pixiv→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20828878
「さて今日から一週間でアヤベのレースに向けての再調整をしないとなあ。」
山から帰ってきた次の日。愛しのアヤベのためにスケジュールを再調整しようと準備する。まあ次のG2で3着までに入れれば目的のG1には出られるだろう。そりゃあ本当はどのレースでも1着で帰ってきてほしい。しかしそんな上手いことが簡単にできたら苦労はしない。それなら目的を絞って勝てるところで勝つべきだ、と俺は考えている。これはアヤベには内緒だ。彼女にはこんなこと考えず走ってほしい。汚い部分は全部俺が引き受ければいい。アヤベには綺麗でいてほしい。もうすでに綺麗で美人でカワイイという話ではないぞ?とにかくだ。
「今日は月曜だから午前中のうちにメニューを考えて…といってもアヤベの今の状態なら疲労抜きしたほうがよっぽどいい成績になりそうだし…この前考えていたメニューをちょいと直そうかな…」
先週アヤベが無茶をした時の記録と映像を眺めながら考える。
・・・これは酷い・・・
これがあの輝く一等星か?というような走り方だ…
姿勢が直ってるかだけチェックしておかないとなあ…ケガだけは絶対避けなければいけない。アヤベは元々左脚が少し不安である。最近は姿勢が直ってきたが少しだけ不安がよぎる。しかし…
「ちょっと辛そうなアヤベもカワイイよなあ…」
「あと気になるのは皐月賞といいこの前といいアヤベが突然絶不調になるのはなんでなんだろうなあ…原因がサッパリ分からない…」
食欲が無くなるらしいんだよなあ…精神的なモノなんだろうか?メンタルトレーニングを強化したほうがいいのかな?アヤベは嫌がりそうかな?アヤベはカワイイなあ…
いかんいかん!今付け焼き刃で変なことをして逆効果になるのは避けよう。とりあえず姿勢をチェックして食欲の確認して…食欲…口移し…昨日の飴の甘さが蘇る…だからそれを考えてる場合じゃないだろう…山登りの疲れが残ってるのかな…?
なんとかアヤベが来る前にスケジュールをたてることができた。といっても流動的なものになるだろう。最悪の場合出走回避も視野に入れつつ…
「トレーナーさん。居るかしら?」
「ああ、アヤベ来たか。おや?それは?」
今日もカワイイ俺だけのアヤベがやってきた、それはいいのだが昨日買ったココアの缶を持ってきている。どうかしたのかな?
「ねえトレーナーさん…味がおかしいの…」
今アヤベは何と言った??味がおかしい??
「すまない、今、味がおかしいって言ったのか?」
「ええ…そうなの…」
どことなく元気が無いように見えるアヤベ。さっきまで考えていた最悪の事態が頭をよぎる…まさか今までの食欲不振もそれが原因…?
「ええと…どんなふうに味がおかしいんだい?もしかして…食欲が無かったりするのか?」
注意しながら確認する。
「食欲は別になんともないわ。でもこのココアの味が変なの。甘くなかったのよ。」
なんだって?ココアが甘くないだって?そんな馬鹿な…
「ねえトレーナーさん。おととい…山でココアを飲んだ時はすごく美味しかったの。甘くて暖かくて…でも昨日部屋で作ったらそんなに美味しくなかったの…そういえばカレンさんも甘くない気がしてきたって言ってたわね…」
「え?カレンチャンも?」
これはすごくすごい問題なのでは…?学園の食事全体か寮の食事に問題が…?それともこのココアに問題があるのか??
「アヤベ、ちょっとそのココア貸してくれるか?試しに作ってみよう…」
「そう?お願いしてもいいかしら?」
「ああ…分かったよ…」
簡易キッチンで湯を沸かしながら自分で買った粉とアヤベの粉を少し舐め比べてみる。
「別に違いはないな…ウマ娘だけなにかあるのか…?いや食品会社がそんな初歩のミスをするとも思えないし…学園の食事は俺も食べてるし…」
お湯が湧く。とりあえずあの時と同じ作り方。表示通りの分量でココアを作る。そして一口飲んでみる。
「別に普通のココアだな?」
アヤベに飲ませて大丈夫だろうか?なにかの病気だったら…
「とりあえず少量にしてと…」
「おまたせ。俺が飲んだ限り普通のココアだけど…とりあえず少量を口に含んで舌で転がしてみてくれ。いいか?違和感があったら飲まないで吐いていいからな。」
「どうしたの?そんな怖い顔して?」
「いや、アヤベになにかあったらと思うと心配で…」
そう言ってる間にアヤベが一口含む…言った通りにしてくれているようだ…
ゴクン
アヤベが飲み込む…
「そう!これよこれ!山の中で飲んだのはこの味よ!美味しい…」
「え?大丈夫なのか?」
「ええ…トレーナーさんどうやって作ったの?」
「いや…普通に表示通りに作っただけなんだけど…」
全然わからない…どういうことなんだ…
「ちなみに…カレンチャンは食欲がないとか他に味がおかしいとか言ってなかったか?」
「え~と…私がいつも飲んでるプロテインは変な味とか言ってなかったし…食事も普通に食べてたわね」
う~ん全然わからない…一応”お兄ちゃん”に連絡しておいたほうがいいかな…?
「アヤベ、向こうのトレーナーに連絡するからそこに座って待っててくれるか?気分が悪いとか違和感があったらすぐ言うんだぞ?」
「ええ…わかったわ?」
とりあえずアヤベは大丈夫そうだな…とりあえず”お兄ちゃん”に電話して…
「もしもし?アヤベのトレーナーです。ちょっと連絡しておきたいことがありまして…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「え?そういう意味で『味が無い』って言ったのかい?ああ…そういうこと…」
「??」
「ああ…いえ…すいませんお騒がせしました…失礼します…」
電話を切る。
「よ…良かった…」
「なんだったの?」
「アヤベ…とりあえず君は正常だよ。大丈夫だよ良かった…」
途中でカレンチャンに替わってもらって事の次第が判明した…要するに…
「俺が作ったものなら大体美味しく感じるってことらしいよ…」
「え?そうなの?」
「味って気分で変わるだろ?そういうことらしい…まあ俺としてはアヤベが無事でそういうことなら悪い気はしないけど」
「なんだがピンとこないけどとりあえずこれからココアはあなたに作ってもらうわ。」
アヤベの微笑みが眩しい。やはりアヤベはカワイイなあ…
とりあえず問題が解決したので本題のレースについての話をしよう。
「ということで今日はレース研究兼疲労抜きに当てて明日から最終調整に入ろう。アヤベなら慌てなくても大丈夫だよ。」
「そうね…それについてはあなたを信頼してるわ。だけど気になるのはどうして急に不調になるのかしら…皐月賞の時といいこの前といい原因がわからないのよ…」
「やっぱりアヤベもそうなのか…まあそれは俺も考えておくし今は大丈夫だろう?過度に不安に思うことで身体にも影響が出てるのかもしれない。レースが終わったらメンタルトレーニングも少し強化しようと思ってたんだ。どうかな?」
「そうね…そういうこともあるかもしれないのね…わかったわ。そこまで考えてくれているんだもの。お願いね…」
翌日放課後、なんだか久々のターフな気がする。さてアヤベの具合はどうだろうか…
「アヤベ、力まないで自然に走れば大丈夫だからな?とにかく無理はしないでくれ」
「わかってる。大丈夫よ。心配性なんだから…」
その結果は…
「やっぱりこのキレ味。この表情のアヤベのほうがカワイイというものだな。」
全く問題なしだった。
その後も最終調整を続けてレース当日。
パドックに立つアヤベは他の娘とは格が違うと言わんばかりの出来である。担当だからのえこひいきじゃないぞ?まあ他人の評価などアヤベには全く関係ないことだ。
パドック後の最後の打ち合わせをする。ちょっとだけ気になることがあった。
「アヤベ…なんとなくの予想で申し訳ないが…前を塞がれる気がするんだ。だが君の末脚なら大外周りでも充分通用する。あのダービーでそれをやってのけたんだ。無理に突っ込んで接触はしないようにしてくれ。いいね?」
「大丈夫よトレーナーさん…気のせいかもしれないけど、今日は動きが見える気がするの。だから…心配しないで待っててね?」
そう言って俺が渡した魔法瓶の中身を一口含んで…口移ししてきた…中身はもちろん俺が作ったココアだ。
そしてレースが始まる。アヤベはいつも通り後ろに控える。ペースは並程度。全体的に団子状で推移する。次第に前後に広がって…ダービーの再来かというくらい似ているな…だがやはりアヤベの前に二人ほど固まっている。すごくすごい邪魔だが、絶好調のアヤベを止めるには役不足だ。最終コーナーの出口で一気に大外まで飛び出すアヤベ。先頭までこの差と速度ならもうアヤベを止めることはできない!後は一気に加速して…並んで…抜かす!そのままゴール板を先頭で通過するアヤベ。見事に抜き去っていく様はまさに流星だな…さあ出迎えに行かないと!!
「トレーナーさん!!」
今回は俺が受け止められる速度で飛び込んでくるアヤベ。しっかりと受け止めて抱きしめてあげる。
「流石だねアヤベ。まさに流星のようだったよ!」
「ありがとう、トレーナーさん…ねえ…キスしてくれないの?」
「お望みとあらば…」
歓声が大歓声…いや絶叫かな?とにかくすごくすごいことになったことは言うまでもないだろう。
実はアヤベさんとアヤトレさんが共依存しながらチュッチュしてるような甘々な甘い話がすきなんですよね。これは超極秘事項中の極秘、それこそこう…すごくすごい秘密です!なので誰にもわからなかったことでしょう。
ということで前々回の「共依存アヤベさんとトレーナーさんがケンカするけれど絶対に離れられない二人は天体観測をしながら愛をぶつけ合うという苦みよりも甘みの強い甘い甘いお話」
及び前回の「トレーナーさんと共依存してるアヤベさんがケンカした後朝帰りする前にドライブデートしたり甘々イチャイチャする様子を眺めさせられるカレンチャンさんの舌がカワイクなくなる甘い甘いお話」
から続く3部作完結ですね。
アヤベさんたちはケンカしてもトレーナーさんが絶対着いていくし、だからこそアヤベさんのためになんでもするよなあ…という思いで書いてみました。でも中央のトレーナー達はみんな担当に脳を焼かれてるからこれくらいはしますよね?
さて今回の裏話は…なんかあったかな?割と素直に筆が進みにけりって感じなのでこれと言って書くことがないですね…熱いココアをフーフーしながら飲んでるアヤベさんカワイイがすぎると思うのでぜひそういうのを公式で一つお願いしますってことくらいですね。