緋色の英雄   作:kozmo78

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第37話 ヒヒイロカネ

 

 

 

 

「本日公開された記事は事実なのでしょうか?!」

「サー・ナイトアイとはどういった関係なの?!」

「1年次で今回の契約は前代未聞です! 現在の心境は?!」

「天蟲久悟氏はこの一件に関与しているのでしょうか?!」

 

「(オイ何だ? あと少しで事務所だってのに……)」

 

 

 電車降りてホームに降り立った途端に囲まれてしまった。

 訳も分からずマスコミまみれだな。

 

 聞き取れた内容だと『記事』と父さんの名。所々不穏なフレーズも入り混じってた気もするな。

 

 …突然押し掛けられた反射で無知を貫いているが、“あの”話が関わってるのは確認を取らずとも判断できる状況ではある。

 

 

 「「「返答はございますか?!!」」」

 

「(記事が何かも知らねぇし、しゃあねェ逃げるか!)」

 

 「「「居なくなったぞ!? 探せっ!」」」

 

 

 このまま事務所まで引き連れてっても迷惑だろうから1回撒くか。

 

 出口を抜けた後に人混みを利用できて視界から外れは………したようだな。

 まだ通勤時間帯だったのが功を奏したか。

 

 俺の存在に気付いて通りすがる人も次第に指差してくるし、実際にヤバい何かが俺の知らない内に起きたのだろう。やはりもうバレたのか?

 立ち止まって確認したいトコロだが今の内に身を隠すか事務所に逃げるかしないとすぐさま朝の情報番組に生出演だ。

 

 路地裏まで来たは良いものの、さぁどうする────……

 

  ピロン

 

 おっと着信か? 宛名は………父さんかよ。

 

 

  事務所前を通らずに裏に停めてあるタクシーに乗れ

 

「………本日最初は隠密行動スニークって笑えるな。まぁ向かうか」

 

 

 …少なくとも、父さんは取材対応で身動きつかない程じゃないようだ。

 

 逃げる途中に事務所が面する大通りの方を確認した。

 改札通るのもやっとだった俺も大概だったが、歩道を溢れんばかりにTVスタッフや記者でごった返してたのを見る辺りサーの方は職場体験どころじゃないか。

 

 

 指示された通り事務所裏に来たが………

 

 

「(アレか……只のタクシーじゃないな。偽装か?)」

 

 

 マスコミで騒ぎ立っていようと、別に都市部なのだから路肩にタクシーが止まってる事に不思議がる方が可笑しいかもな。

 しかし、その表示灯が『空車』じゃなく『貸切車』なのは指示を考慮すると意味は変わってくるって訳だ。

 

 …周りの目を盗んで乗り込むとそこには見覚えのある人が運転席に。

 黒スーツを際立たせる程に不釣り合いな赤褐色の甲殻と無数の脚。サー・ナイトアイのサイドキック、百足ムカデヒーローとして名を馳せる方だ。

 

 

「すまない。移動しながらで質問を受ける」

 

「“センチピーダー”、が運転手? …まずソレに質問していいっすか?」

 

「使い走りだよ。サーは事務所でマスコミ対応だ」

 

「…俺も凄かったっすけど原因は?」

 

「自分の名で調べれば直ぐに理解できる」

 

 

 そうだな、やっとひと息つけるんだし改めて確認するか。

 さて何々……──────

 

 

 ……簡潔に纏めるとしっかりとバレたみたいだな。

 

 俺が職場体験でサーの事務所に招かれた事も、そのツテなのか(本文でそう推測してる。ってか合ってる)インターンシップとしても招待されてた事も、1年次で仮免を狙っている事も。

 秘密裏に進めていた計画のほぼ全部をネット記事で暴露してる。

 

 まぁ気になる点もあるが一旦置いといて、

 

 

「成程。ヤバいっすね」

 

「……この一件、君はどう視る?」

 

「『どう』って………いや確かに疑問符は浮かびますね。体育祭以降で初めて人前に出る絶好のタイミングを狙った気が、朝早くってのもあるし」

 

「正解だな。リークしたのはサー本人だ」

 

「っ!」

 

 

 流石に驚いた……考えていた上を行く返答だ。

 

 このリークすらも計画的な犯行、だとすれば不自然な位に機密情報を掲載したこの記事の違和感を解消できる。

 俺が初実戦に出向く直前に“わざと”公表して違ったメリットを狙う。

 …じゃあ自ずと狙いは想像できるな。

 

 

「目的は更なる注目と俺への発破、ってトコですか?」

 

「察しが良いな。流石サーが認めた生徒だ」

 

「いずれバレるにしても、こうも詳細に語ったら面倒な憶測を生みそうでは?」

 

「詳しくは本人に聞いてほしい。…部下である私にすら明かしていない思惑があるのだろう」

 

 

 相棒にも明かさない思惑、か………。

 

 

 正直なトコロ、初めて会った1週間のあの日から謎は解けてない。

 

 サーは何故俺を選んだのだろうか。

 体育祭での俺の活躍を観て? 機動装甲服の存在を知って? それかまた異なる視点で俺に価値を見出したのか?

 

 …もしかしたら今日で何か解るかもしれない。

 まずは宛ても知らずに乗り合わせたタクシーの到着地を知るべきだな。

 

 

「行き先は何処なんですか?」

 

「ARC本部だ、君の戦闘服を取りに行く」

 

「(空き時間に寄る予定は変更か。えらく急な変更だな)」

 

「今回の作戦は────……甚だ大袈裟なお披露目だ」

 

 

 含蓄ある言い方じゃないか? …指示だけを仰いだセンチピーダーが納得しようにも出来ないことだって示してるようだな。

 

 

「私達がARCに向かってる間に君の父親と栗衛氏は事務所に行く筈だ。あと5分後には緊急会見を執り行い、一つの“業務提携”を発表する」

 

「業務提携? なっっっんにも知らなかったんですが……」

 

「情報漏洩を防ぐ為だ。君の親友であっても例外ではない」

 

「(…俺が璃亞に打ち明ける可能性か。大いにあるな)」

 

 

 現に、璃亞と菟希には機動装甲服を見せてるしな。

 

 まぁ俺の立場上このまま敷かれたレールを1回載せられた方が身の為だ。

 その3人の腹積もり……いったい俺をどう利用したいんだ?

 

 

「到着次第、機動装甲服を装着して事務所前に帰還。メディアの前で“試作品プロトタイプ”が如何ほどかを大々的に紹介する手筈だ」

 

「………承知しました。中々凄いこと考えますね」

 

「この構想に私は関与していない、久悟氏とサーが首謀者だ」

 

「俺の立場で言うの変ですけどセンチピーダーは不思議に思いませんか? 特にサー、あの人の俺への期待度は尋常じゃないですか?」

 

「…否定は出来ないな。私も過去に意見を呈している」

 

 

 おっと、気まずいこと言われてしまったな。

 傷付く程弱くも無いし元々そんな感じだろうと考えてたし何も想わないんだが。

 

 運転を止めずにセンチピーダーはルームミラー越しに俺を見定める。

 

 

「推測だが、サーは君を“次世代の象徴”だと見込んでる」

 

「…………っ!」

 

 「オールマイトを崇拝する彼は『象徴』に重きを置いている」

 

 「経験上……この年代で君ほどの将来性を示した人間は初だ」

 

 「名目上は計画の為の実験体とも言えるが、もし実を結べば……

 

 「現代とはまた異なる超常社会の象徴に成り得るかもしれない」

 

 

 象徴。…超常社会においてその言葉は何よりも重みを得る。

 

 現代いまのその称号はオールマイトだ。

 遥か昔は混沌を極め、時代を経ても尚『ヴィラン』と『個性/異能』の存在に恐怖を亡くせずにいた日本を彼の身一つで救ったと言っても過言ではない。

 “All-Might最強”にこそ平和の象徴は相応しい。

 

 

 で、次世代は俺? 果てしない程に重すぎる。

 

 だが────……背負える“器”かどうかを試す気はあるぜ。

 

 

「………そう言えば、君のヒーロー名の件」

 

「一旦本名のままで考えていましたけど……」

 

「栗衛氏からの言伝で名乗ってほしいモノがあるそうだ」

 

「(…有難い。璃亞に言われた通り現時点の奴だったら箔が付かないトコロだったな)」

 

「コレだ。一通り読んでおいてくれ」

 

 

 計画の事も踏まえて指示書があるみたいだな。

 その方がソッチの思惑通りに俺も動けるんだし、双方が望んだ道筋を辿れる手段を与えてくれたのは感謝したいトコロだよ。

 

 さて、俺に名乗ってほしい肩書ヒーローネームは如何ほどか……──────

 

 

 

 

 

 

 

  ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

………“Amamushi-Rescue-Clinic”はヒーロー医療に尽力してきました』

 

 『ヴィラン犯罪の被害者を即時に雇用スタッフヒーローを派遣しその救出』

 

 『現場又は各地の医療施設で治療し、状況悪化を防ぐ役目として』

 

 『発足後は国内重傷者・死傷者数の減少しつつありますが……

 

 『超常社会が導く技術革新は必ずしも好転だけではありません』

 

 『闇市場で流通されるサポートアイテムは各国で問題視され」

 

 『個性すら用いなかった単独犯がトップヒーロー相手に』

 

 『ヒーロー生命を奪いかねない程に負傷させた事例も存在します』

 

 『何時の日かヒーローと『個性』の存在が平穏の保証を失い得る』

 

 『……そう考えた為、我々はこの場を設けました』

 

 

 ヘルメットの中で響くのは………父さんの演説スピーチか。

 

 ARCの功績、そして現代が抱える危機を記者の前で唱える。

 

 

 『ナイトアイ事務所 “サー・ナイトアイ”です』

 

 『KURI8代表 栗衛糸穂です!』

 

 『お二方の協力の下、私は一つの事業計画………

 

 『“英雄武装計画/Hero-Armed Project”の構想を話させて頂きます』

 

 

 父さんが高らかに宣言した、“英雄武装計画”。

 

 突然の事だろうしビッグニュースにしてはメディア陣の反応は不均一だった。

 詳細も知らない状態ならそんなモノか。

 

 

 『我が社KURI8はサポートアイテム中心の企業です!』

 

 『代表例としてはコチラ! ARCでも導入されているモノです』

 

 『負傷者を運ぶ為のパワードスーツ、勿論誰でもね?』

 

 『プロヒーローに必要か?と思ったそこの貴方!』

 

 『救助に向くか戦闘に向くか、“個性”の向き不向きは当然!』

 

 『もし治療系のヒーローが重傷者を保護したその瞬間っ!』

 

 『ヴィランに襲撃されたら誰が2人を護るのか?!』

 

 『…そんな時に我が社の製品にお任せ下さい!』

 

 『搭載されたAIと武装が怪我の悪化の心配なく』

 

 『迅速に敵を撃退すること間違い無しですよ?!』

 

 『────……もし、ソレに更なる改良を加えられたら?』

 

 『そのAIが傷付く未来を“予知”できるようになったら?』

 

 『人を救う為のもう一つの“個性”を手に入れられたら?』

 

 『英雄武装計画、以降“HArP”と呼ばせて頂きます』

 

 『HArPでは………進化を遂げた最高のパワードスーツ』

 

 『機動装甲服アーマードスーツを誕生させ、プロヒーローに提供し』

 

 『超常社会の平穏を保全するその助力となる所存であります!』

 

 

 メディア対応に出向いた本当の理由、その一端に思い知らされたことで一斉に騒めきとフラッシュ音が溢れ始めたようだ。

 

  『PS-8Markト接続シマシタ。画面ヲ共有シマス』

 

 おっ、紹介に使ったパワードスーツ内蔵のカメラで中継できたのか。

 

 大通りが野次馬も相まってイベントが如き状況みたいだな、記事が発端の軽い騒ぎはもう収拾つかない雰囲気が出来上がってる。

 …しかし、記者たちの顔を見るに賛同を得るにはまだ早いようだ。

 

 

 『ですよね~現実味が無さ過ぎるって顔ばかり』

 

 『…でも、只の絵空事ではないんですよね!』

 

 『先程まで皆さんがお探しだった彼! お忘れですか?』

 

 『なんとその彼がこの場に向かってるんですよ!』

 

 『試作品の機動装甲服を纏ってね?!』

 

 

 口だけだったら叶う気もしない夢でも騙れるもんな?

 必要なのは信用だ。それも……とびっきりの奴を示してやらないと。

 

 段々と目的地が近づいてきた。やっと念願のブツをお披露目できるんだ、登場の仕方もひと工夫しておかないと栗衛さんは喜んでくれないかもな。

 

 

 『試作品と言っても、そのクオリティはお墨付き!』

 

 『プロヒーローをも凌ぎ得る武力装甲を搭載』

 

 『高性能AIも勿論! それどころか今後の研究において』

 

 『サー・ナイトアイとの業務提携の恩恵でもある』

 

 『“予知”の思考ルーチンを組込む見通しとなっております!』

 

 

 『個性』の模倣。…それも未来予測という逆に現実味のある可能性を告げられて観衆全体が更に色めき立ってきた。

 

 今でさえ凄いんだけどな? AIのお蔭で最強の頭脳も手に入れたようなものだし、加えて将来起こる悲劇を先に察知できるようものなら正に最強のパワードスーツ……──────

 

────……ってのも実際はそう簡単な話じゃないんだが。

 

 指示書では『研究はしてるけどハッキリ言ってよく分かんない! それっぽいのは出来る気はするけど“予知”とは違うメカニズムになりそうだから期待半分でお願い!』だとな。

 期待を煽る為のハッタリにしちゃあ規模がデカすぎるんじゃないか?

 

 

 …まぁ、良いか。己の役目を全うしよう。

 

 

 『あ! あちらご覧下さいっ遂に真打がやってきますよ~!』

 

 『皆さんご存知、雄英高校1年A組 天蟲飛威炉っ!』

 

 『体育祭での圧倒的な優勝も目に新しいでしょう!』

 

 『そんな彼……そのヒーロー名も憶えておいて下さいね?』

 

 『黒き鋼鉄を纏う緋色の英雄スカーレットヒーロー。その名は………───────

 

 

 

 “蠖結彌/ワクムスビ”。コレは父さんのヒーロー名だ。

 

 俺がその名を受け継ぐって案もあったらしい。

 ………だが父さんは断って、新たなヒーロー名を授けてくれた。

 

 

 古来日本に伝わる伝説の金属、その名をな。

 

 ハハッ……機動装甲服を装備する俺に授けるには相応しい訳だ。

 

 

 

────……“燈日綺矩/ヒヒイロカネ”の登場ですッ!!』

 

  ガキンッ!!

 

 

 掌と両足使った四点着地。

 “VENDETTA SQUAD”でやってた“ヒーロー着地”って奴だな。

 ただ降りるんじゃ味気なかっただろ?

 

 さぁどうだ反応は……───────

 

 

「驚かれてる方も多いですがご質問はございますか?」

 

「「「ハイっ!!」」」「「宜しいでしょうか?!」」

 

「順番にお聞きします。では前列一番右の記者の方」

 

「“英傑Net”です! 先に飛威炉氏の本人確認宜しいでしょうか?!」

 

「だそうだ、飛威炉?」

 

『……承知した』

 

 

 白けた感じになっちまった。

 今年No.1映画だった筈なんだがな………?

 

 

 …まぁ良いか、切り替えてお望み通りに見せよう。

 

 

「…正真正銘、天蟲飛威炉ですよ」

 

「当然知ってます。問題は貴方が仮免も持たない高校生ってトコ!」

 

「……………」

 

「試乗する人間をプロヒーローですらない学生に任せるのが解せません! それこそ、職場体験における監督責任を度外視した判断ではないでしょうか?!」

 

 

 至極当然の指摘だ。俺だって頷いてしまいそうだよ。

 

 話題性あれば何だってオッケー、ゴシップにも繋がりそうなモノだったら唾垂らして胡麻を擂るってのが長年マスコミに追われてきた人生経験でのイメージだったんだがな。

 ちゃんと常識持ち込んでマイク向けられたのは久し振りだ。

 

 

「製作者である私から説明させて下さい! その理由は現時点で彼だけ・・・が機動装甲服を扱えるってことなんで!」

 

「………彼、だけが?」

 

「そうです。…飛威炉の“個性-エネルギーコア”が燃料炉の役割を果たし、本来のサポートアイテムの範疇を超えた電力を賄えるのです」

 

「試作品ですからね! 独立した電力源はまだ研究段階なんですよ~」

 

「監督責任の件ですが、彼に関わる全てに同意を得た上で為したまで。雄英や家族、勿論のこと当人も覚悟の上……だな?」

 

 

 わざわざ頷くまでもないけどな。断る理由も無ェ。

 

 

 「述べましたように、完成した場合の提供先はプロヒーロー!」

 

 「もし機動装甲服が悪の手に渡ったら本末転倒ですもんね?」

 

 「厳しい道程を経て手に入れるヒーローライセンス」

 

 「その証明があってこそ、厳重な契約を結ぶ事が出来ます!」

 

 「…まぁ万が一規律を乱したヒーローが居たら?」

 

 「その時は然るべき処罰は当たり前ですよ!」

 

 「公共施設や民間人への悪意を学習型AIがソレを感知し」

 

 「即時動作を完全停止、HNヒーローネットワークに緊急信号を送るようにしますから!」

 

 「元々、我が社は全機体をGPSで位置特定する想定ですけど!」

 

 

 一応はセキュリティ面で対策してるんだな。

 構想叶えば日本を揺るがしかねないレベルなんだし、“もしも”を想定しておかないと取り返しのつかないか。

 

 …ってか俺も例外じゃない。機動装甲服を狙って襲い掛かるヴィランも居るだろうな。

 

 

「では他に質問ある方ー?」

 

「製作費は?! 出資社は何処の会社が居るのでしょうか?!」

「天蟲飛威炉を選んだのは父親の存在が要因でしょ?!

「インターンの件といい明確な癒着ではないのでしょうか?!」

「実現に掛かる期間は? より具体的な展望を!」

 

~~~~ちょーっと落ち着いてください!」

 

「これから先の質問も含めてテレビ局の方でインタビューを受ける予定です」

 

「正午から生放送される番組です。改めてメディア対応が出来る環境を整えていますので一度お引き取り願います」

 

「「「えっ!? 待って下さい?!」」」

 

 

 狼狽える記者を置き去りにして一度退散させて頂こうか。

 事情聴取の場を設けている以上、止め処なく続くだろう質問に答えてもキリが無いだろうし。

 …初めてのメディア露出をする初心のヒーロー見習いなら慌てふためくかもしれんがすまないな、要らんファンサービスもする気も無いんだ。

 

 

 大通りを跨ぐ道路に向かうとセンチピーダーが待っていた。

 こう人も多いと歩くだけでもきつい筈だが、苦手な人にとっては最悪な蠢く肢体がバリケードとなって送迎者の邪魔を防いでいる。

 

 

「御三方、こちらへ」

 

『俺は如何すれば? 乗れそうもないんですけど』

 

「飛威炉クンはそのまま並走して! 宣伝に丁度いいでしょ?」

 

「“燈日綺矩ヒヒイロカネ”としての初舞台だ、ヒーローらしく振舞いながら飛んでみせろ」

 

『……初任務は別ベクトルでムズいな』

 

「走行車には絶対に迷惑掛けるなよ。車両妨害で有名になったら洒落にならんからな?」

 

『解ってるって』

 

 

 嫌な任務引き受けちまったな。誰かを救うとかは何だってイメージ出来ても、“ヒーローらしい振舞い”を求められてもなぁ………。

 

 悩む俺を無視するように3人は乗り込んでしまったし独りで解決しなきゃな。

 

 …いや、それっぽい事やってスベった俺への当てつけか?

 

 

 ………難しく考えんのは辞めだ。

 

 信号前で手を振ってくれてる幼い子供を見てみろよ俺。

 機械仕掛けのヒーローが飛び回ってれば勝手に興奮してくれんだろ?

 

 ほら、もう車は走り出してるじゃねぇか。さっさと追い掛けよう。

 

 

 

 

 

 

 

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