緋色の英雄   作:kozmo78

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 少し短めです。







第47話 心変わり

 

 

 

 

 

 

 

 インターン参加を懸けた、仮免試験の挑戦。

 

 と思ったら“ホークス”との会敵。

 

 甘照井先輩たちの助けもあってその窮地を脱出し。

 

 で、ヒーロー公安委員会からの接触。

 

 

────……思わぬ展開に道草食ったな。

 

 結局、何が狙いだったかは解らず終いだ。

 

 

 本当に俺を引き込むつもりだったなら……怖い話ではあるか。

 

 後ろ盾が“天蟲久悟”である以上、政府側もその息子を飼い殺しに出来るとは思ってはなさそうだが如何なんだろうな。

 『意思確認』が脅迫じゃないだけマシだったとも思える。

 

 だったとしても、勢い任せに啖呵切ったのは悪手だったか………?

 

 

 まぁ……気にしないでおこう。まず借り物を返さなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 「すいません、遅れました」

 

「遅いわよ!」

 

「やっと来た! 待ってたんだよ!」

 

 

 待ち合わせの駐車場に向かうと、ミッドナイトの傍に何故か二次選考で手を組んだあの3人が揃っていた。

 先輩方の母校“文樫あやかし高校”の制服に戻ってるしてっきり帰ったのだと。

 

 …借りた服を返して、さぁ疑問を解かなきゃな。

 

 

「どうして先輩方が?」

 

「そりゃ心配してたからだよ! あの後すぐに運ばれて戻ってこなかったし、合格発表やら手続きやらがあってお見舞い行けなかったんだ」

 

「ご心配どうも……ぐっすり眠って幾らかマシになりましたよ」

 

「空元気じゃないの~? あ、ちゃんと仮免貰えた?」

 

「ほら、こちらです。皆さんもお持ちですよね?」

 

 

 互いに今日の戦果を見せ合う。

 その場には居なかったが……3人が落ちるとは微塵も思ってなかったな。

 

 選考理由は知らんが、実戦さながらの環境である程度の判断力と行動力を示せれば合格基準は満たせる筈だ。

 俺が居なくても受かってたとは思う。…しかし、その助力となったなら幸いだな。

 

 

 

 試験への愚痴を混じらせながら雑談は進み……。

 

 暮れ始めた景色の中で、肌で感じてたよりも時の流れは速かったことを告げられた。

 

 

「楽しそうなトコロ悪いけど貴女達、帰りのバスの時間があるでしょ?」

 

「うぇ~折角会えたのにー」

 

「甘照井だけ置いてくか?」

 

「イジワル言わんでよ~」

 

「別に今生の別れじゃないですし。同じ道を歩んでいればまた会えますよ」

 

「そんな大人っぽい感じはいいの! ねぇ連絡先交換しない? ボクの奴コレね!」

 

 

 画面に映されたQRコード。よくある奴だ、友達登録だっけか。

 なんてことない流れではあるんだが────……後ろで気まずそうな表情の首藤先輩たちを見てしまうとな。

 

 

 珍しいまである。一人走りした噂と否定できない事実で形成された『俺』の風評に囚われず、ずけずけと距離を詰めてこようとする方は。

 

 ……ハッ、この言い方じゃ嫌に思ってるみたいだな。

 

 

「ありがとうございます。読み取りますね」

 

「オッケー!」

「マジ!?」「良いの?!」

 

「やった~、ってかなんで驚いてんの蛍たち?」

 

「めっちゃガード堅いって有名だからさ!?」

 

「身の上的に断る事が多かっただけですよ。お二人も交換しますか?」

 

 

 『家族を守れるプロヒーローになる』と決めた時から、自然と人付き合いを避けるようになったのは事実ではある。

 

 そのせいで周りも余計気を遣う様になってしまった。

 …高校生になってやっとこさ、自分から歩み寄ろうと思えた訳だ。

 

 ましてや共に戦った仲だ。謝意も縁も覚えないほど人の心捨ててない。

 

 

 

 

 

────……やめては欲しいけどな?

 いち高校生の連絡先を変に貴重品扱いされても。

 

 だからって目の前の嬉々とした表情で携帯をいじってる人もアレだが。

 知らず内に『ヨロシク!』ってスタンプも送られてるし。

 

 

「じゃあ次いつ会える?」

 

「気ィ早いなお前! 何の為の連絡先だオイ?!」

 

「っとゆーかこっちも今後忙しいんじゃない?」

 

「そーだけどさ~」

 

「夏休みぐらいには多分、空いてるかと……」

 

「分からないわよ? 結局インターンやらで欠席増えて振替日ばっかりとかもあり得るわ」

 

 

 …休みが欲しい訳じゃないにしても、そう言われると憂鬱になるな。

 

 たった1日で床に臥す展開だ。実戦参加が重なったらちゃんと俺は耐えられんのか?

 『入れ込み過ぎるな』って言ったミッドナイトが悲観してる、ってのが更に真実味を帯びてくる。身から出た錆だし受け入れるけども。

 

 

 そもそも、俺の夏は“告白の成功”に懸かってんだよ。

 

 

 目途も立ってないってのに────……まぁ4人には毛ほども関係ない話だが。

 御三方は俺とは違う方面で将来を憂いているみたいで。

 

 

「1年生でインターンかよぉ……それも有名ヒーローから内定貰ってるしさー」

 

「こっちは引受先を探す事からなんだよ?」

 

「悲観的にならないで下さい、今日の活躍なら絶対困ること無いですよ?」

 

「そうかな~……」

 

「まぁ大丈夫じゃない? ホークス達相手に戦えたんだし何とかなるでしょ」

 

「…甘照井みたいに気楽に生きてぇよ」

 

 

 もっと素直に喜んでいい成果を得た筈なのだが、楽観視してもいられないのがヒーロー見習いの悲しい性だ。

 仮免はスタートラインで実戦に立つ権利を得たに過ぎない。

 

 事務所側からのスカウトを待つにしても、学校が売り込むとかしてくれなきゃ名のあるトコロは引き受けてくれないだろうな。

 その行程を省略してると思えば、妬まれて然るべきである。

 

 

 ……しかしだ。立ち回りと能力踏まえりゃ引く手数多だろう。

 

 初見では対処し辛い狢備先輩の“鬼火”と、戦闘や救助に融通が利く首藤先輩の“ろくろ首”。甘照井先輩に関しては……雄英でもそうは居ないレベルだな。

 『個性』の扱いにも長けていながら柔軟な対応力も持ち合わせてる方々だ。

 

 巡り合わせは如何しようも無いが、誰が見ても『将来有望』の評価は貰えるって断言できる。

 

 

 

────……何様のつもりだ、頑張るのは先輩達なのによ。

 

 下らない目利きはせっかくの関係に水を差すだけだな。

 この時間も終わりらしい。救助活動を共にした文樫高校のクラスメイトの方々が、『帰りの時間だ』と先輩たちを呼び戻してる。

 

 

「オイもう戻らねぇと!」

 

「そうだね……じゃあ飛威炉クン、名残惜しいけどまたね!」

 

「色々ありがと! 行事的に~…次会えそうなのは文化祭かも?」

 

「あーソレがあったか。オレも行くわ」

 

「何やるか俺自身まだ分からないですが期待してて下さい。…ではお元気で」

 

 

 願ってます、更なる栄転を。

 

 ……甘照井先輩はどうせすぐ会いそうだが。

 

 

 

 送迎バスへ戻るのを見送ってるとミッドナイトに呼ばれた。

 

 …振り返らなくとも想像がつく、どこか胸を弾ませた様な声色だ。

 

 

「良かったじゃない。試験前に考えてたほど敵ばかりじゃないみたいよ?」

 

「ですね」

 

「あぁやって他校と交流を深めるのm『プルルルル』……あら貴方の電話、鳴ってるわよ?」

 

「おっと────……すみません出ても良いですか?」

 

 

 …今日の結果を誰よりも早く伝えたかった人の電話だ。

 

 後で掛け直すとかの対応が正しいってのに、逸る気持ちを抑えるべきだったか。

 無礼な俺に配慮してくれたミッドナイトに後で詫び入れないとだな。

 

 

 少し離れて、応答ボタンを押して耳の横に移す。

 

 

 

「この感じ……入試を思い出すな」

 

 『で、受かったの?』

 

「なんとかな」

 

 『そう』

 

「まずは1つ。約束は果たせた」

 

 

 …デジャブなのは別に俺が落ちると思ってなさそうな感じも、だな。

 

 『インターンへの“前段”でしかない』。

 そのニュアンスで伝えた以上、電話越しに情けない報告なんて恥かくとかのレベルじゃないんだ。

 もし落ちてたら告白は1回完全に白紙に戻っただろうよ。

 

 この平常心ってのも、ソレはソレで信頼されてる証拠とも思いたい。

 

 

 『お祝い、家で用意してるから早めに帰ってきて』

 

「了解。楽しみにしてる」

 

 『……元気ないけどケガとかは無い?』

 

「バレたか」

 

 『ちょっと?』

 

「ソレについては帰ってから弁明させてくれ」

 

 

 大口叩いた割にボロボロなのは恰好つかないが、まぁ事情を知れば納得はしてくれるだろ。

 ………ん? 試験内容バラしちゃいけないんだったか?

 

 確か注意喚起だと────……ネットへの書き込みみたいな行為が駄目って話の筈。そんな事はしないし、俺の帰りを待つ面々がこの体たらくを見て詮索してこないとも思えない。

 

 

 『仕方ないわね、病院以外の寄り道は許さないから』

 

「オッケー至急帰る。…じゃあまた後で」

 

 『うん。気を付けてよ────……

 

 「じゃあねー飛威炉クン! 帰ったら連絡するから!」

 

 

 電話の終わるその瞬間に、バスに乗り込む直前の甘照井先輩からの盛大な別れの挨拶。

 いや嬉しい限りなんだがな………問題は璃亞に聞こえたか。

 

 多分切れたタイミングだろう。じゃなかったとしてもどうせ電話越しだしな、この距離であれば聞き取れるモノでもないと思いたい。

 まるでバレちゃいけない案件の様に考えてもだし。

 

 

 とは言え急用も終えた、あとは会場を去るのみ。

 

 携帯を懐に戻してさっさとミッドナイトに詫び入れに行かなきゃ。

 …お、直々に近寄って下さったか。

 

 

「その雰囲気、瑞銀さんかしら?」

 

「よく判りましたね」

 

「中学の時から一緒じゃない。忘れてないわよ」

 

「……あと『雰囲気』って何ですか?」

 

「さっきの子たちと比べても更にリラックスしてる感じ? 学校でも一番貴方が心を許してる相手な気がするわ」

 

 

 思ったより俺の事を見られてしまっている様だな。

 『リラックス』か……間違っちゃいないか。

 

 付き合いが長いのだから当たり前と言い訳したいトコロだ。第三者からの評価を改めて言われると恥ずかしい部分がある。

 一番嫌なのはあからさまに嬉々としたその目つき。

 …如何してかな、何故悪戯っぽくニヤついてんのか俺でも理解できてしまったよ。

 

 

 同世代だったら慣れたものだ。

 

 『勘違いだ』とか『俺にそんな暇ない』とかで誤魔化してきた。

 

 

 しかし、“ミッドナイトを心配させてきた”ってのが響いてしまう。

 

 

 

「実をいうとね? もしやこの2人“ある”のかも~~って期待しててねー?」

 

「いやいや………如何ですかね」

 

 

「────……なにその口振り」

 

 

 

 含みのある答え方で流石に勘付かれてしまった。

 

 うっかりした、訳じゃあないな。……流れに身を任せてもいいと、信念を曲げてでも真摯に対応すべきと思ってしまったんだ。

 

 

 先生が思ってるほど、俺は“武道”一辺倒じゃあない。

 夢の為だけに生きられる人間でもない。

 

 …大前提、俺の仮免試験における原動力は『璃亞』なんだ。

 

 

「え? ちょっと待って? その感じ、ホントに??」

 

「早く帰りましょうミッドナイト、さぁ」

 

「誤魔化さないで! 待って待って絶対にゲロってもらうから!」

 

 

 

 

 ……選択ミスったかもしれないけどな。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「で? 誰だったの電話の声は?」

 

「(………聞かれてたか)」

 

「いや怒ってるわけじゃないわよ? 大体推測ついてるし」

 

 

 祝いの席も終えて璃亞に家に送ろうと思ってたら、だ。

 

 気掛かりだったんだが、このタイミングでか。

 帰宅して初めて顔を合わせた時点で『喜んでるってよりは……』みたいな雰囲気を感じ取って、でも料理が冷めるからと菟希に急かされて場が流れたんだよな。

 俺の為に設けてくれた場に水を差すのも野暮だったし。

 

 

 で、やっと二人っきりになれて隠しておく必要も無くなった訳と。

 

 …顔を見りゃ一目瞭然だ。どこが怒ってないんだか。

 

 

「アレは試験会場で知り合った先輩のだ。色々あって仲良くなった」

 

「色々?」

 

「喧嘩吹っ掛けられたり共闘したりだな」

 

「疲れ具合を見るによほど凄い相手だったのかしら?」

 

「まぁ間違っちゃいない。大体の要因は試験内容のせいだが」

 

「ふーーん……」

 

 

 ご機嫌斜めだな。いっそ本人に確認取ってくれよ。

 

 甘照井先輩からのメッセージでも見せれば誤解は無くなるか?

 今のトコロ、怒涛の連投で他校の情報に詳しくなったってだけだ。

 

 ……ため息ついてるのを見るに簡単な話じゃなさそうか。

 

 

「上の学年に嫌われてるせいで厳しい試験になるんじゃないかって、心配してた私がバカだったわね」

 

「さっきも話したろ? 馬鹿げてるのはプロヒーロー2人を寄越した試験の方だって」

 

「じゃあ『連絡する』と言ってたのは何?」

 

「(あ────……思ったよりハッキリ聞かれてた)」

 

「その日知り合った相手と打ち解け過ぎじゃない? ずっと連絡先交換とか断ってきた貴方が?」

 

 

 予想外はあれど琴線に触れたのはやはり・・・そこだったな。

 

 璃亞の言い分は一応は理解できる。

 雄英以外じゃ初か、同世代で繋がりを持った存在は………絮吏儕の時だってクラス用のは入ってても個人間ではゼロだ。

 ましてや先輩女子である。“お誘い”の類いは幾らでも経験あった。

 

 

 だがしかし、勘違いしちゃ困るんだよな?

 

 鈍い俺でもソコだけはハッキリしてしておきたいんだ。

 

 

 

「一応言っとくと他の先輩のも貰ってる。変に考えんでいい」

 

「…変って、何よ?」

 

「その先輩との関係性を勘ぐってんだろ? 俺らしくない対応してるから」

 

「っ……図星だって言いたくないんだけど」

 

「良くしてくれた方々、その縁をみすみす失いたくなかった。あとな……」

 

 

  「そーゆー・・・・気持ちは他には向けねぇよ。絶対に」

 

 

 

 

────……格好つけて言える立場じゃないとしても伝えたかった。

 

 

 『ヤキモチ』と、考えて良いだろうか?

 

 “勘違い”のせいで思考の狭まってた時とは違う。

 今やその一挙手一投足が気になってしまって、たまに不機嫌になってた理由にやっと気付けた。

 

 …鈍かった俺も俺だが、知り合い以外の女子の話題をしただけで不信感持つ璃亞も璃亞だぞ?

 

 

 恋愛感情を抱いたのは璃亞が初めてだ。他じゃ考えた事も無いし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、ちょっと待て。

 

 この空気……──────

 

 バツの悪い様子で照れ臭そうにしてる璃亞。

 『かっこつけ』が生んだ、今から大見得切ろうとする俺の雰囲気。

 

 俯瞰してみれば『ナニカ』が起こる数秒前の様だ。

 

 

 ココで告白? 急には無理だ、示しがつかないだろうが。

 

 告白するにしてももう少し良い場所があるだろ(何も考えついてない奴が口答えできないにしてもだ)。手前勝手に引き延ばしてる最大の理由は俺なんかと付き合ってもらう事に異論ない位の“場づくり”をして魅せたいからだ。今日の祝いの席が俺に向けたモノってのも駄目だな、まだ璃亞の為のだったら……いや予期してないにしても恋愛クソ下手な俺に今以上の舞台を用意できるか? まず何だその“示し”ってのは? ありきたりななデートプランでやっとだってのに、璃亞を待たせた時間に相応しい告白とは……───────

 

 

 …うだうだ考えて、零したのは実に情けない言葉だった。

 

 

「ん、いや………その。まぁ、“まだ”ってことで…」

 

「………締まらないわね」

 

「ダサくてごめんな」

 

「新鮮で良いわ。フフッ」

 

「俺は惨めで仕方ないんだが……」

 

 

 笑って許してくれたなら万々歳か、碌な言葉も思い至らない奴には十分すぎる配慮だな。

 もしや沈黙の間に巡った俺のダサい思考も読まれたか?

 

 …っと、話してる内に着いたな。

 

 

「ずるずると引き延ばさない様に努力するよ」

 

「分かった。……じゃ、お休み」

 

「あぁ。また明日」

 

 

 絶対に悔いのない告白にはしたい。

 

 いや、してみせる。

 夢と同じだよ。掲げたモノが己に不相応でも───………

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、今日はまだ終われない。『いち学生』としての1日は終えても。

 

 

 

  『プルルルルルルル……───』

 

「グッドタイミングだな。まるでどっかから監視されてる気もするが…」

 

 

 呼び出し人は父さん。

 

 …さぁ、長い長い一日を何で締めくくる気だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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