 飛威炉君じゃ~ん!』

 

  『決勝おめでと。控室に行くトコ?』

 

  『あぁ……』

 

  『…飛威炉君、璃亞ちゃんには会いに行かないの?』

 

  『ちょっと婭夏葉!』

 

  『いや、合わせる顔が無ぇ』

 

  『………ん。そっか』

 

  『…ねぇ? アタシが無粋みたいじゃないコレだと?』

 

  『んふふ。そーかもね~』

 

  『蝶野、浮島』

 

  『何~?』『どうしたの?』

 

  『伝言を任す。…“格好良かった”ってな』

 

  『『っ!!???』』

 

  『驚き過ぎだろ』

 

 

────……ってな訳で、一応大義名分は成立させておいた。

 

 どうせ後で会うんだが人を褒めるのに時期尚早も無い。今璃亞がどんな感情かは会ってみないと判らないけれど、もし気に病んでいたなら俺の分のフォローも肩代わりしてくれるだろう。

 

 

 しかしお蔭で道中で多少は気が晴れた。

 …頭に血が昇り切った状態で臨まずに済むって思っていたのに、

 

 

「勝者の立場からだが~……正直、褒め称えてやりたいぜ?」

 

「想定以上だったなァ。愉しい準決勝だったわ」

 

「もう途中で足震えてたし身体はほぼ諦めてたようなもんだったけどな!」

 

「さっさと諦めりゃいいのにってとこでなんとビックリな必殺技がなァ?!」

 

「ほら見ろよ! 大体はもう回復したが今もまぁまぁ痛いぜ?」

 

「…なぁ? アイツと腐れ縁のお前なら知ってたのか?」

 

「璃亞があんなに戦れるってことを……~~~って、

 

「まぁ知る訳ねぇよなァ!! 可哀そうになァ~同情しちまうよオレは!」

 

「オレより先に璃亞の実力を引き出せなかったのはお前の責任だからな?」

 

「必死な姿を見る度にど~して手抜き野郎なんかと一緒に────…

 

  「黙ってろ鳥頭」

 

────……やんのか?”」

 

 

 …巫山戯るな。璃亞を馬鹿にしてるのか?

 

 ハッキリ云ってお前が“俺”を難詰してくる時点で腸煮えくり返ってる。

 

 だが、璃亞を悪く言うんだったら絶対に許さねぇ。

 

 

 

────……決勝の準備時間すら忘れて睨み合いが続いた。

 

 何かの切っ掛けで腐り果てた極小脳ミソ貫こうとしてた気分の中、関係者用出入口から誰かがやって来たのを視界の片隅に映った気がした。

 

 

────……ちょっと~そろそろ時間だから出てきなさ………って何やってんのよ!??」

 

「「…コイツから吹っ掛けてきました」」

 

「だからって決勝の前に喧嘩するかしら?!」

 

 

 主審であるミッドナイトからしたら………片方が“Energy FullCowl”発動させてスケジュール用紙を吹き飛ばして、もう片方が天井に頭つけるんじゃないかって高さに巨大化して机に鉤爪食い込ませてるんだ。

 他人の視点なら『大事なイベント前に何やってんだ?』って感じか。

 

 …で、譲れる話じゃないんだよな。教師相手に悪いんだけど。

 

 

「いい加減にしないと不戦敗にして恥晒してやるわよ?!」

 

「「………………………はい」」

 

「口喧嘩だろうとやるなら試合の中で! …ハイっ!! 早く行きなさい!!」

 

 

 説教食らってすぐさまに仲裁。

 

 半ば追い出されるように会場入場口へと俺らの選手入場は始まった、それも意味も無く『個性』を身体に帯びさせたままに。

 

 

 ………勿論ヒートアップした俺の心臓も冷める筈もなく。

 

 

「“オイ”」

 

「っなんだよ?」

 

「“解くなよソレ”」

 

「は?」

 

「“オレはこのまま行くから抜け駆けしたいんならやれば?”」

 

「やる訳ねぇだろ。何だっけ? “アホウドリ”だっけか? お前に随分似合った見た目じゃねーか」

 

「燃費カスが言うじゃねぇか? あ?」

 

 

 仰木に云われる迄もなく俺が先に折れる訳ねぇーだろ。

 負けたみたいじゃねぇか。

 

 今日はもうこの試合で終わりなんだろ? じゃあ俺の燃費なんて如何だって良いんだよ、決勝で俺の“全て”を叩き込んでやる────……

 

 

 

 と、考えてたら光差す方向から本日最後の入場アナウンスが。

 

 

 

『ッッッやってまいりましたァ“決勝戦”!!!』

 

 

『いや~~ここまで長かったっ! 実況してたオレも草臥れちまったゼェ?!』

 

 

『正直に言おう、一年生の部で今回のレベルはSuperなサプライズだな!! …あいやっもしかしたら上の学年ですら在り得ないかもなァ?!』

 

 

『そしてェ! 今回の体育祭を盛り上げてくれた立役者、そいつらが今日の最後を締めくくってるみてェだ!!』

 

 

『ヒーロー科でェクラスメイト! どの種目でも鎬を削りに削りまくってきた!!』

 

 

『……さァ遂に来るみてーだぜ?! 決勝戦、マッチアップは~~~~

 

 

 

~~~……A組、天蟲と仰木だァーーーっ!!!』

 

 

  WAAAAAAAAAAAAHHHHHH!!!!

 

 

 地鳴り轟く程のこの歓声。…レスポンスを実況が求める必要も無いな。

 

 学業の本分に不釣り合いな敷地内で全学年が体育祭を開いてる。

 しかし、今の歓声よりも馬鹿でかいモノは俺の耳に届いちゃいない。通例を考慮すれば余りにも異質な現状にプレゼントマイクがあのように評するのも強ち間違いじゃないかもしれない。

 

 決勝の舞台に立っているって俺を取り巻く環境に教えられる。

 

 ………則ち、まず思考に浮かべるべきは栗衛さんとの約束。

 

 優勝が条件なのは前提で、見渡す限りに視える観客全てとテレビ越しの視聴者に俺という存在を焼き付けさせるって目論見に関しては大満足なんじゃないか?

 

 

『って、既にバチバチじゃね?! 派手に『個性』ダダ洩れだな!!』

 

『特別解説のイレイザーヘッド、A組の担任としてこの対決どう見るよ?』

 

『………まず、何故俺をここに呼んだんだよ……』

 

『オイ折角教え子が揃ったんだぞ? そりゃ呼ぶだろ!!』

 

『…見りゃ解るだろうが奴等は犬猿の仲だ』

 

『そうなんか!? マジで因縁有る相手じゃねーか!』

 

 

 そして……大事な約束すら退かして掲げるのは璃亞のこと。

 偶然か、意外にも解説役を担っている我らが担任が補足もしてくれてる。何だかんだでイレイザーヘッドも教え子の実情を知ってくれてるんだな。

 

 …しかし『犬猿の仲』か? そんな生温い喩えで終わらせてほしくない。

 

 俺の前の奴を見てみろよ、嘴の奥から分かり易い啖呵切ってくれてるぞ?

 

 

「“────……やっとだ”」

 

「“決勝戦ここじゃねェと、こん位やんねェと……お前は同じ土俵に立つ気すら無ェ”」

 

「“お前の本気を引き摺り出して………叩き潰す”」

 

「“~~っでもなけりゃ胸糞悪いこの気分が収まらねぇんだよォ!”」

 

 

 最後のひと言だけは同感だ。

 

 個人的な感情でモチベーションの振れ幅を創るのは誰にだって褒められたもんじゃない。

 …そんな通説はこの舞台には要らないな。

 

 一世一代の勝負だ。敗北は死んでも許されない。

 

 

『さァいよいよラスト!!』

 

『雄英1年の頂点が、ココで決まる!!』

 

『決勝戦、天蟲 対 仰木!!』

 

『名残惜しいが行くぜェ! READY~~~……

 

 

 

────……敗北が導く、ある1つの未来。

 

 蔑んだ表情で負けた俺を見詰める……璃亞を失ったそんな世界だ。

 

 

 

  『STARTッッ!!!』

 

 

 

 下らない傲慢プライドかもしれない。

 

 告白も許されないのに……好きな人の前ではかっこつけたいなんてな。

 

 

 ………………ホント俺って、

 

 

 

  「………情けないな」

 

 

「“行くぜェーーー~~~~~~~んッ!??”」

 

 

 感情任せにエンジンを踏み切った。限界量リミッターなど無視だ。

 鼓動が響き渡る歓声を上回って────……

 

 

「…どうだ? お望みの俺の“本気”だよ」

 

  

【挿絵表示】

 

 

 

 初めての感覚だ、まるでエネルギーそのものと一体化したみたいだな。

 

 “Energy FullCowl”の限界突破版ってとこか。

 吹っ切れて身体の何所が痛いとかは忘れてしまった。妙に澄み渡った思考と煮え立つ血管が、俺に途轍もない無敵感を付与してくれる。

 

 言わずもがな、終わりは近い。

 

 

「“はっ………ハハハッ! 良いじゃねーかァ?!!”」

 

「“ソレが見たかったんだよォ!! さぁ本当の勝負はこっからだ!!”」

 

「…………1分だ」

 

「“は?”」

 

「1分で終わらせる。…覚悟しておけ」

 

 

 そこまで持つかの確証も無いまま拳を構える。

 

 出せって言った割に豪く驚いてるじゃないか。楓馬戦でのアレが俺の全力だと断じていた訳じゃないだろ?

 アレは“現実的な”全力だ。

 

 自分の『人生の一部』を支払う馬鹿が居るんだよ、ここにな。

 

 

「“世迷言云ってんじゃ────……

 

 

 「五月蠅ぇ」

 

 

「“っっ?!! ぐはっ!?”」

 

 

 …KO宣言を不定するんだったらもう遅いな。

 

 眩く光るこの腕の掌底で軽々と吹き飛んで………場外スレスレって所でブレーキが掛かった。

 

 

 助かるよ。コレで終わったら詰らない。

 

 

「逃げてんのか?」

 

「“がァ………っ!?”」

 

「動きが甘い」

 

「“ぐふぅ?!”」

 

「只の口だけなのか?」

 

「“待っ……ふざけっ────……?!”」

 

 

 そうか、俺が殴り飛ばし続けてるから返答が無いのか。

 

 まぁ止める気は毛頭ない。

 

 璃亞が負わせた傷は治ったんだろ? じゃあ俺がこうやってぶん殴り続けても勝手に回復してるから遠慮は必要無いよな?

 

 熱源保った殴打で所々が焼け焦げてる。

 顔も酷く腫れてんな。嘴の先も欠けてるじゃないか。

 鋭い瞳も………戦意だけじゃない、少なくとも無駄な慢心を取り除けたようだ。

 

 発達させた筈の筋力以上の覇気も衰えて、死んだトカゲみたいに的をデカくさせただけの図体そのままに這い蹲っている。

 

 

「“はぁ……っ…し、…あっ……天蟲ィ………!”」

 

「敗者の、そして往生際が糞ほど悪いお前に釘を刺しておこうか」

 

「“…あ゛ァ……?……”」

 

 

 お前が璃亞に思ったこと、そのまま返させてもらうよ。

 

 『さっさと諦めりゃ良いのに~』だっけか。

 じゃあお前もそうしろよ。………出来ないだろ?

 

 結局は引き下がれないのが人の性だってのにお前は無責任に馬鹿にした。

 

 

 だからだよ。……仰木おまえは俺に届かない。

 

 

 

 「頭の足りない雑魚が、二度と『璃亞』の隣に立とうだなんて考えるな」

 

 

 「“まだ終わって───────………

 

 

  “Washingtonワシントン BLASTER”

 

 そう唱えて、ありったけのエネルギーを胸部コアから解き放つ。

 

 

 

 緋色の光線は真っ直ぐに観客席下の壁へと繋がった。

 

 …5秒だろうか、段々と威力が弱まっていく。

 急なフラッシュで映像麻痺したビジョン画面も色彩を取り戻して、

 

 

『………お、仰木くん場外! よって……天蟲くんの勝利!!』

 

 

『…なっーーーーー……き、決まったァァーー!!!』

 

『以上で全ての競技が終了!! 今年度の雄英体育祭1年、優勝はーーーー……

 

 

~~~……天蟲飛威炉だァーーー!!!!』

 

 

 

 二の次だった“結果”が大っぴらに轟いた。

 

 

 ん~~……………………

 

 家族全員からの説教は確定だな。

 

 

 『体育祭優勝』の肩書で見逃してもらうってのは~~~

 

 

 まぁ無理だな。諦めよう。

 

 

 

 

 

 

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