緋色の英雄   作:kozmo78

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第41話 捻りの無い物語を

 

 

 

 

「………どうでしたか?」

 

「そろそろ家に着くそうよ」

 

「ん~……遅すぎないー………?」

 

 

 夜も更けて、飛威炉を待つ内に日を跨いでいた。

 

 本来であれば私達もベッドに入ってるし、たとえ最近は落ち着きつつあるにしても朱寧さんには無理やりにでも体を休めてもらいたかった。

 だけど、否定出来る筈が無かった。家族への説教に水を差す事なんて私が止めれる理由が思い浮かばないわ。

 …恐らく今回の『犯人』からであろう電話を終えて戻ってきても毅然とした態度のままだから要らない心配だろう。

 

 菟希ちゃんは流石に眠そうだけどね?

 

 

ゴホッゴホッ…インタビューで色々忙しかったらしいわ」

 

「でしょうね。あの内容なら至極当然です」

 

「菟希も先に寝てて良いのよ? 説教の為とは言え夜更かしする必要は無いわ」

 

「やだ起きてる~……私からもキッチリ言わないとー…」

 

 

 こんな優しい妹もってアイツに嫉妬しちゃうわホント。

 

 ………いや駄目、今回ばかりはその地位を剥奪すべきだ。

 

 

 波乱を呼んだ一幕を経てネットは荒れ放題、体育祭や“国土武装計画”の会見の時もそうだったとはいえ飛威炉のあの発言は彼の謂れを更なる飛躍させてしまった。

 

 『オールマイトの後 担う“次世代の象徴”に成ると宣言⁉』

 

 ってね。結果、良いも悪いも世論を歪めているの。

 

 メディアに守られてる今だからこそ持て囃されてる側面しか見ないで済むかもしれない。

 もし、陰に隠れた悪辣な側面が飛威炉の目に映ってしまったら。…昔から慣れてるとよく答える飛威炉でも何も想わないでいるかどうかは判らない。

 私が同じ立場なら……正気で居れる気はしないわね。

 

 

「あと────……いや、帰ってきてからにするわ」

 

「他に何か問題が?」

 

 

 含みを残した切り上げ方に迷惑な訊き返しをしてしまった。

 しかし自己完結してはいけない案件だと私の予感がそう告げてる。

 

 …戻ってきた姿を『毅然』と表現したのが間違ってたのかもしれない。

 番組を終えて確かに体調の心配する程に奮い立ってた。なのに、「少し離れるわ」と残して数分が経った後に帰ってきた時の表情は別物……だった可能性がある。

 

 なにか、“怒り”ではなくより“呆れ”が混じった……──────

 

 

 推測を途切らせる音が突然鳴り響いた。

 

 

  ピンポーン

 

「あ! やっと来た!」

 

「じゃあ、行きましょ?」

 

「……そうですね」

 

 

 呼び鈴を聞いてすぐに立ち上が……いや、朱寧さんに逃げられてしまった。

 有無を言わさずにそう促されたら素直に従うしかないわ。

 

 自宅なのにわざわざチャイムを鳴らすのね、まるで帰宅を予告するようなモノじゃない。

 今日の一件を経て当たり前かの様に家の敷居を跨げるとは思ってなさそうで違う意味では安心したわ。

 

 

 寝惚け眼の菟希ちゃんの手を握りながら玄関前に。

 律儀に私達が来るのを待ったのか、一拍置いてから静かに扉が開かれた。

 

 …何故か息遣いが荒いのだけど。

 

 

「すぅ──……すぅ────……」

 

「何で…息切らしてんのー?」

 

「ふぅ…追跡されないように……急いできてな」

 

「余計目立たないかしら?」

 

「………結果オーライってことで」

 

 

 そのさ、変なトコロで凡骨になるの辞めてくれない?

 

 疲れてるからか知らないけどこんな深夜に暴走する人間が居たら誰でも目に付くって。

 ごく稀に間違った方面で策を講じ始めるのは治らないわね……。

 

 

 まぁ良いわ。論点は別にあるのだからね?

 

 

「で? まず……私達に言う事は?」

 

「…また・・無責任に動いて申し訳ありませんでした」

 

 

 朱寧さんに冷たく問われ、深々と頭を下げた。

 

 この光景は度々行われるある意味での恒例行事だ。

 私や家族の目の届かない内にやらかして……夜になったら呼び出して説教。正座させたり勝手な行動を禁止(守った憶えは無い)したりするのは慣れたモノよ。

 

 

「一応自覚はしてる様ね」

 

「サー達との計画の一部として提案したんだが……不必要に焚き付ける行動であったのは重々承知している」

 

「ホントそう! ほら見て友達にまた笑われちゃったし!! それも今回で今年11件目!!!」

 

「貴方が誤魔化すせいで終には私の方にも来てるからね?」

 

「何度も言ってるけど飛威炉だけで済む影響力じゃないから……」

 

 

 私はまだいいわよ? 雷咲や蝗賀くんに訊かれても誤魔化すのは楽な方だから。

 飛威炉が段違いなだけで皆も有名人、一々アイツを突っつこうとする程の余裕が雄英生徒には無いとも言える。

 …本音としてはもう大手を振って話題にする気も起きてないんでしょうね。

 

 眠気も怒りで多少マシになった菟希ちゃんの方は結構鬱陶しく感じてるらしい………いや当たり前だけども。

 雄英に比べれば絮吏儕はプライベートが保証されてるでしょうけど、話題の張本人が兄なら否が応でも年頃の学生は訊きたがるでしょ? これに関しては私側からは手の施し用も無いのよ。

 横暴な兄を持ったせいで圧し掛かるストレスは計り知れないわね。

 

 

 そして、母親である朱寧さん……ね。

 

 今もキツく周囲からの見え方や謙虚な姿勢を説かれてるように、私達2人よりも飛威炉の気持ちを慮ってくれてるのを本人は理解してるのだろうか?

 …忘れる訳が無いの、朱寧さんの過去の告白と涙を。

 

 どんなに意志や使命が在ろうと譲れない想いがある。

 

 出来るだけ穏便に生きる……のは無理だとしても、引き受ける必要のないモノを貴方が背負ってるのを堪えられるほど私達は非常識じゃないんだからね。

 

 だって、嫌よ。貴方が望んでようと関係ないわ。

 

 …当たり前じゃない。好きな人が傷つく姿を見過ご、

 

 

────……待って。そんな感情捨て去りなさい。

 

 いい加減解ったでしょ? 恋慕募らせようと無駄なの。

 

 “親友”だから止めるの。

 家族のように想ってるから怒ってるの。

 

 朱寧さんや菟希ちゃんの厚意を無駄にはしたくないけど今更考えたって叶わないモノはあるんだ。

 飛威炉の頭に『恋』の一欠片も存在しない。情や家族愛は在るにしても、第一に掲げてるのは『ヒーローとしてどう駆け上がっていくか』の一点よ。

 

 その道を邪魔する気は無いし文句はあっても意思は尊重できる。

 

 …番組直後は怒る気しか湧かなかったのに、ね。

 

 

 私だけ場違いに冷めてしまって俯瞰して見てしまう。

 

 無意味に非難するには体に毒な時間帯だ。

 2人は変わらないどころかヒートアップしそうだし私がそろそろ仲裁を入れるべきじゃないかしら。

 

 

「もう……夜遅いですし一旦お開きにしませんか?」

 

「んーまぁそっか。お母さんの体にも悪いし明日また、

 

「まだよ」

 

「「え?」」

 

「…………っ」

 

 

 想定外だった。…こんな状況でも折れない人じゃないのに。

 

 菟希ちゃんと共に虚を突かれてしまった。

 

 

 なのに、飛威炉はむしろ分かってたみたいだった・・・・・・・・・・・のは何故?

 

 

「お父さんから連絡が来たわ。大まかにだけど」

 

……あぁ、『まだ』なんて許される訳も無かったか」

 

「ちょっ、待ってよ何の話……?」

 

 

 ………同感。いったい如何いうこと?

 

 

 え、さっきの電話は久悟さんから?

 

 「まだ」? 「許される」?

 

 何なのその……痛いトコロ突かれたみたいな表情は?

 

 

 部外者だけが取り残されて、親子の会話は進む。

 

 

「私も久悟と同じよ。一番怒ってる部分はそこじゃないの」

 

「うん」

 

「貴方の本心が解らないわ。身分不相応に愛されてるのにただ受け身なだけ」

 

「…そうだな」

 

「血の繋がった家族に対しては生まれながらの問題だからまだ許せても、誰よりも心配してくれてる璃亞ちゃんに対しては別問題よ」

 

 

 気付けば私を引き合いに出されていた。

 違うの朱寧さん。私にそんな言葉は………

 

 そして、止まらぬ剣幕のままキッパリと宣告してみせた。

 

 

  「今までの罪、この場で払ってもらうわ」

 

  「……只の謝罪では許さないから」

 

  「貴方の“正直さ”で決まると思いなさい」

 

 

 もしかしたら……、いや決めてたのだろうか。

 

 説教の本当の目的は飛威炉の真意を探る為。

 

 私の動向など待ってる暇が無いと判断したのか、今以上にヒーロー業に踏み込みかねない飛威炉をある意味で挫かせるのはココしかないと見たのかは推測しようがない。

 

 それでも明白なのは1つ。

 

 “無理やりにでも私/彼をに導いたんだ”

 

 

「璃亞」

 

「うっ……うん………?」

 

「今まで蔑ろにしてきて、本当にごめん」

 

「いや、今更別に……っ慣れてるし…」

 

 

 謝罪は別に初めてじゃない。

 映画観に行った日でもしてたんだ、的外れですらない言葉に狼狽えるのが間違ってる。

 

 ……急に怖くなってしまったのだ。

 

 もう今までの関係の儘では入れないんだって。

 

 『答』を聞いたら落胆するの理解してるからこそ。

 

 

 ねぇ、そうでしょ? だから……────────

 

 

 

  「…似たような状況がおよそ2週間前にあった」

 

  「実際……あの時に伝えるべきなのにな」

 

  「謝罪こそすれど、碌な言葉も出なかった」

 

  「日々の感謝も」

 

  「あの日の、…『デート楽しかった』の一言も」

 

  「原因は明白だ。昔っから変わってない」

 

  「────……何よりも怖いんだ」

 

  「璃亞と本心で・・・向き合うことに」

 

 

 

 ………………え。

 

 

 

  「誰よりも璃亞の努力を見てきたからこそ」

 

  「『プロヒーロー同じ夢』を掲げてると理解してるからこそ」

 

  「璃亞を、何時の日か…俺が……────」

 

  「“親友”なんかじゃ事足り無い程に」

 

  「『特別な感情・・・・・』を抱いてしまったからこそ!」

 

  「バレたら軽蔑されるんじゃないか?って」

 

  「絶対に失くしたくない今の関係が」

 

  「壊れるんじゃないか?って思って……」

 

  「だからこそ、矛盾を嚙み殺して逃げてきた」

 

 

 

 ……なに、言ってるの?

 

 

 

  「でも、もう覚悟を決めたんだ」

 

  「何時かじゃない。今言えなきゃ後悔する」

 

  「…親の説教がキッカケだが恥も承知だ」

 

  「俺にとって璃亞はかけがえのない存在……

 

 

────……誰にも譲れない位、愛してるんだ」

 

 

 

 っあ、い………?

 

 譲れ……ない? 愛してる……っ?

 

 

 

「…ごめん、また調子に乗ってしまったな。今のは気に留めないでくれ。恥かいてでも伝えられただけで充分さ……いや家族2人の前だとは思わなかったが。それでも、コレが俺の本心だ。後は煮るなり焼くなり好きにしt、

 

「えぅ…ちょっ……何、どーゆー……待って…?」

 

「えっ……どうしたんだ璃亞……?」

 

 

 整理が出来ない。

 自分が今、どんな気持ちなのかも解らない。

 

 嬉しいのか。

 驚いてるのか。

 恥ずかしいのか。

 

 脳の回路がショートして………

 

 

「璃亞さんパンクしちゃった~……」

 

「初めてねこんな姿。まぁ気持ちは判るけども」

 

「………何故2人はそんな分かってた風なんだ?」

 

 

 …今の頭でも理解できる、何で貴方はそんな落ち着いてるの?

 

 飛威炉のせいでこうなったのよ……?

 え、嘘じゃないよね。っす……好き、ってことなの?

 

 私だけじゃないの………───────

 

 

 ………確かに、どうして2人共驚かないの?

 

 朱寧さんが望んだ状況と言えど初耳の筈なのに。

 

 

「もー私が解説しちゃうね? 簡潔に言えば『どっちもどっち』ってこと!」

 

「え?」

 

「お兄ちゃんがずーっと考えてたソレ、璃亞さんもそっくりそのまま同じ感じに考えてたの!」

 

「同じって……は?」

 

「やっぱ気付いてなかったんだー。…璃亞ちゃんも大概だよ? 鈍感って正に2人の事を指すんだからね?」

 

 

 鈍感────……って。

 

 なっ、え、待っ…………

 

 2人共、今の状況になるの判ってたの!??

 

 

「もしや、璃亞……も?」

 

 

 “も”、はどれの事よ

 

────……と啖呵切れる状況じゃないんだ。

 

 

 真剣に伝えてくれたのに、私が応えないのは駄目なの。

 

 

 

  「ぅ……うんっ……私だって……」

 

  「ずっと間から、飛威炉のことを………!」

 

  「っでも! 眼中に無いんだと、思って」

 

  「そのっ…他の人との話で私の事を」

 

  「『親友』とか、『そんな風に見てない』とかさ……」

 

  「いつもそう答えたじゃない……?」

 

  「…だから私が好きになるのはお門違いだって

 

  「私には生き急ぐのを止められないんだって………!」

 

  「思っ、て……たのに……────

 

 

 耐えられなくなってしまった、あまりの恥辱に。

 

 勘違い………じゃあ済まないかもしれない。

 

 少なくとも『私は恋愛対象じゃない』という考えは甚だ間違ってたのだ。

 飛威炉に恋が結び付くなんて、思い込みたくても出来なかったのに現実は在り得ないトコロで裏切ってくるらしい。

 

 

「聞きなさい2人共?」

 

「────………はい」

「なん、だ……よ」

 

「解ったでしょ? 貴方たちが想定以上にお互いを想い合ってて、同時に自分自身を卑下し合ってたのよ」

 

「「っ!」」

 

「…何度でも言わせてもらうわ。学生なのに難しく考え過ぎなの」

 

 

 赤面したまま喋らないでいる私達は呆れ果てたかの様に諫められた。

 ぐうの音も出ない正論。…今になってその重みが増してくる。

 

 判り合えてると見誤って、勇気を出せば解決できた問題をヒーローを目指すことで逃避していたんだ。

 

 

「捻くれ者にも限度があるわ。でしょ?」

 

「あぁ………うん、そうだな」

 

「可能性を潰さないで。勝手な思い込みで苦しむのは皆が悲しいの」

 

……申し訳、ないです」

 

「…親が子供の恋路に肩入れするのはご法度かもしれないけども、もうその段階は越えてるのを理解しなさい」

 

「いやーお兄ちゃんが言語化出来るのに驚いたけどね? 一応私からは邪魔しないようにしてたんだよ、いつかどっちかが告白するのを願ってさ~!」

 

 

 そうなのね………ごめんなさい。

 

 …いや違うわ。謝って済むほどの配慮じゃないの。

 体育祭の日より前からなんでしょ? 多分、菟希ちゃんなら言わなかっただけで雄英入学以前の心情さえも気付いてるのだろう。

 ソレなのに当人の覚悟を想って呑み込んで………

 

 やっぱりこの娘は世界一聡明で優しい妹だ。

 

 

 

 

────……話が逸れて、大事な部分を忘れてた。

 

 

「で、どうするの?」

 

「「?」」

 

「付き合うの?」

 

「待っ!?」

「────……っ!?」

 

 

 連携の良い提案に思わず目を合わせてしまう。

 ここまで気を動転させる飛威炉なんて初めて、すぐさま見詰め合うのを辞めてしまったのに頬を紅潮させてるのを目を瞑ってでも思い浮かべられる。

 

 私も人の事言えないけど。顔が火照って仕方ない。

 

 

 …フーーっ、落ち着きましょ?

 

 背けたままじゃ何も変わらない。

 心から望んだ現実なんだ。恥ずかしい気持ちを乗り越えて、しっかりと迷惑かけた私達で解決しないと。

 

 

「……………」

 

「………………っ」

 

「………?…………」

 

 

 駄目だ。返す一言目が出てこない。

 

 飛威炉も同じみたい……内心はどうせ私と同じだ。

 

 

 “お互いに好きだと判った上で喋ろうとする”のがココまで心臓を高鳴らせるなんて考えてもいなかったんだから。

 

 

「……………………1つ、良いか?」

 

「なっ、なに?」

 

 

 痺れを切らしたのか、何か思い立ったのか。

 

 揺れた瞳に微かな決意を宿らせて固まった空気を打ち破ってくれた。

 

 

「もう1回……チャンスが欲しい」

 

「「チャンス?」」

 

「次、出来るなら自分の力だけで“ケリ”をつけたい」

 

 

 …困惑が抜け切らない私の理解はすぐに追い付けなかった。

 

 

「え? 両想いってもう分かってるのに?」

 

「……………あぁ」

 

「好きな人の前で見栄張りたいって事かしら?」

 

「…ハッキリ言われちまったな。その通りだが」

 

 

 拍子抜け、とは微塵も思ってない。

 

 第一声の時点で………何故か察していた。

 朱寧さん達が求めてるような台詞を与えられてない私に、この場を収める程の展開を望めて良い訳が無い。

 

 そして────……何よりもあの・・飛威炉が自分の為に嘘偽りの無い言葉を紡いでくれるのが本当に嬉しかった。

 

 

 

  「……親に叱られて、妹に配慮されて」

 

  「この世で一番ダサい俺だけども」

 

  「もしするんだったら悔いのない形で」

 

  「胸張って結果を受け入れられる位の」

 

  「俺の“覚悟”を璃亞に証明したい」

 

  「それで、許してもらえない…だろうか?」

 

 

 

 後ろ髪を搔きながら、照れ臭そうに話す仕草。

 

 自信家なのに……弱気そうに私を窺おうとする雰囲気。

 

 なのに、今の瞳には揺るがない意志が込められてる。

 

 

 

 …為されるがままではないけども、真摯なその言葉を受け止めてゆっくりと頷く事でしか私は応えられなかった。

 

 

「いや~まぁ本人が良いならいいけどー」

 

「フフッ変な状況じゃない、告白の前予告とはね」

 

「まず仮免取ってからインターンやらに慣れて……そしたら、で」

 

「そもそも先駆けて色々とチャレンジし過ぎてるから踏み留まってたんじゃないの? 反省してよね!」

 

「恋愛事に疎いのはお父さんと大違いね。これで中学時代人気だったのが疑いたいトコロだわ」

 

「見た目と成績“のみ”で目立ってただけだよ? ちゃんと仲良くなった上で好きになってくれたのが奇跡とゆーか、物好きなだけとゆーか」

 

「……返す言葉も無い」

 

 

 気付けば滅茶苦茶に愚痴られてた。

 …その愚痴に若干私のモノも含まれてるわね。

 

 まぁ当然よ。私達の心労も知らないでやりたい放題だし、なまじ実力があるせいで中々文句も言い辛いし、鈍感だし恋愛事にも疎いし……────────

 

 

 でも、そんな飛威炉を好きになった私も大概ね。

 

 

「さ、この話は終わり。もう寝ましょ?」

 

「んー無理! 璃亞さん今日は寝かさないよ?」

 

「ちょっと菟希ー?」

 

「だって遂に叶ったんだよ?! アレコレ聞かなきゃ眠気取り戻せないもん!」

 

「………程々にしなさい」

 

「やった!」

 

「飛威炉はお風呂入ってすぐに寝ること。良い?」

 

「応。……色々あり過ぎたな今日は」

 

 

 状況が状況だったせいで疑問に持つのも遅れていた、そう言えば私達は玄関でずっと立ち話をしてたんだった。

 それも飛威炉は番組出演したその足のまま帰路についている。

 …色々文句はあるけど多忙を極める貴方には中々な仕打ちだったわね。

 

 

 一区切りついて、やっと今日という日が終わる。

 

 雷咲や皆とテスト対策をしてた昼では思いもしなかった。

 

 私達の『想い違い』が正されたんだ。

 

 ………今になって沸々と幸福感が湧いてきた。

 

 

 

────……思い立った私は唯一行先の違う彼へと振り向いて、

 

 

 

「ねぇ」

 

「ん?」

 

「…待たせたら私の番、だからね?」

 

「………応」

 

「おやすみ」

 

「あぁ……おやすみ」

 

 

 私だって想いは同じだ。

 

 待ってちゃ駄目。飛威炉だけに任せる責任じゃない。

 

 …コレだけは伝えなきゃいけなかった。

 

 

 

 

 その後浴室へと向かう飛威炉を見送って、ふと思い至った。

 

 私は“今日”という日を一生忘れないんだろうな……って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んふふ♪ まだ耳真っ赤だよー?」

 

「え………?」

 

「ニヤニヤしちゃってるし~嬉しかったんだよね?」

 

「も、もう……!」

 

「ねぇねぇお兄ちゃんに最初……──────

 

 

 

 微睡みにいつ落ちたのかも解らない。

 

 その位には2人で一緒して語り合ったわね………

 

 

 朝、まだ緩みっぱなしの口角を指摘されてまた耳先が赤くなってしまったのは別の話。

 

 

 

 

 

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