「ねえ、トレーナーさん…」
いつものトレーナー室…アヤベは来室早々少し恥ずかしそうに両手を広げる。その目は「早く早く」とそわそわしている。
「ああ、わかってるよ。」
俺はアヤベを抱きしめる。アヤベは目をつぶって俺の胸に顔を埋めて匂いを堪能してるようだ。
「そんなに嗅がれると恥ずかしいな、汗臭くないか?」
「何いってるの、それがいいんじゃない。」
そうですか。それならいいんだけど…ってことは汗臭いのか?まあアヤベがいいならいいか…
「今日は随分長く堪能してるみたいだけど何かあった?」
「何かなかったらハグしちゃいけないの?」
「まさか、いつでも大歓迎だよ」
「じゃあいいでしょ?うん…大好き。」
「俺も好きだよ。アヤベは俺の大切な愛バだよ…」
「ふふっ…そういうことを平気で言うんだから…」
「いつでもアヤベのことを考えてるんだから当然だろ?本当はずっと離したくないんだから」
「もう…本当に独占欲すごいのね。私が他の男の人にあのチョーカー付けられてるところなんか見たらあなたどうなってしまうのかしら?」
「それは…」
そんなことになったら…
「とりあえずそいつにタックルして君を引き離すのは確定だな。絶対許さないぞ。」
思わずアヤベを抱きしめる力を強める。それが心地いいのか苦しいのか「んん…」とカワイイうめき声を出すアヤベ。嫌がってないから痛くはないようだ。耳までピッタリ押し付けてくる。カワイイ。
「安心して。あれはあなたと私だけのもの…あなた以外に付けてもらいたいなんて思わないから。」
「それならいいんだ。アヤベは俺だけの愛バなんだから…」
そうだとわかっていても嫉妬はしてしまうくらいアヤベにメロメロなのだ。
「あなたも私だけのトレーナーさんよ?他の女に”トレーナーさん”って呼ばれるの、本当は嫌なんだから。」
「そうなんだろうね。あんまり怖い顔しちゃダメだよ?カワイイ顔が…参ったな君は怒っていてもカワイイから困る。」
「困ってなんかないくせに。ほんとわからない人ね。」
そう言って笑う。実際嫉妬してるアヤベもすごくカワイイのだ。もうどうしようもなく負けている。そうして今日もしっかり相互依存を深めるのだった。
そんなある日…なんとなく流していたテレビでドラマをやっているようだった。恋愛もので恋人が喧嘩でもしたのだろう。剣呑な雰囲気で女性が「触らないで!」と男性のハグを拒否しているシーンがあった。アヤベに拒否されたら俺は自決するべきか?でも死んだらアヤベに着いていけないな…どうしよう…などと心配している時にふと思いついてしまった。もし俺がハグをスルーしたらアヤベはどうなってしまうのだろう…と。最近のアヤベはずいぶん抱き癖というかハグ率が高い。それはそれで嬉しいのだがもし、ここでハグをスルーしたら…気になる…泣くのか?怒るのか?もしくは…俺の愛想が尽きたと怯えてしまうのか…?どれになってもすごく…すごくすごいカワイイのでは!?早速明日から試してみよう…
翌日、トレーナー室で待機する。今日から暫くはハグを控えるのだが果たして俺が保つかそれが心配だ。若干の不安を感じつつアヤベを待つ。そして
「トレーナーさん来たわよ。」
「やあ、待ってたよ。早速ミーティングを始めよう!」
「え…?ええ…」
部屋に入るなりミーティングを開始してハグをはぐらかす作戦だ。明らかにガッカリしているアヤベを見るのは心苦しいがこれも後のカワイイのためだ。俺も涙をのんで耐える。ミーティングを終えるとアヤベが
「それでトレーナーさん…今日はまだ…」
いけない!このままではハグをする流れになってしまう。ここは…
「ああ、そうだったね…おっと電話だ。あ、これは長くなりそうな人からだな…すまない先に行っていてくれないか?」
そう言って部屋を出る。すれ違いざまにアヤベの顔を見る。見るからに悲しそうな顔だ…すまないアヤベ、でもすごくカワイイ。後でたくさん甘やかしてあげるからな…
その後もあの手この手でハグを回避する。これまでほぼ無条件でハグしていたのでかなりの数を回避したことになる。正直一日でこれだと明日にはネタ切れになるのではないだろうか?というかアヤベのテンションが下がりすぎてこれは問題なのではないだろうか…
その翌日部屋に来るなりアヤベは
「トレーナーさん…その…いえ、ミーティングよね…」
ハグしたそうなアヤベが自らハグを断って話を進めようとしている。すごい寂しそうだ…正直辛い、すぐ飛び出してハグしてキスしたい。もう一日中甘やかしたい。だがここは耐えなければいけない。その後もなんとか…耐えた…
その翌日
「まいったな3日後に出張に行けなんて言われるとは…しかも3日間あっちこっち…」
今はレース等無い時期だから地方も見てこいなんて言われてもな…アヤベと会えないじゃないか…待てよ…?会えないということはハグできない…?ふむ…少々酷いが出発当日の朝に連絡するとしよう。でも後で電話しないとアヤベがあまりにかわいそうだな。というか俺が我慢できなさそうだ…こうしてこっそり出張の準備をする。アヤベにはあくまでも内緒だ…
そして出張当日の昼、行きの新幹線のホームでアヤベに電話する。今は昼休み。出てくれるはずだが…出ない?切られた?たまたま都合が悪かったのかな?と楽観的に考えておく。正直酷いことをしてしまったかもしれない…とりあえずメッセージを送って謝ろう…その夜電話してもアヤベは出てくれなかった。メッセージは見てくれているようだが返事がない。それから3日朝昼夜と電話とメッセージを入れたがアヤベから返事はこなかった。完全に怒ってるな…帰る時間を教えておこう…。
そして今日は学園に帰る日、やっとアヤベに会える。そう思ってトレーナー室に急いで帰ると扉の前には…カレンチャン??
「やっと来た…ねえアヤベさんのトレーナーさん…”お話”しよっか…」
これが噂のカワイイカレンチャンとしか喋れなくなるという”お話”モードなのか…かわいい笑顔が完全にブチギレてるのが俺でも分かる。そんなにアヤベを怒らせてしまったのか…
「そうだな…とりあえず中に…」
「いいから、あのね、それどころじゃないの。アヤベさんが今どんな状況かわかってる?」
「それは…すごく怒ってるのか?」
「呆れた…ぜんっぜんわかってないんだね。アヤベさんもう3日も部屋から出ないでずっと泣いてるんだよ。1週間くらい前からおかしいなとは思ってたけど。ここ3日は完全にかわいくなくなってるの。トレーナーさんに呆れられた。捨てられた。もう嫌ってずっと…何してるの?」
そんな…そこまでアヤベが悲しんでるなんて…
「スマホも怖くて見られないって言って…こっそり見させてもらったけど…ぜんっぜんかわいくないことしてるんだね?正気なの?…ってそれはそうじゃないってことは前から知ってたけど、アヤベさんが幸せそうだからいいかなって。でも今回はダメ!アヤベさんがかわいそう!!」
そこまで追い詰めてしまったのか…
「何ボケっとしてるの!寮長さんには話しておいたから、早くアヤベさんに会いに行ってよ!!」
どうやら一刻を争う事態のようだ…俺は荷物から一つだけ小さい包みを取り出す。その他はトレーナー室に放り込む。
「ありがとうカレンチャン…行ってくる。」
「ちゃんとアヤベさんに謝ってね…今日は門限までは帰らないから…」
「わかった…」
俺は全速力で栗東寮に向かう。玄関でフジキセキが待っていた。
「待っていたよ。ポニーちゃんの王子様。今日は特別に入っていいよ。」
「すまない…ありがとう…」
普段は入れない寮だが部屋は一応聞いてある。まさかこんなことで使うことになるとは…アヤベの部屋は…あった!
「アヤベ!俺だ!いるんだろ!!入るぞ!!」
乱暴に数回ノックしてからドアを開ける。
アヤベは…ベッドの上にいた。髪はボサボサで顔はずっと泣いていたのか目が真っ赤で…今も泣いていたみたいだ。上半身だけ起こして呆然とこちらを見ている。
「え…トレーナー…さん…」
「アヤベ!すまなかった!全部俺が悪いんだ。ごめん!」
そう言いながらアヤベに近づく。まだ状況が飲み込めないのかアヤベはボーっとしている。
「うそ…だって私トレーナーさんに捨てられ…ンッ!!」
最後まで言わせず俺は少し乱暴に口づけする。唇で唇をこじ開けて、探しあてた舌を舌で絡める。今まで会えなかった分を埋めるように。申し訳ない気持ちを謝るように腕を首にまわし舌をからめ合う。少し呼吸を整えるとまた何度もキスの雨を降らせた。アヤベはされるがままだったが、少しすると手を俺の首に回してきた。お互いにもう離さないと言わんばかりに頭を固定してキスし続ける。何度も何度も…
少ししてキスが落ち着く。二人の顔はまだ近いままだ。
「アヤベ…本当にごめん…バカなことをして君を悲しませてしまった…俺は大バカものだ…どんな罰でも受けるよ…」
「トレーナーさん…私のこと嫌いになったわけじゃないのよね…?」
「もちろんだ!君を嫌いになるわけなんて絶対ない!それなのにそんなふうに思わせてしまって本当に申し訳ない…なんて謝ればいいのか…」
今度はアヤベからキスをしてきた。さっきより優しいキスだ。
「いいの…だからもっと…して?」
「アヤベ…アヤベ…好きだ…」
俺はうなされたようにアヤベの唇をむさぼる…抱きしめる力もさっきより強くして…そのうちアヤベをベッドに押し倒して俺は上にまたがるようになっていた…その状態でキスを何度も何度もする。
「アヤベ…アヤベ…愛してる…もう離さないから…」
「私もよ…本当に怖かったの…嫌われたんじゃないかって…あなたに嫌われたらまた一人に戻ってしまうって思ったら…急に怖くなって…」
「アヤベ…もう大丈夫だから…一人になんてさせないから…俺はずっと一緒だよ…」
涙を指で拭いてあげる。本当に怖かったのだろう。まだ震えているようだ…ギュッと抱きしめて頭を撫でてあげる。そのうち安心したのか、震えは止まった。
「それにしても…私のこと嫌いになったわけじゃないのなら…なんでハグとかキスとかしてくれなくなったの?あんなにしてくれてたのに…?」
少し怯えたようにアヤベが聞いてくる。うう…これを言ったらどうなるか大体想像つくが責任は取らねばなるまい。腹をくくろう…
「それは…急にハグとかをやめたらアヤベがどんな反応するか見たくて…それでついイジワルなことしてしまったんだ…ごめんよ、まさかここまでショックを受けるとは思わなくて…」
「…え?そういうことだったの…?」
アヤベは呆れたように言う。少し元気が戻ってきたみたいだ。
「私はてっきり…浮気でもしてるのかと…私は重くて嫉妬深いし愛想も良くないから乗り換えたのかと思って…それで…」
腕の中でアヤベが悲しそうに言う。まだ不安なようだ。軽いキスを一つしてから言う。
「そんな事するわけがない。俺はもうアヤベのものなんだ。アヤベが重くて嫉妬深いのは愛情の裏返しだし俺は大好きだよ。それに愛想が良くないなんて嘘だ。君はとても優しいしすごくカワイイんだよ。俺にはそう見えるんだ。」
「バカ…」
恥ずかしそうにするアヤベはとてもカワイイ。こんなにカワイイアヤベを置いて浮気なんてあり得ない。
「そうだ!お腹空いてないか?お土産に名物を買ってきたんだ。聞いた限りあんまり食べてないんじゃないか?」
「そうだけど…もう少しムードとかあるでしょ?」
呆れたようにアヤベが笑う。やっぱりアヤベには笑っていてほしい。そう思うのだった。
後日トレーナー室で俺とアヤベは抱きしめ合っていた。ここまでなら今まで通りなのだが。
「トレーナーさん…イジワルしないで…キスして…」
まだ部屋に入って1分もしてないのにこれである。すっかりキスがお気に入りになってしまったアヤベがものすごくカワイイ!少しだけ焦らすと泣きそうになってしまうのだから愛らしい…
「分かってるよ、大丈夫俺はここに居るからね。」
そう言ってキスすると安心したように蕩けた顔をする。これがまたすごくすごいカワイイのである。暫くは甘え癖が抜けなさそうなアヤベだし俺もアヤベが求めてくれることに喜びを感じてる幸せな共依存を強めるのだった。
実は共依存アヤベさんあまりにも好きが過ぎるんですよね!これは極秘だったのでまだ気づかれてなかったと思いますのでセーフです。
今回はかなりイチャイチャできたんじゃないでしょうか?甘えんぼアヤベさんすごくすごいカワイイです!やはり独占欲と共依存こそ至高ですよね。
今回はとあるハグ待ちアヤベさんのイラストを見て閃きました。いやー実にいい赤面アヤベさんですねカワイイ。ということでこの激甘アヤベさんシリーズはとにかくイチャイチャさせたいという感情でできています。アヤベさんはとてもカワイイのです。
そういえば今回はカワイイの権化カレンチャンさんが出てきてくれましたね。実際お話モードってこんな感じでいいんだろうか?って感じですけどまあ今回は洗脳よりアヤトレさんを焚きつけるのが目的なのでこれで良いのですハイ。