タイトル通りです。
【ペトラの回想】
スレッタ・マーキュリー?
彼女は私達の恩人だ。彼女が居なければ、私達はここに立っていない。
あの日の事は忘れもしない。
私達はいつも通りの日常を送っていた。
学校に行って、授業を受けて、友達と他愛無い話をする。
そんな、ありふれた日常の一コマを送って居た。
あの事件の直前、私は彼女と同じ講義を受けていた。
しかし、講義を受けている彼女は心ここにあらずと言った状態で、講義中はぼーっとしていたし、講義が終わった後にタブレットを確認したところ、開いていたのは講義内容とは全く別の項目を開いていた。
私は講義に出ているのに何をしているんだと、呆れながらも講義内容のデータを送り共有した。
「決闘には勝ったが、俺はスレッタの望みも叶えるつもりだ」
ホルダーの座を取返し、会社の立て直しの為に学園を離れる前、グエルさんは私達ジェターク寮の皆に頭を下げった。
「俺は暫く学園を離れなければならない。その間、僅かでもいい。他寮の奴が地球寮に嫌がらせを出来ない様に助けってやってくれないか?」
他ならぬグエルさんの頼み、そしてランブルリングでテロリストと戦って、ラウダさんを救ってくれた地球寮の皆に借りを返す為、私達は動いた。
その過程で、地球寮に抱いていた偏見は少しずつ無くなっていった。
もしかしたら、そう遠くない未来。友人に成れていたかも知れない。
そう思っていた。この日常は当たり前の様にずっと続くのだと、そう信じて疑わなかった。
「馬鹿、走れ!」
だが、それは間違いだった。
「何してんの、死にたいの?」
「ご、ごめんなさい」
日常は突如として壊された。
ランブルリングの時と同じ様に。
轟く地響き。
鳴りやまない悲鳴と戦闘音。
人々は逃げ惑い、地面には瓦礫と血を流した人が倒れている。
学園は一瞬にして、地獄と化した。
「ホント最悪。ラウダ先輩がデートすっぽかすからこんな事に」
幸いにも、倒れているのは二人。
私と彼女は倒れた人を背負って逃げた。
「謝るだけじゃ許さない。
好きな所に連れて行って貰う。
ご飯もランチとディナー両方ありで、じゃないと死んでも死にきれない」
私はラウダさんの漏らした。未来への希望を言葉にする事で恐怖心を紛らわせた。
絶対生き残ってやるんだと、生きて、もう一度ラウダさんに会うんだと決意を胸に走った。
「ペトラさん危ない!」
私は彼女に突き飛ばされた。
その直後に、背後から大きな衝撃が伝わり、粉塵が視界を奪った。
「痛たた、アンタ大丈、夫……?」
衝撃が止み、視界の粉塵が晴れる。
そこから現れた光景は崩落した天井と瓦礫の山。
そしてその瓦礫に埋もれる彼女の姿だった。
「ペトラ、さん。無事、ですか……?」
血に塗れ、今にも死にそうな声。
その瞬間、私は目の前の彼女に救われたのだと、気が付いた。
「あ、ああ……そんな、私の所為で」
「ペトラさんの、所為じゃないです、ここは危険なので、逃げて……」
「馬鹿、アンタを置いて逃げれる訳ないじゃない。今その瓦礫を退けるから!」
私は彼女に覆い被さる瓦礫を退けようとした。だが、瓦礫はびくともしない。
「ゴホッ」
それどころか、彼女は顔を歪め、吐血した。
恐らく、下手に瓦礫を動かそうとしたせいで、余計に重圧が増したのだろう。
「人ひとりの力じゃ、無理です。
それに、瓦礫を退かせても、私は歩けません」
「私が担ぐから!私がアンタを担いで、絶対助けるから!!
アンタはここを出て、何をしたいか考えてなさい!
生きて、何をしたいのか考えて、絶対生き残ってやるんだって!」
「……やりたい事、色々あります」
「聞かせなさい。アンタは生き残って、何がしたいの?」
「やりたい事リスト、まだ全部できてません。
会社、まだ大きくできてません。ガンダムの医療技術、まだまだ完成してません。
お母さんに、エアリアルに、ミオリネさんに、もう一度会って……話をした、かった…………」
その言葉を最期に、スレッタ・マーキュリーは息を引き取った。
彼女のお陰で私は助かり、今ここに立てている。
事件から数年後、私はラウダさんと結婚し、子供を授かった。女の子だった。
私達夫婦は前から決めていた。もし、私達の間に産まれてくる子が女の子だったら、この名前を付けようと。
産まれてきた子、その子の名はスレッタ。
彼女に救われた分、この子には目一杯の愛情を注ごう。
【グエルの後悔】
それは事件の翌日。
学園の救助活動がまだ、続いている日の出来事だった。
「兄さん。水星女……スレッタ・マーキュリーが死んだ」
ラウダからその知らせを聞いた時、俺の頭は真っ白になった。
「……は?冗談は止せ、ラウダ」
「冗談では無いです。グエル先輩。彼女は、スレッタ・マーキュリーは、私を助ける為に、瓦礫の山に潰されて……ぐすっ」
泣き崩れるペトラ、それを支えるラウダ。
二人の表情を見て、俺は冗談ではないと理解した。
「……俺の、所為か?俺が軽率な行動を取った所為で、この惨状を生み出したのか?」
「御曹司の所為じゃないですよ。シャディク・ゼネリがここまでの事をしでかすなんて、誰も予想だにしてなかった」
ケナンジ隊長はそう言ったが、俺がケナンジ隊長の言う通りに気取られる前にサリウス代表を確保出来ていれば、こんな事態にはなっていなかった。
俺は周りの制止を振り切って、感情のまま、シャディクと闘った。
結果として、シャディクに勝ちこそしたが、奴はテロリストに学園を襲わせ、スペーシアンに多大な被害を与えるという目的を果たした。
犠牲は計り知れず、顔見知りやジェターク寮の生徒も犠牲に遭い、スレッタもその一人に含まれた。
周りが何と言おうと、これは俺の所為だ。
俺の軽率な行動が最悪の事態を招いた。
これで何回目だ。何回、同じ事を繰り返せば気が済む?
ガキのプライドの所為でスレッタに二度も負け、ジェターク社の評判を落とした。
惚れた女の涙を見て、感情のままに決闘を行いジェターク寮を追い出された。
親父の言いなりになるのが嫌で、学校を勝手に去って親父やラウダに心配を掛けた。
その結果、テロリストに輸送船がジャックされ、生き残る為に戦って、親父を殺した。
あのまま、船の中で救援を待っていれば、親父と戦う事は無かった筈だ。
俺の手で親父を殺す事になんて、ならなかった筈だ。
「ああ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
自分への怒り、スレッタを喪った悲しみ、絶望。行き場のない感情に、俺は泣き叫んだ。
【ミオリネの絶望】
地球との会談が失敗に終わり、罪人として捕らえられて数週間後。
私はグエルと地球寮の皆に助けられた。
「無事か、ミオリネ」
「……チュチュ、皆、良かったの?私は貴方達の故郷を……」
「少なくとも、ミオリネがこんな事を仕出かす奴じゃ無いって事は知ってる」
「でも、私に味方してしまったら、貴方達の立場が」
「そんな事は後で考える。取り敢えず、お前を助けなきゃ、スレッタに合わせる顔が無い」
「……スレッタ」
もう、一ヶ月ぐらい会っていない。
彼女を巻き込まない為とは言え、酷い事を言ってしまった。
許されないかも知れないけれど、もう一度会って謝りたい。
その事を伝えると、チュチュ達は顔を伏せた。
リリッケは泣き崩れた。
「ど、どうしたの?」
皆の反応と、ここにスレッタが居ない事。
この二つが私に嫌な予感を抱かせる。
「ミオリネ。スレッタは…………死んだ」
「………………………………え?」
それから語られるアスティカシア学園襲撃事件の概要。
シャディクはグエルが語った様に、テロリストと繋がっていた事。
その証拠集めの為に、シャディクを問い詰めた結果、極秘裏に匿っていたノレアがガンダムを用いて学園を襲撃。学園は甚大な被害を被り、数えきれない死傷者を出した事。
その中にスレッタが含まれていた事。
全てを聞き終えた後、私の脳裏にはあの日の出来事が過った。
アンタに負けて欲しかった。
良い弾除けになってくれたわ。
今日までご苦労様。
ーーさよなら、水星のお上りさん。
あの会話が、あの出来事が、最低最悪な別れ方が、スレッタと交わした最期の会話。
「嘘、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
タチの悪い冗談は止めて、皆!
どうせあれでしょ?私がスレッタに酷い事を言ってしまったから、その仕返しをしてるんでしょ?
あはは、本当は近くで見てるんでしょ?スレッタ。私が悪かったから出てきて」
「…………ミオリネ」
「グエル。アンタも同じ立場でしょ。冗談キツイわよ」
「ミオリネ!」
グエルの叫びに私は肩を震わせる。
「スレッタは、スレッタ・マーキュリーは…………死んだ」
目に涙を貯めた悲哀の視線が向けられる。
その表情を見て、嫌でも現実だと。冗談ではないのだと理解させられる。
「あ、あぁぁ、嘘よ、嘘だと言って!スレッタ、スレッタァァァァァ!」
悔やんでも悔やみきれない。最悪の出来事だ。
やり直せるのであれば、やり直したい。
救う為に突き放すのではなく、彼女の傍に居るべきだった。
幾ら後悔してもし足りない。
私は泣き叫んだ。
【プロスペラとエアリアルの失意】
……スレッタが、死んだ。
「……私達は、選択を間違えたのかしら」
ーー最善の選択では無かった。けど、地球寮の皆はスレッタを支えてくれる。
「……そうね、学園がスレッタの新たな居場所になってくれる。その筈だった」
でも、学園が壊され、スレッタは死んでしまった。
「なら、私達も壊しましょう。スレッタを奪った世界を」
うん。全部壊そう。お母さん。
BAD END
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