緋色の英雄   作:kozmo78

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第40話 被告人

 

 

 

 

 閑散とした小さめの駐車場。

 視界も満足に確保できない暗がりの中で立ち尽くすのは2名のみ。

 

 呼び出した俺と、平和の“象徴”オールマイト。

 

 

 …普通なら謁見すら叶わない存在をこんなド深夜に呼び出せたのには訳がある。

 

 

 

 まず、共に出演した“MIGHT MEET”はひと悶着在りながらも無事に終了。

 

 原因が如何こうは一旦置いといて……大事なのはこっから。

 

 

 

 

  「本日は有難うございました」

 

  「あぁ‼ …しかしやってくれたものだな!」

 

  「その件に関しては……追々って感じですか?」

 

  「ハハッ! そー思ってほしいかな‼」

 

  「本当はもう少し話したいのですが時間があって……」

 

  「人気者じゃないかッ‼ ではまたの機会だなッ‼」

 

  「申し訳ないです……では失礼します」

 

 

  「(────……よし。仕掛けに気付いてくれるか?)」

 

 

 

 仕掛けってのは握手した際に仕込んだガジェットだ。

 只の仕込み道具じゃ気付くも何もって感じだし最悪の場合番組スタッフにでも知れ渡ったらまた悪評買うのは明白だろう。

 

 ………ってことで、KURI8特製使わせてもらったよ。

 

 蚕をモチーフとした外観と体躯、痕跡を残さない為にメッセージ機能を発動した後に時限式で小規模の爆破処理が可能な代物だ。

 本来は隠密行動や緊急時に使う“機動装甲服”内蔵のガジェットなんだがな? まぁ発動者以外に使用用途が漏れないって言う機密保持能力を利用させてもらったよ。

 

 そして、実際にココに居るのが起動した証拠だろうな。

 

 

「うん! では数時間前の文言の真意を教えてもらおうかな?」

 

「…第一に伝えさせて頂きます。今回の件、確実に秘匿性を保証します」

 

「その点は信用しているさ! 君の父親の方にも確認を取らせてもらったからね!」

 

「半径10m内に盗聴器の類は存在しません。勿論、俺がこの場で見聞きした情報を漏らすことは無いと誓わせて下さい」

 

 

 予め父さんに話を通している以上、今の注釈は不必要かもしれないがハイリスクな誘いをした建前として絶対に確認は執るべきだ。

 

 一応は最善を尽くしてる……ココも父さんが指定した場所だし。

 なんでも普段から“密談”をする際に使ってるらしいな、特に世間に隠さなければいけない・・・・・・・・・・案件は専らこの駐車場って訳だ。

 「まず何故その日について知ってる?」と初っ端はブチ切れられたにも拘らずココを紹介した辺り、俺の企みが空振りで終わらないと考えて良さそうじゃないか?

 

 

 一度、振り返ろうか。俺が送ったソレの内容は……

 

 

   平和の 象徴 オールマイトにお伝えします

 

     この様な手段をお詫び申し上げます

     3年前の4月21日に貴方の身に何が遭ったのか

     加えて 父“天蟲久悟”との関係について

     以上の2点について伺いたい事があります

     可能でしたら記載された住所と日時にて

     足を運んで下さると幸いです

     当連絡は父にも話は通しております

     又 起動1分後に自動的に処理されるのでご注意を

 

   象徴 次期後継者 天蟲飛威炉より

 

 

 

────……振り返れば酷いものだな。

 

 天狗になってると謂れても仕方ない程に失礼過ぎる。

 何だ『次期後継者』って、サーの評価を勝手に誇大化して名乗ってるみたいだな。俺を担ぎたがりの報道陣が聞いても流石に批判する筈だ。

 

 まぁ大層な台詞載せてでも呼び出したかった訳で。

 

 

 サーに告げられた謎の日付ヒント

 

 初日は家に持ち帰っても解答を導き出せそうに無かった。

 だが、一度整理してしまえば……とんでもない推測に行き当る。

 

 

 

 「では………単刀直入に訊きます」

 

 「オールマイト、貴方の“引退”は近い将来ですか?」

 

 

 

 俺の問いが既に静まり返ってる空間を凍り付かせた。

 

 

 オールマイトについて多少漁れば誰でも目にする記事がある。

 

 “オールマイトの正体とは?”とか“謎の『個性』は超パワー!?”だな。

 

 日本を代表する圧倒的No.1ヒーロー、そりゃ誰だって謎に包まれた真実を突き止めようと考えて……その総てが有耶無耶にされて議論は行き詰まる。

 …超常を『個性』で説明できるこの時代に解明できてないのが不可解だよな。

 

 数十年経ても未解明の謎をたかが高校生1人じゃ無理な話だ。

 

 

 「…カマかけた、とは思ってませんよね?」

 

 「記載したようにこの推測には“父さん”が絡みます」

 

 「オールマイトと父さん、2人は親交が深いですよね?」

 

 「不躾な言い方ですが……ほぼ唯一の存在の筈」

 

 「同業相手でも人付き合いをしない貴方にとって」

 

 

 しかし、この議題で最重要なのが父さんだ。

 

 天蟲飛威炉にオールマイトとの接点は無くとも父親天蟲久悟とは関係大有り。

 世間では『ビジネス上で知り合った仲』と知れてたとしても、第一にオールマイトと交友が深い時点で滅多に存在しないレベルだ。

 極めつけにサーの存在、“元”ではあるが相棒サイドキックとも事業を協同する仲って点も踏まえると以上の3人に特異な関係性が自ずと視えてくる。

 

 

 じゃあ、話を例の日付の件に戻そうか。

 

 調べても何の成果も得られなかった……訳ではないんだ。

 事件解決やメディア露出で超多忙のオールマイトが珍しく“生出演”の無かった日、ソレがサーから貰った日付ヒントに該当した。

 基本は『本日オールマイトが解決した事件は……』とかで一度は報じられる為、当時も一部界隈で盛り上がってたらしい。“もしやテレビじゃ報じない大事件に挑んでるんじゃないか⁈”などの憶測を生んだりしてな?

 

 …鵜吞みにした訳じゃないぞ、視点が違うし。

 

 

 「貴方の元相棒サイドキックにヒントを貰いましてね?」

 

 「『3年前の4月21日』。まぁ最初云われた時は謎でしたけど」

 

 「そもそも“俺”を主体に考えるのが間違いでした」

 

 「誰よりもヒーローに見識の深い医者“天蟲久悟”」

 

 「父さんの視点なら話は変わってくる」

 

 「その日、2人の身にが遭ったのか────……」

 

 「医者とヒーローが結び付くパターンなんて」

 

 「『担当医とその患者』ぐらいですよね?」

 

 

 “救助”って観点なら繋がるんだがな?

 

 残念ながらポジティブな方面には考えられないな、単純な繋がりを示唆する為だけにヒントを渡すほどサーは無策な人じゃないだろ?

 『2人の関係とその日付を繋ぐ理由を探れ』って暗に伝えてるんだよ。

 

 史上最強オールマイトだって人間、無傷で伝説創った訳じゃない。

 

 

────……医者に頼ったんなら大概はそこ・・だろ。

 

 

 「仮説、オールマイトがその・・日に酷く負傷」

 

 「秘密裏に父さんが治療に関与し、唯一無二の関係性に」

 

 「しかし……完治することは無く後遺症を抱える事となる」

 

 「引退も視野に入る大怪我でもない限り貴方は生涯現役」

 

 「ってことで現在も世間にバレない様に父さんは陰ながら」

 

 「“象徴”としての貴方の存在の一助を担っている」

 

 「…と考えると一応は納得できるんですよね」

 

 「サーが高1の俺を見込んでる理由に」

 

 

 俺が思考を巡らせてた3つの疑問、

 

・サーは何故「象徴に成れるか?」の質問にヒントで応えたのか?

・天蟲久悟を父に持つ高1の俺に何を見出そうとしてるのか?

・オールマイト含む3人が抱える世間非公表の秘密とは?

 

 今の推測なら一応上手い事繋がるな。飛躍し過ぎだが。

 

“父親の因果に組み込まれた有望な息子に象徴を背負わせるべき”

 

 そう思ってるんだろ? サー・ナイトアイ。

 

 

「どうですか?」

 

「……………」

 

「もし間違ってたら本当にすみません。…あと詮索するつもりも無いんで」

 

 

 俺の講釈垂れてたのに異議を唱える事も無く、凛々しく仁王立ちしたままのオールマイト。

 無言の姿がここまで似合わない人間も居ないだろう。

 

 …正解か不正解かは如何だって構わない。

 

 サーの思惑として、何らかの形で俺がオールマイトに辿り着くのを望んでたんだろうし今の状況こそが一種の回答だと示せたとは思ってる。

 あと確信持って言える、絶対にこの推測は掠りはしてる筈。

 

 さぁ黙って聞き耳立ててくれたその真意を…────

 

 

「………よし! 答える前に重要参考人に来てもらおうか!」

 

 

  カツン……カツン……カツン……

 

 

「(足音ッ────……いや、ココに来るとしたら一人だけか)」

 

 

 コンクリートを踏み鳴らす足音に肌感を切り替えさせられた。

 秘匿性を理由に誘った前提が崩れてしまう……!

 

 …と緊張が奔ったのも束の間、直前の宣言を理解できた。

 

 重要参考人として呼び込める存在は1人しか思いつかないか。

 

 

「父さん、来るんだったら先に連絡しといてくれよ」

 

  カツン……カツン……カツン……

 

「約束は守ってるからな? 誰にも尾けられてないし」

 

  カツン……カツン……カツン……

 

 

 ………ん? 何だか妙だな。

 

 幾ら下手に騒げない環境だからって声のボリュームは高くないだろ。

 わざわざ返答もせずに近寄らなくとも……

 

 

 いや待て、クッソ嫌な予感してきた。

 

 

「謝った方が良さそうな雰囲k

 

  バキッ!!!

 

「(────……っ!?」

 

「ッWhat's!?」

 

 

 ………最初に出した・・・のは声じゃなくて手かよ。

 「何故?」の言葉を吐き出す以前に脳内処理が間に合わねぇな。

 

 …こんな場面で初めて父親に殴り飛ばされるとは。

 

 

「オールマイト。…もう解除して良いぞ」

 

「待て、私も混乱してるんだが! 妙だとは思ったがいきなり息子を殴るとは!」

 

「コイツが疑い出したら手遅れだ。いずれバラす想定だっただろ?」

 

「Wait……いや従おうか。君が言うなら……─────

 

「手痛い挨拶じゃねぇ………は?」

 

 

 間抜けな声が漏れてしまった。

 

 殴り伏せられて俯いている内に煙を噴き出して、骸骨のように痩せ細ったオールマイトの姿が其処に現れたのだから。

 

 

 …そうか。俺が望んでしまった結果がコレか。

 

 

 だとしても混沌とした状況なのに……父さんは息子が這い蹲っただけではまだ満足していない様だ。

 質問も弁解も許さず、冷徹なる威圧感を湛えて言葉責めを始めた。

 

 

「飛威炉。私が何故殴ったか理解してるか?」

 

「…ここ最近の過剰な悪目立ちする行動に?」

 

「違う」

 

「そもそもオールマイトを呼び出した事が?」

 

「巫山戯るな。なら昼連絡が来た時点で殴りに向かう」

 

「だ……よ、な」

 

 

 知らず内に再び罪を重ねてしまったのか。

 …懺悔したいトコロだが、正しい解答は導き出せそうも無い。

 

 家族に迷惑と不安しか齎してない俺。現状も含めて“見習いヒーロー”としての条件も達成してない学生が過ぎた行動を選んでるってのも自覚してるさ。

 なのに、今の2点でもないだと?

 

 心の奥底に押し留めた後悔しこりを自覚せずに、この時の俺は黙り込むのみだった。

 

 

  「今更、お前が幾ら悪目立ちしようと構わない」

 

  「諦めたよ……止めても抑え切れないのだろう」

 

  「サーに誘われたのは止めるべきだったとしても」

 

  「────……“夢”の為ならと許してやったんだ」

 

  「しかし何だ? あの発言は?」

 

  「『俺に度量も余裕も無い?』」

 

  「何を腑抜けた事を云ってるんだ?」

 

 

 ………………!?

 

 

「ちょっと待ってくれ、別に嘘を言ったつもりじゃ……」

 

「黙れ」

 

「……………っ!」

 

 

 有無も云わせない程の空気。従う事しか出来ない。

 

 番組のコーナーで何気無しに返した発言を蒸し返されるとは思いも寄らず、何時しかオールマイトが如何こう等の思考は白紙に還された。

 

 …今日の計画、本当の被告人は俺らしい。

 

 

「質問する。発言の際に思い浮かべた存在は要るか?」

 

「………──────」

 

「質問に答えろ」

 

「────……あぁ。居るよ」

 

 

 嘘は無意味だ。逃れる術はとうに奪われてる。

 

 司会者に訊かれた時に誰の顔が浮かんだかって璃亞しか居ない。

 そんな分かりきった事は昔も今も理解してんだよ。

 

 理解した上で、俺に相応しい弁明をした迄だ。

 

 

「じゃあ逃げてるだけじゃないか」

 

「あ…………?」

 

「夢を言い訳に独り善がりに気持ちを押し殺して……何様のつもりだ?」

 

「(何故、そこまで……っ!)」

 

「親として選択肢を与える。一学生として清く正しく生きる道か、今と変わらずに生き続ける代わりに………彼女や同級生と二度と深く関わらない様に生きる道か」

 

!?」

 

「選べ」

 

 

 っ流石に看過できないな今の提案は……!

 

 抗える立場に無くとも呑み込む筈もない台詞に突っ掛からざるを得ない。

 

 

「なっ……何で他人ひとに言われて選ばなきゃいけ、

 

「甘えるな。誰が心配を無下にする人間を受け入れる?」

 

「久悟君、その辺に……」

 

「止めないでくれ。貴方も今の飛威炉が望ましいと思うか?」

 

「…そうだな。今は静観させてもらうよ」

 

 

 萎れたオールマイトを手で制して、流れのまま俺の胸倉を掴み上げる。

 狼狽えたままの人間に更なる緊張を走らせるには十分過ぎた。

 

 

「…………ぐっ!?」

 

「努力が為に家族に迷惑かけるのは認めてやろう。だがな? 所詮はお前など一端の高校生に過ぎないんだよ」

 

「っ………!」

 

「感情捨ててまでヒーローになる気か? 俺を舐めてるのか?」

 

「っな、んで……」

 

 

 如何してだよ。

 

 なんで父さんがそこまで怒れるんだ?

 

 

 もう俺が璃亞を好きだって気付いてる上でだ、判るだろ?

 

 ただでさえ我儘な人間が抱いちゃ駄目な望み。

 

 そもそも、“ヒーロー”ってのが孤独な存在だろ?

 

 俺は折れるのが許されない領域に踏み入ってる。

 

 

 宿命とも云える“国防を担うヒーローに成る”夢と、

 

 一個人の欲求でしかない“誰かを好きになる”って想い。

 

 

 前者を掲げたんだ。『どっちも』は甘えだ。

 

 なぁ? そうだろ? そうだと訴えてくれよ。

 

 父さんが咎めるなら諦められる………────────

 

 

 

 

  「…サー達と組んでお前を担ぎ上げようとして」

 

  「必要以上の重荷を背負わせた立場だとしても」

 

  「俺は────……腐ってもお前の“親”なんだ」

 

  「友達と笑って過ごして、好きな事やって」

 

  「恋愛だってそうだ。学生らしい生活を……」

 

  「悔いなく、欲望に忠実に生きてほしいんだ」

 

  「『1つ』だけじゃない。『全て』を選べ」

 

  「どんな難題も成し遂げられる、と信じてる」

 

 

   「俺の“息子”が勝手に諦めるなよ」

 

 

 

 

 ………どこかで俺は望んでたのかもしれない。

 

 

 辛かった、とかではない。

 

 己自身に納得できなかったんだ。

 

 妥協してる癖にヒーロー目指す気概こそ、馬鹿げてるって。

 

 

 結局、他人に説得されなきゃ動けない“意気地なし”だ。

 

 

 

「はぁ~~………そうかぁ」

 

 

 溜息が出てしまう。途方も無い程に無様だな、俺。

 独り善がりに生きようとしてこの結果なら……いったい何の為に意地張って生きてきたんだろうな。

 

 …彼女の隣に俺以外の誰かが居る景色なんて想像したくない癖にな。

 

 

 しかし、拳1発と説教食らってマシな頭に戻れたよ。

 

 

「父さん、改めて謝るよ。ごめん」

 

「謝るべきは私じゃない。誰に言うべきかは理解してるよな?」

 

「承知してる。それに……覚悟も決めたよ」

 

「なら良い。…すまないオールマイト、身内喧嘩に付き合わせて」

 

「う゛ん゛~~実に゛ずばらじがっだ……」

 

「何故泣いてる?」

 

「どでも美じい家族愛を見ぜでもらっだよ……う゛ん」

 

 

 『そう言えば』と思って目を映したら、ホラー映画の化け物染みた形相で号泣してたとは。

 傍目から見てそんな感動的な状況だったか?

 

 ……ん? 冷静になると大事な話忘れてたのに気付けた。

 

 

「ってか、いい加減オールマイトについて教えてほしんだが」

 

「あぁ………そう言えばそうだったな」

 

「だがしかし、飛威炉少年の推測はほぼ正解だよ」

 

「当然メディアに漏らすなよ? 仮に漏洩したら国を揺らがす案件だろう」

 

「聞いといてなんだけど、俺にバラして良かったのか?」

 

「私もその質問に便乗させて宜しいだろうか?」

 

 

 当たってたんかい。

 ちゃんと予想外すか流石にバレたらまずいから誤魔化されるかの二択だと思ってたんだがな。

 

 では次の疑問、聞いといてなんだけど良いのか?

 

 誇張抜きで今世紀最大のスキャンダルに成り得る情報。

 俺もとっても正直……色々遭ったのも含めてガリガリ状態のオールマイトが本当の正体ってのは受け入れ難い真実に変わりない。

 オールマイトですら現状に疑問を呈してるぞ?

 

 

  「“象徴”に成る気だろ?」

 

  「少し早いがこの事実、背負う使命があるんだよ」

 

  「使命も、夢も、欲望も」

 

  「全てひっくるめて背負って生きろ」

 

  「…父親のこの願いを叶えてくれないか?」

 

 

 っ!………クソ、言ってくれるじゃねぇーか。

 そこまで期待されて断れる息子は野垂れ死んだ方が良いな。

 

 やってやるさ。全部努力するよ。

 

 

 

 

 

────……しかし、俺にもプライドがある。

 

 

「────……まだ・・告白は出来ない」

 

「もう一発殴られたいのか?」

 

「情けなさ過ぎるだろ? 親に尻叩かれたから即日告白しまーすは?」

 

「む……まぁ残念ながら一理あるな」

 

「来月は仮免試験、受かればインターンもある。…嘘ついた訳じゃないと言った通りに『余裕』は実際無いんだ、だからまだ待ってくれないか?」

 

 

 ………「勇気無いだけだろ」と嗤われても良い。

 家族含めて縁の深い璃亞だろうが告白に踏み切った契機を知った場合、間違い無く俺に幻滅して返答とか以前の問題になるのは明白だ。

 

 まぁ、バレなかろうが可能性は無いに等しいけど。

 

 

「その旨も含めて璃亞には伝えるから。…駄目で元々、誠心誠意挑んでみるよ」

 

「ん?………オイ待っ……いや、は?」

 

「あぁ体育祭4位の彼女か‼ いや話についていけなくてね……!」

 

 

 『璃亞が“何”を目指して俺と知り合ったのか』

 ……心情以外で告白できなかった理由が俺にとって一番重要だった。

 

 志高い夢を抱いてるのは誰よりも俺が知ってるんだ。

 下らない感情で“邪魔”するのは今回の告白だけにしよう。もしソレで俺の見方を変えてしまうようなら………残念だが仕方ない。

 許された我儘、玉砕覚悟ですら感謝すべき。

 

 

 「大事な人だと想ってる」と伝えられれば満足だ。

 付き合うとかは高望み。…第一に謝罪と懺悔が最優先だが。

 

 『3人で観てた。帰ったら説教よ』って連絡はもう確認してしまったし、腹くくっておこうか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────……父さん達は俺を自宅付近の駅前に降ろして別れた。

 

 そう言えば、駐車場を離れる直前に変に狼狽えていたのは何だったんだろうか?

 

 訊ねると不自然にはぐらかされて終わったし。

 謎に若干機嫌を悪くしてたような気もするが……

 

 

 まぁ良い。自分の役目を果たす事に集中するか。

 

 

 

 

 

 

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