2063年 1/5
《さあ、第二回モンドグロッソ大会決勝戦!!日本代表、織斑千冬の登場です!!!》
(な、何で…………?)
場所は東京の倉庫。建物内に監禁されている織斑一夏は、テレビに写っている事が信じられなかった。
一夏は昔から優秀な姉の織斑千冬、そして兄の織斑春樹から比べられ続け、心無い暴言を浴び続けられた。
それでも、少しでも見返すために勉強もスポーツも必死に頑張って食らいついていた。
だが篠ノ之束が開発したIS(インフィニット・ストラトス)によりその努力は全て否定され、世間からは姉の付属品としか見られず「千冬様の弟だからこれくらいできて当然だ」「ブリュンヒルデの弟がこれくらい出来なくてどうする」と自分の努力を全て当然と思うようになった現実に気が狂いそうだったが、ひたすら今まで耐えてきた。
そして、第二回モンドグロッソにて、姉の応援に向かう途中一夏は誘拐された。誘拐犯の目的は織斑千冬のモンドグロッソを辞退させ、自国の選手を不戦勝で優勝させることらしい。しかし誘拐犯の目論見は叶わず、織斑千冬は決勝戦に出場していた。
「おい!織斑千冬が試合に出てるぞ!」
「…失敗だと?」
「チッ、こいつを攫えば必ず辞退すると思ったのによ!」
近くにいた誘拐犯の一人が、憂さ晴らしに一夏の腹を蹴った。一夏は悲痛な声をあげるがそれは犯人のイライラを煽るだけであった
「なんで織斑千冬は決勝戦に出てやがる!、これじゃ報酬が貰えねぇじゃねえか!」
誘拐犯の一人は更に苛立ち一夏の顔をひたすら殴る。
「出来損ないの弟より自分の名誉を取ったんだろ」
「こいつどうする?」
「もう殺してもいいが、憂さ晴らしにはなるだろ。おい、俺達にも殴らせろ」
他の誘拐犯達も一夏に近づき一斉に一夏に暴行を加え始めた。
(なんで…なんで見捨てたんだよ…千冬姉………なんでなんだよ!
やっぱり俺なんかいらなかったのか?思えば昔からそうだ、春樹のことばかり誉めて俺には厳しく当たる。やっぱり春樹が大事で俺なんかどうでもよかったのか!?)
「殺してくれ…もう生きる気力も失った…」
「言われなくても、やってやるよ」
誘拐犯の一人が、一夏の頭に銃口を向ける。
(生まれ変わりって概念が存在するなら絶対に復讐してやる!俺の全てを否定したISに!千冬に!俺をこんな目に合わせた全てに!)
一夏は、ゆっくりと目を閉ざす。
そして、誘拐犯が銃の引き金を引かれ…
織斑一夏は頭を打ち抜かれその14年という短い生涯に幕を下ろした。
その後しばらくして千冬が施設を発見し乗り込んだ。しかし千冬が一夏と再び出会ったのは死体となった一夏であった。
「一夏ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
死体を見た織斑千冬の悲痛な叫びが、倉庫に響いた。
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2063 1/20
一夏side
「あれ……ここは…?」
気が付くと俺は見知らぬ場所に立っていた。
桜が咲き乱れる美しい場所だ
「俺…死んだんだよな?……つまりここは天国か?」
「生憎だけど違うわよ」
いきなり後ろから話しかけられ、後ろを見てみると着物を着ている絶世の美女がいた
「とりあえず話を進めていいかしら?」
「は、はい!」
「まあ簡潔に言うとここは天国じゃないわ、幻想郷よ。本当は輪廻転生の理によってまた生まれ変わるはずだったんだけど少しバグが起こってしまってね。
輪廻転生の理って余りにも残留思念が強い人は弾き出しちゃうの。前にそのまま突っ込み直したら閻魔に怒られてね『その人を成仏させるのがあなたの役割でしょ』ってね」
閻魔?輪廻転生?何を言ってるんだこの人は?…もしかして残念な人か?
『絶世の美女』から評価は一転、『残念な美女』になってしまった……
「あらあら、そういえば紹介が遅れたわね、私は西行寺幽々子、この上にある白玉楼の管理人をしているわ」
「……織斑一夏です」
正直もう『織斑』なんて名乗りたくもないがとりあえず名乗っておこう。
「あら…織斑ってあの外の世界で話題の?」
………ここでも俺はあいつの弟扱いなのか
「あのレベルで外で最強って外の世界も落ちたものね。」
……………え?
「あなたはどうやら外の世界ではあれの弟としか見られて無かったようね。辛かったでしょう、でも安心して、幻想郷ではあなたは『織斑一夏』よ、あんな雑魚の付属品なんかじゃないわ」
あなたは『織斑一夏』よ
その一言がとても嬉しかった。誰もが俺を姉の付属品としか見ず『織斑一夏』個人は消えかかっていた。それを否定し俺を『織斑一夏』個人で見てくれた、単純にそのことが嬉しかった。
泣き出しそうになった俺を幽々子さんは抱きしめてくれた。外の世界では一度もこんなことをしてもらえなかった。姉に悩みを相談しても「私の弟なんだからなんとかなる」の一点張りだった。
「男の子でも泣きたいときは泣いてもいいのよ」
そう言われた俺は幽々子さんに抱きしめられながら泣き出してしまい、生きていた時の事を泣きながら話した。幽々子さんは全て聞いてくれた。
「うんうん、辛かったわね。何度でも言ってあげるわよ。こっちではあなたは『織斑一夏』。他の誰かの付属品でもないあなた個人よ」
だいたい30分くらい泣いていたかもしれない。
俺が泣きやんだ頃に幽々子さんが
「とりあえず白玉楼に戻りましょうか、ついて来て。」
そう言われた俺は幽々子さんと共に石階段を登っていった。
………この人が母さんならもっとよかったのに……
石階段をのぼっていると美しい屋敷が見えてきた。…………ん?なんだあれ?
「ここが白玉楼よ、とりあえず入って、詳しい話は入ってからするわ。」
門をくぐるとそこには剣を構えた白髪の美少女がいた。よく見ると傷だらけだ。
「あ、幽々子様お帰りなさい!少々お待ち下さい!今魔理沙が茶菓子をよこせってうるさくては弾幕ごっこに発展してます!」
「客人よ、お茶を用意してちょうだい」
「わかりました、そろそろ終わられます!魂魄「幽明求聞持聡明の法」! 」
「マスタースパーク!」
………すげぇ、あんな小さな女の子同士がIS……いや、それ以上の勝負を生身で行っている。確かにあいつをゴミと言うのは納得だ。
「捉えた!空観剣「六根清浄斬」 !」
「クソォォォ!」
白髪の女の子が金髪の少女を下し、金髪の少女はそのまま箒で去っていった。
「着いたわよ。とりあえず何から聞きたい?」
「ここはどこですか?」
「さっきも言ったけど幻想郷よ、人、妖怪、幽霊、神が共生しているこの世の楽園」
「なぜ俺はここに?」
「これもさっき触れる程度に言ったけどあなたが死ぬ直前に出した復讐心が強すぎて輪廻転生の理に入れるとパンクしちゃうの、ということであなたは白玉楼でしばらく面倒を見るわ」
「………え?いいんですか?俺なんかが」
「そんな卑屈なこと言わないで。
これからよろしくね、一夏君」
その後色々な話を聞いた、博霊の巫女のこと、外の世界から来た神のこと、他のことも色々聞いた。
話を聞けば聞くほどあちらの世界がどれだけ汚れていたかわかる。この幻想郷はなんて楽園なんだろう。
「お取り込み中失礼するわよ、幽々子」
「あら、紫じゃない」
突然目の前に美女が現れた、2人は俺を置いて話を始めた。……この人は一見ただの女性だが立っているだけで凄まじい風格とプレッシャーを放っている…
「そういえばこの子は?」
「この子は織斑一夏君、外の世界の最強の弟よ」
「なるほど……………あなたが一夏君ね。突然で悪いけど、あなた、篠ノ之束って知ってる?」
「……………え?」
なぜここでその名を聞くことになったのか、とりあえず真実を話すしかない。
束さんはあっちの世界でほぼ唯一俺に良くしてくれて『織斑千冬』の弟として見なかった。……あともう一人と一家族いたな…
でもISを開発して、世界を歪ませた。正直複雑な気持ちだ。
「……はい、姉の友人です、外の世界に私に良くしてくれた人です。……どうして束さんなんですか?」
「彼女、あなたが殺されたことで生きる気力を失いさまよい歩いていたところを偶然ここに入ったのよ」
え!?束さんもここに!?
「今は河童の工房で居候させてもらってるらしいわ」
そうなのか………あ!
「幽々子さん!俺が死んで向こうの世界では何日になります!?まだ1日くらいですよね!?」
「あっちの世界換算では大体十日ってところね、幽霊って実体化するのに大分時間がかかるから」
「因みに束が幻想郷に入ったのは八日前よ」
なら今頃向こうは大騒ぎだろうな。
話を聞いていると突然紫さんがこちらに真面目な顔をむけてきた。
「突然だけど織斑一夏君、あなたにはやり直す権利がある、再び外の世界に出て復讐を果たすのもよし、このまま白玉楼で幸せに暮らし成仏することもよし、選択するのはあなたよ」
……悩むわけがない
「もちろん外に戻って復讐を果たします」
「あなたならそういうと思ったわ、なら私の野望に協力してもらうわよ」
「野望とはなんですか?」
八雲紫が投影ディスプレイに何かの設計図と計画の全容を表示した。
「まあ簡単に言うと圧倒的な力を持つISを製造して既存のISを駆逐する事+更に男でも乗れるISの代替品を配布し女尊男卑の風潮を破壊、元の世界に戻すことよ。ちなみに篠ノ之束もこの計画に協力しているわ」
そんな計画に協力させてもらうなんて願ったり叶ったりだ
「ええ、ぜひ協力させてください。いつからですか?」
「束のコア制作のスピードにもよるけども大体1年後ぐらいかしら?」
一年半もあるのか……。
「その1年半は白玉楼で修行しておくといいわ。優秀な先生もちょうどあそこにいるしね。
妖夢、ちょっとこっちに来なさい」
幽々子さんは先ほどの白髪の少女を呼びつけた
「先ほど幽々子様に紹介していただいた魂魄妖夢です、よろしくおねがいします」
「織斑一夏です、よろしくお願いします。」
「一夏、あなた今日から『織斑一夏』は死んだわ、今からは『西行寺一夏』と名乗りなさい。」
「!!……………はい!」
こうして、復讐の為の修行が始まった……
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