緋色の英雄   作:kozmo78

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第8話 身勝手な花火

 

「おい遅ぇぞ!会場の方はどうなってたんだ!!」

 

「はぁはぁ……あっちはもう十分だぜ…ってかもう疲れたわ……思ったよりここ遠いし暑いし……」

 

「てめえこれからが正念場なんだぞ!?さっさと設置するぞ!!」

 

「ああ…周りにゃ誰も居ないんだろうな?」

 

「今だけだしあと数分ってとこだろうな。まあ人が来てもこの服装じゃ修理屋にしか見えねえよ」

 

 

 

 

「(…………本当に居るのかよ。警備はどうなってんだ?)」

 

 

 出来るだけ気配を消しながら声のする方へ近寄ってみたら、声を抑えながら壁際で話す男二人組を見つけた。

 1人はさっき俺にぶつかってきた丸刈りの男。見てない内に作業服に着替えていて大急ぎで駆けてきたからか息切れを起こしているが、外に居た理由が会場に今日の客がそれぐらい集中しているかを確認するためだと言うのが会話を聞いて理解できた。

 もう1人は、傍から見れば工具箱のような筐体を腕で抱えている長髪の男。距離があって確認は出来ないが、あのメモ通りの作戦であれば青色の箱は爆弾設置用の道具をカモフラージュする為のモノだろう。

 

 メモに書いている設置場所は3つ、この地下駐車場と各階を繋ぐ大広間のエレベーターと6階の管制室であろう部屋の隣の店。最初に目星がついた場所がこの地下駐車場だったから先に来てみたが、どうやら正解だったらしい。

 今現在把握できるのは、客の注目を浴びづらいこの時間に設置を試みている事と他に仲間が居る事。確かに入退場をする人は居なさそうだし、薄暗く元々人目に付きにくいこの場所は危険物を隠すのに向いていると言える。また、他の設置場所にこの2人で向かうには危険度を増すだけだしあの口振りから考えると他の実行犯が存在するのはほぼ間違いないだろう。

 

 

「上の設置は問題無さそうなんだな?」

 

「あっちにはボスもいるんだぞ?心配いらねえよ」

 

「へっ、そうだな。あのサイコボマーならヒーロー如き一捻りだしな」

 

 

「(“サイコボマー”……ああ、最近ニュースでもやってた爆弾魔か。そいつが主犯格なのか?)」

 

 

 男達が口にした固有名詞を聞いて母さんが見ていたテレビ画面を思い出す。

 確かその名は先月爆破テロが仕掛けられたテナントビルに残されていたヴィラン名だった筈だ。記憶が確かなら結構な負傷者も出ていた気がする。

 前回のテロもヒーロー事業に関係するテナントビルが対象だった事も踏まえると、ヒーローと深く繋がりのある施設の爆破が目的であるとコメンテーターも語っていて、それを視聴していた母さんが父さんの会社も狙われるんじゃないかと心配していたが………当事者になりそうなのは俺の方だったか。去年と同様、俺が勝手に首突っ込んでいるだけなのは一旦置いておこう。

 

 犯人が凶悪な思想を持っている事が予想できる以上更に無視できる状況ではなくなった。ここの2人だけなら『個性』使って奇襲すれば倒すのは訳ないが、それを連絡されたら最悪だし爆弾が起動したらもっと問題だろう。逆にこのまま静観して気付かれないように設置場所に行っても、勿論俺には爆弾処理の技術なんて無い。

 

 一応会話をスマホで映像に収めてはいるが爆破までのタイムリミットが分からない為に、悠長していられない事実が意味を増してくる。

 ここの爆破の意味は、丁度目の前にある地上に繋がる昇降口を瓦礫で塞ぐことで客の逃走を防ぐ事かもしれない。地下駐車場は3階存在していて地上に出るにはこの昇降口を抜けなければいけないから、ここが爆破されれば会場の4割ぐらいは確実に立往生を食らうだろう。

 また危険視するのはそこだけではない。推測通りになれば被害者心理で『車にも爆弾を仕掛けられているかも』という不安を蔓延させて混乱を招く事だって起こり得るかもしれない。

 

 

 …頭の中では誰かに頼らなければいけない理由ばかり思いつくが、その思考通りに動くのが妥当だ。たかが中学生1人が事を急いて動いて解決を図るような簡単な問題ではない。

 そろそろ10分経つし画像も送られるだろうから璃亞の言伝で警備側も状況に気付くだろう。ここで俺がすべき事は無闇に動かず、手元のカメラを彼等から離さないように隠れ続ける事だ。

 

 

「よし、設置完了だ!ボスに連絡しろ!」

 

「へいへい………おいボス、こっちは終わったぞ。上の階はどこまで…」

 

 

「(設置したようだな……後を追うか?)」

 

 

「……は!?作戦の決行を早めるだって!?」

 

「おい声がでかいぞ!!それになんだ早めるなんて、聞いてないぞ!」

 

「ちょっと待てって!どういう事だよボス……ヒーローの動きが怪しいだって?イベント中だしそんなもんだろ?」

 

「人が増える前にやるのはボスのモットーに反するって言ったなかったか!?」

 

 

「(早める?…おいヤバくないか?)」

 

 

 荒げた声がスマホに放たれたと思ったら予想外のワードが聞こえてきた。メモには載って無かったが爆弾設置場所と前回のテロから考えれば、イベントが終わって店内が人に溢れ返ってから事を起こすのだと思ったが早まるのとなると話は別だ。

 被害は想定よりはマシかもしれないが混乱が起こるのは変わらない。加えて、店内と会場に分断されて本来起きない筈のテロが密集地である会場にも起きたら…最悪の状況に成り得るのは簡単に想像できる。

 

 

「……チッ!…分かった、あと5分後爆破に設定な。そっちもミスんなよ……」

 

「面倒な仕事が増えたな…さっさと終えてずらかるぞ!」

 

「3つやったら会場の方もやるってよ、ボスの『個性』ならいけるだろうが…またボスがヒスりだしたわ」

 

「しゃーねえだろ、従わなきゃこっちが爆破されるぞ。無駄口叩く前に準備しろ……」

 

 

「(5分じゃ今からヒーローに教えても間に合わない可能性が高い。だったら……!)」

 

 

 スマホを起動したまま支柱に立て掛けておいて急いでコアを起動する。

 人に『個性』を向けて起こり得る俺の罰なんて今はどうでもいい。このまま死角に入って回り込めば───────────────

 

 

「っ………!!」

 

「ぐはっ!?」

「何だ!?って、てめえは…さっきぶつかったガキ!?何でここに!?」

 

「…無駄話してる暇はねえんだ……よっ!」

 

 手足にブーストかけて加速度を足に乗せながら爆弾を弄っている方の男にハイキック。側頭部に直撃するように足の甲が当たり、蹴り倒した長髪の男はすぐには立ち上がらなかった。

 もうこの時点で犯罪だが撮影した映像を言い訳にさせてもらって、間髪入れずにエネルギー弾を周りの車に被害がいかないように撃つ。

 あっちも流石に覚えていたらしいがその返答をしている時間も無いし、その気も無い。

 

「ぐっ!……おいガキィ!虚仮にしやがって「そこで寝てろ!」がっっ………!」

 

「…連絡媒体と危険物全部出せ。じゃなきゃ顔にぶっ放すぞ」

 

「なっ、何っで…てめえなんかにぃ……ぐはっ!?」

「──────素直に出さないなら黙らせて探すまでだ。じゃあもう1人の方は………」

 

 

 一度は『個性』で生み出したであろう苔の盾で防がれたが、二度目は勝手に喋ってくれたおかげで楽に脇腹を狙うことが出来た。少し宙に浮く程度のエネルギー弾に食らって膝を地面に降ろし、長髪と同じように無様に蹲っている。

 脅迫してみたが…まあ当然のように口答えしたから重症にならない程度に一発食らわせる。気絶したのか静かにはなったので長髪の方に目をやると………

 

「クソがっ……早く逃げねえと…」

 

「っ!…まあいいお前も黙ってろ!─────────ちっ…!」

 

 

 何か呟いているのに気付き意味を聞き出そうと考えたが、長髪が見据えているモノに理解した途端に口にした言葉の意味を想像できてしまった。

 問題がこれ以上増えないように丸刈りの男と同様にエネルギー弾で気絶させて、設置場所の方に急ぐと………黒い液晶画面にある数字が刻一刻と動き始めていた。

 

 

「(あと4分40秒……起動の阻止には間に合わなかったか…!すぐにこれを外して被害の少ない場所へ移動させるか誰かに解除してもらうかしないと……幸い外すのは簡単そうだが詳しい仕組みはメモには書いていない。それに気絶してるがこいつ等から目を離すのは駄目だ、何をしでかすか分からないのに放置は…………どうする………?)」

 

 

「そこの君ー!大丈夫かー!!」

「飛威炉!」

 

「ん?………来たのか…」

 

 

 爆弾の前で立ち尽くしていたら非常階段の方から2人の声が聞こえてきた。その中の1人に聞き覚えがあって何だか安心してきた。

 

 連絡を送って10分と少し、どうやって俺が最初に地下駐車場に向かったのを知ったのかは分からないがこの店の警備員を引き連れて来てくれた。状況を知らなければただの暴行事件にしか思えないだろう様を見て、2人共が心配そうに声を投げかけてくれる。

 

 

「おい、どうしたんだこの2人!?君がやったのか!?」

「…写真を見せて一緒に来てもらっての。10分で帰るって事は一番近い駐車場に来ると予想したのだけれど……この感じじゃああまり良い状況ではなさそうね」

 

「ああ、話をしてる暇は無いんだ。…警備員さん、証拠はそこの支柱に置いてあるスマホにあるんで」

 

「あ、ああ分かった………さっきのメモは本当なのか?今日のイベントに際してヒーローからヴィランに狙われてるから警戒してくれと言われたが……」

 

「残念ながら本当です。…店内の方はどういう状況でしたか?」

 

「え?アナウンスは聞こえなかったの?今故障中だからって各階のエレベーターとその周りを封鎖しているって放送があった筈よ」

 

「アナウンス?ここには……いや、そういう事か。あそこのアンプと監視カメラが多分壊れてる、設置の他に連絡妨害もしてあったようだな………」

 

 天井に目を移すと、分かりやすく破損している訳ではないが機材に纏わり付くように電流が小さく迸っている。状況的に長髪の方が持つ『個性』が電気系のモノで、警報が反応しない程度に不具合を起こさせたのであろう。

 璃亞に言われて気付くあたり俺の余裕が無さ過ぎて周りに目がいかなかった事を実感する。

 

「会場の方は中止せずにイベント続いてるけど逆にその方が良さそうね……ど、どうするの?今の私じゃ包んで爆破を防ぐのは無理よ、もしこのまま爆発したら…!」

 

「─────────よしっ決めた!まずこの爆弾を外す、2人共ちょっと離れてくれ」

 

「君!どうするんだそれ!?」

 

「俺が被害が出ない所まで持っていきます。あと3分なんだ、ヒーローに頼ってる時間も無い。空まで飛んでいけば少なくともここよりかマシだ」

 

「ちょっと待って!何でそんな危険なこと飛威炉がするの!?ヒーローだってすぐ近くに居るのよ!」

 

「…最悪なのはここで誰かを頼って時間が過ぎていく事だ、だったら…………俺が行く。すまん!ここは任せた!」

 

「おい君!?」

「ちょっ!?……………何でそんなに…」

 

 

 爆弾を手に取り、ほぼ最大出力で出口に向かう。時間が経ったからか何人かの家族が降りてきていたが気にせず飛ばしていく。すれ違うたびに注意や怒声が背中越しに聞こえてくるが、手元の爆発物の事に集中していて気にする暇も無かった。

 階を昇って活況を呈する店内に戻り、『個性』を行使しながら宙を飛ぶ俺に好奇な視線が一斉に向く。店前のガードマンが俺に気付いて何か叫んでいるようだが、ここの人たちを救う使命がある俺にその行動は遅すぎた。

 

「おい少年!何やってんだ!?すぐに『個性』をやめてそこに止ま………」

 

「(そんな時間は無い!説教は後で聞くから今は─────────!)」

 

 

 自動ドアを抜けて夏日と会場の熱気が入り混じった空気を久し振りに感じる。左手の方で盛り上がっている観衆の声が聞こえている中で、青く晴れた空を見上げてコアを再点火させる。

 

「(あと1分30秒、今の俺ならどこまで行けるか……さあ、挑戦だ!)」

 

 

 数分前から連続して使い続けたせいか、高度を上げる度に胸部のコアがゆっくりとヒートアップしているのを感じる。

 段々と下に見えていた会場の人達が小さく見えるぐらいにまで来た、もう少し飛んで用意さえすれば被害は無くなる筈─────────────

 

 

「HeyBoy!!何飛んでんだ!!?今日のイベントは花火はやんねーぞ!!」

 

「っ!………(プレゼントマイク!?…ヤバい、どうやって誤魔化す……?)」

 

「今なら怒んねえからさっさと降りて来いよ!オーイ!!」

 

「(気付いてくれ……!)

 (腕でバツ印)→(爆弾指差し)→(人差し指揚げる)」

 

 

 プレゼントマイクの喧しいぐらいの大声がこの空まで轟く。一度止まって見下ろしてみたが、大勢の観客も俺の方に向く程の注目を遠目ながらも感じる。

 俺だけが起動時間が近づく機械音を腕の中で感じながら、優しく子供を指導するかの如く大声を張り上げるあの壇上の2人にどう状況を伝えるかを頭の中で巡らせた結果………ジェスチャーしか思いつかなかった。

 身振り手振りでどうにかこうにか伝えようとするが…………

 

 

「いや何やってるか分っかんねー……(ん?何か手に持って……ありゃ確か───────ハァッ!?Bomb!?何でそんなもん、それに指で1ってもしや…あとOneMinute!!?本当かよ!?…)おい香田先輩、もしやゴニョニョ………」

 

「何よ?……!?…ねえみんな!今日はプレゼントマイクによる特別LIVEをやるわよ!!」

 

「What!?え……そっそうだぜリスナー諸君!!こんな事滅多にしないが今日はスペシャルなパーティーにしようゼェッ!!!」

 

「「「「わあああああああ!!!」」」」

 

「(LIVE?───────そういう事か…!)」

 

 

 本来予定していなかった催事が始まり観客の注目が戻ったかのように歓声に沸くが、彼等の目的を察してもう一度爆弾の液晶に目を移す。

 起動まで30秒………あとはミス無く、タイミングを合わせるだけだ。21秒、20秒、19秒……と秒刻みが人生一長く感じる炎天下の中、下で沸き起こるコール&レスポンスに聞き耳を立てる。

 

 

「ラジオでも紹介したが新曲出したんだ!本当は来週の音楽番組で披露する予定だったが今日来てくれたリスナーには聞かせてやるぜぇ!!」

 

「「うおおおおおおお!!」」

「マジで!?」「楽しみー!!」

「ミッドナイトも歌ってくれー!」

 

「……8、7、6っ!今だっ!!」

 

 

 太陽目掛けて小型爆弾を目いっぱい投げる。空中制御の体勢で出来る限界を腕に込めて放った爆弾が届かない所まで飛んでいくのを見送りながら、急いで後方へとエネルギー出力方向を変える。

 

 焼き付けたあの画面を頭に浮かべて日と重なる黒色の六面体を見据える。

 

 

「聞いてくれぇ!!新曲ぅ!!『ハートの───────

 

 

 

 

 

 曲名と共に音響が激しさを増し、盛り上がりの最高潮を迎えたであろう会場の上で小規模の爆発が起きた。

 プレゼントマイクの言葉を借りればまるで花火にも見えた炸発は、薄く赤い光を放ちながら数秒も経たずに黒煙は広がっていく。LIVEの盛況に音と注目は紛れることが出来たが気付くのは時間の問題だろう。

 

 

「え?何あれ~?」

「花火?」

「もしかして爆弾じゃね?」

 

「い、いやあれは会場の演出よ!ほら、気にしないでノっていきましょ?」

 

 

 元は爆弾であっただろう破片を空中で回収しながら地面へと戻っていく。

 何とか事態を最小限に抑えられた事に安堵しつつ、出来るだけ人目に付かない場所を会場以外で探してみたが……無さそうなので諦めて入口前に着地する。

 着地した途端に集まった大人たちからの非難の嵐であったが、真実を教えられない以上素直に批判を受け入れるしか出来ない───────そんな時だった。

 

「(このまま補導されるんだろうな………面倒だが仕方ないか───────

「お前か、爆弾持って店飛んでたって奴は?」

──────イレイザーヘッド!?何でここに………」

 

「…駐車場に拘束された犯人グループの2人が居たんだが………詳しく聞かせてもらおうじゃねえか?なあ」

 

 

 人混みを掻き分けて現れたのは、捕縛布で気絶した男数人を引き摺りながら気怠そうに語りかける見知ったヒーローだった。入口から突然現れたにしては異質過ぎる彼を見て群衆の勢いも静まり、何がどうなっているかが分からず騒めき始める。

 

 そして、初対面でも分かる程に怒気を滲ませた問い掛けに………これからの結末が見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 ・

 ・ 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 璃亞と腰を据えて話が出来たのは日が落ちた頃だった。

 

 イレイザーヘッドに呼び止められた後、しっかりと警察の厄介になった。

 LIVEがひと段落ついたあたりで犯人達を連行するためのパトカーが何台も進入してきたせいでショッピングモール全体が一時騒然となったが、犯人グループ全員の逮捕と計画の完全な阻止を知らせるアナウンスが響き渡って何とか状況は沈静化した。

 

 スマホの映像と璃亞たちの発言によって一連の俺の行動の意図は証明されたが…………まあ許される訳も無かった。店内の方は大混乱に陥る程の大事にはならなかったが俺の方はヒーローと共に近くの警察署へと連れていかれた。

 結果から言えば犯人以外の負傷者を出さなかった事による情状酌量で厳重注意で済んだが、それで済んだとは思えないぐらいには叱られた………デジャヴを感じたのは俺だけだろうか。

 

 イレイザーヘッドが言っていた通りタイマーが2分30秒の時に駐車場に来たらしいが、その時点では起動していたこと自体把握していなかったらしい。上の階では電話の後に制圧戦が起きて捕縛と爆弾処理に取り掛かっていたがもう1つの方は設置場所すらそもそも見つけていなかったようで、捕縛後の尋問でボスと呼ばれた男が自白した事で気付いたようだ。

 もうその時点では起動まで40秒を切っていた頃なので処理に取り掛かっても間に合わなかった事を考慮すると俺の行動に意味が無かった訳ではなさそうだが…………俺の口から言える雰囲気ではなかった。

 

 

 後日、今回の一件で俺の問題行動を大々的に取り上げられたせいで世間の評価は何故か良い方に転がっていった。1年前のコンビニの件でもそうだったが、有名な医者の息子って部分は世間一般ではどんな行動も好印象に考えてくれるようだ。

 これだけ聞けば問題無さそうに見えるがそんな事は無く、出来てしまった問題は2つ。

 

 1つは成績評価について。夏休みでも規則正しく生活しろなんてルールは絮吏儕にも当たり前のように存在し、事件を受けて夏休みが終わるまでの謹慎処分が下された。

 多分だけど内申にも影響もあるだろうし雄英の推薦入学は無理だろう。とは言っても元々俺にその意思は無かったし受験勉強に専念すれば解決するだろうし、それだけで済んだと思えば良かったと思える。この点については日頃の行いのおかげかもしれない。

 

 

 そしてもう1つの方は─────────────

 

 

 

「…………………………」

 

「ゴメンて、今後はあんな事しないって心がけるから」

 

「…………折角楽しみにしてたのに新学期までお預けって、どういう事よ」

 

「別に菟希と一緒に行ってきてもいいからな?俺はいつでも構わないし…………な?」

 

「…………ふんっ」

 

「…すみませんでした」

 

 

 …こっちの方はそう簡単に許してもらえなさそうだな。

 

 

 

 

 

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